キョン子ちゃん46
俺がひとり憤慨していると、注文が供されてきた。モーニングだった。朝食は済ませてきたんだがな、などと思いながら手をつけようとしていると、突然、
「ええっ?!」
と、大きな声が店中に響き渡った。橘だった。椅子をはじいて呆然と立ち尽くしている。後ろ姿の古泉が軽く肩をすくめて見せている。なんとなくわかる。橘は俺の欠席を今はじめて知ったのだ。以前会ったときもずいぶん俺をあてこんでいたようだから、さしずめ「決定的な計算違い」というところか。橘は困惑しきった表情であたりを見回し、いっそ帰ってしまいたいような様子だった。しかし、彼女のいわば「ご本尊」である佐々木は、わが姉妹がガッチリキープしてしまっている。橘としては、佐々木を単独で残しておくことなど、到底できない相談であることは明らかだった。結局彼女は店中の注目を集めてしまっていることにも気が付いたようで、決まり悪そうに再び座り込んだ。佐々木が橘に声をかけた。
「橘さん、大丈夫? 気分が悪いの? 先に帰っていていいよ?」
「いいえ、なんでもないんです。ただちょっと、その、うん、いいえ、そう、その・・・平気です。大丈夫です。そう・・・大丈夫、です。」
橘はあまり大丈夫でなさそうな様子で、無理に作っているとはっきりわかる笑顔で答え、そのままうずくまるように下を向いてしまった。
「無理しないようにね。」
佐々木の言葉も聞こえていない様子だった。ハルヒのいる窓際のテーブルでは話し合いが始まった。
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