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キョン子ちゃん51
  ちなみに、その手紙というのは次のようなものだったそうである。

 『拝啓 先日は充分なおもてなしもできず、大変失礼いたしました。お財布をお忘れでしたので、謹んでお返しいたします。以後は私共も突然のご訪問に於いてもご満足いただけるおもてなしができますよう重々精進してまいりますので、お気軽にお立ち寄り下さいませ。お待ちしております。 敬具』

 ・・・なるほど、これはコワい。侵入者の連中は侵入直後の夜11時ごろから朝の5時くらいまで、迷路のようなこの建物の中を上は22階から下は地下5階まで、散々に追い回されたそうである。一時の休みもなく、死ぬほど走り回らされて・・・それが『充分でない』となると・・・。うわわわ。でも、そんなに追い回したら、脱落者も出るんじゃないですか?

 「そうですね、4人脱落しました。」

 その人たちは?

 「別に? そのまま放免です。一晩中逃げ回った人たちと同じです。ただ、結果としてその分楽をしてますから、後の仲間割れの遠因を作ったかもしれませんね。」

 ・・・追い回す方も大変でしょうね。

 「それほどでも。時折多少休ませるようにはしてましたから。ただ、緊張が切れないようには注意していました。だから、むしろ精神的な面で疲れきったことでしょうね。」

 会話はそこでしばらく途切れ、しばらく無言の時間があった。それはまるで、何かの知らせを待っているかのようにも思われた。果たして知らせはやってきた。森さんがぽつりと言った。

 「終わりました。」

 森さんは黙って携帯の画面を俺の方に向けた。そこにはメールが表示されていた。

 『件名:最終指示

 諸般の事情により組織の活動はその最終目的を喪失したものと判断されるため当面全活動を凍結し一時解散とします。全作戦、全工程は中断打ち切りとする。組織における任務役職のすべてはこれをもって解消とします。組織関係の連絡先、メール、履歴のすべてを直ちに消去して下さい。文書類は可能ならば焼却、最低限裁断して破棄して下さい。資金については返却の必要なし。なるべく早期にすべての処理を完了させること。このメールそのものも忘れず削除されたい。今日にいたるまでのご協力に感謝します。これで全面撤収とする。以降の連絡は無用。指導部』



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