キョン子ちゃん58
とりあえず、謎の荷物をどうにかせねば。俺たちは鞄を苦労して引きずり、どうにか長門のマンションまで運んできた。わけのわからない預かり物は、気は進まないが、長門に託すほかない。万一中身が爆弾でも長門なら大丈夫だからな。しかし念の為、俺はノゾミさんに尋ねた。まさかこれは爆弾じゃないでしょうね。ノゾミさんは小型の拡大鏡のような器具を取り出し、目に当ててしばらくじっと鞄を眺め、
「簡易検査器で見た限りでは、少なくとも時限装置や信管の兆候はありません。ただ、金属の占める比率がかなり大きいですね。」
と言った。そのままノゾミさんは長門の家の玄関までは手伝ってくれ、
「都合上私どもは長門さんに対面するわけにはいきませんので、申し訳ないのですが、ここまでで失礼させていただきます。」
と言い残し、長門が出てくる前に姿を消した。俺は長門に、この鞄の中身は何か、と質問した。
「硬貨と紙幣、合計で総額三百四十七万三百三十一円。内訳は一円硬貨一千七百二十六枚、五円硬貨・・・、」
いや、もういい。ありがとう長門。・・・しかし、現金だと? しかも大金だ。何の金だ? 出所はどこだ? 気味の悪い話だ。いよいよ貰ってしまうわけにはいかなくなった。長門よ、悪いがしばらくの間預かっておいてくれていいか?
「了解した。」
増やしといてくれてもいいんだぞ、と軽口をたたきかけて、俺はすんでのところで思いとどまった。長門にそんなことを言おうものなら、何日もしないうちに、こいつの家は金で埋まってしまうことだろう。しかし道理で重いわけだ。長門によれば鞄の中身は大部分硬貨で、札は総計で三百六十枚あまりしかないとのことだった。しかし橘はなんだってこんな妙な荷物を?
「『組織』の運営資金の一部ではないかと思われる。」
そういえば資金護送命令がどうとか言っていたな。命令実行中に『組織』が崩壊してしまったわけか。・・・じゃあどうしようもないな。『資金については返却の必要なし』だそうだからな。
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