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~世界代表トーナメント編~
本戦七日目・試合後
「兄さん、大丈夫?……って、うわ、どうしたの?その髪」
「ん?なんか変か?」

 試合も終わり、俺は観戦室に取りつけられたシャワーを浴びてちょうど上がってきた所に、明美と真由美さんがやってきた。ちなみに城宮君は少しトイレに行っている。

「だって、ねえ?」
「どうして髪の色が白色になってるんです?脱色ですか?」
「脱色とか言わないで!神喰狼(フェンリル)との同調(シンクロ)率を上げると、こういう事になるんですよ」

 俺の髪の色が白銀の色になってた事に驚いてたのか。一応言っておくが普段の俺は黒髪黒目だ。
 まあさすがに、目の色は変わらなかった。しかし同調(シンクロ)なんてしたのは久しぶりだ。さすがにいつもいつもやってる訳じゃない。普段は生身のままだし。

「さて、それじゃあ帰るとしようか」
「お待たせしましたー。って、あれ?お二人ともどうしたんです?」
「あ、城宮君。これから帰ろうか、ってところだよ」
「そうなんですか」

 そして四人で駐車場に向かって歩き始めた。最初は俺が車を動かすから待っていてほしい、と言ったんだがついていくと言って引かなかった。なんでだろ?

「それにしても、改めて乾さんの認識を塗り替えられた気分でしたよ」
「そりゃあ、普通の人にあの芸当はできないでしょうね。何?城宮君はあれぐらいできるようになりたいの?」
「そこまでは言いませんけど。それでも強くなりたい、とは思いますよ。やっぱり」
「……二人ってさ、結構仲いいよな?」
「な、何言ってんのよ。そんな訳無いじゃない。これ位普通だって。ねえ?」
「なにどもってんだよ。余計あやしさ倍増じゃないか。……ここだけの話、城宮君はどう思ってんの?」
「えっ?どういう意味なんですか?」
「天然かよ。まあ、それはそれで面白いから別にいいんだけどさ」

 そして歩いたところで、九条さんに出会った。
 どうも彼は俺に用があるらしかったので、三人には先に駐車場に行って貰った。真由美さんが最後までごねていたが、何とか言いくるめて行ってもらった。

「……それで?どんな御用なんです?まさか文句を言いに来た訳ではないでしょう?」
「相変わらずだな。君は。なに、おめでとうと言いに来たんだよ。
だが君は決勝で負けるだろう。それは見えてるいる事だ。あの程度の試合しかできない者に、私が負けるはずなど無いのだから」
「それじゃあもう用は済んだな?俺は失礼するぞ」
「待ちたまえよ。まったくこれだから乾家の人間は困る。どいつもこいつも話を訊こうとしない愚か者ばかりだ。それに頑固な千葉家の血が混ざれば、こうも偏屈になるのは当たり前か」
「……今、なんて言った?」

 俺の声がここ最近で最も低く冷たい物となった。だが興に乗ったのかその声に気づかず、九条の声は上がっていった。

「なに、簡単な事だ。『魔術の神童』と『千葉の天女』の息子はこうも愚かだという事だ。
どちらの家も愚かだが、君の家は特に、だな。大体――――」
「言いたい事はそれだけか?もしそれだけなら、俺は行かせてもらう」
「ふ、ふん。勝手にしたまえ。ま、せいぜい無様な様を晒さないようにするのだな」

 そう俺に告げると、高らかに笑いながら去っていった。だが、その声は震えを紛らわすかのようだった。それもそうだろう。なんせ俺が強烈な殺気をぶつけているのだから。

「お前だけは絶対に……殺す」

 俺はそうつぶやくと、皆が待っている駐車場に向かって歩き始めた。


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