社説:原発安全基準 つじつま合わせはだめ
毎日新聞 2012年04月05日 02時32分
関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を協議する関係閣僚会議の初会合で、野田佳彦首相は再稼働の是非を判断するための「暫定安全基準」整備を指示した。経済産業省原子力安全・保安院が週内に基準をとりまとめ、閣僚会議が妥当性を議論する。暫定基準は大飯原発が立地する福井県が国に提示を求めていたもので、地元への一定の配慮を示した形だが、原発稼働ゼロを回避するためのつじつま合わせに終われば、国民の一層の不信を招くことになる。
提示までの時間が限られる中、暫定基準は、保安院が3月にまとめた30項目の安全規制策がベースとなる可能性が高い。津波で全電源喪失に陥った東京電力福島第1原発事故を踏まえ、所内の電気設備の浸水対策の強化、原子炉や使用済み核燃料プールへの代替注水機能の強化などが盛り込まれている。防潮堤設置や指揮所となる免震施設の整備など時間のかかる対策も含むが、暫定基準でどこまで踏みこむかは不透明だ。
政府は新設する原子力規制庁にこれらの対策の法制化を行わせるが、野党との調整が難航し、規制庁発足のめどは立っていない。原発事故を防げなかった保安院による基準提示で国民の理解が得られるのか。大飯原発が基準に合致しているかを審査する主体も不明確だ。対策自体も事故結果に対応する対症療法が中心で、福島第1原発事故の検証作業が終了していない現状では、根本的な安全対策に漏れが出る恐れもある。