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電力見通し  「経営の論理」が目立つ

 関西電力の今年夏の電力需給見通しを、政府が試算した。
 原発がないままで、昨年夏並みの需要があるとしたら7・6%不足する、とした。
 関電ではなく、政府がわざわざ試算したのにはわけがあろう。大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を急がないと、大変なことになりますよ。そう言いたいのだろう。
 ちょっと待ってほしい。まず原発の再稼働で第一に押さえておくべきは、完全な安全性であって、電力不足だからといって不安が残る原発を動かしていいはずがない。この点は忘れてはいけない。
 その上で電力見通しについて考えてみると、すぐに疑問が浮かぶ。どうして昨夏と比べて不足を試算するのか。おまけに記録的な猛暑だった一昨年夏を持ち出し、19・6%も不足するかもしれないと言い募る。
 こうした予測が大げさに聞こえるのは、仕方ない。昨年夏や今年冬にも同じような電力不足が叫ばれたが、予想よりも需要が少なかったからだ。節電努力があったとしても、そもそもが過大な試算ではなかったか。
 昨夏や今冬の電力需給の実際を、詳細なデータを含めて示す必要がある。実は十分に供給力はあるのに、隠されているのでは。そんな疑念も湧いてくる。
 大阪府市統合本部のエネルギー戦略会議が、大飯原発の再稼働に際する8条件の中に電力需給の徹底検証を入れているのは、当を得ている。
 電力会社は思惑抜きで需給データを示すべきだ。赤裸々な現実を踏まえて、どうしたら電力需要を抑えられるか知恵を絞りたいところだ。
 電気使用のピークを乗り切ることが鍵になる。不足時に使用量を減らす契約の大口需要家を拡大したり、家庭にもピーク時使用を控えれば割り引くなどの策があっていい。
 国内の電力会社が電力を融通し合える仕組みを、早急につくってもらいたい。地域独占の枠を取り払う時期に来ている。
 関電は今月中にも、最新の今夏の需給見通しを公表する方針だ。その際には節電要請だけでなく、需要抑制策や電力供給先の開拓など新たな策を組み込んだ上で、試算してほしい。原発再稼働を導くためでは、もちろんいけない。
 ところが、電力見通しでいつも見え隠れするのは、「経営の論理」だ。関電の火力発電の燃料費は、原発停止のままだと、年間7千億円〜8千億円増加する。そんな試算も出している。
 安全でクリーンなエネルギーを求める国民の変化に、政府や電力会社は気づく必要があるだろう。

[京都新聞 2012年04月11日掲載]

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