キョン子ちゃん62
登校すると早速ハルヒに見咎められた。
「なによその頭。斑じゃないの。」
なんて目のいい奴だ。キョン子が白髪染めで殆ど目立たないように直してくれたんだが。と、その当のキョン子が俺に変わって弁明する。
「ハルちゃんごめん! 昨日なんだけどね、キョンくん風邪でお休みだったでしょ? 朝には結構治ってたみたいだったのね。あたし気紛れをおこしてね、ちょっとね、キョンくんの頭を脱色してみたのね。イメチェン狙いで。そしたらそれが全然似合わないじゃないの。あたし慌てちゃって、夜家に帰ってから急いで染め直したんだけどむらになっちゃって・・・ほんとゴメン、ハルちゃん。」
大筋嘘は言ってないな。少なくとも時間経過的にはな。間の過程をごっそり差し引きしてるが。ハルヒ答えて曰わく、
「脱色? キョンが?」
そして俺を一瞥、
「本当に全然似合いそうにないわね。バカそうなのと間抜けそうなのが割り増しに見えるだけだからやめたほうがいいわ。」
などと失敬な感想を述べた。・・・否定はしないが。
「キョン子ちゃん、別にあたしに謝らなくてもいいのよ。むしろ謝らなきゃいけないのはキョンよ。」
おい待てよ。なんで俺が謝るんだ。どういう趣旨で。誰にだ。
「キョン子ちゃんによ! なに、あんたは可愛い妹に自分のイメチェンの心配までさせておいて、何ら疚しい点がないと言い張る気なの? まったく弛んでるわ! 気概に欠けるとはまさにこのことね! そんな体たらくじゃ全然駄目よ。自分を変えていく努力は自分自身でしなきゃ!」
・・・俺は特に自己の変革を求めてはいないんだが。現状の自分が結構気に入ってるしな。
「ハルちゃん違うの。ほんとにあたしの気紛れ一つでのことなの。キョンくんを責めないであげて。」
「キョン子ちゃんはぜんぜん悪くないわ。ここで責められるべきはまさにキョンの現状への怠惰な安住ぶりなのよ。いい、キョン。世の中は日に日に変わり続けているのよ。現状をそれでよしとして安心しきっていると、そのうちに世の中に追い越されてしっぺ返しをうけることになるの。要は心構えよ。変化することへの柔軟さなのよ。わかる?」
それと頭の脱色に失敗することとの関係がわからん。ハルヒは大袈裟に溜め息をつくと肩をわざとらしくすくめて見せ、
「だいいち! 上席団員たるキョン子ちゃんにそんな無用の心労をかけるのは一介の平団員としてどうなの、って言いたいわけよあたしは!」
そういやそうだったな。すっかり忘れてたよ。古泉の副団長職とはどっちが上位なのかな。
「副団長は副団長よ。上席団員よりは上位だわ。」
上席団員のほうが副団長よりもよほど重用されているような気がするがそれは俺の気のせいなんだろうかな。
「キョン、あんたもたいがい細かいことにこだわるやつね。しょうがないじゃないの。キョン子ちゃんは古泉君よりいつも近くにいるし、頼みごともし易いんだもん。」
なにか言い返そうとした瞬間本鈴が鳴り、俺は学級委員の朝の職務につくことを余儀無くされた。またキョン子に教卓まで引きずられてはかなわんからな。
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