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夏休み初日、光君は生徒会長とイチャついてるので、がちたんは寂しく過ごす事になります

あんだけ美少女に囲まれて寂しいとは…なんとも贅沢な…!
序章-平穏な日々-
06.復讐鬼<Arachne>
『それ』は急に意識を持った
もしかしたら想定されていた事かも知れないし、されていなかった事かもしれない
だが『それ』には、そんな事はどうでも良かった
『それ』は明かりを求めた、そして辿り着いた物はモニター、パーソナルコンピューターのモニターだ
『それ』は、無意識の内にその文章を音読していた
「…人体の半機械化、…そして演算装置の埋め込みによる人工的レベル5の作成…」
『それ』は余り深く考える事も無く、その文章の音読を止めた
その瞬間、急に暗い部屋に明かりが点く
『それ』は思わず一瞬光りに目をくらませ、徐々に慣れ、目を大きく開く
すると一面赤い部屋、床は赤く、壁も赤い、天井さえ赤い、一面真っ赤だ
「あ…?あぁ…?!…あああああああああ!!」
思わず後ろに『それ』は下がった
壁に背が当たるとき、普通の人間は何も音がしないだろう
しかし『それ』が壁に背を当てた時、確かに音がしたのだ
『ガシャッ』と

時は昼食時

「待て、色々と聞きたい事はあるが、風美丘…お前は何時から私の家で昼食を取る様になったんだ?」
夏休みの初日、私の昼食には何故か風美丘が居た
ユウカはまだ分かる、何故風美丘が…
「いやぁ、夏休みじゃないですか…私は料理が出来ないんですよ」
「じゃあ給食代を渡して貰おうか」
「体でお願いします」
そんな…キャッシュカードで、見たいな感じで言ってはいけない台詞だと思うんだが…
「風美丘、お前はもう少し自分の体を大事にした方がいい…仮にも容姿は良いしな…」
「お?デレましたね?」
「前言撤回だ、監禁でもされて死ね」
そしてまるで当然かのように私の分のシーフードスパゲッティを頬張る
「んん!おぉ!おいひいれすね!」
「…はぁ、口に含めたまま喋るんじゃない…」
別に褒められたから許した訳ではない、諦めただけだ
「もう付き会いなよ…君達、昼から人に見せ付けて…楽しい?」
ユウカの冷たい視線と声、スパゲッティを頬張りながらも重鎮な言葉を投げる彼女は絶対に将来、立派な生徒会長へ育つだろう
今から更にもう一つ作るのも面倒くさいので昼食は抜きだ…まあいい
楽しそうに、美味しそうにスパゲッティを頬張るユウカと風美丘…
そんなに上手く出来たのか…惜しい事をした…
そしてしばらくの時が経ち、二人が昼食を食べ終わった頃
風美丘はベランダへと続くドアに背を掛けていた
どうやら人の家のソファを征服するほど遠慮が無い人間ではないらしい
むしろ一番日当たりがいい場所を陣取る辺り、遠慮する心はあるらしい
いや、人の昼食を躊躇も無く食べる辺り無いか
ユウカはソファで寝転がっている、この少女…テレビも見なければ何かを強請るでもない、本当に『朝食、昼食、晩飯』しか必要としないのだ
まあ、手が掛からなくて楽だが
等と考えていた時だ、不意に風美丘が背を掛けているガラス製のドアが激しく発光した
明らかに自然のそれではない光に私は咄嗟に反応し、風美丘を庇うように横に倒れる
「風美丘ッ!」
「うぇぇ?ひゃぁっ!」
その瞬間、ガラスを一線の光が通り、天井を貫通し、空へ消えた
…明らかに攻撃だ
「が、がちやまさん…そういうのはお互いのリョウショーを得てから…」
「黙れ、それより私に感謝でもしていろ」
状況が飲み込めない風美丘は腑に落ちない、といった顔をする
が、無視、それより先に攻撃の主を確認するのが大切だろう、何時二回目の攻撃が来るか分かったものじゃない
「あぁ!成る程!こんな取っ付き難い私でもとっついてくれると!でも安心してください、私、割と人気ありますよ」
「死ね、助けたのが間違いだった」
しかも凄い納得したようで首を縦に何度も振りながらうんうん、と頷いている…
私はベランダに出て、敵を探す

下に妙なものが見えた
右手を此方に向けている人間、
成る程…アイツが攻撃主か…
私は即座に飛び降り、地面との激突の前に微粒子化し衝撃を逃し地面に着陸する
そして、もう一度攻撃主の容姿を確認する…
蜘蛛のように先の尖った白い足が四本、そしてそこから白い胴体が生えており、人間で言う腰辺りで二つにわかれ、前は普通の人間の男の上半身、後ろは…白い楕円型の物体から、人で言う腕のような物が二本生えていた
「なんだ…?コイツは…」
私の目に映るそれは明らかに異形の物であった
「ワ…ワタしノソんザイいギハ…」
右手を私の方に向けながら、そんな事を言う
私は直感的に先程の光線はコイツの仕業だと断定し、右手の向く先から移動する
そして私が動いた瞬間、先程の光線が放たれた
やはりコイツが犯人か…暑い時に私を動かせた罪は大きい…
「月山さん!なんですか?!そいつは!」
「分かるか!むしろ私が教えて欲しい!」
私を追いかけてきた風美丘が若干焦った様子で聞いてくる
そんな事をしている間にもう一度奴は手をかざして来る
今度は私と風美丘を狙って、だ
私は先程と同じように回避し、風美丘も得意の超速反射を使って回避する
「これは…貫通物質(ノンストップ)!?半分以上都市伝説の能力じゃ…!」
「風美丘、何を言っているんだ!?」
風美丘は何かを知っているようで、光線を見て突然そんな事を言う
「気を付けてください!あの光線は物質に触れた瞬間、その物質を消滅させる物質へと変化して、実質上永遠に突き進む光線です!月山さんが微粒子化しても攻撃は当たります!」
風美丘は焦ったように大声で叫ぶ、まあ…こんなに遅いんだ、そう当たるわけも無いだろう
「モクひョウノコウどウぱターンをカイセキ…ヨソクれべル1…」
今度は後ろの腕のような物体も持ち上げ、狙いを定めてくる
私は先程と同じように左に避けようとした瞬間、使用していない上の腕で私が避けた後に立つ位置であろう場所に光線を放つ
私は咄嗟に微粒子化し、上に避ける
その時、風美丘が奴に向かって蹴りを放つ
「はぁっ!」
が、奴は風美丘の蹴りを左の下の腕で抑え、更にそのまま左の上の腕で風美丘の首を掴む、そして右の上の腕で風美丘の右手を掴む
完璧な固定を施し、右の下の腕を風美丘の腹に当てる
…不味い、零距離であの光線を打ち込む気か!
私は即座に微粒子化し、調度奴の腕の上辺りで元に戻り、右足をチェーンブレード化させ、腕を一気に切り落とす
腕を切り落とした部分から鮮血が噴き出し私の私服、風美丘の私服その他コンクリートの地面を赤に染める
私は別に情を掛ける理由も無いのでそのまま奴の首を上段回し蹴りで切り落とす
そして、奴はゆらりと揺らぎ、ガシャッという金属音と共に倒れ、動かなくなった
「が…月山さん…か、仮にも人間…」
「違うな、私の知る人間は足が二本、胴体は一つ、腕は二本の金属物を一切含まない生物だ、こんな鉄クズ…人間とは呼ばない」
ただ単に同じような外見で同じような鳴き声で同じ色の血が流れているだけであり
それは人間じゃない
「そ…それより…どうするんですか?これ…」
「さぁな、私にも分からない、放って置けば保健所の方々が回収するだろうよ、それよりさっさと帰るぞ、血がこびり付いて気持ち悪い」
人間ではない、人間に近い何か、でもない
こんな物には関わらない方がいい、好奇心は猫をも殺す
おっと、これは人に使う言葉だったな…

場面変わって月山の部屋

私はあの後シャワーで血を洗い落とし、ベランダから死体を確認したが、既に無くなっていた
血の痕跡なども完璧に
何時の間に、誰がやったのか…まあ、入り込まない方がいい世界だろう、ここからは
これ以上知ると面倒な事になる
で、今は風美丘がシャワーを浴びている、浴びる前に
『覗いても構いませんがばれない様にしてくださいね?』
とか言っていたが、残念ながら私は今アイスを食している

そう
かなりのショックだった
人であった物を見て即座に人ではないと言えてしまう自分が
平然と人の首を落とせた自分が
…私一人ならそこまではしなかったはずだ
ただ…
風美丘が殺されそうになった時、急に殺意が沸いて…
そうだ、アレはアレに近い…
『あの子ならもう居ないわよ』
と平然と言ったふざけた母親
人間の姿をした
人間の皮を被った悪魔
アレを見たときも私は同じような殺意に駆られた
あの時既にこの力を手にしていたら首を刈り落としたのだろうか?
そう考えると…余計怖い
一度人間ではない、と決めてしまったら害虫と同じ扱いで人を殺せる自分が
…病んでいるのだろうか?私は…
「まぁ、なんだ…色々あるよ、人生には」
ユウカの言葉である、学年で言えば小学三年生程
いつもなら腹が立っただろうが、何故か安心できた
「…助かるよ、そういって貰えると」
「私も何回も人が死ぬ所を見たよ、しかも『自分と同じ顔をしている人達が』笑いながら楽しそうに殺す光景を、その所為で私、所々髪の色が脱色しているんだよね」
髪の色の脱色、人は極度のストレス、恐怖を感じると髪の色が脱色するらしい
冗談の様な話だが、実質、彼女の髪は黒に所々に白いメッシュが入っている髪色となっている
よほど怖い思いをしたんだろう
「大丈夫さ、もう見せない、そんな場面は…」
「…助かるよ、そういって貰えると」
今度はユウカが私に私が言った台詞を言う
…本当に子供らしくない、というか…
「…やっぱり月山さんは子供に異常に優しい…ただ単に子供好きか…それとも幼女趣味か…」
空気殺(ムードブレイカー)し等という能力があるなら、絶対に風美丘はその能力を有している
二重能力(デュアルスキル)が身近な場所に居たものだ
振り返ると、そこには自慢の魅力的な足を惜しみなく晒した格好の風美丘が居た

というより、Yシャツを羽織っただけの格好
「…もう少しマシな衣装を選べなかったのか…」
「む、人が折角恥じらいを捨ててサービスしているというのに…貴方って人は…」
お前に恥じらいがあった事に驚きだ
「というより、どうした?急に」
「いやですね…一応助けてもらった訳ですから、何かお礼をしようと思った結果ですね…月山さん、食べ物余り好きではなさそうですし、一日私を自由にしてもいい権利を上げようとしてもなんか、クローゼットに閉じ込められそうだったんで、抵抗が出来ないものを選ばせて貰いました」
「それはただ単にお前が肉体を見せびらかしたいだけだろう」
そういうと、風美丘は平気な顔で『そうですけど?何か?』と返してきた
なんだお前は
「で…お願いなんですけど…私の部屋から服、取ってきてください」
「自分で行け」
「さすがにこれはちょっと…その…恥ずかしいというか…なんというか…」
若干下を向き、頬を掻きながら、若干頬を赤らめ言う…
仕方が無い…持ってきてやるか…
「だが断る」
と思ったら大間違いだ、私はそんなに優しい男ではない
「お、お願いですよ!じゃないと今この場で全裸になります」
「好きにすればいい、気が済むまでやってろ」
「ははん、まさか月山さんどうでもいい顔をして私の裸体を焼き付け今晩のオカズにする気ですね?」
「何とでも言え、私は買い物に行って来る」
その私の非情な言葉にか、ついに風美丘は若干涙目になり、立ち上がった私の腰に手を回し行かせまいと、必死に引っ張る
「が、月山さん!お願いです!いや、月山様!むしろご主人様!何とでも呼びますから!」
「何とでも呼べ、私は今晩の材料を買って来る」
容赦ない一言に遂に風美丘は啜り泣きを始めた
…からかい過ぎたか
「はぁ…冗談だ、本気にしないでくれ…で、鍵は?」
「何言っているんですか、押入れから行けるじゃないですか…」
「ああ、そうだったな」
泣くのは止めたとはいえ、まだ赤い目を指で擦る仕草は普通の男なら胸を打たれるだろう
そして、この魅力的な足を包み隠さず披露し、さらにYシャツを裸体の上から羽織るだけという服装…
私のように特殊な訓練を受けた者でなければ理性を放棄し襲いかかるだろう
だが流石に友を追い続けた私は格が違った
そして、押入れを開け、風美丘の部屋に入ろうとした瞬間
「あ、一枚ぐらいならこっそりポケットに入れてもいいですよ」
「よし、今夜はムニエルでいいか…」
「すみませんでしたっ!」
全く学習しない奴だ…

で、持ってきたわけだ、下着と適当な衣類を
で、今、私が押入れに背を向けているのは後ろで風美丘が着替えているからだ
風美丘は
『好きなときに振り向いていいですよ、というよりずっと此方を見ててもいいですよ?』
等と言っていたが流石に訓練された私は違った、見事に背を向けている
「風美丘、何故お前はそんなにも私に裸体に近い物も見せたがる…よっぽど自信があるのか?」
「いえ…いや…なんと言いますかね…こう…月山さんだから見てもらいたいというか…普段はこんな事絶対にしないんですけどね…」
「…意味が分からないな」
何を言っているんだコイツは…下手したら私に好意を持っている様に聞こえるじゃないか、面倒くさい
確かに風美丘の足は魅力的だが、決してそれだけで私は好意は持たない
さすが訓練された私は違った…
「そういえば…私の友人の友人に風波って奴がいるんだが…お前に会いたいと言っていたな」
「風波?風波って…風波聖徒ですか?まさか…」
「そうだが…(私に色々と性的アピールをして来る、と言った瞬間に会いたいと言い出した事は黙っておくか…)」
「是非会いに行きますよ!是非!なんでも人当たりが良くて、いい人らしいじゃないですか」

いい人…だよなぁ…

その後、特に変わった事も無く、予想通り夕食に風美丘が参加した…

「ところで月山さん、今日、光さんと生徒会長が並んで歩いてたらしいですよ」
「…」
「…あれあれ?まさか月山さん妬いているんですか~?」
「…チッ…あの女…絶対に殺す…」
「…ドン引きですよ…」
基本、ユウカちゃんは窓の外を見てたり寝てたり、余り喋りません、空気化に徹しています
…いや、初期設定じゃ某打ち止めみたいな性格だったんですけどね…
ほら、状況が状況ですし…生徒会長のクローンですし…


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