(株)プラスヴォイスの取り組みや代理電話サービスの可能性について質問してみました。

Q:
代理電話サービスを運営されてから利用者の反応はいかがですか?
A:
代理電話の月間利用数は、ほぼ右肩上がりに増えています。
最近では1日約10から20件の利用があり、1ヶ月では500件を超えています。
また、言語障害者の方の代理電話のご利用など、サービス開始当初は予想しなかった利用ケースも出てきて、手ごたえを感じています。
ただ、利用回数が増えてきているとは言え、まだまだ認知度は低く、聴覚障害者の数から考えると利用数は多くないと考えていますので、より多くの方にサービスを知っていただけたらと思っています。

Q:
主にどんな目的で利用されていますか?
A:
テレビ電話を利用した代理電話の割合が多く、目的としては企業や店舗への注文、問い合わせが一番多いです。
代理電話が始まった当初は、ほとんどが「メールやFAXがない相手への連絡手段」として、ある意味仕方なく使われていたのではないかと思います。
もちろん今もそのような利用目的は多いですが、最近では健聴者(お店なども含む)からのメールやFAXの返事に代理電話を使うという、当初の利用の逆のケースも出てきました。
そのような利用の理由としては「楽」「早い」「細かい相談ができる」など様々ですが、利用者からは「手放せないサービス」と好評を得ています。
また、仕事で利用するために代理電話サービスを利用している方も複数いらっしゃいます。(業務での利用は別契約になる場合があります)

Q:
運営面で苦労されてきたことはありますか?
A:
通訳者のスキル面など高い質を確保することは当然のこと、時間の短縮による満足度の向上のためにも取り組んでいます。
たとえば電話をかける先は様々で、聴覚障害者や言語障害者と接したことがない方も多くおられます。
その際、本人以外から電話がかかってくることについて不信感を持たれる場合もあります。
したがって、適切に理解していただくために、通訳スキルの他にオペレータースキルも重要となってくるのです。
また、問い合わせ時間が長くなってしまうと利用者にも好ましくありません。
相手先にも「障害者は時間がかかる」「障害者は対応が難しい」と敬遠されかねませんので、そのために様々な工夫を行い、時間短縮にも取り組んでいます。

Q:
ビジネスとして苦労されている点はありますか?
A:
人件費の確保が大きな課題でした。
正直、代理電話の利用料だけでは通訳者の人件費をまかなっていくことが難しいのが現状です。
この課題を解決するために、弊社では、フィンランドの就労支援モデルを参考にして、聴覚障害者の就労支援事業「スポーツフォトライブラリー」プロジェクトを立ち上げました。
プロのカメラマンが撮影したスポーツ写真を、聴覚障害者スタッフなどが加工・デザインしています。通訳者は普段は聴覚障害者に手話で仕事を教えたり、一緒に仕事をしながら、通訳の依頼が入るとすぐに通訳ブースに移動して対応します。
こうすることで通訳者の手話スキルを通訳以外にも有効活用すると共に、通訳者の人件費の一部を他プロジェクトがまかなうことで人件費を捻出しています。

Q:
ANA専用代理電話サービスのように企業との提携はとても画期的ですね。きっかけはどのようなことだったのでしょうか。
A:
元々、弊社では遠隔通訳サービスとして、代理電話サービス、窓口サポート、コールセンターモデルの三本柱のメニューを掲げて提案活動を行ってきました。
その中で、テレビ電話を通じて店頭に来た聴覚障害者への通訳サポートはau、NTTのショップなどの一部店舗で実施しています。
コールセンターへの代理電話モデルも以前から様々な企業様に提案していましたが、不況という社会背景もあり、なかなか契約にまでは至らなかった所に、ANA社からご相談をいただいてANA専用代理電話サービスが実現しました。

Q:
最後に今後の代理電話サービス展開への意気込みをお聞かせください。
A:
代理電話サービスを利用した企業への問い合わせ、申し込みの利用頻度は多く、聴覚障害者が社会参加する中できわめて重要です。
企業にとっては、障害者も顧客ですので平等なサービスを受けることができるようにすることは重要だと考えています。
たとえば、ANA専用代理電話サービスのような取り組みでは、障害者が利用者負担なく問い合わせや手続きができ、障害者の不便を解消することができます。
このようなサービスを、多くの企業・行政に広げていきたいと思っています。