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20111025
 
環境エネルギー政策研究所 ブリーフィングペーパー
 
原発を再稼動しなくても今冬と来夏の電力は足りる
■ 要旨と提言
今夏の東京電力と東北電力は電力制限令などの節電努力で、ピーク・平均とも前年比20%の節電効果があった
稼働中の原発(201110月現在10基)を全停止しても、全ての電力会社で今冬・来夏ともに電力不足は生じない
原発再稼働問題と電力需給問題は切り離し、前者は安全性と社会合意により判断すべき
国は、需給調整契約の拡充やピーク料金など市場を活用した需要側管理(DSM)を重心的に実施すべき
国および電力会社は、過大に見積もった需要を固定視せず、「節電発電所」と見なした需給理をすべき
国は、省エネ・節電投資を促す施策を拡充し、構造的な節電による電力費用総額の削減を促すべき
■ はじめに
2011311日に発生した東北関東大地震とそれに続く巨大津波によって、福島第1原子力発電所において国際原子力事象評価尺度レベル 7 という深刻な原子力災害が発生し、東京電力・東北電力管内の主要電源が被災した。福島第一原発から放出された大量の放射性物質は、東日本全体の広い地域で様々な被害をもたらしている。その一方で、東日本の電力供給では深刻な需給ギャップが生まれ、それに対応するために東京電力では「計画停電」を実施したが、信号や鉄道、病院といったライフラインの電力や震災被災地の電力供給さえ止まる地域がある他、生産活動の見通しを立てられない産業経済界からも異論が聞こえるなど、混乱を極めた。その後、東京電力管内では夏の需要ピークでの電力需給の見通しから 7 月 1 日より大口需要家に対する15%の電力使用制限等が発令されたが、ピーク需要に対して 20%近い節電効果が実証された。今後、定期点検による原子力発電所の停止や再稼働が事実上困難であることにより、2012年春には全ての原子力発電所が停止する見込みである。国民の多くが脱原発を望む中、政府も脱原発依存の方向性を打ち出し、エネルギー政策の根本的な見直しが始まっている。このペーパーでは、20121月と8月の冬期と夏期の電力需要のピーク時に、原発の再稼動をしない場合でも電力の供給について問題がないことを示す。20119月末現在、国54基の原子4,896kWのうち、様々な理由で8割にあた
 
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3,350kWが停止している。3.11以降、定期点検に入った全ての原子力発電所について全性の確認が困難なことから再稼動が出来ない状況が続いており、このままいけば図1の様にほとんど全ての原子力発電所が来年の春には停止することになる。北海道電力の泊3号は、定期点検後の調整運転が長期間に渡った末、8月に商業運転に移行したが、これは本来、安全性の確認が困難なことから停止をすべきであった。
 
1:国内の原子力発電所の稼働状況(ISEP予測) 
■ 今年夏の電力需給の実績
政府は729日のエネルギー環境会議で原発が停止した際2011年夏、2012年冬、2012年夏のピーク電力が不足するとの予測を発表した。また、8月下旬に経済産業省はその予測の訳について発表した。ところが、この予測は需要は節電なしの過大なもの、供給は真夏の定期検査や自家発電供給打ち切りなども含む過小なもので、その結果として「不足」とされたものである。今夏なみの節電を実施し、発電所を活用すれば17%以上の余裕があることになる。2には、今年夏(20118月)のピーク時の電力需給の実績を示す。政府や電力各社からの事前の発表では今年の夏のピーク時には厳しい電力需給が予想されていたが、企業および家庭の節電効果と、電力各社による供給力の確保の結果、東北電力を除き電力の需給には大きな問題は発生しなかった。東北電力については、大雨による水力発電所の被災で100kW程度の供給力が失われたが、東京電力からの電力融通により最終的には供給力は確保された。大口需要家に対して強制的な 15%の電力使用制限が行われた東京電力と東北電力管内では、例年に比べてピーク時の電力需要が 20%以上低下したが、それ以外の電力会社においても自主的な節電が行われ結果、前年比で最20%程度の低下がみられた。
 
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2: 今年の夏(20118月)の電力需給実績(ISEP推計3: 昨年と今年前半の東京電力の電力需給曲線(東京電力データを元ISEP作成)
東京電力は、この夏の節電を促進するための一環として2008年度以降の1時間ごとの電力需要を発表した。表1に示す様に2008∼2010年を通じて、最大電力需要6000万kWに近い電力需要の記録したのは、上位100万kW(5900∼6000万kW)を記録した時間数はわずか5∼6時間であり、上位500万kW(5500∼6000万kW)を記録した時間数は2008年で42時間、比較的長い2010年でも165時間である。図3に示すように1年間365日24時間=8760時間のうち、わずか5∼6時間だけの需要のために、域内の大口需要家の省エネ対策を徹底することもなく、多大な維持コストと大きな燃料費を覚悟して100万kWの発電所を用意しておかなければならないのか、再考することが必要である。図4に示すようなピーク時間帯に動く石油火力発電所の燃料コストは1kWhあたり約14円と推定される(注1)。大口需要家に、ピーク時間に約14円/kWhの燃料費をかけ、約11円/kWh(注2)で売るようでは燃料コストだけ考えても赤字になる。需給調整契約の最大活用や、ピーク時に高値の電力料金を適用することもなく、増大する需要にあわせて供
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