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2012.04.14

 異例の「失敗」公表、4時間半の“沈黙”の裏で何が…海外宣伝工作が裏目 

カテゴリ北朝鮮出典 産経新聞 4月13日 電子版 
記事の概要
北朝鮮は13日、「衛星」と称する長距離弾道ミサイル発射の「失敗」を認める異例の発表をした。金日成(キム・イルソン)主席生誕100年と金正恩(ジョンウン)第1書記の業績を誇示しようと、多数の海外メディアを招いた宣伝工作が裏目に出た。

結局、内外からの“目”で公表を余儀なくされたが、それまでには4時間半の「空白」も。この沈黙は何を意味するのか。

北朝鮮は「平和的利用」をアピールするため、外国人記者や専門家を招き、ミサイルや管制センター、さらに「衛星」と称する装置まで公開した。しかし華々しいはずの午前7時39分の発射の瞬間は、海外メディアへの通告はなかった。

ラヂオプレス(RP)によると、北朝鮮国営、朝鮮中央テレビは午前9時から放映を始めたが、朝鮮労働党代表者会の再放送映像などを流すだけで「衛星」発射には全く触れなかった。

共同通信が平壌発で報じたところによると、海外の発射失敗報道を受け、午前8時前には、平壌市内のプレスセンターで、外国人記者らが「失敗か」と北朝鮮側担当職員に詰め寄った。

しかし職員は苦い表情を浮かべるだけ。「発射映像を見せる」としていたセンターの大型スクリーンにも何も映し出されなかった。

失敗公表は正午すぎ。中央テレビは午後0時11分に番組を中断、アナウンサーが失敗のニュースを読み上げ、40秒ほどで元の番組に戻った。十分準備した発表でないことを印象付けた。

脱北者の一人は「北朝鮮で生中継はまず行わない。事実を隠す必要があるか判断するためだ」と話す。今回も衛星が軌道に乗らなかった場合の対応の余地を残した可能性がある。外国人記者に向けた記者会見や正式コメントはなかった。

1998年や2006、09年の発射では、失敗したにもかかわらず「成功」と発表してきた。今回は、対外イメージを考慮して急遽(きゅうきょ)、公開に踏み切った可能性もある。

ただ、上空から米国などのレーダー網が墜落を即座に把握。平壌市内には多数の外国人記者がいた。北朝鮮のお家芸といえる「偽装」や「隠蔽(いんぺい)」を許す余地は残されていなかった。
コメント
産経新聞の黒田さん(ソウル駐在特別記者)は本日(14日)の朝刊で、「北のミサイル発射失敗で新体制への祝砲が弔砲になるのでは」と書かれている。

うまい表現だと思った。私も北の「終わりの始まり」でミサイル発射失敗を考えることで、不可解だらけの打ち上げを納得できた。

それにしても1段目と2段目のロケットの切り離しは難しい技術ではない。今回のミサイルの重量が91トンなのは、3段目がノドンミサイルの本体(エンジン)を4本束ねているからで、第1段目は2段目と3段目を支えるだけで結ばれている。

だから3段目の燃焼(噴射)が終われば、3段目と2段目を結んでいるヤグラは少量の爆薬を仕掛けて爆破して切り離す。その切り離す火薬が別なものに変えられていたり、火薬の量が異常に多い以外には、爆発して失敗の原因は考えられない。

だから韓国軍が海から回収したミサイルの部品は、3段目と2段目の切り離しが失敗した原因を調査することが最重要の課題になる。

落下した部品から、北朝鮮のミサイル技術の水準がわかるなどどいうでもいい話しだ。今回の打ち上げ失敗の原因によっては、意図的な謀略工作で失敗したことがわかる。

すでに北朝鮮では、先軍政治で生まれた核やミサイルを放棄してでも、アメリカと関係を正常化させ、緊急支援を受けたいと考えている指導層がいると考えている。

中国がそのグループを支援していることは言うまでもない。

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