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キョン子ちゃん45
 喫茶店に腰を落ち着ける。いつもより奥の席で、壁際の俺の席からは右斜め前方にふだんの席が見える。俺の正面には森さんが座り、俺の隣りには森さんの知人が座った。時計は9時少し過ぎを指している。店員が注文をとりにやってきたが、俺は上の空で、森さんの「じゃあ、それでいいですね。」という言葉に生返事を返すことができただけだった。バレないとは思うがハルヒのことだ、一瞬で見破られて詰問されたらどうしたらいいんだ? ・・・来た。ハルヒたちだ。俺はとっさに競馬新聞を読んでいるふりをした。で、新聞の陰から様子をうかがっていた。ハルヒ・・・橘・・・佐々木・・・キョン子・・・キョコ・・・藤原・・・九曜・・・長門・・・古泉。朝比奈さんがいない。欠席かな? 一団はぞろぞろとこっちへ向かってくる。ハルヒは若干緊張ぎみにも見え、一度もこちらを見なかった。橘も緊張しているようだった。しきりにあたりを見回している。俺の方にも幾度か視線を向けたが、俺にはまったく気が付かない様子だった。佐々木はいつも通りに見えたが、僅かに困惑しているふうである。キョン子とキョコの二人といえばやはりいささか緊張ぎみで、ここが正念場と心の中で踏ん張っているようだった。態度の悪い未来人は相変わらずふてくされているようで、残りの面々は概ね通常運転のようだ。と、この集団にちょっとしたハプニングが起こった。不機嫌そうにあたりを見回していた藤原がこちらに視線を向けたとたんギョッとした表情を浮かべた。俺に気づいたのかと思ったがそうではなかった。奴の視線は俺の隣の人物に向けられている。次の瞬間、当の知人女性氏が藤原にじろりと鋭い一瞥を飛ばした。藤原は明らかにひどく取り乱し、「急用を思い出した!」とかなり大きな声で言い、後ろに続いていた3人をかき分けるというか、ほとんど突き飛ばすようにして、大慌てで店から飛び出して行った。橘があわてて後を追う。取り残されて唖然とした一団の中で、キョン子とキョコの2人が素早く動いた。あらかじめ打ち合わせていたとしか思えない。2人は分担して、皆を、おそらくは計画に従って、席につけた。ハルヒはいつも通りの場所、佐々木はその正面、ハルヒの隣りがキョコ、キョコの対面、つまり佐々木の隣りがキョン子。通路の反対側には俺に背を向けて壁際に長門、長門の隣りに古泉、長門の対面に九曜。皆が腰を落ち着けたところで、橘がひとりで戻ってきた。逃げられたようだ。無念そうである。そして、帰ってきたところで、またしても困惑のていだった。唯一空いているのは古泉の対面だけである。橘は落ち着かない様子で座った。実に居心地が悪そうであった。

 それにしてもな、藤原よ。九曜はまあギリギリ仕方ないとしてもいい。古泉はどうでもいい。だが長門を突き飛ばしたことは決して許されんぞ! お前にたいする詰問の種がひとつ増えたわけだ!


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