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キョン子ちゃん47
 話し合いといっても、そもそもの目的はこの2人を融和すること、ぶっちゃけた話友達にしてしまうこと、ということになるんだろうか。最初話の主導権はキョコが握っているようだった。やがてハルヒと佐々木は直接話しはじめ、普通の会話から打ち解けたおしゃべりへ、熱心な議論へと進んでいった。俺は話し合いが始まったあたりからあまり状況を注視していなかったが、2人が仲良くなってゆくのは手に取るようにわかった。窓際のテーブルはおりから差し込む日光のように、明るく楽しげだった。反対に壁際のテーブルはいっそ無残とでもいいたいような状態だった。2人が打ち解けてゆくにつれ、橘は打ちひしがれてどんどん暗くなってゆき、お通夜のような暗澹とした空気が立ちこめていた。石像のような九曜、不動の長門、スマイル大安売り野郎に囲まれ、橘はいまや孤立無援のていだった。唯一のこる味方は九曜ということになるのだろうが、九曜はすでに長門と協定していて、いわばこちらの味方、少なくとも中立とみることができる。もっとも、最初からあまり橘の意向に関心がありそうには見えなかったが。やがてハルヒと佐々木は立ち上がり、キョコとキョン子を伴って元気よく店を出て行った。去り際に佐々木は、

 「橘さん、場所を変えてもう少し話ししたいから、これで。」

 と言い残し、もう橘にはあまり関心なさげな様子で、振り向きもせず去っていった。ハルヒは、

 「今日はこれにて解散! 古泉くん、あとはよろしく!」

 と言って去った。キョコが古泉に残りの会計を託し、断る古泉に幾らかを押し付けて出て行った。4人がいなくなると長門も九曜もほぼ同時に立ち上がり、驚くほど静かに、どこか仲良さげにも見える雰囲気で、立ち去っていった。あとには古泉と橘だけが残った。古泉が何事か話しかけたようだが、どうやら返答は得られなかったらしい。古泉は肩をすくめ、会計を済ませて帰ってしまった。不意に森さんが言った。

 「私たちも行きましょう。」

 立ち去り際、俺はちらりと橘を見やった。橘は体をかたくして、じっと座ったままだった。もう昼近くにもなろうというのに、橘の前には手付かずのモーニングがそのまま置かれていた。冷めて固くなった目玉焼きが、寂しげに乾いて、皿に貼りついていた。



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