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37、30年前のこと4
「私は倒れ込んでいる彼女の前に仁王立ちなって叫んだ、“やめろ!!”とな。そうすると6~7人いた男女は一目散に逃げ去って行った。辺りはもうすっかり真っ暗で誰だかは全く確認できなかったよ」
「それで彼女は?」
「顔は傷だらけで出血があり、あざもかなり酷かった。ただ幸いなことに身体の方はそこまで酷くなくて、私が支えて上げれば立って歩くことはできた。だから家まで送ってあげたよ。その後担任の先生が対処しない以上、相談には私が全部乗ってあげた。それで最後はその子の両親とも相談して、別の私立高校に移るようにしてもらったんだ」
「えっ!? 待ってください。じゃあ、彼女は……」
「そうだ。実は自殺なんていないだ。その先の進路は知らないけれど、きっと彼女は今もどこかで元気に生きているはずだよ」
「そんな。なら、ホラーでも何でもないはずじゃないですか!」
「そう。本当はそうなるはずだったんだ。しかし私は一つ大きなミスを犯した」
「ミスですか?」
「秘密裏に進めてしまったんだ、彼女の転校をね。そのときはかなり酷いいじめがあったし、表立ってするといろいろ妨害があったりして、スムーズにいかなくなるんじゃないかと思ってね。でもそれが大きな間違いだった。実際は彼女が学校に来なくなる同時にどこかで自殺したんじゃないかという話が広まってね、気付いたときには事実を明らかにするタイミングを失い、結局生徒たちの間では彼女は自殺したことになってしまったんだ」
「そうだったん。じゃあ、黒い水との関係は?」
「彼女は元々髪の毛の色にコンプレックスがあった、だけど始めは校則で禁止されていたため毛染めはしてなかった。しかしいじめに耐えかねなくなってきた高校2年生のときから、親にこっそり隠れてトイレで髪を黒く染めるようになった。すると彼女が髪を染めた後のトイレには当然黒い水が溜まる、それが後に自殺の話と一緒に広まって今のようになったんだ」
元々は間違った事実から作られたもの、それが黒い水の怪談話の真相だった。ただそれが未だに語り継がれていて実際に一人が自殺しているとなると当然間違いでは到底済まされない。だからこそ今回はこの悪夢を断ち切れなければならない、私は強くそう感じた。


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