もし赤ずきんちゃんがギャルだったら。
―――もし赤ずきんちゃんがギャルだったら―――
「あ、ばあちゃん?あたしあたしー。ちょ今からそっち行くわー。」
ケータイで電話する女の子。
「は?オオカミに気を付けて?なに言っちゃってんのー、オオカミなんて見たことないんですけどーっていうか今どきいなくね?」
言わずと知れた、赤い頭巾をかぶった女の子。
「あ?森?・・・そっか!ばあちゃんち森の奥にある的な感じか!うわーマジでありえないんですけどー。やっぱ行くのやめっかな・・・」
ただ、普通と違うのは…
「わーってるって。行くってば!はいはい気ぃつけるからぁ。・・・ん、じゃね~。」
つまり、彼女がギャルってこと。
「はぁ。つーか頭巾って意味分かんないんですけど。戦争のときかぶってたやつ?」
「あー、まじだりー。」
日の光が燦々と降り注ぐ午後2時ごろの森の中。
「あっ、日焼け止めぬンの忘れたし!さいあくぅーやけるぅー。」
赤ずきんちゃんはおばあさんの家に行くべく、ダラダラと歩いていた。
「つーかマジで森の中?コンクリじゃないとかやばーい。」
そんな赤ずきんちゃんを木の後ろからうかがう黒い影。
「おぉ、うまそうな女の子だ。」
言わずと知れた、オオカミさん。
「よぅし、おばあさんの家に先回りして喰ってやろう。」
そんなこととも知らない赤ずきんちゃん。
「なにこれ草ちょーヤバいんだけどー。」
森が歩きにくいことは確かだけれど。
コン、コン
「ばぁちゃーん、来たよー。」
扉をたたく赤ずきんちゃん。
「はぁい、どうぞ。お入り。」
しわがれた低い声。
ガチャ
中に入った赤ずきんちゃん。
「よくきたねぇ、赤ずきんちゃん。」
やっぱり低くしわがれたおばあさんの声。
「つーかばあちゃん声変じゃね?プラズマク○スター置けば?」
「そうそう、乾燥して・・・って何でやねん!」
「は?」
「あ。・・・ぅぉっほん、ごほんごほん。そうだねぇ、少しのどが・・・。」
慌ててごまかすおばあさん。
いえつまり、言わずと知れたおばあさんに扮したオオカミさんなんですが。
「ふーん、やっぱり。あ!そういや頼まれてたもん持って来たよ。なんかよくわからんけど飲むと元気でんじゃないの?翼を授かれるらしいって欲しがってたじゃん?」
そういって赤ずきんちゃん。がコンビニ袋から取り出した赤と青の缶。
「え?・・・あぁ!そう、そうだったね、頼んだもの。わざわざありがとうねぇ。あとで飲もうかねぇ。」
頼んだのはおばあさんなので、もちろん心当たりのないオオカミさん。
「そ?まぁいーけど。」
「赤ずきんちゃんも来てくれたことだし、そろそろご飯の用意をしてこようかねぇ。」
そう言って立ち上がるオオカミさん。
もちろん、本当はオオカミさんが赤ずきんちゃんを食べるための準備なのですが。
「じゃあ、ちゃんと家の中にいるんだよ。」
「ん。いってらー。」
そしてオオカミさんは一番奥の台所に入って行きました。
「んじゃ、夜デートだし、がっつりメイクしよー。」
ひとり残された赤ずきんちゃんは、お化粧道具を広げ始めたのでした。
そして20分後。
ガチャ
「ただいま~。」
再び玄関扉が開き、入ってきたのはおばあさんでした。
「ん?ばあちゃんキッチン行ってたのになんでそっから入ってくんの?」
もっともな赤ずきんちゃんの質問。
「あらあら、もう着いてたのかい、赤ずきんちゃん。いやだねぇ、私は今帰って来たんだから、台所に行ったはずないじゃぁないの。」
オオカミさんが自分になりすまして台所にいるなんて思いもしないおばあさん。
「はぁ・・・?・・・・・まぁ、どーでもいいけどー。」
最後の仕上げのつけまつげをつけるのに真剣で、考えるのを放棄する赤ずきんちゃん。
鏡とにらめっこ。
「まぁ、赤ずきんちゃん、顔が変わった気がするねぇ。どうしてそんなに目が大きいんだい?」
赤ずきんちゃんの顔を見て、びっくりした様子のおばあさん。
「そりゃ、アイラインとつけまにマスカラしてるからでしょ。」
ばさばさと鳴りそうなほどボリューム満点のまつげ。つけまつげはもちろん2枚重ね。
「じゃあ、どうしてそんなに頬が桃色なんだい?」
「そりゃ、チークやってるからじゃん?」
ファンデーションで白く滑らかな肌に、まぁるくはたかれたピンクのチーク。
「じゃあ・・・どういてそんなに唇が赤いんだい?」
「そりゃ口紅が・・・って、そんな赤い!?まじでかー、やっぱし塗りすぎたか・・・?うーん・・・塗り直そ。」
コットンで口元をぬぐい、口紅を持ち直す赤ずきんちゃん。
まさに塗ろうとしていた瞬間…――――――
「おまたせ、遅くなってごめんねぇ、赤ずきんちゃ・・・ってうわぁーーー!!本物のばあさん!!」
ぐにゅっ
「うえっ!?」
台所から戻ってきておばあさんを見たとたん大声を出したオオカミさん。
そしてその声にびっくりして手元が狂い、口紅が頬までのびてしまった赤ずきんちゃん。
「ちょっ!!いきなり大声出すとかマジ最悪!!ミスったじゃん!!」
怒った赤ずきんちゃん。
その声に赤ずきんちゃんの方を向いたオオカミさん。
「ぎゃぁーーーーーーーーーーーー!!!口裂けヤマンバーーーーーーーーーーーーーー!?!?」
ばたーん!
赤ずきんちゃんを見たとたん、大きな悲鳴をあげてすごい勢いで扉から逃げていくオオカミさん。
「喰ーーーわーーーれーーーるーーーうーーーぅーーぅー・・・・」
徐々に遠ざかって聞こえなくなっていく叫び声。
残された赤ずきんちゃんとおばあさんは、顔を見合わせました。
「何だったんだろ、あいつ?」
「まぁひどい顔。」
あ、そうそう。
コン、コン
ガチャ
「もしもし、おばあさん、猟師の者ですが最近このあたりでオオカミが・・・・っぎゃああぁああぁーーー!!!」
扉を開けて赤ずきんちゃんを見た猟師のおじさんも、ものすごい悲鳴を上げながら走り去って行きましたとさ。
「はぁ、あいつらキッモ。マジ失礼なんですけどー。」
もし赤ずきんちゃんがギャルだったら。こうなる・・・かも?
評価
ポイントを選んで「評価する」ボタンを押してください。
ついったーで読了宣言!
― お薦めレビューを書く ―
※は必須項目です。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。