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第三十話  毛染め ※注意!挿絵が有ります
――休日の朝――
朝の静寂を打ち消すように、慌ただしく二階から夕紀が降りてきた。

「おっはよう!白夜ぁ!!」
「うお?!朝から元気だな?いつもなら、まだ寝ているのに・・・。」
「ふふん♪今日は、楽しみにしてたから、テンション上がりっぱなしよ!」

夕紀の上機嫌な姿に、白夜は苦笑いしながら

「はぁ・・・いつもそれぐらい早起きなら、苦労はしないのだがな・・・。」
「休日と平日じゃぁ、時間の進み具合が違うのよ!気分的に!」
「そ、そうか?」

力説する夕紀の迫力に、少したじろむ白夜だった。

「まぁ・・・朝飯も出来てるから取りあえず座れ。」
「はーい。」

夕紀は椅子に座って、

「いただきま~す。」

と、箸を取った。
雑談混じりでご飯を食べながら、夕紀はふと昨日の事を思い出した。

「そうそう、昨日テレビ局がウチの学校に取材に来たんだぁ。」
「ほぉ・・・何しに来たんだ?」
「謎の美少女の情報収集。私たちが制服だったから、そこから聞きに来たんだと思うよ。」
「ハハハ・・・よっぽど、話題に飢えてるんだな。テレビ局は・・・。」
「だね!もちろん、私たちは嘘付いたけどね!」

白夜はクスクスと笑いながら、

「お主から、ボロが出そうで怖いな・・・。」
「あー!白夜まで千歳と同じ事を言う!!」
「ハハハ!信用されてないな。」
「むぅ・・・。」

夕紀は口を膨らませながら、不機嫌ぽくご飯を口に押し込んでいた。
ご飯も食べ終わり、白夜が食器を片付けていると夕紀が何かを思い出したかのように席を立って、自分の部屋に戻った。
そして、有るモノを持って降りてきた。
「見て見て!白夜!」
「なんだそれ?」
「フフフ・・・白夜変身アイテム!白髪染めムース!!」
「ほぉ・・・それが、お主の言っていたモノか?」
「そうよ!じゃぁ・・・早速、使ってみようか?此処に座って。」

夕紀は食卓の椅子を引っ張り出して、白夜を手招きした。
白夜は招かれるまま椅子に座って、夕紀を見上げた。

「お主は、ソレを使った事があるのか?」

夕紀は首を横に振って、

「白髪ないし、使った事は無いけど・・・説明書読めば大体分かるはずよ!」
「だ、大丈夫なのか?」

夕紀の根拠のない自信に不安を覚えた。

「任せて!じゃぁ・・・泡が服に付かないように、このエプロン付けて。」

夕紀は箱の中に入っていたナイロン製のエプロンを白夜の首に巻き付けて、容器を取り出した。

「あっ!この手袋するのか。」

夕紀はナイロン製の手袋をしてから、容器から出した泡を手に取ると白夜の頭に乗せた。

「うっ・・・なんか、匂うな・・・。」
「そう?白夜にはちょっとキツイのかな?」
「むぅ・・・ちょっとクラクラするぞ・・・。」

白夜は鼻をつまんで、目を閉じて我慢していた。夕紀は丁寧に白夜の髪に泡を馴染ませていた。
しばらくの間、沈黙が続いて夕紀の手が止まった。

「はい!終わり!」
「もういいのか?」

白夜は鼻をつまんだまま、夕紀に問いかけた。

「もうしばらくの間、そのまま付けた状態で我慢してね。」
「まだこの状態なのか?」

ちょっと泣きそうな顔の白夜に、夕紀はクスクスと笑いながら手袋を脱ぎ、

「20分はその状態。」

ソレを聞いた白夜は、深いタメ息をついた。

――20分後・・・
椅子に座って、時計とにらめっこしていた白夜が、急いで立ち上がった。

「夕紀!20分経ったぞ!」
「はいはーい!今行く!」

準備していた夕紀が急いで二階から降りてきた。

「次、どうするのだ?」

急かす白夜に対して、夕紀は微笑みながら

「じゃぁ・・・お風呂場で髪を洗おうか。」

ソレを聞いた白夜は夕紀の手を引いて、急いで風呂場に直行した。

「そんなにイヤだったの?」
「もう、我慢できん!」

夕紀の問いかけに即答で答えて、風呂場に入った。

「待って白夜!」
「な、なんだ?!」

夕紀は、脱衣所まで白夜を連れ戻した。

「服脱がないと!」

そう言って、白夜のワンピースの胸ボタンを外した。

「まて!頭しか洗わないんだから、服を脱ぐこともないだろ?!」

抵抗する白夜に夕紀は真剣な顔で

「服に付いたら大変でしょ?」

と、白夜の肩に手を掛けた。

「そう言って、タダ裸にしたいだけだろ?!」
「うん!」

夕紀はいい笑顔で頷いた。

「本心隠す気無しか?!」
「冗談よ。あっ・・・冗談でもないか?」
「どっちなんだ?」

あきれながらも抵抗してる白夜に、夕紀は徐々にボタンを外しながら、

「本心半分、もう半分は・・・本当に、服に付いたら洗濯が大変だと思うからかな!」
「むぅ・・・。」

白夜の力が一瞬緩んだ瞬間、夕紀はすかさず服を下へ脱がした。

「ハッ!しまった!」
「フフフ・・・揺らいだわね?・・・さってと!頭洗おうか?」

パンツ姿で悔しそうな表情を浮かべる白夜の手を引いて、浴場に入っていった。

「じゃぁ・・・頭洗ってあげるからコレに座って。」
「ぬぅ・・・わかった。」

不服そうだが白夜は、夕紀に言われた通りにその場へ座った。
シャワーを取って、夕紀は白夜の頭を洗い始めた。

「シャワー暑くない?大丈夫?」
「・・・うむ。」
「結構、染まるモノね。」

そう言って、夕紀はシャンプーを取った。

「よ~く洗わないとね。」

白夜は堅く目をつむって耐えていた。
夕紀はシャンプーを洗い流した後、白夜の髪をまとめてから、軽く水をきるとコンディショナーを使い、丹念に馴染ませてから再び洗い流した。

「ハイ!終了!!」

そう言って、夕紀は立ち上がり脱衣所からバスタオルを持ってきて、白夜の頭に被せた。

「お?すまんな。」

白夜は被せてくれたバスタオルで、頭を拭きながら立ち上がった。
拭き終えて、タオルを肩に掛けたとき、夕紀は驚きの声を上げた。

「わぁ!すごぉい!別人みたいだよ。白夜。」
「そうか?」
「うんうん!それに・・・ちょっと、色っぽいよ・・・。」

そう言って夕紀は口を拭った。
それを見た白夜は、言い知れぬ危機感を感じた。

「そ、それより。下着も脱げばよかったな。すまぬが・・・着替えを持ってきてくれないか?」

白夜が夕紀に着替えを頼むと、夕紀は意味ありげな笑みを浮かべた。

「そうねぇ・・・。着替えを持ってきて欲しかったら、上目使いで『お姉ちゃん。お願い。』て言って頼んでくれたら持ってきてあげる。」

ニヤニヤと微笑みながら注文してきた夕紀に、白夜は即答で断った。

「な、何、馬鹿な事言っておる!」
「えぇ?いいの?濡れた下着のままで歩くの?」
「ぬっ?!ぐぐぐ・・・。」

白夜はしばらく考え込むようにうつむき、無言で夕紀に近づきリクエスト通り上目使いで、

「お、お姉ちゃん・・・お願い・・・。」挿絵(By みてみん)

それを聞いた夕紀は、満足そうな表情で、

「やっば!鼻血出そう・・・。」

そう言いながら鼻を押さえた。しかし・・・その直後、白夜は耳まで真っ赤にしてからしゃがみ込み、自己嫌悪にさいなまされていた。

「じゃぁ・・・取ってくるわね。白夜。」
「う、うるさい!早く行け!!」

顔を真っ赤にして睨み付ける白夜をしり目に、夕紀はスキップしながら着替えを取りに行った。



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