本ブログでは、日本株を中心として、全体相場動向・個別銘柄動向等の「相場観測」、また、投資書籍等のご紹介等をさせていただきます。  読者の皆様の投資生活の一助となりましたら幸いです。
 今朝の経済教室は、中々面白い視点だったので、書いておきます。

 本当は、朝に書きたかったのですが、どうも眠くて、寝たら、起きたら15時でビックリです。
 昨日の夜から、12時間位寝ているのではないか…と思います。

 しかし、「春眠暁を覚えず」とは、昔から言われている事ですが、実感できます。
 何と言うか、眠い時は、体が欲するままに、寝ればよいのだと思います。

 仕事をしていると、そうもいかないのでしょうが、大体、神経衰弱気味になったりするのは、睡眠不足か、栄養不足ですから、しっかり寝て、しっかり仕事するのが、本当の意味で生産的だと思います。

 さて・・・今日の日経経済教室の、櫻川慶応大教授の議論は、非常に切り口が満載でした。
 
 本当は、第二次世界大戦の遠因となった各国の対応について、など、書きたい事は山ほどあるのですが、冗長になる恐れがあるので、その辺は簡単に、ここでは、議論を、「今日本がすべき事」になるべく限定して書きます。
 
 
  
 
 引用とまとめ、要約

(中)欧州支援、円建て債購入で
櫻川昌哉 慶応義塾大学教授
「最後の貸し手」が鍵に 日中への資金集中 是正を


 まず、著者が挙げた「ポイント」は、以下の三点。
 ここでは、便宜上、私で、1.2.3と番号を振らせていただきます。


 <ポイント>
1.EUが資金不足解消しない限り危機は続く
2.円と元の国際化進めて資金還流させる必要
3.通貨外交通じてユーロ共同債構想に弾みを



 「1.EUが資金不足解消しない限り危機は続く」
 については、

・(ギリシャが解決したように見えるが…)「EUは大国イタリアとスペインの財政危機を抱えており、両国の財政破綻に備えるには総額2兆ユーロ規模の資金が必要との見方が有力だ。」
                           ↓
・欧州危機を深刻にしているのは、財政統合が不十分という構造的欠陥もさることながら、欧州が自力で問題を解決するための資金調達力に不安があることだ。
                           ↓
・EUは財政危機へのセーフティーネット(安全網)として、既存の欧州金融安定基金(EFSF)と欧州安定メカニズム(ESM)を併存させて、1兆ユーロ規模のファンドの立ち上げを目指しているが、資金が思うように集まらない。資金不足解消にめどをつけない限り、危機はくすぶり続けることになる。

・欧州各国は、国際通貨基金(IMF)の融資規模を現在の4千億ドル強から約1兆ドル強に拡大して資金供給源にしようと画策しているが、各国の反応には温度差がある。日本や中国は欧州の自助努力を条件として資金援助の可能性を示唆しているが、米国はIMFが途上国の救済機関であるとして資金援助に否定的だ。



 


 まとめると、これから、イタリア、スペインとくれば、ギリシャの比ではありません。
 今の欧州の資金調達力の限界は、今回の危機で、明らかになっています。
 従って、この仕組みをつけておかないと、危機がくすぶり続ける。
 ところが、IMFの増強などは、米国が否定的など、各国間に温度差がある…。

 さあ、どうしよう?

 という事ですね。
  
 因みに、この後、著者は、第二次世界大戦の遠因となる世界恐慌についての記述がありますが、当時も、米国が欧州の金融危機を助ける意志を持たず、結果、ブロック経済→貿易減少→通貨安競争(近隣窮乏化政策)→戦争 
 といってしまった流れについて議論しています。

 これは、私も同意見です。
 …そして、米国が、非協力的である事や、強引な通貨安政策を取っている事は、現代の事実です。

 但し、米国の都合がよい制度としても、貿易については、むしろ増加しており、企業は各国での現地生産をしているので、当時よりもはるかに国際貿易・国際分業体制が進展・複雑化しているのも、事実です。

 では、次に行きましょう。

 2.円と元の国際化進めて資金還流させる必要

・対外純資産が潤沢な国と国際通貨を供給する国のミスマッチが現在の世界経済の特徴だ。米国は「国際的対外不均衡」と称して、経常収支の巨額の黒字を生み出す中国の過剰貯蓄と通貨安政策を批判しているし、中国は債権者としてドル下落に対し強い懸念をあらわにしている。どちらの国が悪いのかはさておき、このミスマッチこそが過去10年来の世界経済の不安定性をもたらしているといえる。

・ミスマッチを解消して世界経済を安定軌道に回復させるため、円と元の国際化を進めて資金を還流させるしかない。日本の金融機関が円建てでアジア各国に貸し付け、海外市場で円建て債券を発行できれば、国内の膨大な余剰資金はアジアの成長機会と結び付き、日本経済はアジアの高成長の利益を直接享受できる。




 まとめると、

 まず、対外純資産が多い国(つまり、海外からお金を借りるより貸している金額が多い国)→(日本や中国ですね)と、国際通貨を供給する(ドルやユーロですね)国がミスマッチですよ。
 つまり、アメリカは海外から猛烈に借金しているし、欧州主要国も、ドイツ以外は、マイナス(海外から借りている)という状況ですね。
 ここが、ミスマッチになっちゃってるね。

 それで、米国は、中国の通貨安政策や過剰貯蓄を批判し、中国は、大量に米国債を持っているのに、ドルの減価を批判している…けれど、どっちが悪いかはともかく、これが、不安定性の原因だよね。

 という事ですね。

 この点は、補足説明が必要です。
 


 


  参考引用:経済指標のかんどころ 

 「国民経済計算上、国内の貯蓄と投資の差額は経常収支(厳密には資本移転〈純〉が加わる)に等しくなる。
(貯蓄は海外からの要素所得〈純〉を加えた概念であるため、ここではGDPと同じく定義上、三面等価が成り立つGNPで説明)
 分配面からみたGNP=消費+貯蓄…(1)
一方、
 支出面からみたGNP=消費+投資+純輸出+海外からの要素所得(純)…(2)
 (投資=総固定資本形成+在庫純増)
(1)−(2) から 貯蓄−投資=経常収支

 (2) 民間の貯蓄超過と財政赤字、経常収支との関係
 国内部門を民間と政府に分けると、民間部門の貯蓄超過は政府の財政赤字と経常収支の和に等しくなる。
 なお、ここでいう民間部門の貯蓄は、家計や企業に最終的に分配されたGNPのうち消費されなかった分であり、固定資本減耗を含む。
 分配面からみたGNP=民間消費+民間貯蓄+租税
=支出面からみたGNP=民間消費+民間投資+政府支出+経常収支
したがって、
  民間貯蓄−民間投資=(政府支出−租税)+経常収支
  (民間貯蓄超過)     (財政赤字)

 



 これは、国際貿易や収支を見る場合に非常に基礎的、かつ、重要な項目です。
 「三面等価」とは、国民の生産=支出=所得(分配) となる、という事です。
 
 結果、国内の貯蓄から投資を引くと、経常収支となります。
 
 貯蓄がプラス、という事は、経常収支も黒字になります。
 国内で貯蓄に比較して、投資が多ければ、海外からお金を借りる事になります。
 つまり、経常収支の赤字国は、投資が多いという事と同意義です。
 逆に、貯蓄がプラスで国内でお金が余った国は、海外に貸し出します(つまり、債権を得る)。

 従って、経常収支が黒字という事は、資本収支は赤字です。
 これは、経常収支+資本収支+外貨準備増減+誤差脱漏=0
 となりますが、外貨準備と誤差を除けば、経常収支=資本収支という事になります。

 従って、圧倒的に経常収支が赤字の米国は、資本収支は圧倒的に黒字となります。
 資本収支が黒字、というのは、つまり、日本や中国その他様々な国から、米国にお金が貸されている、というわけです。

 ここで注意する事は、世界の国際収支ランキング を見ても明らかなように、経常収支の黒字・赤字それ自体が問題な訳ではない、という事です。

 中国、日本、ドイツは、経常黒字で、つまり、お金を貸し出しているわけですが、インドやブラジルといった高成長国は経常収支は赤字です。
 つまり、国内の貯蓄よりも、投資が多いので、海外から資金を借りている構図です。
 イギリスも、経常赤字国です。

 このように、単に経常収支の黒字=善、赤字=悪という事ではない事には、くれぐれも注意してください。
 一言で言えば、その国のその状況と未来において、その状況が持続可能か?という視点で見る事が大事だと思います。

 長い補足になりました。



 それで、米国のように、経常収支赤字国(資本収支黒字国)は、債務国となります。
 日本や中国のような経常収支黒字国は、債権国となります。

 こういった背景を踏まえたうえで、今は、経常収支赤字国の通貨が国際通貨で、黒字国の日本円や中国元がローカル通貨である、という状況ですね、という事ですね。

 さて、次に行きましょう。

 3.通貨外交通じてユーロ共同債構想に弾みを

・ここまで述べてくると、日本が欧州経済の安定のために何をすべきかがみえてくる。膨大な対外純資産を「国際的担保」として、相当規模の円を海外に供給できる立場にある。ただし、EUの要求に無条件に応じて資金援助すればいいというものではない。

・まず、欧州から購入する債券を円建て債に限定すべきである。ユーロ建て債の購入は、円売り・ユーロ買いを通じて為替介入と同じ効果を持ち、短期的には円高是正の効果があるが、介入資金の規模は市場全体からみれば微々たるもので、長期的な効果はほとんどない。一方、円建て債にすると、為替リスクをユーロ加盟国が負担することになる。円高・ユーロ安は日本への利払い増を通じて、ユーロ加盟国に損失を与えるので、ユーロ安戦略への誘惑に対する歯止めとして働く。結果として、円高の進行を長期的に食い止めることができる。

・強い通貨の流動性が、欧州経済に規律を与え、ひいては世界経済を安定させる。日本は、円国際化の通貨外交を行う絶好の機会ととらえて、円建てなら資金援助してもよいと提案すべきである。

・次に、IMF外交にこだわるべきではない。欧州各国がIMF経由で資金を借り入れようとするのは、IMFには主要国は自国通貨で借り入れられる規定があるからだ。日本としては、融資余力拡大分についてはこの規定の適用除外を貸し出しの条件にすべきである。交渉がまとまらないなら、直接ESMに融資することも視野に入れるべきだ。

・最後に、購入する債券は「ユーロ共同債」に限定して、ドイツの事実上の保証を取り付けるべきだ。ドイツの反対で膠着状態にあるユーロ共同債の構想に弾みをつけることになるだろう。ユーロは欧州のものと思う人が多いかもしれないが、実はドイツのものだとみるとわかりやすい。85年のプラザ合意で円と並んで自国通貨の一方的な増価を求められたドイツが、ドル体制に見切りをつけて新たにつくったのが「共通通貨ユーロ」だ。現に割安なユーロの最大の受益者はドイツである。最終的にはドイツは折れるはずだ。



 この部分は、世界の均衡と、日本の国益を考えた提言です。
 以下、簡単にまとめると、、

 ・日本円は、対外債権国を担保として、国際通貨となり得るが、今、欧州に、ユーロで、単に出せばよい、というわけではないよ。
  
 ・欧州の債券を買う(つまりお金を貸す)のは良いけれど、円建ての債券を発行してもらって、それに限定した方が良いよ。

 ・ユーロで欧州債券を買えば、一時は為替の介入効果があるけれど、長期的な影響は?だよ。
  でも、円建て債に投資するのであれば、為替リスクは、ユーロ諸国が負う事になるんだ。
  そうすると(ドイツのように今のユーロ安であべこべに利益を得ている国があるけれど)、日本は、またユー  ロ安になったとしても、円で貸しているわけだから、ユーロ諸国からすると、利払いが増える事になるでしょ  ?
  一方、円安になれば、日本の輸出にはプラスになる訳だから、どちらに行っても良いポジションになるよね。
  短期的に為替介入効果を狙うよりも、こっちの方が、長期的にはユーロ安戦略を封じる事ができるよ。

 ・だから、今こそ、円を国際通貨にすべく、円建てでの資金援助を申し出よう。

 ・それと、IMF経由にはこだわらないようにしよう。
  IMFだと、自国通貨で借り入れられる規定があるから。

 ・そして、購入する債券は、「ユーロ共同債」に限定しよう。
  ドイツの保証を取り付けよう、ってこと。
  
 という事ですね。

 私は、かつて、為替介入も兼ねて、欧州に資金援助すべき、と書きましたが、筋としては、確かに櫻川氏の政策の方が良いと思いました。
 
 さらに言えば、米国に対しても、日本はドルはもう大量に保有しているので、今後は、円建ての米国債に投資するので、円建てで発行してください(嫌なら、お金は貸せません)。
 とやれば、長期的には、特に意図的にドル安誘導政策を取っている米国に対しては、為替介入よりもはるかに効果的にドル安への誘惑を断ち切らせる事が出来ると思います。

 
 今日はちょっと長くなりました。

 では、また!

 応援してくださる方は、是非、↓二つをクリックしてください!
 
   
 

 ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村
関連記事
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://tachibanasuguru.blog56.fc2.com/tb.php/747-934ef7e5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック