「ね、こっちはどう? いや、こっちの方が良いかしら?」
「別な世界か~やっぱり存在するんだね~」
頻りに話しかける人物が二人。
一人は、アナスタシア・アシュリー・クロードさん。彼女は、私が現在いる天蓋付きのベッドの上で何着ものドレスを広げ、私の体に合わせては、とっかえひっかえしている。
もう一人は、ギルフォード・ハイド・クロードさん。彼は、ベッドサイドのテーブルの上で、世界地図と何冊かの本を広げ、羊皮紙に何かを書き込んでいた。
二人は、私を保護してくれた夫婦だった。
私は森の中を2日間彷徨い、街道で行き倒れていたところをこのクロード夫婦に拾われた。その1日後に目を覚ました私は、状況の確認とお礼、少しの警戒を抱きながらクロード夫婦に身の上を話しことにした。
気付いたら森にいたこと、自分は日本の東京出身なこと、等々。少しテンパっていた為、話が支離滅裂なきがするが、二人がうんうんと頷いてくれているのを見ると、伝わっているようなので大丈夫だと思う。
粗方、私が話終えると、ギルフォードさんは軽い口調で言った――――リサちゃんは恐らく別世界から来たんだね~、と。
……いや、なんとなく思っていた。だって、アナスタシアさんは髪色はピンクで、目が紫。ギルフォードさんは髪は茶色と珍しくはないが、目がシルバーグレーなんだもん。始めはなんてファンキーな人達なんだ……と思おうとしたが、服装は中世ヨーロッパ風だし、部屋の中には家電製品がひとつもない。そして、視界に入れないようにしていたが、羽のついたちっちゃい人が私の膝の上にとっとこ登って来たのが追い打ちをかけた。
ここは、異世界らしく、私は所謂、異世界トリップなるものをしてしまったらしい。二人の髪色も目の色も生まれつきで、この世界では珍しくはないらしい。むしろ髪の色と目の色が黒であり、その上、同色な私の方が珍しいらしい。そして、膝の上にいるちっちゃい人は思った通り、精霊らしい。ああ、ふぁんたじー……。
私の生まれ持った黒髪黒目を話したところでアナスタシアさんの目が輝き、膝の上にいるちっちゃい人を指摘したことでギルフォードさんの目が輝き、冒頭の状況になった。それぞれ自分の興味のある分野に思考が飛んだらしい。
二人の私に向かっての一方通行な会話は、数分後に部屋にやってきた侍女長のマリーさんによって一喝され、敢無く終了。当分のところ、心優しいクロード夫婦にお世話になるということで、マリーさんが話をまとめ、二人を部屋から追い出した。マリーさん強し。
やんわり私も休むように促され、それに従うことにした。
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