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社説

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大飯原発 再稼働要請は早すぎる(4月14日)

 野田佳彦首相と3閣僚は、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を妥当と判断し、福井県に協力要請することを決めた。

 10日間で数回開いただけの閣僚会合で、与党内の慎重論をも押し切った。

 この間、再稼働の可否を判断する安全基準が即席で作られ、関電から早々と提出された安全対策の実施計画が了承された。

 誰の目にも、再稼働という結論を最初から決めていた筋書きと映るだろう。決定の根拠も過程も不明確な見切り発車と言わざるを得ない。

 これで地元の同意を求めるのは無理がある。

 しかも、急ごしらえの安全基準は、大飯以外の原発の再稼働にも適用される。

 免震棟の建設やフィルター付き排気装置の設置など中長期的な安全対策は、電力会社が実施計画をまとめるだけで可としている。

 肝心な点が電力会社の努力に委ねられた緩い基準で、次々に再稼働を認めていいはずがない。

 枝野幸男経済産業相は会見で、電力不足により「日本産業の屋台骨を揺るがす可能性が高い」と述べ、再稼働の必要性を強調した。

 だが、原発の安全性と電力需給の逼迫(ひっぱく)は、同列に論じるべき問題ではない。

 今夏の電力不足を再稼働の理由に挙げる前に、政府と電力各社は詳細な需給見通しを示す必要がある。

 その上で、節電などの努力を加味してもなお足りないのかどうか、第三者機関も交えて検証するのが筋ではないか。

 福島県の佐藤雄平知事は「(福島第1原発事故の)検証も終わらないうちに再稼働の議論をすることは問題」と政府の姿勢を批判している。

 福井県に隣接する京都府の山田啓二知事は「安心安全を守るために最大限の努力を。時間を惜しんではいけない」と政府に呼びかけた。

 いずれも正論であり、多くの国民も同じ思いだろう。

 再稼働の手続きにかかわってきたのは、もはや規制機関の名に値しない経産省原子力安全・保安院である。原子力規制庁の発足にめどが立たないからといって、これで国民の理解が得られるはずもない。

 時間がかかっても、政府は、福島の事故原因を徹底的に究明し、その教訓を踏まえた安全基準の策定を目指すべきだ。

 原子力行政への信頼なくして再稼働はあり得ない。失われた信頼を回復する努力もせず、安全性を軽視して再稼働を急ぐ政府の態度は、不信と不安を招くだけだ。

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