「これは・・・・白髪だな・・・・
 まさかハゲたりしないよな・・・・・・
  まだ23だぞ、俺・・・」

ただ今午前6:30、場所は洗面所

そしてそこにある大きな鏡の前で、天河アキトは改めて自分を見直していた

そして気付いた

知らぬ間に白髪が・・・

そんな自分の姿が映っている鏡を見ているとため息が出た

「五感を失って・・・・その上髪も失うとか?」

そう考えると男として恐怖が湧いてくる

「とりあえず・・・白髪染めてみるかな・・・・」

時はただ漫然と過ぎていたわけでもなく

かといって急激な流れの中にあったわけでもない

全てに平等に流れている

それはもちろん

アキトの髪の毛にも・・・・
















「黒い王子と天河アキト」

6 は?











「アキト、髪染めるって」

「へ?」

ネルガル食堂の朝

泊り込みの社員で賑わうその一角で、会長とその秘書そして一人の少女が食事をしている

「天河君が髪を染める?
 こりゃまた面白そうだねぇ・・・・」

「でもなんでいきなり?理由がわからないわよ・・・」

アカツキは面白そうに、会長秘書エリナ・キンジョウ・ウォンは訝しげに感想を漏らす

「理由はあるみたい」

「そりゃぜひ聞いてみたいね」

「ラピス、あなたわかるの?」

ラピスはコクンとうなずくと、食事を再開する

それにつられるようにアカツキとエリナも食事を再開する

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

「ラピス、理由は?」

「言わない、アキトが言うほどの事じゃないって言った」

簡潔にして明解、そして最も重要なところでもある

アキトが言うなと言えばラピスは言わないだろう

「ちっ・・・・・・・・!
 面白そうな話題だと思ったんだがねぇ
 天河君が髪を染める・・・・いったい何色にするんだろうねぇ・・・・」

「天河君が髪を染めるっていうだけでなにかしっくりこないわ
 もともとそういう事とは縁がなかったもの」

「そう、彼は人生の楽しみ方を知らなさ過ぎる!!
 ここは彼の『親友』であるこの僕が色々と教えてやらねばなるまい!!
 そしてまずは髪の染め方からだ!
 そして全てをこの僕に任せてくれれば、天河君の天性の女ったらしの才能と相まって
 全ての女をこの手にする事も可能!!
 ギャルズドリーム ギャルズアイランドまっしぐら!
 フフフフフ・・・・・・・」

一人不気味に微笑むアカツキ、それは小さい子が見てはならないもの

見てしまえば暫くは夜夢に出る事請け合いである

「ラピス見てはダメよ・・・!
 アレは見ただけで感染するの!さぁ早くそして見ないで逃げるのよ!!」

恐怖におびえながらラピスを抱きしめ、なんとかアカツキから逃がそうとするエリナ

そしてラピスは・・・・

「バカ?」

・・・・・

「まぁ、冗談はとにかく・・・」

姿勢を正すと机に肘をのせて手を組む

今までの狂い具合が嘘のような、真剣な顔だ・・・

「うちらとしては天河君がユリカ君に会った後どうなったのかが問題なわけだよ
 彼の選択によっては・・・
 ネルガルは天河君の敵になる事もあり得る
 ま、そうならない事が一番楽なんだがね」

「さっきまでのは何?」

「か、彼は大丈夫なのかねっ、はははは!」

わざとらしく気付いてないようにしようとするアカツキ

「彼なら大丈夫なんじゃない?
 どうせユリカさんとヨリを戻して・・・って言うのも変だけど・・・とにかく元どおりになるんじゃない?」

「エリナ、さっきのナガレ何?」

「気にしちゃだめよ」

「エリナも変だった」

「忘れなきゃダメよ」

エリナと違い、アカツキはラピスの問いかけは無視して続ける

冷たい汗をかきながら・・・

「それはどうかな・・・・もしかしたらって事もあると思わない?」

もしかしたら別れるかもしれない、ないわけではない

そういうことが言いたいわけだが、いかんせんその事態はどうもしっくりこない

あの二人が別れるなんて、本当にあるのかという気持ちの方が強い

自分で可能性を示唆しておきながらも、アカツキにはその状況は見えてこない

(想像・・・・できないな・・・)

そうさ・・・想像もつかない、なら考えるだけ無駄だ・・・

アカツキは自分の考えた事がないわけではないと思ってはいても

それは無いとして片付けた

「どっちにしたって天河君が話してくれるのを待つしかないって現状なんだよねぇ・・・」

「そうね・・・」

何の話をしたのか、どうなったのか、気がかりな事が多いが

昨日、帰ってきたアキトは何も言わずに部屋にこもってしまった

そのせいで一言二言だけの会話だったが、それだけでもわかるほどアキトはどこか違っていた

最近までのアキトと比べれば何かを取り戻した感じだったのだ

妙な気の張り方もしていない、中にくすぶっていたモノがストンとなくなった感じでもあり

簡単に言えばスッキリしたといったものだ

それがユリカ効果であるのはまず間違いないだろう

「久しぶりに会って、そのままシチャッタとか?
 なんかスッキリしてたし」

「ちょっと!朝からそんな事言わないでよ!
 ラピスだっているのよ!?」

「おっと・・・そうだね、これは失礼」

ぜんぜん悪びれていないアカツキ、朝一番の食事時に下ネタで攻めるのはどうかと思うぞ

そんなアカツキにも怯まない(気にしない)ラピスが鋭く切り込んだ

「シチャッタって何をしたの?」

純粋な興味の視線でラピスは答えにくい話題に突っ込む

・・・・・しまった・・・・そう感じる二人だったがもはや時すでに遅し

好奇心の塊と化したラピスにどう説明したらいいのだろうと思案し始める

ラピスは自分の知らない事を積極的に知ろうとする傾向が強かった

今まで研究施設にいて外のことを知らずに育ったせいなのか、知らない事に強い興味を覚えるのだ

それは日常の会話から何から全てにおいてである為、教えられないような事はラピスの前で会話してはいけない

そういった暗黙のルールが出来る程だったのだが

誰にでもうっかりというものはある

それが今だ

「ラピス君、それを本当に知りたいなら今夜僕の部屋に一人で来るんだ」

ただではやらせんとばかりに問題発言を投下しつつ

目を赤くランランと光らせ、ついでに歯も光らせながら哂うアカツキ

奴の守備範囲はどこまで広いのか・・・・

「こらこのキチガイ何言ってんのよ!!
 女好きもほどほどにしなさい!!
 ラピス、あんな奴の言う事を真に受けちゃダメよ?
 隙を見せると何されるかわからないんだからね?
 わかった!?」

眉を吊り上げて般若の如き顔で怒るエリナ

それを見たアカツキはいつの間に移動したのか食堂の隅でガタガタ震えている

「わかった、ナガレの言う事は信じなければいい」

ラピスはラピスでそんなアカツキをじっと見ながら覚えた事を繰り返す

「ナガレに隙を見せてはならない」

「そう、それでいいのよラピス」

勝ち誇ったような笑顔でアカツキを見下すエリナ

アカツキはちょっとした冗談だったのにと思っていたが

もはや口の挟める状況ではない

「さ、あんなのほっといて食べましょ
 今日も忙しいんだから」

「わかった、でもエリナ」

「何ラピス?」

「シチャッタって何?」

・・・・・・・・

(あのバカは〜!!)

未だに隅っこで震える会長をキッと睨む

(これを私がどう教えるのよ!?)

ネルガルの朝は至って平穏だった、平穏なんだよ

それはもちろん主役が登場しても平穏だったさ









というわけで・・・・・









(何だこの状況?)

平穏な朝の食堂の一角の会長組を見てアキトはそう思わざるをえなかった

アカツキはどこかビクビクしながら食事をしているし

エリナとラピスは掛け合い漫才のように話をし、時々アカツキを睨む(見る)

するとアカツキは一瞬のうちに隅に移動して震え始め

視線が自分から外れると段階を踏んで席に戻っていく

(何かあったんだろうけど・・・・関わりたくない)

それが結論だった

「やあ!天河君じゃないか!!
 そんなところで嫌そうにしてないでさっさとこっちにきやがれこんちくしょう!
 そして今すぐラピス君を止めてくれ!」

またもや食堂の隅っこに逃げて来たアカツキに発見された

回れ右して、今日は朝飯抜きでいいやと思った瞬間見つかった

(シット!なんてこった!
 いつものアカツキじゃないな!?この策敵能力は!!)

「どうしたんだい!?さあ早く僕達と朝ごはんを食べようじゃないか!」

(どうする、このままあの輪に加わるのは危険だと本能が告げている!
 何とか逃げ出さねば!)

気付かれない程度に周りを確認・・・

「何をキョロキョロしてるんだい!?早く来いよ!」

(バカな!この距離でなぜわかる!?
 しかもサングラス越しでなぜ!?
 くっアカツキめ・・・・侮れん!!)

いつもと微妙に口調が変わってしまっているアカツキはかなり精一杯といった感じだ

それだけで危険な香りがする、それもとびっきりの

「さぁこっちだ!今すぐに君の力が必要なんだ!
 君にしか出来ない事なんだよ、この世で君だけに・・・・!」

いつの間にかアカツキに手を引かれて席に連れて行かれている

よく見ればエリナも懇願のまなざしでアキトを見ていた

(いったい何があったというんだ、エリナさんまでもがこんなに困っているなんて!
 それほどまでに困難な問題が発生したのか!?
 ラピスを止めろっていうのは、何の事なんだ・・・!?)

事態が一つもわからない

そんなに何に困っているのだろうか

そこに問題のラピスが挨拶してきた

「アキト、おはよう」

無表情に近いラピスの挨拶、これでもだいぶ良くなったほうだった

前は怖がって誰にも近づく事はなかっただけに、一緒に食事が出来るようになっただけでも大した進歩だった

「ああ、おはようラピス
 アカツキとエリナさんがなんでこんなに困ってるのか知ってるのか?」

「知らない
 私はシチャッタって何か聞いただけ」

「シチャッタ?
 何を?」

「それを聞いたの、でも答えてくれない」

シチャッタ・・・・とくれば何を?と聞くだろう

だがそれなら何をしたかを話せばいいだけだ、困るようなことじゃない

「わからないなぁ・・・・何したんだよ、アカツキ?
 なんか説明できない事か?」

「・・・・実に切実にしていつか通る道だよ天河君・・・・・
 けどね・・・・子供のいる親が通る道であって本来なら僕が通る道ではないんだ
 だから・・・・・
 ラピスの親代わりである君に答えてもらいたいんだよ
 出来る限りの援護はしよう、だけど最後は君が答えてあげるんだ
 いいね?」

「だから何をだ何を」

「状況を説明したいところなんだが・・・・それも困難な状況なのでねぇ
 どういったものか・・・・
 そうだな、まず一つ言っておかなければいけない事がある」

「なんだ?」

「怒んないでねって事」

「?、まぁいいや、で?」

「昨日、君はユリカ君に会ったわけだ
 そしてなんだかスッキリしていたんでね、これはもしかしてシチャッテるんじゃないかと思ったんだよ」

「何を?」

「何をって・・・・男女が一つの部屋ですることなんて幾つもないだろう?
 ましてや君たちは夫婦、もうわかるだろう?」

しばらくアキトは首をかしげていたが、真実にたどり着いた時

一瞬で真っ赤になった

「こ、このばかやろう!
 シチャッタってそれかよ!」

そして理解した、ラピスにどう説明していいか困っていたんだと

「で、結局どうだったんだい?」

言外に具合はどうだったよ、え?この色男!!というオヤヂ臭さを漂わせながら聞いてくる

「そんなんじゃない!昨日会ってからずっと話をしてただけだよ!」

「なんだ、それだけ?
 つまらないねぇ・・・・
 まぁ君はいいよね、これからはずっと一緒なわけだろ?
 いくらでもチャンスはあるし、夫婦だしね」

「いや、でも俺たち・・・別れたから
 そんな事にはならないよ・・・・・」






「「は?」」






いきなりの別れ話に、アカツキとエリナは目が点だ

今までの会話の流れが全てぷっつりと切れた

そして残ったのは微妙な沈黙

その沈黙の中で、アカツキの思考は段々と頭の整理がついてきた

アキトとユリカは別れた

可能性を考えてはいたが無い事にした事態だったが、それが現実になっただけに驚きを隠せない

驚きはしたがそれを現実であるとすると、一組のカップルの別れ話に他ならない

その背景がどこにでもいるカップルのそれとはまるで違うとは思うが、単純に考えればそれだけだ

「それでいいのかい?」

一応聞いてみる

聞かなくとも答えはわかっている

きっとアキトはいいと言うだろう

頑固者だから答えも変わらない、いや・・・・・変えられない

それがわかっているから

「いいんだ、これでいいんだよ」

はっきりと答える、迷いも見せずに

(わかってはいたのだけれどねぇ・・・・
 こうもはっきりと言えるとはね、何があったんだか)

「わかったよ、それじゃあ次に・・・・・」

「よくないわよ!!」

次の疑問点を聞こうとしたアカツキを遮ってエリナの怒号が響く

信じられない、そんな言葉がぴったりの顔をしている

「どうして!?
 どうして別れる事になるのよ!!
 あなたは彼女の為に戦ってきたのよね!?
 なのに助けてみれば別れてきたですって!?
 どうゆうことよ!?」

エリナの言う事はわかる、わかるが・・・・・こればかりは当人たちの問題だ

「よさないか、エリナ君
 僕達の口の挟める話じゃない」

「あなたね!それで納得できる話じゃないわよ!
 アキト君、どういう事かちゃんと話しなさい!!」

「エリナ君!!」

アカツキの厳しい視線がエリナに向けられる

今までのふざけた物など無い、本当に鋭い視線だ

「これは僕らのかかわるべき事じゃないだろう・・・」

「でも・・・ユリカさんは・・・・・・・それで納得するとは思えないわ・・・・・・・」

いつもアキトを追いかけていたユリカ

アキト以外の男は目に映らないほどのユリカ

そのユリカが別れようと言って納得するとは思えなかった

「これは俺たちで決めたんだ、もちろん互いに納得して決めたことなんだよ
 だから後悔はしてない
 俺も・・・・ユリカもね」

納得できているのは本人達のみだ

何があったのかわからない第三者としては納得できかねる

「私にはわからないわ・・・」

「わかってくれとは言えない
 実際は俺にもなんで別れたのかなんてわかってないんだ・・・
 でも・・・・これが正しい気がして・・・・」

「そんな曖昧な事で別れていいの?
 ここまで来るのにどれだけあなたが・・・・」

苦しんできたか・・・・・言葉にはならなかったがその想いはアキトに届いた

「確かに曖昧な事だけど、それ以外になかったのも事実なんだ
 それに、俺の目的はユリカの救出だったんだし
 目的は果たしたさ・・・・・」

「・・・・・・・・・」

もう、それは覆らない意思

二人の道は分かたれたのだろうか

(あんなに愛し合ってたのに・・・・こんな事って・・・!)

納得できない、自分には理解できない

それがエリナは悔しかった

「ま、男と女なんてそんなもんだよ
 苦労して一緒になったカップルが別れるなんて事がないわけじゃないんだし
 さて、この話は一応ここまでにしておこうか」

このままこの話をしたところで進展はないと見て、アカツキは話題を変える

それは

「じゃあ天河君質問だよ
 ・・・・・何色にする気だい?
 髪の毛」

髪の毛、それは長い友達

髪の毛、その存在は儚い故に美しい・・・・?

とにかく髪の毛だ、最初の疑問点だ

アキトが来る前からの

だが急激な変化について来れない二人には、何を聞いているのかわからない

((髪の毛の色って何の事だろう?))

「アキト、髪を染めるって言ってた」

「そう、それなんだよ
 君が何色にするのかがずっと気になっていたんだよねぇ・・・・
 ラピス君は話してくれないしさ」

髪の色を染める、ラピスは話してくれない

これは今朝の事じゃないだろうか・・・?

「あ・・・・ああ、なんだその事か
 別に大した事じゃないよ、白髪が多くなってたから染めようかなって思っただけだよ」

ほら、と髪を見せる

確かに白髪が目立っている

「おや、これは・・・・結構って言うかかなり?多いような・・・・」

「だろ?自分で見ていて驚いたよ」

アキトの髪は注意してみるとうっすらと灰色のようにも見えた

全体的に色素が抜けているような感じだ

「だから、黒くしようかと・・・・」

「そんなバカな!!
 黒なんて今までどおりじゃないか!!
 それじゃつまらないよ、ここは一発他の色にしてみないか?
 色を抜かなくても綺麗に染まりそうだしさ」

「いいよ別に黒で、面倒だし」

「いいや良くないね!
 君なら他の色も似合いそうだから敢えてここは言わせてもらおう!
 きみは黒以外にするべきだ!!」

きっぱりと断言、黒以外にするべきなのかは知らないが断言する

理由はたぶん面白そうだから以外はない

「なんでそんなにこだわるんだよ、黒で良いよ」

「まあまあいいじゃないか、僕に任せてみてくれ」

自信満々のアカツキを見ているうちに、まぁいいかという思いに捕まりはじめていた

なにより染まった髪の美しさ、見た目のインパクト、自分が今までと違う見た目になる面白味について

なんでこんなに熱心なんだと思うぐらいに長々と熱弁を振るっているのに影響されたとも言える

そして話はいつの間にか何色にするかで固定されていた

そして自分はその会話から締め出されている

自分の事のはずなんだがなぁ・・・と思ってはみても、どうせ聞いていてもわからない事だ

勝手に話してくれてるし、決まった時に聞けばいいやと考えていたりした

「それでね・・・・」

「でもそれは似合わないんじゃない・・・・?」

「これは誰にでも似合うものなんだよ・・・・・」

「しかしですなぁ・・・」

「これもどうかと・・・・・」

「男ならやはり黒がいいのでは・・・・・」

「「「「お前は帰れ」」」」

「そうするとこれではだめね・・・・」

「じゃあいっその事・・・・」

「なるほど、いいかもしれませんね・・・・」

「しかしそれで納得すればいいのですが・・・・」

「なぁに、したもの勝ちさ
 というわけで、天河君」

いつの間にかプロスペクターとゴート、そして月臣も巻き込んだ話し合いは終わったようだ

何色にするか決まったらしい

「では、発表しよう
 天河君、君は・・・・・




 銀髪になりなさい




 以上」










「いや、それじゃ白髪と変わらないんじゃ・・・・・」

「白髪を気にするからいけないんだよ
 いっその事逆転の発想で白くしようって事さ
 でも、ただの白じゃ面白くないから、ちょっとひねって銀ってね」

「銀・・・・・嫌だ」

「なっ!どうしてだい!?
 いいじゃないか銀!!」

「そうよいいじゃない銀!!」

「いいと思いますぞ銀」

「捨てたものではないぞ銀」

「男なら銀だ銀」

「銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ」

「うあぁぁああぁ・・・・・・・」

「銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ」

「う・・・・ううぅぅぅぅ・・・・・・・・」

「銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ
 銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ銀だ」






















「うおおおおおお!!!銀だああああああ!!」

アキトは洗脳された






























「綺麗に出来たじゃないか、見事に銀髪だね」

鏡に映る自分を見て、呆然とするアキト

洗脳が解けたようだ

「な・・・・・なんて事だ・・・・・」

あの後、不可思議なテンションのまま理髪店に連れてこられて銀にしてやってくれと注文し

またもや髪の色について話して来たり、銀色になったらどんなにいいかを話したりされてすっかりいい気になって

「どんなのになるんだろうなぁ、楽しみになってきた」

などと言ったりもしてしまっていたが・・・・・・・

「これは・・・・やりすぎだろ・・・・」

目が覚めれば、こんなはずじゃなかったという思いに支配された

そんなアキトにアカツキは気楽に話しかけてくる

「そんな事はないよ、いいじゃないか!
 言ってなかったけど最近は銀髪が流行なんだし」

「本当か・・・・?」

「本当さ、最年少美少女艦長星野ルリのおかげでね」

いつの時代も流行の最先端はメディアだろう

そして最近人気があるのは歌手でもモデルでもない

軍人だ

星野ルリという軍人が、今や全世界的なアイドルとなっている

そしてルリのまねをして髪の色を銀にする人間も増えている

たしかに流行っているのだ

「いい事思いついたよ、どうせならルリ君と同じ色にしないか
 ルリ君の髪の色ならほぼ完璧に再現できるよ
 データが沢山残っているからね」

親指をグッ!と立てて新しい発想をするアカツキ

「ま、待てよちょっと待てよ!
 ルリちゃんと同じ色にするのか!?」

「いいじゃないか、ここまでしたんだ
 ちょっと変えるだけで大丈夫だしさ」

銀の次はルリちゃんカラー、どんどん話が変わってきている

このまま任せるのはかなり不安だ

「アカツキ、お前遊んでないか・・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・
 そんな事ないべさ・・・・・・」

「その間は何だ!それにべさってなんだ!!」

「はぁ・・・・君さ、何が嫌なの?」

何が嫌かって、別に嫌ではなかった

ルリちゃんと同じ髪の色になる、なんだか楽しそうだとさえ思っている

ただ、この先もし彼女に会った時なんと言えばいいかわからないのが嫌だ

どうして同じ色にしたんですか?何て聞かれたら、答えられない

「それはやめよう!!なっなっ!?
 これでいいって!
 ルリちゃんと同じにしなくてもこれで十分だって!」

「往生際が悪いぞ天川君
 ここまで来ていまさら後には引けないよ、君の髪をルリ君カラーにしてやる!!」

熱き思いを胸に秘め・・・・いや開放しているアカツキ

何がそこまで彼を熱くさせるのか、そのヒートアップ具合は誰にも止める事など出来はしない!

「さぁ・・・・行こうか・・・・・」

そして、強制的にアキトは店を出てネルガルへと戻っていった・・・・・・
























ここは、ネルガルの中でも特に独自の研究を行っている場所

いつからここに存在していたのかも知れぬ研究室、通称「咎人の檻」

その中では人目にさらせぬ研究が毎日行われているという

なんとも怪しく、なんとも危険な香りの漂う場所

その研究室の中から、男の悲鳴が聞こえてくる・・・・・

かんべんして・・・・・・

いやだ・・・・・・・・

あれ?結構いいじゃん・・・・・・

などなどと、聞こえてきていた・・・・・










「どうよ、これで完璧にルリルリとおんなじ髪の色だぜ!?」

「これは見事だね、さすがはウリバタケ君だ」

「はっはっはっはっは!もっといってもっといってぇええ!!」

大きな声で生き生きと話し、はははと笑いあう二人

その横で鏡に映る自分をまじまじと見るアキト

今日はよく鏡を見る日だと思った

この研究室はウリバタケの研究室だった、研究しているものはとても表に出せるようなものじゃないが

まぁ・・・・・趣味の部屋とでも言えばいいのだろうか・・・・・

「どうだ、アキト
 気に入ったか?
 まさかそっから黒にするなんていわねぇよなぁ!!」

メガネがきらりと光る

その計算されつくした角度で光るメガネは、何故か人の恐怖心を掻き立てる

ここで黒にするなどとは死んでも言えない

「その色を出す為に俺がどんだけ研究したか・・・!
 特にその微妙に青みがかったとこなんてなぁ!」

「ま、その話はまたの機会にしてもらうよ
 天河君、ずっと聞きそびれていたが・・・・聞いておきたい事がある
 君のこれからってやつさ
 今まで散々聞いてきた事だけど、ユリカ君に会ってみて何か得られたものはあったかい?」

「おいおい・・・!お前、艦長に会ったのかよ・・・!」

「そうか、ウリバタケ君は知らなかったね
 だが、会った事だけでそこまで驚いていてはこれから先を聞いても大丈夫かな?」

「なんだ、なんかあったのか・・・?」

「彼等は別れたんだってさ」

「なに・・・・!?」

ウリバタケは驚きに目を見開いた

「なんでだよ!?なんでそんな話になんだよ、えぇ!?
 おいアキト、どおいう事か説明してもらおうか!」

有り得ない、そんなことは有り得ない筈

そう思いたかった

あの頃、まだナデシコが飛んでいた日々の中で

ユリカに追い掛け回されるアキト、それを見る自分達

それが、いつもの風景だった

それがナデシコの雰囲気を作っているとも言えた

その二人がいて、二人を取り巻く自分達がいて、ナデシコがあった

それなのに、二人は別れたという

それだけで

それだけであの思い出が

全てのナデシコの思い出が否定された気さえしていた

「理由なんて・・・・なかったんです・・・・・・・
 ただ、あいつに会った時に感じたんです
 俺たちは終わっていたんだって・・・・・それだけなんです、ほんとにそれだけ・・・だったんです・・・」

アキトは後悔していない、それはわかった

だが今のだけでは納得など出来ない

「おめぇそれでいいわけねぇだろうが!!
 やっと取り戻したんだろうがよ!
 それを見た瞬間に判断しやがって、それが間違いだったらどうすんだ、あぁ!?」

「間違いなんかじゃないんです・・・・
 それに、俺一人で決めたんじゃない、ユリカと一緒に決めた事なんです」

「艦長が・・・・!?・・・・・・・・・・艦長も、それでいいって言ったのか・・・・?」

アキトは黙って頷いた

「そうか・・・・・あの艦長がな・・・・・」

ウリバタケはドサッと座り込んで深く息をした

何とか気持ちの整理をつけようとしている

(ナデシコが終わって、結構経つってのに・・・・
 やっぱ俺ん中でもでっかいんだな、ナデシコってのはよ・・・・・)

何か大きなものを無くした感覚だった

「はぁ・・・・・・・・・で、会長さんも聞いてたがよ・・・・お前これからどうすんだ?」

「約束を、果たそうと思ってます」

「約束?どんなよ?」

「ユリカとの約束なんです、いつかまた会おうって・・・・・・
 だから俺・・・・その時まで生きていなきゃいけないんです・・・・・何があっても」

生きるとは何て難しい事なのだろう、生きるとは何て単純な行為なのだろう

人はその為に生きそして死んでいく

それは誰でも知っている事

そして一番わからない事

「生きる・・・・か・・・・
 今までのおめーからは聞けなかった言葉だな
 だが、いい目標だな・・・・・」

「そうだね、どうやって生きるかを聞かせてもらえればもっといいがね」

どうやって生きていくのかを聞くあたり、さすがアカツキである

「ま、まだそこまで決まってないんだけど・・・・・・」

「おや、そうかい
 じゃあ、テストパイロットって事でいいね?
 これしかないし」

「あ、ああ頼む」

「それじゃ話もまとまった事だし、さっそく君にはナデシコBに行ってもらうよ」













「は?」
















「は?じゃないよ、ナデシコBに行ってもらうって言ってるんだよ
 あそこで機動兵器の最終試験をしてもらうのが君の仕事」

「他にないのか!?」

「ないよ、嫌なら仕事はないからね」

「そ、そんな・・・・」

「いいじゃないか、ルリ君もいるし
 それに、彼女を今までほっといたんだ
 これからはもっと傍にいてやってもいいんじゃない?」

復讐とユリカの救出、それしか考えなかった

その間ずっと彼女の事は考えていなかった

彼女が無理をしているとわかったのは墓地の時

ようやく自分の身勝手さに気付かされた

生きているって教えなかった、生きていたのに

自分は彼女が生きていると知っていても、彼女の中の自分は、死んだままだったというのに

そのせいで辛い思いをさせたのだろうか

その辛さを、今からでも紛らわせる事が出来るのだろうか

「何時からだ・・・?」

「今からでもいいけど?」

「わかった・・・・明日からにしてくれ」

「オーケー、んじゃそれまでに準備しといてよ」

アカツキが出て行った

「お前も、前を向けるようになったんだな、アキトよぉ・・・・」

「ウリバタケさん、色々とありがとうございました
 俺、もう大丈夫です」

「そっか・・・・ルリルリによろしくな・・・・・」

「はい・・・・んじゃ俺、これで・・・・」

「おう」

アキトも出て行った

一人になった部屋で、タバコを取り出すと火をつける

禁煙だったが・・・・今だけは関係なかった

「かくして一つの恋は終わり、男は約束を胸に抱き今を生きる、か・・・・・・
 女は、どうなのかねぇ・・・・・・・」

椅子に身を任せ、天井に煙を吐きかける

今は何もする気になれない

「これから、どうなっていくんだろうな」

つぶやきは煙に紛れ消えていった

















6  は?   終









あとがき



長くて面白くない話だったかも・・・・
と、とにかく!!
これからが彼と彼女の話になります
アキトの髪を染めちゃったけど・・・・別に深い意味は・・・・ありますよ?
きっとありますよ?
あったら面白そうじゃないか!!
ルリちゃんと同じ髪の色にした意味は・・・・ないです
悪ふざけです

ともかく次回からナデシコB編です
いつものように待っててね?
ていうか待っていてくださいませ

でわ、次回で会おう!!



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