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幸福な王子と不幸なメイド 3-1 by.黒い枕
「はなせッ!? 止めろ!? この――はなせええ!!」
城の地下、そこは湿気と埃が充満する薄暗い牢獄だった。
メイドたちに囲まれ、真っ赤な顔で抗議するメイドの『少女』。しかし、四肢を押さえつけられた、無力でしかないその身体は牢屋の一室に放り込まれ、中央へと引きずらていく。
そして――。
「くひゃ、あ……っ!」
ガチン!
絶望を告げる音がメイドの『少女』――こと、ルイジスの首元で響いた。
「お、い……ここは遊び場じゃないんだぞっ!」
『王子である自分に、このような仕打ちをしてただで済むと思うのか!』という憤怒で睨むルイジス。
しかし、今の彼は王子ではなく、メイドのルイズでしかない。
懸命に身体をくねらせる様子は、殊更にメイドたちの嘲笑を深めるばかりであった。
「くっ、そぉ……」
不慣れな女体の感覚も相成って、彼の目尻からは何度目か分からない涙がこぼれた。
(俺はッ!俺は――ッ!!)
拘束されているだけに留まらず、まるで盛りのついた雌犬の――木製の拘束具に身体を嵌め込まれ、臀部を突き上げる――姿勢を強いられて、その様をメイドたちに観察されている。
それは恥辱以外の、何ものでもなかった。
「こんな、こと……して、ただでっ!……ただで済むと思うなよっ!! お前らッ……」
真っ赤に充血した瞳がギラリと輝く。
眉のシワは克明に刻まれ、噛み締められている下唇からは血が滴り落ちていた。
これで童顔でなければ、少しはメイドたちを恫喝できたかもしれない。しかし――。
「あーれー。こわーい、こわーいぃ」
「幾らなんでも口が汚すぎるわ……ほんとうに、なんでこの子お城で働けてるのかしら?」
艶やかな髪を誇り、童話の姫君ような愛らしい顔。
美肌は薄闇の中でも真っ白に輝き、胸元では豊満おっぱいが揺れている。
そんな彼は、メイドたちにとって生意気な――後輩メイドに過ぎないのだ。
故に『育ちの野蛮な娘を教育してやろうっ』と集団リンチという名の教育に、彼女たちは俄然とやる気を出してしまう。
「まったくお前は言葉まで下品なのねっ」
「――ひぃあっ!?や、やめ……んんっ!」
「そう言えば、貴方……確か前に自分がルイジス王子だと虚言を吐いたわよね?」
ルイジスは唐突に顔を真っ青にして、震え上がった。
その理由は天敵であるメイド長フレアが口を開けた――だけではなかった。
「うあっ!あ、っひぃ!し、尻を……尻をたっ、叩くなっ!!」
言葉と同時に、ルイジスの形の良い臀部がピシャリ、ピシャリ、と叩かれていたのだ。
「くっ……ひゃっ!こ、こら!や、やめないかっ!」
「貴女みたいな無能で、淫乱な小娘が王子様?だったら、私は王様かしら。――もっとも、そんなこと口が裂けても言えないけどねぇ」
「ひゃあッ――!やめ、ンンっ……!」
ピシャン、ピシャン――っ!
それは最初の出来事だった。
実力行使に移った彼女たちの責め苦に負け、ルイジスは秘密を漏らしていたのだ。
自分はルイズではなくルイジスだ、と。
魔法実験の影響で女性になってしまったんだ、と。
だが――無論と言うべきかも知れないが――彼女たちは信じなかった。羨ましいほど豊満な体の女性が、元男など聞くにも値しない戯言としたのだ。
ルイジスの姿をしたカリーナが健在だったこともあり、むしろ王子様の名を語るなど『言語道断』と処罰は苛烈さを増していた。
「うくぅっ!……あ、ぅうっ」
(ちくしょう! 調子に乗りやがって!!)
そして、今日に至っていた。フレアの手の平がむちむちの肉房尻を容赦なく叩く。何度も、何度も。
「んあっ!やめっ!くうぅっ、んんひぃっ!……くそっ、くそっ……くそぉぉっ!」
痛みよりも無駄にデカデカとしている臀部を弄られる屈辱が、ルイジスの心を追い詰める。
悪態を付いても恥かしさ、惨めさは止まらず真っ赤な顔で彼は涙を流し続けた。
「豚の鳴き声のように汚らしい言葉使い……もっともあなたのような者には豚の鳴き声がお似合いなのかしら?」
『あはは――』とメイドたちが一斉にあざ笑う。
「……っ」
頬を羞恥に染め上げ、ルイジスは唇を噛み締めた。
その様子をさらに乱暴と、下品と見たフレアは早速お仕置きを開始する。
彼女にとって今までのは単なる通過儀礼に過ぎないようで――お仕置の本番のためか、メイドたちがルイジスのショーツをズリ下ろす。
「うわっ!このっ、ヤメロ!!」
拘束板に固定されている身体は易々と下着を奪われて。むっちィィっ――と色気づいた女の臀部が風に撫でられる。
彼はブルブルと震え、息を詰らせて恥じらった。
「う、あっ!あっ……あんっ」
「時々、俺とか僕とか言い出す始末だし……貴女にはメイドたる自覚の前に女である自覚がないのね。だから、淫乱な雌豚なんだわ――このメス豚がっっ!!」
「ふざ……ふざける――ぐぎぁああ!?」
バシン――!
部屋に打撃音が反響した。
続いて一閃、一音――暗闇の中で、何かがルイジスのお尻を抉る。
痛々しい赤みを帯びた肉を覗かせ、雪のような肌の裂け目からドロリ、と赤い血が溢れ出た。
「ひぎぃぃっ!ひぃ、いい!」
無防備な、赤ん坊のような彼の臀部を傷付けた物の正体は、鞭だった。
フレアは用意していた短めの鞭で、情け容赦なくルイジスの身体を、肌を、そしてお尻を裂いたのだ。パシンっっ――と。
「ひゃ、ン!っ――あ!……ああヒィ!」
<つづく>
城の地下、そこは湿気と埃が充満する薄暗い牢獄だった。
メイドたちに囲まれ、真っ赤な顔で抗議するメイドの『少女』。しかし、四肢を押さえつけられた、無力でしかないその身体は牢屋の一室に放り込まれ、中央へと引きずらていく。
そして――。
「くひゃ、あ……っ!」
ガチン!
絶望を告げる音がメイドの『少女』――こと、ルイジスの首元で響いた。
「お、い……ここは遊び場じゃないんだぞっ!」
『王子である自分に、このような仕打ちをしてただで済むと思うのか!』という憤怒で睨むルイジス。
しかし、今の彼は王子ではなく、メイドのルイズでしかない。
懸命に身体をくねらせる様子は、殊更にメイドたちの嘲笑を深めるばかりであった。
「くっ、そぉ……」
不慣れな女体の感覚も相成って、彼の目尻からは何度目か分からない涙がこぼれた。
(俺はッ!俺は――ッ!!)
拘束されているだけに留まらず、まるで盛りのついた雌犬の――木製の拘束具に身体を嵌め込まれ、臀部を突き上げる――姿勢を強いられて、その様をメイドたちに観察されている。
それは恥辱以外の、何ものでもなかった。
「こんな、こと……して、ただでっ!……ただで済むと思うなよっ!! お前らッ……」
真っ赤に充血した瞳がギラリと輝く。
眉のシワは克明に刻まれ、噛み締められている下唇からは血が滴り落ちていた。
これで童顔でなければ、少しはメイドたちを恫喝できたかもしれない。しかし――。
「あーれー。こわーい、こわーいぃ」
「幾らなんでも口が汚すぎるわ……ほんとうに、なんでこの子お城で働けてるのかしら?」
艶やかな髪を誇り、童話の姫君ような愛らしい顔。
美肌は薄闇の中でも真っ白に輝き、胸元では豊満おっぱいが揺れている。
そんな彼は、メイドたちにとって生意気な――後輩メイドに過ぎないのだ。
故に『育ちの野蛮な娘を教育してやろうっ』と集団リンチという名の教育に、彼女たちは俄然とやる気を出してしまう。
「まったくお前は言葉まで下品なのねっ」
「――ひぃあっ!?や、やめ……んんっ!」
「そう言えば、貴方……確か前に自分がルイジス王子だと虚言を吐いたわよね?」
ルイジスは唐突に顔を真っ青にして、震え上がった。
その理由は天敵であるメイド長フレアが口を開けた――だけではなかった。
「うあっ!あ、っひぃ!し、尻を……尻をたっ、叩くなっ!!」
言葉と同時に、ルイジスの形の良い臀部がピシャリ、ピシャリ、と叩かれていたのだ。
「くっ……ひゃっ!こ、こら!や、やめないかっ!」
「貴女みたいな無能で、淫乱な小娘が王子様?だったら、私は王様かしら。――もっとも、そんなこと口が裂けても言えないけどねぇ」
「ひゃあッ――!やめ、ンンっ……!」
ピシャン、ピシャン――っ!
それは最初の出来事だった。
実力行使に移った彼女たちの責め苦に負け、ルイジスは秘密を漏らしていたのだ。
自分はルイズではなくルイジスだ、と。
魔法実験の影響で女性になってしまったんだ、と。
だが――無論と言うべきかも知れないが――彼女たちは信じなかった。羨ましいほど豊満な体の女性が、元男など聞くにも値しない戯言としたのだ。
ルイジスの姿をしたカリーナが健在だったこともあり、むしろ王子様の名を語るなど『言語道断』と処罰は苛烈さを増していた。
「うくぅっ!……あ、ぅうっ」
(ちくしょう! 調子に乗りやがって!!)
そして、今日に至っていた。フレアの手の平がむちむちの肉房尻を容赦なく叩く。何度も、何度も。
「んあっ!やめっ!くうぅっ、んんひぃっ!……くそっ、くそっ……くそぉぉっ!」
痛みよりも無駄にデカデカとしている臀部を弄られる屈辱が、ルイジスの心を追い詰める。
悪態を付いても恥かしさ、惨めさは止まらず真っ赤な顔で彼は涙を流し続けた。
「豚の鳴き声のように汚らしい言葉使い……もっともあなたのような者には豚の鳴き声がお似合いなのかしら?」
『あはは――』とメイドたちが一斉にあざ笑う。
「……っ」
頬を羞恥に染め上げ、ルイジスは唇を噛み締めた。
その様子をさらに乱暴と、下品と見たフレアは早速お仕置きを開始する。
彼女にとって今までのは単なる通過儀礼に過ぎないようで――お仕置の本番のためか、メイドたちがルイジスのショーツをズリ下ろす。
「うわっ!このっ、ヤメロ!!」
拘束板に固定されている身体は易々と下着を奪われて。むっちィィっ――と色気づいた女の臀部が風に撫でられる。
彼はブルブルと震え、息を詰らせて恥じらった。
「う、あっ!あっ……あんっ」
「時々、俺とか僕とか言い出す始末だし……貴女にはメイドたる自覚の前に女である自覚がないのね。だから、淫乱な雌豚なんだわ――このメス豚がっっ!!」
「ふざ……ふざける――ぐぎぁああ!?」
バシン――!
部屋に打撃音が反響した。
続いて一閃、一音――暗闇の中で、何かがルイジスのお尻を抉る。
痛々しい赤みを帯びた肉を覗かせ、雪のような肌の裂け目からドロリ、と赤い血が溢れ出た。
「ひぎぃぃっ!ひぃ、いい!」
無防備な、赤ん坊のような彼の臀部を傷付けた物の正体は、鞭だった。
フレアは用意していた短めの鞭で、情け容赦なくルイジスの身体を、肌を、そしてお尻を裂いたのだ。パシンっっ――と。
「ひゃ、ン!っ――あ!……ああヒィ!」
<つづく>
幸福な王子と不幸なメイド 2 by.黒い枕
「はああ、いつまでこんなのが、続くんだ?」
「わぁ、私が聞きたいです……」
カリーナは股間の『息子』に戸惑い、ルイジスは胸の巨大な双球と股間の『穴』に畏怖にも似た緊迫感を強いられる。
空気が、さらに重たくなった。
そこでメイドとして――外見上は王子だが――カリーナは、落ち込んだままではいられないと、ばかりに話を、『ルイズ』をからかうことにした。
「でも……本当にお妃様にそっくりですね」
「ああ…まあ息子だから…なのか」
唐突に、しかも触れられたくない話なのだが、辛気臭くなるよりはマシなのか、彼も話に乗り出す。
「本当に羨ましい身体です」
「母上からは、『胸が私よりも大きいなんて、許せませんわ』って――言われたよ」
「くす…本当にご立派な胸ですものね」
「そっ…そんなに見るなよ」
たどたどしく拒絶し、胸元を隠すも、隠し切れない巨乳にルイジスは照れた。だが、悲しみは少ない。
暗い空気でも絶望的な雰囲気でもない。
お互いがお互いを気遣う――支えあう流れに、ルイジスは、ほんのりと喜んだ。
自分の顔とは言え、運命共同体と言う人生初めての関係に、不本意ながら高揚感に浸ってしまう。
だから、である。
王子であり、男であるルイジスが、本当の小娘のように赤面してしまったのは。
どくんどくん。
恥辱に蝕まれた心臓が煩く鼓動する。
沸き上がる思いのまま、ルイジスはカリーナに笑いかけた。照れ恥らう、ぎこちない笑顔。
自分の顔のカリーナを見上げようとした、その瞬間――こんこん。
ドアがロックされた。
「失礼します――ルイジス様」
王子の部屋に許可なく侵入したメイドの女性。
なかなかの美人だが、メガネにツリ眼と冷たい雰囲気。、
部下に持つにはいいが、恋人にするには少しきつそうな感じだ。
そのメイドの後ろには数人のメイドたちが控えていた。
「……ひィっ!」
「フレア――メイド長」
本来なら、怒る筈であるルイジス――を勤めるカリーナ――は硬直したまま、二、三歩下がる。
みっちり仕込まれた恐怖と言う名の教育のせいだろう。
役に立たない彼女の代わりにルイズ――と偽っているルイジス――が、筆頭に立つメイドの名を呼び、同時にとてつもなく重要なことを思い出した。
(あっあっ……そうだった!)
彼は、フレアに頼まれたことがあった。簡単な伝言である。
ほとんど離れないカリーナとルイジスだが、時折、隙を伺い先輩メイドに仕事を任されるのだ。
仕事をこなして貰う――のではなく、ある口実つくりのための伏線だ。
「かりー……ルイジス様! ――にぁああ!?」
むぐにゅん!!
早足で詰め寄ったフレアの指が、ルイジスの双乳を強引に曲げた。否、圧殺だった。
指は切るように肉に埋まり、指の先端が乳首を蹴り上げる。
そのもどかしい、どうにも我慢ならない不快な痺れにルイジスは猫のように鳴いた。
『――いい気になってんじゃないのよ。この役立たず』
『新人の癖に生意気。王子様に近づいて生意気。この乳も生意気』
「そんな…無茶な……あっ、ああ!!」
フレアの後に続いてきたメイドたちに腕を捕まれ、羽交い絞めに拘束される。
もう、動けない。
動けない彼――否、彼女をいい事にメイドたちは嫉妬を隠すことなく、罵詈雑言を向けた。
無論、王子姿のカリーナに知られないよう、耳元で囁く。
しかも、『ルイズ』の胸をこれでもかっ、と言ほど変形させて、その苦悶の声で誤魔化そうともした。
(ひゃあっ!? ひゃあン!! あンン!! 理不尽だああ――!!)
胸が、潰れる。ぶにゅぶにゅ、破く様に。
ほんのり立った乳首を『まあなんて淫乱なんでしょうか、えい!えい!』と跳ねられ、曲げられ、
『ルイズ』は快感の殴打に悶えた。
女の快感に免疫のないルイジスの体は、容易く火照り、脚が砕けたように力を失う――気持ちよくさせられる苦しさと恥かしさの中、彼は理不尽だと、メイドたちを呪った。
城に住むたくさんのメイドいる。
そのほとんどが自分に恋焦がれていると知ったとき、最初は良かった。
優越感と自尊心が、最高値まで満たされたのだから――しかし、その後が、地獄だった。
メイドたちの憧れのルイジス王子。
その専属メイドとなったのはメイド研修すらもしていない新人どころか、素人メイド。
嫉妬と切望を向けられ、ルイジスは孤立だった。
その執拗さ陰険さに歯向かえば、口が悪いと罵られ、カリーナから離された挙句の監禁。
胸を鷲摑みにされ、乳首を針に刺された。
ノーパンで敬語を暗記させられ、失敗したら鞭でお尻を叩かれた。
開放された後、泣きながらカリーナの胸で寝たのは、忘れたい過去である。
一国の王子――姿が別人とは言え――そのようなことをすれば反逆罪で死刑も適用できる。
しかし、そんなことをすれば、しがないメイド娘のルイズではなく――少なくとも、何らかの秘密を抱えているメイドの『ルイズ』になってしまう。
結局のところ、元に戻るまで耐え忍ぶしかなかった。
試練として、今日も仕事を任されたのだが、見事に忘れた。貴族に、男に迫られて。
(アイツ――ぅ!! 覚えていろ!!確か、ダ・シェル家の……ン! ああ!!)
「あっ…ひィんひぁん!!」
直りかけの乳首の傷を見事に芯に取られた衝撃に声を張り上げる。
口を押さえようと、胸の拘束を外そうと腕をぱたぱた振り回すが、非力な娘の腕力では無禄に均しかった。
にゅぐん、ぐにん!
また大きく胸が形を変え、痛みにルイジス、否――『ルイズ』は涙を零した。
「あの……いや!フレア!遣りすぎだ。止めろ!」
「まあ、なんとお優しいお言葉。このような不肖な娘に……何をやっているの、ルイズ!?早く、感謝の言葉の一つでも、仰りなさい!!」
「ひゃ……はひぃ――あり…ありがた……ンああっ!!」
王子として、男として、のプライドが瓦解する。
揉み解さる巨乳によって、易々と。
だから、ぐぬぐぬと、押し倒される乳首の疼きと電撃から逃れようと『ルイズ』は、屈辱の言葉を告げようとした。
だが、絶妙なタイミングで彼の胸を苛めるメイドは両方の乳首を、ぐりんと、一回転。
その刹那、ルイジスの口からは、もはや盛った雌のようなにしか聞こえない悲鳴が漏れた。
否――正真正銘、発情した女の喘ぎ、だ。
「――ご覧になったでしょうか。ルイジス様のような高貴なお方に声を掛けられたにも関わらず、嬌声を上げて、お応えするなんて……発情するなんて…っ。”これ”はメイドではありません。雌です。厭らしい雌なのです」
「そうです。このような者をメイド仲間にするなど我慢できません!」
「ほらほら……こうすれば…!!」
「ひぃあぁぁめええ!! んああっ!! やめ…んぐぅ!?」
メイド長フレアの言葉を皮切りにメイドたちもルイジスの罵倒に加わる。
一人だけ、完全に違う世界に言っている者は、一先ず置いて――ルイジスを、『ルイズ』を、見る
カリーナ。
唾液を口唇から洩らす様は、彼女たちが望むように、そして彼女たちが言うように、淫靡な雌だった。
流石に言葉が止まりかけた。
王子の艶美な雌らしさに――だが、真実を知っているだけに『ルイジス』はたどたどしくも、抗議した。
「いや、だからと言って、これは遣りすぎでしょう…だ。やめ――ッ」
「ですが……ルイジス様の命令は絶対です。だからこそ、私たちは私情を押し殺して、
この子をメイドとして認めます。無能で、淫乱ですけど、栄えある王国にお仕えするメイドとして、お認めします」
「張り裂ける思いを押し殺して、仲間だと思います。わたくしたち……」
「本当に生意気な…ッ!! けしからん胸めッ!!この牛乳ッ!!」
「ぎゃああ!? んああ…っ!! ひぃぃ!!」
爪で乳首を切り裂くように潰され、快感とは程遠い痺れにルイジスの目線は宙に向かう。
痙攣まで起こし、下着は濡れていた。
あぐあぐぅ、と首を揺らし、この拷問から逃げたいと切に願う――し、終わりだと思った。
カリーナもフレイの反応に、もう終わりだと思った。
二人共、そう思った――が、甘かった。
「じゃあ、早く、ルイジスさ――ァ、じゃなくてルイズを…」
「ですから、私たちが責任を持って立派なメイドになるように教育いたしますわ」
「え……ちょっと…まって!」
(え――?)
ルイジス――カリーナの叫び声に正気を取り戻したルイジスが見たのは天井。
胸に引っ付く重みに、揺れ具合。
髪も背中の方向垂れていた。
極めつけは、手足を含めた数十箇所を触れる、否――拘束する感触――横を見れば、動く、景色に、スカートの裾を持ち上げ掛けるフレイ。
まるで何かから逃げるような機敏さに、後ろから聞こえる声――制止の命令。
だが、彼女たちは耳栓をしているかのように黙々と――『ルイズ』を運んでいた。
「ちょっと待て――!! 離せ、お前らッ!?」
どうにか降りようと――落下してもいい覚悟で、暴れるも、彼女たちは、メイド軍団は強靭な団結力で、それを阻止する。
確実に、カリーナの声が聞こえなくなってきた。
「まあ…『離せ』に『お前ら』……なんて…下品な!!」
「お仕置が必要ようですわね。この雌豚には……」
「このスタイルで、この軽さ……本当に貴女、人間なの!?」
「いいから、離せ――ェ!たっ…助けて――っっ!!」
絶叫し、終には助けを求めたルイジス。
だが、遠巻きの騎士や執事、兵士諸々の男連中には何が、起きているのか、さえも理解できない。
そうしている内に、ルイジスは遥か彼方に運ばれていく。
「まったく。懲りたと思ったのに。この躾けがなっていない小娘は……」
侮蔑を隠さないフレアの眼を向けられ、ルイジスは恐怖に慄き、自然と涙が零れた。
涙は床を湿らすも、彼が――『彼女』が去った後、直ぐに乾いて、消えた。
<つづく>
20100925初出
「わぁ、私が聞きたいです……」
カリーナは股間の『息子』に戸惑い、ルイジスは胸の巨大な双球と股間の『穴』に畏怖にも似た緊迫感を強いられる。
空気が、さらに重たくなった。
そこでメイドとして――外見上は王子だが――カリーナは、落ち込んだままではいられないと、ばかりに話を、『ルイズ』をからかうことにした。
「でも……本当にお妃様にそっくりですね」
「ああ…まあ息子だから…なのか」
唐突に、しかも触れられたくない話なのだが、辛気臭くなるよりはマシなのか、彼も話に乗り出す。
「本当に羨ましい身体です」
「母上からは、『胸が私よりも大きいなんて、許せませんわ』って――言われたよ」
「くす…本当にご立派な胸ですものね」
「そっ…そんなに見るなよ」
たどたどしく拒絶し、胸元を隠すも、隠し切れない巨乳にルイジスは照れた。だが、悲しみは少ない。
暗い空気でも絶望的な雰囲気でもない。
お互いがお互いを気遣う――支えあう流れに、ルイジスは、ほんのりと喜んだ。
自分の顔とは言え、運命共同体と言う人生初めての関係に、不本意ながら高揚感に浸ってしまう。
だから、である。
王子であり、男であるルイジスが、本当の小娘のように赤面してしまったのは。
どくんどくん。
恥辱に蝕まれた心臓が煩く鼓動する。
沸き上がる思いのまま、ルイジスはカリーナに笑いかけた。照れ恥らう、ぎこちない笑顔。
自分の顔のカリーナを見上げようとした、その瞬間――こんこん。
ドアがロックされた。
「失礼します――ルイジス様」
王子の部屋に許可なく侵入したメイドの女性。
なかなかの美人だが、メガネにツリ眼と冷たい雰囲気。、
部下に持つにはいいが、恋人にするには少しきつそうな感じだ。
そのメイドの後ろには数人のメイドたちが控えていた。
「……ひィっ!」
「フレア――メイド長」
本来なら、怒る筈であるルイジス――を勤めるカリーナ――は硬直したまま、二、三歩下がる。
みっちり仕込まれた恐怖と言う名の教育のせいだろう。
役に立たない彼女の代わりにルイズ――と偽っているルイジス――が、筆頭に立つメイドの名を呼び、同時にとてつもなく重要なことを思い出した。
(あっあっ……そうだった!)
彼は、フレアに頼まれたことがあった。簡単な伝言である。
ほとんど離れないカリーナとルイジスだが、時折、隙を伺い先輩メイドに仕事を任されるのだ。
仕事をこなして貰う――のではなく、ある口実つくりのための伏線だ。
「かりー……ルイジス様! ――にぁああ!?」
むぐにゅん!!
早足で詰め寄ったフレアの指が、ルイジスの双乳を強引に曲げた。否、圧殺だった。
指は切るように肉に埋まり、指の先端が乳首を蹴り上げる。
そのもどかしい、どうにも我慢ならない不快な痺れにルイジスは猫のように鳴いた。
『――いい気になってんじゃないのよ。この役立たず』
『新人の癖に生意気。王子様に近づいて生意気。この乳も生意気』
「そんな…無茶な……あっ、ああ!!」
フレアの後に続いてきたメイドたちに腕を捕まれ、羽交い絞めに拘束される。
もう、動けない。
動けない彼――否、彼女をいい事にメイドたちは嫉妬を隠すことなく、罵詈雑言を向けた。
無論、王子姿のカリーナに知られないよう、耳元で囁く。
しかも、『ルイズ』の胸をこれでもかっ、と言ほど変形させて、その苦悶の声で誤魔化そうともした。
(ひゃあっ!? ひゃあン!! あンン!! 理不尽だああ――!!)
胸が、潰れる。ぶにゅぶにゅ、破く様に。
ほんのり立った乳首を『まあなんて淫乱なんでしょうか、えい!えい!』と跳ねられ、曲げられ、
『ルイズ』は快感の殴打に悶えた。
女の快感に免疫のないルイジスの体は、容易く火照り、脚が砕けたように力を失う――気持ちよくさせられる苦しさと恥かしさの中、彼は理不尽だと、メイドたちを呪った。
城に住むたくさんのメイドいる。
そのほとんどが自分に恋焦がれていると知ったとき、最初は良かった。
優越感と自尊心が、最高値まで満たされたのだから――しかし、その後が、地獄だった。
メイドたちの憧れのルイジス王子。
その専属メイドとなったのはメイド研修すらもしていない新人どころか、素人メイド。
嫉妬と切望を向けられ、ルイジスは孤立だった。
その執拗さ陰険さに歯向かえば、口が悪いと罵られ、カリーナから離された挙句の監禁。
胸を鷲摑みにされ、乳首を針に刺された。
ノーパンで敬語を暗記させられ、失敗したら鞭でお尻を叩かれた。
開放された後、泣きながらカリーナの胸で寝たのは、忘れたい過去である。
一国の王子――姿が別人とは言え――そのようなことをすれば反逆罪で死刑も適用できる。
しかし、そんなことをすれば、しがないメイド娘のルイズではなく――少なくとも、何らかの秘密を抱えているメイドの『ルイズ』になってしまう。
結局のところ、元に戻るまで耐え忍ぶしかなかった。
試練として、今日も仕事を任されたのだが、見事に忘れた。貴族に、男に迫られて。
(アイツ――ぅ!! 覚えていろ!!確か、ダ・シェル家の……ン! ああ!!)
「あっ…ひィんひぁん!!」
直りかけの乳首の傷を見事に芯に取られた衝撃に声を張り上げる。
口を押さえようと、胸の拘束を外そうと腕をぱたぱた振り回すが、非力な娘の腕力では無禄に均しかった。
にゅぐん、ぐにん!
また大きく胸が形を変え、痛みにルイジス、否――『ルイズ』は涙を零した。
「あの……いや!フレア!遣りすぎだ。止めろ!」
「まあ、なんとお優しいお言葉。このような不肖な娘に……何をやっているの、ルイズ!?早く、感謝の言葉の一つでも、仰りなさい!!」
「ひゃ……はひぃ――あり…ありがた……ンああっ!!」
王子として、男として、のプライドが瓦解する。
揉み解さる巨乳によって、易々と。
だから、ぐぬぐぬと、押し倒される乳首の疼きと電撃から逃れようと『ルイズ』は、屈辱の言葉を告げようとした。
だが、絶妙なタイミングで彼の胸を苛めるメイドは両方の乳首を、ぐりんと、一回転。
その刹那、ルイジスの口からは、もはや盛った雌のようなにしか聞こえない悲鳴が漏れた。
否――正真正銘、発情した女の喘ぎ、だ。
「――ご覧になったでしょうか。ルイジス様のような高貴なお方に声を掛けられたにも関わらず、嬌声を上げて、お応えするなんて……発情するなんて…っ。”これ”はメイドではありません。雌です。厭らしい雌なのです」
「そうです。このような者をメイド仲間にするなど我慢できません!」
「ほらほら……こうすれば…!!」
「ひぃあぁぁめええ!! んああっ!! やめ…んぐぅ!?」
メイド長フレアの言葉を皮切りにメイドたちもルイジスの罵倒に加わる。
一人だけ、完全に違う世界に言っている者は、一先ず置いて――ルイジスを、『ルイズ』を、見る
カリーナ。
唾液を口唇から洩らす様は、彼女たちが望むように、そして彼女たちが言うように、淫靡な雌だった。
流石に言葉が止まりかけた。
王子の艶美な雌らしさに――だが、真実を知っているだけに『ルイジス』はたどたどしくも、抗議した。
「いや、だからと言って、これは遣りすぎでしょう…だ。やめ――ッ」
「ですが……ルイジス様の命令は絶対です。だからこそ、私たちは私情を押し殺して、
この子をメイドとして認めます。無能で、淫乱ですけど、栄えある王国にお仕えするメイドとして、お認めします」
「張り裂ける思いを押し殺して、仲間だと思います。わたくしたち……」
「本当に生意気な…ッ!! けしからん胸めッ!!この牛乳ッ!!」
「ぎゃああ!? んああ…っ!! ひぃぃ!!」
爪で乳首を切り裂くように潰され、快感とは程遠い痺れにルイジスの目線は宙に向かう。
痙攣まで起こし、下着は濡れていた。
あぐあぐぅ、と首を揺らし、この拷問から逃げたいと切に願う――し、終わりだと思った。
カリーナもフレイの反応に、もう終わりだと思った。
二人共、そう思った――が、甘かった。
「じゃあ、早く、ルイジスさ――ァ、じゃなくてルイズを…」
「ですから、私たちが責任を持って立派なメイドになるように教育いたしますわ」
「え……ちょっと…まって!」
(え――?)
ルイジス――カリーナの叫び声に正気を取り戻したルイジスが見たのは天井。
胸に引っ付く重みに、揺れ具合。
髪も背中の方向垂れていた。
極めつけは、手足を含めた数十箇所を触れる、否――拘束する感触――横を見れば、動く、景色に、スカートの裾を持ち上げ掛けるフレイ。
まるで何かから逃げるような機敏さに、後ろから聞こえる声――制止の命令。
だが、彼女たちは耳栓をしているかのように黙々と――『ルイズ』を運んでいた。
「ちょっと待て――!! 離せ、お前らッ!?」
どうにか降りようと――落下してもいい覚悟で、暴れるも、彼女たちは、メイド軍団は強靭な団結力で、それを阻止する。
確実に、カリーナの声が聞こえなくなってきた。
「まあ…『離せ』に『お前ら』……なんて…下品な!!」
「お仕置が必要ようですわね。この雌豚には……」
「このスタイルで、この軽さ……本当に貴女、人間なの!?」
「いいから、離せ――ェ!たっ…助けて――っっ!!」
絶叫し、終には助けを求めたルイジス。
だが、遠巻きの騎士や執事、兵士諸々の男連中には何が、起きているのか、さえも理解できない。
そうしている内に、ルイジスは遥か彼方に運ばれていく。
「まったく。懲りたと思ったのに。この躾けがなっていない小娘は……」
侮蔑を隠さないフレアの眼を向けられ、ルイジスは恐怖に慄き、自然と涙が零れた。
涙は床を湿らすも、彼が――『彼女』が去った後、直ぐに乾いて、消えた。
<つづく>
20100925初出
幸福な王子と不幸なメイド 1 by.黒い枕
「ルイズさん――どうか、僕と結婚して下さい!」
告白された。堂々と。
しかも、相手は、それなりに権力のある貴族跡取り息子である。
もし、『ルイズ』が普通の女の子で、なんら特殊な事情でメイドとして働いてなければ、
問題なく――むしろ、光栄至極の申し出である、が。
「いえ、わ、わた、くしめ……っ私めのような身分の低い娘を妻に娶るなど……いけません!」
内心では腸が煮えたぎり、その余波で震える肩を必死に宥めさせ彼女――『ルイズ』は、断った。
その健康的に実った胸元に可愛らしく、両手を置き、頭を下に向ける。
だが、相手も本気。
彼女の思いを重々承知で、否、だからこそ、強引に腕を掴む。
「ぶれ――うぐっ! なっ…なにを為さいますか!?」
他人の視線を注意しないといけない彼女は、怒りを押し殺し、言葉を選んだ。
ビンタの一つでも返したい気持ちを抑え、男の汗まみれの腕を黙認した。
「構いません。――貴女の美しさなら、父上も母上も納得してくれます。どうか、どうか、僕の妃にぃ」
「で、ですから――わたくしめは……ぼくはっ!!」
執拗な告白は、唯の有害である。
『ルイズ』は接近する男の鼻息の荒さに、腰を引いた。
瞳は怒りよりも、純粋な恐怖に涙を溜める。
もっとも、興奮した男の目線は――改心して、自分に惚れたのだと、自分勝手な様子に見えた。
「さあ――直ぐに結婚の準備をォ」
「だからああ!! ぼくはああっ――おっ俺はぁぁ!!」
「こら――ロイド。俺のメイドを誑かすな」
「るぅ…ルイジスさま!?」
決定的な秘密を危うく、というか目の前の男の勢いに負け暴露してしまった『ルイズ』。
だが、そこは機会を狙っていたかのように、彼女の主――『ルイジス』が、廊下の角から現れたことで有耶無耶になった。
彼女は『彼』にメイド呼ばわりされることを悔しく思いながら、いそいそと彼の背に隠れる。
腕に抱きつき、迫った男を涙目で睨み上げる。
主人に、一国の第一王子に、許可なく触れること自体は、民はおろか、王子直属のメイドでも許し難い暴挙なのだが、唯一の目撃者である騎士は、体を引き、困惑した。
王子の手前のためだろうか。
一気に冷めた脳が伝える彼女が、告白に同意して感涙する者――ではなく、むしろ、怖い何かに震えている光景。
怖い何か――それが、分からないほど男は愚者でもなかった。
「失礼しました、王子――」
「ああ…」
騎士は、これまでの熱意を押さえ込むと、礼儀ただしく王子とすれ違う。
王子も、軽く反応して、見送った。
通り過ぎる間際、騎士は『ルイズ』に瞳で愛を伝えるも、望んだ応えを得られず、とぼとぼ去っていく。
「まったく。時間をかけていると思えば、騎士といちゃつくなとあれほど言っていただろう!」
「も、申し訳御座いません。――ルイジス様」
「まあ、いい。戻るぞ!」
「は――はい」
二人だけとは言え、ここは渡り廊下。
いつ誰と、会うかも分からない――実際に騎士と遭遇してしまったし――二人は見事に『王子』と『メイド』を演じる。
王子は振り向き様にため息をつき、メイドは悔しさに涙目を一層、ひどくさせて、主人に従っていく。
方向性は違うものの、お互いが、『王子』と『メイド』が――嫌だった。
~~~
「もう――なんども言っているじゃないですか!? 気をつけてくださいって!! 分かっているんですか!?ご自身の立場がッ!!」
「わっ――分かっているよ。勿論――」
ルイジス王子に与えられた一室のひとつで、喧嘩する二人。
一人は、その部屋の持ち主であり、片方は清楚ながら、持ち前のグラマーさで魅惑的なメイドとなっている召使の女。
だが、相互の関係は完全に逆転していた。
「いいえ! 分かっていません――私が何のために王子になっていると思ってるんですか!!」
王子が言う。だが、その口調は君主のものではない。
身分の高いものに助言する敬語の上、女性口調である。
そのことを恥じらいもせず、王子『ルイジス』は荒々しくも、メイドに言葉を捧げる。
メイドも、真摯に非を認め、終わり頃の花のように頭を下げた。
反省ではなく――悲しみと悔しさから、涙ぐむ。
「けど…俺の……僕のせいじゃない!!」
王子に対して敬語も使わず、喧嘩口調で言葉を返した。激情のまま。
大罪である。
しかし彼は、そんな不遜なメイドを叱らない。
まるで意中の相手のように、『ルイズ』の体を、純血を気遣う。思いやる。
怒りに、そして焦りに、彩られながらも、その視線には確かな母性愛が交じっていた。
「いいえ、女性はちゃんと殿方の視線――視姦も含めて、ちゃんと把握しておくのが嗜みです。仮とは言え、ルイジス様は今は女性なのですから、そこは警戒心を持って……」
決定的な言葉――ルイジス様と『ルイズ』を、そう呼んだ王子。
その途端、『ルイズ』は激情にまま、顔を赤面させ、体震わす。
これでも、彼女は我慢しているのだ。
もう僕、でもダメだった。無理だった。
禁じられた言葉を使い、『ルイス』は激しく――荒れた。
「女って言うな!! ――俺は…俺は…」
どうしようもない現実にに泣くように……掠れた声で、彼女は呟いた。
「俺は……男だ」
「ルイジス様――」
その姿に同情したのか、王子は申し訳なさそうに感情を消し、彼女に詰め寄った。
自分を男だと名乗る、美女メイドに。ルイジス様と、言いながら。
「……出過ぎたまね…申し訳御座いません」
「いや…いい。キミにも――カリーナにも、大変なことを一任しているんだし……」
彼女が、カリーナと呼び、王子を励ました時、それで喧嘩は終わった。が――しかし。
(どうしよう……)
逆に居心地に悪い空気に、『ルイズ』は、そして『ルイジス』は深刻な顔すればいいのか、
苦笑いを見せ合えばいいのか、迷った。
緊迫的な焦燥が、二人の間を行き交う。
なんせ――性別が変わった同士であり、偽りの自分を演じている同士なのだから、普通の会話では続かなかった。
否、そもそも『王子』と『メイド』なのだ。会話が続くわけがなかった。
今、二人が共通する思いは一つだけ。
『なんで――私が王子なんですかぁぁ!?私はただのメイドなのにぃぃ!』と、
『どうして俺がメイドなんだ!? 執事ならまだ納得できるけどメイドはないだしょう!父上えェェ!!』――と言う、現状への不満だった
「…ぁ…ぅう」
沈黙に負けて、『ルイジス』は――ルイジスにされた一人のメイドは己が体を軽く弄り、呻いた。
一方、『ルイズ』も――ルイズと言う名の架空のメイドにされた王子も、『ルイジス』と同じように、自分の体を観察し、沸き立つ劣等感を文字通り、噛み殺す。
「――っ」
ごくん。
息を忘れて眼下を見やる。
似合うメイド姿と大きな胸元。それだけで『ルイズ』は恥辱を露わに悶えた。
大きさの、感じ方の差異こそあるものの、『ルイジス』も同じように、落ち着かない。
お互いの体が異性へと、変貌しているから、である。
――そう『ルイズ』と呼ばれるメイドが本当の王子であり、王子とされる外見をした青年が、『カリーナ』と言う名のメイドだった。
ほんの二週間前までは……。
「もう二週間か……」
「二週間と二日ですぅ!」
なんとか言葉を振ったものの、卑屈なのか、皮肉なのか。
王子役を、『自分』を任せているとは言え、かなり反抗的な口調である。
だが、彼は怒らない。注意しない。
申し訳ない気持ちで彼は、一杯だからだ。
持ち前の巨乳を持ち上げ、ため息を吐く。
(はああ…この身体になって二週間以上たっているのか…)
二週間前、事故が起きた。
魔術実験で、本来なら王族に被害が及ぶことはない筈だった。
しかし、興味本位の自業自得と言うか、間が悪かったというか――事故に巻き込まれ、眼が覚めたらルイジスは『ルイズ』になっていた。
正確には母君似のグラマーで、清爽な美女と変貌していたのだが、『女』になっていること事態が問題だった。
王家には様々な制約や掟がある。
剣は嗜むべきであり、功労者には褒美を与えよ。
その中の一つに、王族の娘が孕んだ場合、その相手は王の後継者候補になれる、と言うものだ。
この掟のお陰で、王族の女性はなんども襲われ――レイプされそうになった。
歴史上、全て未然に防げたことになっているが、王族の女性と恋に落ちた騎士が、王になったことは何度もあった。
しかも、今の王家にはルイジス以外の男子が居らず、『女』であることが、問題あり過ぎた。
早く元に戻りたい――が、隠密が義務付けられた上、事故のため、元に戻る方法を探すのも時間が掛かる。
今、直ぐに出来ることはなんの魔法も受けていない、つまり魔力的な影響を受けていない者の姿を変えること。
彼も悩んだし、国王も母君も困惑した。
しかし、そこで偶々、話を聞いてしまったのが、メイドの――カリーナである。
そこで国王はカリーナに、そしてルイジスに命じた。
カリーナ、暫くの間、お前が王子であり、我が息子だ。そして、お前は息子のメイドの『ルイズ』として暮らせ、良いな――である。
なにが良いのか、二人は困惑したまま、カリーナは、ルイジスに変身させられ、ルイジスはルイズと、言う新人メイドとして働くことに。

キャライラスト.しん
<つづく>
初出20100923
告白された。堂々と。
しかも、相手は、それなりに権力のある貴族跡取り息子である。
もし、『ルイズ』が普通の女の子で、なんら特殊な事情でメイドとして働いてなければ、
問題なく――むしろ、光栄至極の申し出である、が。
「いえ、わ、わた、くしめ……っ私めのような身分の低い娘を妻に娶るなど……いけません!」
内心では腸が煮えたぎり、その余波で震える肩を必死に宥めさせ彼女――『ルイズ』は、断った。
その健康的に実った胸元に可愛らしく、両手を置き、頭を下に向ける。
だが、相手も本気。
彼女の思いを重々承知で、否、だからこそ、強引に腕を掴む。
「ぶれ――うぐっ! なっ…なにを為さいますか!?」
他人の視線を注意しないといけない彼女は、怒りを押し殺し、言葉を選んだ。
ビンタの一つでも返したい気持ちを抑え、男の汗まみれの腕を黙認した。
「構いません。――貴女の美しさなら、父上も母上も納得してくれます。どうか、どうか、僕の妃にぃ」
「で、ですから――わたくしめは……ぼくはっ!!」
執拗な告白は、唯の有害である。
『ルイズ』は接近する男の鼻息の荒さに、腰を引いた。
瞳は怒りよりも、純粋な恐怖に涙を溜める。
もっとも、興奮した男の目線は――改心して、自分に惚れたのだと、自分勝手な様子に見えた。
「さあ――直ぐに結婚の準備をォ」
「だからああ!! ぼくはああっ――おっ俺はぁぁ!!」
「こら――ロイド。俺のメイドを誑かすな」
「るぅ…ルイジスさま!?」
決定的な秘密を危うく、というか目の前の男の勢いに負け暴露してしまった『ルイズ』。
だが、そこは機会を狙っていたかのように、彼女の主――『ルイジス』が、廊下の角から現れたことで有耶無耶になった。
彼女は『彼』にメイド呼ばわりされることを悔しく思いながら、いそいそと彼の背に隠れる。
腕に抱きつき、迫った男を涙目で睨み上げる。
主人に、一国の第一王子に、許可なく触れること自体は、民はおろか、王子直属のメイドでも許し難い暴挙なのだが、唯一の目撃者である騎士は、体を引き、困惑した。
王子の手前のためだろうか。
一気に冷めた脳が伝える彼女が、告白に同意して感涙する者――ではなく、むしろ、怖い何かに震えている光景。
怖い何か――それが、分からないほど男は愚者でもなかった。
「失礼しました、王子――」
「ああ…」
騎士は、これまでの熱意を押さえ込むと、礼儀ただしく王子とすれ違う。
王子も、軽く反応して、見送った。
通り過ぎる間際、騎士は『ルイズ』に瞳で愛を伝えるも、望んだ応えを得られず、とぼとぼ去っていく。
「まったく。時間をかけていると思えば、騎士といちゃつくなとあれほど言っていただろう!」
「も、申し訳御座いません。――ルイジス様」
「まあ、いい。戻るぞ!」
「は――はい」
二人だけとは言え、ここは渡り廊下。
いつ誰と、会うかも分からない――実際に騎士と遭遇してしまったし――二人は見事に『王子』と『メイド』を演じる。
王子は振り向き様にため息をつき、メイドは悔しさに涙目を一層、ひどくさせて、主人に従っていく。
方向性は違うものの、お互いが、『王子』と『メイド』が――嫌だった。
~~~
「もう――なんども言っているじゃないですか!? 気をつけてくださいって!! 分かっているんですか!?ご自身の立場がッ!!」
「わっ――分かっているよ。勿論――」
ルイジス王子に与えられた一室のひとつで、喧嘩する二人。
一人は、その部屋の持ち主であり、片方は清楚ながら、持ち前のグラマーさで魅惑的なメイドとなっている召使の女。
だが、相互の関係は完全に逆転していた。
「いいえ! 分かっていません――私が何のために王子になっていると思ってるんですか!!」
王子が言う。だが、その口調は君主のものではない。
身分の高いものに助言する敬語の上、女性口調である。
そのことを恥じらいもせず、王子『ルイジス』は荒々しくも、メイドに言葉を捧げる。
メイドも、真摯に非を認め、終わり頃の花のように頭を下げた。
反省ではなく――悲しみと悔しさから、涙ぐむ。
「けど…俺の……僕のせいじゃない!!」
王子に対して敬語も使わず、喧嘩口調で言葉を返した。激情のまま。
大罪である。
しかし彼は、そんな不遜なメイドを叱らない。
まるで意中の相手のように、『ルイズ』の体を、純血を気遣う。思いやる。
怒りに、そして焦りに、彩られながらも、その視線には確かな母性愛が交じっていた。
「いいえ、女性はちゃんと殿方の視線――視姦も含めて、ちゃんと把握しておくのが嗜みです。仮とは言え、ルイジス様は今は女性なのですから、そこは警戒心を持って……」
決定的な言葉――ルイジス様と『ルイズ』を、そう呼んだ王子。
その途端、『ルイズ』は激情にまま、顔を赤面させ、体震わす。
これでも、彼女は我慢しているのだ。
もう僕、でもダメだった。無理だった。
禁じられた言葉を使い、『ルイス』は激しく――荒れた。
「女って言うな!! ――俺は…俺は…」
どうしようもない現実にに泣くように……掠れた声で、彼女は呟いた。
「俺は……男だ」
「ルイジス様――」
その姿に同情したのか、王子は申し訳なさそうに感情を消し、彼女に詰め寄った。
自分を男だと名乗る、美女メイドに。ルイジス様と、言いながら。
「……出過ぎたまね…申し訳御座いません」
「いや…いい。キミにも――カリーナにも、大変なことを一任しているんだし……」
彼女が、カリーナと呼び、王子を励ました時、それで喧嘩は終わった。が――しかし。
(どうしよう……)
逆に居心地に悪い空気に、『ルイズ』は、そして『ルイジス』は深刻な顔すればいいのか、
苦笑いを見せ合えばいいのか、迷った。
緊迫的な焦燥が、二人の間を行き交う。
なんせ――性別が変わった同士であり、偽りの自分を演じている同士なのだから、普通の会話では続かなかった。
否、そもそも『王子』と『メイド』なのだ。会話が続くわけがなかった。
今、二人が共通する思いは一つだけ。
『なんで――私が王子なんですかぁぁ!?私はただのメイドなのにぃぃ!』と、
『どうして俺がメイドなんだ!? 執事ならまだ納得できるけどメイドはないだしょう!父上えェェ!!』――と言う、現状への不満だった
「…ぁ…ぅう」
沈黙に負けて、『ルイジス』は――ルイジスにされた一人のメイドは己が体を軽く弄り、呻いた。
一方、『ルイズ』も――ルイズと言う名の架空のメイドにされた王子も、『ルイジス』と同じように、自分の体を観察し、沸き立つ劣等感を文字通り、噛み殺す。
「――っ」
ごくん。
息を忘れて眼下を見やる。
似合うメイド姿と大きな胸元。それだけで『ルイズ』は恥辱を露わに悶えた。
大きさの、感じ方の差異こそあるものの、『ルイジス』も同じように、落ち着かない。
お互いの体が異性へと、変貌しているから、である。
――そう『ルイズ』と呼ばれるメイドが本当の王子であり、王子とされる外見をした青年が、『カリーナ』と言う名のメイドだった。
ほんの二週間前までは……。
「もう二週間か……」
「二週間と二日ですぅ!」
なんとか言葉を振ったものの、卑屈なのか、皮肉なのか。
王子役を、『自分』を任せているとは言え、かなり反抗的な口調である。
だが、彼は怒らない。注意しない。
申し訳ない気持ちで彼は、一杯だからだ。
持ち前の巨乳を持ち上げ、ため息を吐く。
(はああ…この身体になって二週間以上たっているのか…)
二週間前、事故が起きた。
魔術実験で、本来なら王族に被害が及ぶことはない筈だった。
しかし、興味本位の自業自得と言うか、間が悪かったというか――事故に巻き込まれ、眼が覚めたらルイジスは『ルイズ』になっていた。
正確には母君似のグラマーで、清爽な美女と変貌していたのだが、『女』になっていること事態が問題だった。
王家には様々な制約や掟がある。
剣は嗜むべきであり、功労者には褒美を与えよ。
その中の一つに、王族の娘が孕んだ場合、その相手は王の後継者候補になれる、と言うものだ。
この掟のお陰で、王族の女性はなんども襲われ――レイプされそうになった。
歴史上、全て未然に防げたことになっているが、王族の女性と恋に落ちた騎士が、王になったことは何度もあった。
しかも、今の王家にはルイジス以外の男子が居らず、『女』であることが、問題あり過ぎた。
早く元に戻りたい――が、隠密が義務付けられた上、事故のため、元に戻る方法を探すのも時間が掛かる。
今、直ぐに出来ることはなんの魔法も受けていない、つまり魔力的な影響を受けていない者の姿を変えること。
彼も悩んだし、国王も母君も困惑した。
しかし、そこで偶々、話を聞いてしまったのが、メイドの――カリーナである。
そこで国王はカリーナに、そしてルイジスに命じた。
カリーナ、暫くの間、お前が王子であり、我が息子だ。そして、お前は息子のメイドの『ルイズ』として暮らせ、良いな――である。
なにが良いのか、二人は困惑したまま、カリーナは、ルイジスに変身させられ、ルイジスはルイズと、言う新人メイドとして働くことに。
キャライラスト.しん
<つづく>
初出20100923
クジラの人魚姫5-7
(7)
(なんか――今日の皆は変すぎるねえ?)
いい加減に気付いてもいい頃合――もっとい、外部からの熱烈な求愛である。
しかし、クジラは気が付かない。
きょとん、と再度小動物を連想させる仕草で首を傾げてしまう。――彼にとっては同級生たちの行為は意味不明な物でしかないようである。
「よっ――大丈夫だったか?」
「セラ…クジラっ……く、ん……っ……あ、んっ」
(んひぁっ…!なっ!…いま…お腹…うごいた…?)
平手打ちしようか、馬鹿と大声で叫ぼうか、と悩んでいた筈だった。
けれども、顔を合わせた途端、身体に甘い疼きが巻き上がる。とくんっ、とくんっ、と心臓がざわめく。
妙に喉も渇き、気のせいだと思いたいのだが、子宮がきゅっ、と窄まった感触が下腹に生じた。
まさかと思うが嬉しいのだろうか、安堵しているのだろうか。――『クジラ』にブルマ姿を見られて。
(なん、…っで…どうし…て…っ?)
沙希以外で、しかも男に――中身は女でも――確かな恋慕を向けてしまうなんて。
知らずの内に心まで女の子化したのではないかと怖くなる。
同時にブルマという衣装のせいなのか、込み上げる火照りに意識が夢中になる。
まるで布地が当っている股座部分が勝手に湿っていくようで――。
「んっ…はぅっ…うん、んっ…あん…ん」
自分は女なのだと自覚した途端、熱を帯びた股間の切なさに、はうはうと甘い呼気をこぼしてまう。
途轍もなく吐き出した息が牝臭くて、捉えた嗅覚から電気が突き抜けた。
目尻も熱くなり、衝動的に体を隠すことに力を注ぐ。
「ひゃ…うぅっ!…ちょ…と…な、なによ…っ!…」
(ふぐぅ、ぅううっ!胸が…はじけるっ…あうっあうぅ!におい、ぷんぷん…あぐぅ!は、恥かしいよぉぉ!)
だが、身体が動くたびにたぷんったぷんっ、と胸が大きく布地を押し上げ、淫靡さに拍車がかかる。
脳裏にも、痺れがピリピリと押し寄せた。
深まる濃艶さに、またも反射的に虚勢を張るのだが、顔を含めた全体の弛緩を防げない。
どんな『白方セラス』に見えるのだろうか。
「あれ…?様子が変だな?なにかあったのか?」
眼前の『白方クジラ』が全身を紅潮させている理由を尋ねる。
気付いているのか、気付いていて知らないふりをしているのか。
――後者だと、もう立ち直れそうもなかった。
「~~!? なっなんでもないわよっ!」
反射的に絶叫してしまう。過剰な反応に内心、ドキドキと自分の感情を整理する。
もう怒りは無い。
そして――怒りが無い分、恥じらいが増した。
「ああ、ブルマが恥かしいのか?」
「見ないでよ…っ…ば、馬鹿…こ、こんなの…別に…見ても、つまらないでしょ…っ」
脳内ではカンフー映画のように相手をノックアウトしている自分がいる。
けれども現実では――『クジラ』の前では思うように体が動かない。
底抜けに内気になってしまう。
セシリウスと沙希が強要したライフサイクルは確実にクジラの男意識を奪っていた。

挿絵:倉塚りこ
そして、虚勢すらも張れないことに対する自己嫌悪を塗りつぶすかのように。
「うんうん、ちょっとエロエロだけど可愛いじゃん!似合ってるよ!」
――『クジラ』が褒めてくれた。
途端、家で着せ替えられたときのような、混浴してお互いの体を触りあったときのような、そして時折強制的に一緒のベッドで寝入るときのような堪えようのない恥かしさが脳裏に炸裂する。
許容を超えた居た堪れなさに、それが嬉しいことだと肉体が勘違いをしてしまう。
屈辱極まって涙ぐみ、満面を上気させながら、ビクンと身体ごと浮かれ上がる。
「~~えっ、エロエロっ!?な、なにを!?ひぅっ、へ、変なこと言うなぁ!!」
(ダメぇっ…!んあっ…あ、また…お腹…しきゅうが…反応…んっん、…)
ブルマを褒められて嬉しい。自分が認められ、ついついお尻が弾んでしまう。
羞恥心でも女体は敏感に、しかも気持ちよく反応するのだから手が付けられない。当惑を隠せない。
ぴっちりと張り付いているブルマの感触に、心地いい痺れが下腹に襲った。
危うく女に陥りかけて、とっさに思考を別のことへと向けさせる。
(そうだ…!女子共に弄られてヘンになっているんだ!!催眠術や瞳のこともあるしセシリウスが、何かしてるんだ!!きっと――入れ替わってるから俺っ!女っぽくなってるんだっ!!)
肉体が入れ替わること自体は、確かにとても異常なことだ。
だから、考え方は間違っていないとも言えるが――が、説得力の有無は別である。
「も、もう! 恥かしいこといわないでよっ!!け、けど…けど――」
知らず知らずの内に女に染まっていることを認めたくなくて、いつしか敏感な反応を『クジラ』にしてしまうことを隠したくて、何もかもを否定する。
「あ…ありが、とう……クジラ君」
「いいって、それよりも早く準備しようぜ」
「あっ――うん!」
だが、無条件で体が興奮するほどの喜悦を感じた事実は消せなかった。
妙に活き活きと、体が勝手に――乙女チックな――『セラス』を演じる。
いや、演じてしまう。
(ううぅ――もうヤダァァ!!早く終わってええ!!?)
動きやすい格好には違いないのだが、クジラは不自由な体に、否、複雑に様々な感情に発展させていく自分の心のあり方に苦悩した。
自然と両手が胸の膨らみや、下半身のブルマを隠そうとし、上着がぎゅむぎゅむっ、と軋んだ。
「え…?胸…そんなに谷間つくって…。なに、誘ってる?」
「そ、そんな…わけ…ないわよっ!ば、馬鹿!クジラくんの…イジワル!」
そんな『セラス』とは反対に、喜んで異性に成り切っていると思われるセシリウス。
目の前でへらへら、と笑っていることが、やはり屈辱と悔しさを大きく煽られた。
けれども指摘されたことは事実で、というか、このままでは体操すらもままならない。
(う、うう…俺は男!学校ならセシリウスだって襲わないだろし…は、恥かしがるほうが変…なんだ!恥かしがらなくてもいい、んだっ!!え、いっ!!)
数分の考えの末、クジラは胸を押さえていた手と、ブルマを隠していた手を離す。
太陽の光で濃厚に存在感を輝かせているブルマの上空で、巨大乳房が体操着の布地が切れてしまいそうなほどむにゅったぷっん、とエッチな乱舞を披露していた。
<つづく>
(なんか――今日の皆は変すぎるねえ?)
いい加減に気付いてもいい頃合――もっとい、外部からの熱烈な求愛である。
しかし、クジラは気が付かない。
きょとん、と再度小動物を連想させる仕草で首を傾げてしまう。――彼にとっては同級生たちの行為は意味不明な物でしかないようである。
「よっ――大丈夫だったか?」
「セラ…クジラっ……く、ん……っ……あ、んっ」
(んひぁっ…!なっ!…いま…お腹…うごいた…?)
平手打ちしようか、馬鹿と大声で叫ぼうか、と悩んでいた筈だった。
けれども、顔を合わせた途端、身体に甘い疼きが巻き上がる。とくんっ、とくんっ、と心臓がざわめく。
妙に喉も渇き、気のせいだと思いたいのだが、子宮がきゅっ、と窄まった感触が下腹に生じた。
まさかと思うが嬉しいのだろうか、安堵しているのだろうか。――『クジラ』にブルマ姿を見られて。
(なん、…っで…どうし…て…っ?)
沙希以外で、しかも男に――中身は女でも――確かな恋慕を向けてしまうなんて。
知らずの内に心まで女の子化したのではないかと怖くなる。
同時にブルマという衣装のせいなのか、込み上げる火照りに意識が夢中になる。
まるで布地が当っている股座部分が勝手に湿っていくようで――。
「んっ…はぅっ…うん、んっ…あん…ん」
自分は女なのだと自覚した途端、熱を帯びた股間の切なさに、はうはうと甘い呼気をこぼしてまう。
途轍もなく吐き出した息が牝臭くて、捉えた嗅覚から電気が突き抜けた。
目尻も熱くなり、衝動的に体を隠すことに力を注ぐ。
「ひゃ…うぅっ!…ちょ…と…な、なによ…っ!…」
(ふぐぅ、ぅううっ!胸が…はじけるっ…あうっあうぅ!におい、ぷんぷん…あぐぅ!は、恥かしいよぉぉ!)
だが、身体が動くたびにたぷんったぷんっ、と胸が大きく布地を押し上げ、淫靡さに拍車がかかる。
脳裏にも、痺れがピリピリと押し寄せた。
深まる濃艶さに、またも反射的に虚勢を張るのだが、顔を含めた全体の弛緩を防げない。
どんな『白方セラス』に見えるのだろうか。
「あれ…?様子が変だな?なにかあったのか?」
眼前の『白方クジラ』が全身を紅潮させている理由を尋ねる。
気付いているのか、気付いていて知らないふりをしているのか。
――後者だと、もう立ち直れそうもなかった。
「~~!? なっなんでもないわよっ!」
反射的に絶叫してしまう。過剰な反応に内心、ドキドキと自分の感情を整理する。
もう怒りは無い。
そして――怒りが無い分、恥じらいが増した。
「ああ、ブルマが恥かしいのか?」
「見ないでよ…っ…ば、馬鹿…こ、こんなの…別に…見ても、つまらないでしょ…っ」
脳内ではカンフー映画のように相手をノックアウトしている自分がいる。
けれども現実では――『クジラ』の前では思うように体が動かない。
底抜けに内気になってしまう。
セシリウスと沙希が強要したライフサイクルは確実にクジラの男意識を奪っていた。
挿絵:倉塚りこ
そして、虚勢すらも張れないことに対する自己嫌悪を塗りつぶすかのように。
「うんうん、ちょっとエロエロだけど可愛いじゃん!似合ってるよ!」
――『クジラ』が褒めてくれた。
途端、家で着せ替えられたときのような、混浴してお互いの体を触りあったときのような、そして時折強制的に一緒のベッドで寝入るときのような堪えようのない恥かしさが脳裏に炸裂する。
許容を超えた居た堪れなさに、それが嬉しいことだと肉体が勘違いをしてしまう。
屈辱極まって涙ぐみ、満面を上気させながら、ビクンと身体ごと浮かれ上がる。
「~~えっ、エロエロっ!?な、なにを!?ひぅっ、へ、変なこと言うなぁ!!」
(ダメぇっ…!んあっ…あ、また…お腹…しきゅうが…反応…んっん、…)
ブルマを褒められて嬉しい。自分が認められ、ついついお尻が弾んでしまう。
羞恥心でも女体は敏感に、しかも気持ちよく反応するのだから手が付けられない。当惑を隠せない。
ぴっちりと張り付いているブルマの感触に、心地いい痺れが下腹に襲った。
危うく女に陥りかけて、とっさに思考を別のことへと向けさせる。
(そうだ…!女子共に弄られてヘンになっているんだ!!催眠術や瞳のこともあるしセシリウスが、何かしてるんだ!!きっと――入れ替わってるから俺っ!女っぽくなってるんだっ!!)
肉体が入れ替わること自体は、確かにとても異常なことだ。
だから、考え方は間違っていないとも言えるが――が、説得力の有無は別である。
「も、もう! 恥かしいこといわないでよっ!!け、けど…けど――」
知らず知らずの内に女に染まっていることを認めたくなくて、いつしか敏感な反応を『クジラ』にしてしまうことを隠したくて、何もかもを否定する。
「あ…ありが、とう……クジラ君」
「いいって、それよりも早く準備しようぜ」
「あっ――うん!」
だが、無条件で体が興奮するほどの喜悦を感じた事実は消せなかった。
妙に活き活きと、体が勝手に――乙女チックな――『セラス』を演じる。
いや、演じてしまう。
(ううぅ――もうヤダァァ!!早く終わってええ!!?)
動きやすい格好には違いないのだが、クジラは不自由な体に、否、複雑に様々な感情に発展させていく自分の心のあり方に苦悩した。
自然と両手が胸の膨らみや、下半身のブルマを隠そうとし、上着がぎゅむぎゅむっ、と軋んだ。
「え…?胸…そんなに谷間つくって…。なに、誘ってる?」
「そ、そんな…わけ…ないわよっ!ば、馬鹿!クジラくんの…イジワル!」
そんな『セラス』とは反対に、喜んで異性に成り切っていると思われるセシリウス。
目の前でへらへら、と笑っていることが、やはり屈辱と悔しさを大きく煽られた。
けれども指摘されたことは事実で、というか、このままでは体操すらもままならない。
(う、うう…俺は男!学校ならセシリウスだって襲わないだろし…は、恥かしがるほうが変…なんだ!恥かしがらなくてもいい、んだっ!!え、いっ!!)
数分の考えの末、クジラは胸を押さえていた手と、ブルマを隠していた手を離す。
太陽の光で濃厚に存在感を輝かせているブルマの上空で、巨大乳房が体操着の布地が切れてしまいそうなほどむにゅったぷっん、とエッチな乱舞を披露していた。
<つづく>
クジラの人魚姫5-6
(6)
「幾らなんでも弛んでる!! 授業を何だと思ってるんだァ!!」
怒声で生徒に諭すのは教員生活15年の青木先生。
彼の第一印象は、体育教師の鑑というべき隆起した筋肉。そして、濃い顔つきである。
それこそ普通の先生が大人なら、青木先生は『鬼』のように――おっかない。
(さっきよりは全然マシだけど納得できねえっ!なんで俺まで怒られるんだよ!!)
そんな凶悪的な面に怯えることなく白方玖史羅は――今は『白方セラス』である少年はやるせなさで震える体を必死に押さえていた。
どう考えても、どう思考方向を変えても、合点がいかない。
無論、先生が悪いわけでもない――むしろ、感謝しているぐらいだ。
この傍若無人な者たちに罰をお与え下さるのだから。そう思いながら、クジラは半眼で。
「えへへ――あれぇ、なんでだろ?」
「青木先生が、怖くないや」
「――ダメぇ、あの感触が忘れられないィ」
女子たちを見たのだが――どうやら"あの"青木先生の怒号ですらも彼女たちを正気に戻せなかったようである。
何時もは涙目になる女子すら出ている。
それが今日に至ってはほぼ全ての女子が、ニタニタと白昼夢に浸っているではないか。
ひそひそ話が皆無な代わりに独り言が聞こえ、何故か見事に会話のようにシンクロしている。
学校一怖い青木先生も、流石に気持ちが悪そうに、心なしか姿勢が後ろ向きだ。
(こいつ等――罪悪感ってものがないのか……?)
『時間に遅れるから、着替えを手伝った』。
そんな大義名分<いいわけ>すらも護らず文字通り自分の肉体を堪能した女子たち。
追求すれば、女子全員で自分が『セラス』が可愛いから――"こうなった"と述べてくる始末。
敢えて分かりやすく言うなら、クジラはやさぐれた気分になりつつ――。
(…でも…仕返しするのも…無理だもんなあぁ…)
込み上げる怒りをどうにか納得させ、黙って『セラス』を演じていた。
誰も味方に成ってくれない以上、どんな屈辱でも甘んじて受けるしかないのだ。
入れ替わってから学び続けている忍ぶ心で、ひたすらに堪える。
例えば、ブルマ姿を複数人にお披露目している事実<いま>とか――を。
(くうぅんんっ!?この頼りなさや、恥かしさはなんなんだっ!?っていうか、どっから出してきたんだ!!こんなものおぉぉ!!)
ピッタリと臀部と股に癒着するブルマ。
なんという破壊力だろうか。時間が経つに連れ、羞恥心が肉体に込み上がった。
唯一ブルマを着ている屈辱か、あるいは装着側へとなってしまったことへの恥ずかしさか。
または、そんな姿を沙希やセシリウスどころか、クラスメイトにさえ見られている情けなさか
ぴくん、ぴくん、と腰を中心に肉体が軽い痙攣を続ける。
(あっ…お腹…疼くぅ…!い、いや…なのにぃ…っ)
ぬちゅり、ぬくっん…。
理屈ではない――ピッタリ張り付く布地の締め付けに後押しされ、気恥ずかしさに子宮が震える。
思わず感じて、愛汁をこぼさないかと不安がり、『白方セラス』は無我夢中で、身を縮めた。
(ああ――っ、もう!!早く終わって――!!)
『体育』の時間が一刻も早く終了して欲しい。
ストレスと緊張に嫌でも尿意を気にしてしまう。
そして巨乳故に布地のほとんどが上部へと集まり、すべらかなお臍が外界に溢れていた。
冷気がひゅうひゅうっ、と下腹を撫で回すたびに、本気で尿意が心配になる。
(ふぇ…こ、こんな…あっ!まだ大丈夫…な、筈ぅ…!それよりも、この視線、なんとか…しないと…)
無駄の足掻きと知りつつ、上部の布で股間を隠そうとするも、逆にただでさえ溢れ返っている巨乳を強調することになり、むちんっと、肉房が蠢いた。
クラスメイトは勿論、青木すらも頬を赤く染め上げる。
「ああ――こほっン!!と、兎に角だ!!もう時間もほとんどなくなってしまったので男子共々、基礎運動にする!!まずはペアを組んでの体操だ。……あーそこの――白方セラス!!」
「はっ――はい!?」
まさかの特別点呼。感謝しているとはいえ、怖い者は怖く、身体にほんの少し別の恐怖が加わる。
おまけに――。
(なんでもいいけど……早くしろ~~っ!!)
注目されている。いや、これは見るなど、生易しいものではない。
視姦そのものだ。
少なくとも彼自身には、そうとしか思えなかった。体が恥ずかしさで、さらに紅潮する。
しかし、先生からの指示は未だにない。
「……?……あ、あの――っ」
「ん、ああっ!?すまん!!」
「……?」
中々、こない言葉もさる事ながら、その態度はもっと謎めいていた。
声をかけるまで、ボーと顔を赤らめ、何かに見惚れているように抜け切っていた。
一体――何に魅了されていたのだろうか。
訳も分からず、『セラス』はブルマ姿で先生を見上げる。
「――っ!!取りあえず、だ!!ブルマのことはいいとして女子だけだと人数が合わん!!偶然にも海風の奴も休んでいるからお前は男子と……親戚の白方と組んで準備体操してくれ……」
「はっはぁ――『ちょっと待ったああ!!?』――ひぁあッ!?」
能天気に青木先生の仕草を考えていたクジラはもうどうでもいいや、と指示に従おうとした。――親戚の『クジラ』に文句を一つも言ってやるつもりで。
それに数が合わないから男子と女子が入り混じるなどけっこうある。
だが、なぜかその場にいる多くの人物が絶叫する。そして、反発へと加速した。
「なんで白方!?俺っ!!俺っの方がいいです!!」
「先生!!俺にィ、…チャンスをおお!!」
「白方君よりも僕の方が彼女に相応しい……っ!」
「ああ、ブルマ――ぶる…まぁ…」
全体的に歪んだ興奮を催す男子諸君。そこに『白方 玖史羅』が――。
「当然だろ?"当然"――」
勝ち誇った笑みで自慢する。胸まで張り出し、極めて傲岸不遜だ。
これには男子も、そして女子にも嫉妬と怒りを煽られた。
「野蛮な男子にセラスさんを譲るなら私が男子と組みますぅ!!」
「そうよ――セラスちゃんの体はあたしたちのモノなんだからっ!!」
「男子に渡したらヤバすぎます!!」
「先生!!教員生活を終わりにしてもいいんですか!!」
やたら密接な関係のような口ぶりで、先生に講義をする女子諸君。
どうやら更衣室の淫らな行いは、本当に友情でしかなかったらしい。
異性の精神構造の違い――だと思い込みたい彼は、ひっそりと涙を流した。
そんな仕草に気付いたかは知らないが、論争がさらに過激になる。
「黙れ女子!!白方さんのブルマ姿でどんなエロいことしたんだ!!あの疲れとテレぐあいは尋常じゃないぞっ!?」
「ふン!!卑猥な妄想しないでくれる?あんた達みたいのと一緒にしないでっ!!――つうか、妄想でも私たちのセラスちゃんをけがすなァァァ!」
「お前たちが独占するから妄想するしかないんだろうがああ!!俺たちだってお知り合いになりたいんじゃああ!!こら!ナス!!」
そうだそうだ、と、そうよそうよ――の、ぶつかり合い。非常に迷惑だ。
その場で唯一皆と気持ちに共鳴できない『セラス』は頭を抱え込む。
そして自然的には収まりつかない状況に、ありったけの思いを込めて青木先生を見やる。
うるっ、と涙を滲ませた瞳で、頬を赤らめて、様子を伺う。
(青木先生――何とかしてくれ)
目線だけで鼻血を噴出してしまうほど牝々しい魅惑の瞳。
少なくとも青木――そして、その視線に気が付いた幾人かが、劣情の余りに硬直する。
「~~っ!?ええィっ!!ウルサイ、ぞっ!女子よりも早かったとはいえ、白方以外十分も遅れで来た男子が我が侭いうなっ!!白方と白方セラスは後ろに行けっ!!」
ああ、この世には残酷な人がいる――彼らと彼女らは、そう思った。
外見は、無様ではあるが、そこには一種の絆が生まれる。
男子も女子も地面にしな垂れて、落ち込んでいた。
<つづく>
「幾らなんでも弛んでる!! 授業を何だと思ってるんだァ!!」
怒声で生徒に諭すのは教員生活15年の青木先生。
彼の第一印象は、体育教師の鑑というべき隆起した筋肉。そして、濃い顔つきである。
それこそ普通の先生が大人なら、青木先生は『鬼』のように――おっかない。
(さっきよりは全然マシだけど納得できねえっ!なんで俺まで怒られるんだよ!!)
そんな凶悪的な面に怯えることなく白方玖史羅は――今は『白方セラス』である少年はやるせなさで震える体を必死に押さえていた。
どう考えても、どう思考方向を変えても、合点がいかない。
無論、先生が悪いわけでもない――むしろ、感謝しているぐらいだ。
この傍若無人な者たちに罰をお与え下さるのだから。そう思いながら、クジラは半眼で。
「えへへ――あれぇ、なんでだろ?」
「青木先生が、怖くないや」
「――ダメぇ、あの感触が忘れられないィ」
女子たちを見たのだが――どうやら"あの"青木先生の怒号ですらも彼女たちを正気に戻せなかったようである。
何時もは涙目になる女子すら出ている。
それが今日に至ってはほぼ全ての女子が、ニタニタと白昼夢に浸っているではないか。
ひそひそ話が皆無な代わりに独り言が聞こえ、何故か見事に会話のようにシンクロしている。
学校一怖い青木先生も、流石に気持ちが悪そうに、心なしか姿勢が後ろ向きだ。
(こいつ等――罪悪感ってものがないのか……?)
『時間に遅れるから、着替えを手伝った』。
そんな大義名分<いいわけ>すらも護らず文字通り自分の肉体を堪能した女子たち。
追求すれば、女子全員で自分が『セラス』が可愛いから――"こうなった"と述べてくる始末。
敢えて分かりやすく言うなら、クジラはやさぐれた気分になりつつ――。
(…でも…仕返しするのも…無理だもんなあぁ…)
込み上げる怒りをどうにか納得させ、黙って『セラス』を演じていた。
誰も味方に成ってくれない以上、どんな屈辱でも甘んじて受けるしかないのだ。
入れ替わってから学び続けている忍ぶ心で、ひたすらに堪える。
例えば、ブルマ姿を複数人にお披露目している事実<いま>とか――を。
(くうぅんんっ!?この頼りなさや、恥かしさはなんなんだっ!?っていうか、どっから出してきたんだ!!こんなものおぉぉ!!)
ピッタリと臀部と股に癒着するブルマ。
なんという破壊力だろうか。時間が経つに連れ、羞恥心が肉体に込み上がった。
唯一ブルマを着ている屈辱か、あるいは装着側へとなってしまったことへの恥ずかしさか。
または、そんな姿を沙希やセシリウスどころか、クラスメイトにさえ見られている情けなさか
ぴくん、ぴくん、と腰を中心に肉体が軽い痙攣を続ける。
(あっ…お腹…疼くぅ…!い、いや…なのにぃ…っ)
ぬちゅり、ぬくっん…。
理屈ではない――ピッタリ張り付く布地の締め付けに後押しされ、気恥ずかしさに子宮が震える。
思わず感じて、愛汁をこぼさないかと不安がり、『白方セラス』は無我夢中で、身を縮めた。
(ああ――っ、もう!!早く終わって――!!)
『体育』の時間が一刻も早く終了して欲しい。
ストレスと緊張に嫌でも尿意を気にしてしまう。
そして巨乳故に布地のほとんどが上部へと集まり、すべらかなお臍が外界に溢れていた。
冷気がひゅうひゅうっ、と下腹を撫で回すたびに、本気で尿意が心配になる。
(ふぇ…こ、こんな…あっ!まだ大丈夫…な、筈ぅ…!それよりも、この視線、なんとか…しないと…)
無駄の足掻きと知りつつ、上部の布で股間を隠そうとするも、逆にただでさえ溢れ返っている巨乳を強調することになり、むちんっと、肉房が蠢いた。
クラスメイトは勿論、青木すらも頬を赤く染め上げる。
「ああ――こほっン!!と、兎に角だ!!もう時間もほとんどなくなってしまったので男子共々、基礎運動にする!!まずはペアを組んでの体操だ。……あーそこの――白方セラス!!」
「はっ――はい!?」
まさかの特別点呼。感謝しているとはいえ、怖い者は怖く、身体にほんの少し別の恐怖が加わる。
おまけに――。
(なんでもいいけど……早くしろ~~っ!!)
注目されている。いや、これは見るなど、生易しいものではない。
視姦そのものだ。
少なくとも彼自身には、そうとしか思えなかった。体が恥ずかしさで、さらに紅潮する。
しかし、先生からの指示は未だにない。
「……?……あ、あの――っ」
「ん、ああっ!?すまん!!」
「……?」
中々、こない言葉もさる事ながら、その態度はもっと謎めいていた。
声をかけるまで、ボーと顔を赤らめ、何かに見惚れているように抜け切っていた。
一体――何に魅了されていたのだろうか。
訳も分からず、『セラス』はブルマ姿で先生を見上げる。
「――っ!!取りあえず、だ!!ブルマのことはいいとして女子だけだと人数が合わん!!偶然にも海風の奴も休んでいるからお前は男子と……親戚の白方と組んで準備体操してくれ……」
「はっはぁ――『ちょっと待ったああ!!?』――ひぁあッ!?」
能天気に青木先生の仕草を考えていたクジラはもうどうでもいいや、と指示に従おうとした。――親戚の『クジラ』に文句を一つも言ってやるつもりで。
それに数が合わないから男子と女子が入り混じるなどけっこうある。
だが、なぜかその場にいる多くの人物が絶叫する。そして、反発へと加速した。
「なんで白方!?俺っ!!俺っの方がいいです!!」
「先生!!俺にィ、…チャンスをおお!!」
「白方君よりも僕の方が彼女に相応しい……っ!」
「ああ、ブルマ――ぶる…まぁ…」
全体的に歪んだ興奮を催す男子諸君。そこに『白方 玖史羅』が――。
「当然だろ?"当然"――」
勝ち誇った笑みで自慢する。胸まで張り出し、極めて傲岸不遜だ。
これには男子も、そして女子にも嫉妬と怒りを煽られた。
「野蛮な男子にセラスさんを譲るなら私が男子と組みますぅ!!」
「そうよ――セラスちゃんの体はあたしたちのモノなんだからっ!!」
「男子に渡したらヤバすぎます!!」
「先生!!教員生活を終わりにしてもいいんですか!!」
やたら密接な関係のような口ぶりで、先生に講義をする女子諸君。
どうやら更衣室の淫らな行いは、本当に友情でしかなかったらしい。
異性の精神構造の違い――だと思い込みたい彼は、ひっそりと涙を流した。
そんな仕草に気付いたかは知らないが、論争がさらに過激になる。
「黙れ女子!!白方さんのブルマ姿でどんなエロいことしたんだ!!あの疲れとテレぐあいは尋常じゃないぞっ!?」
「ふン!!卑猥な妄想しないでくれる?あんた達みたいのと一緒にしないでっ!!――つうか、妄想でも私たちのセラスちゃんをけがすなァァァ!」
「お前たちが独占するから妄想するしかないんだろうがああ!!俺たちだってお知り合いになりたいんじゃああ!!こら!ナス!!」
そうだそうだ、と、そうよそうよ――の、ぶつかり合い。非常に迷惑だ。
その場で唯一皆と気持ちに共鳴できない『セラス』は頭を抱え込む。
そして自然的には収まりつかない状況に、ありったけの思いを込めて青木先生を見やる。
うるっ、と涙を滲ませた瞳で、頬を赤らめて、様子を伺う。
(青木先生――何とかしてくれ)
目線だけで鼻血を噴出してしまうほど牝々しい魅惑の瞳。
少なくとも青木――そして、その視線に気が付いた幾人かが、劣情の余りに硬直する。
「~~っ!?ええィっ!!ウルサイ、ぞっ!女子よりも早かったとはいえ、白方以外十分も遅れで来た男子が我が侭いうなっ!!白方と白方セラスは後ろに行けっ!!」
ああ、この世には残酷な人がいる――彼らと彼女らは、そう思った。
外見は、無様ではあるが、そこには一種の絆が生まれる。
男子も女子も地面にしな垂れて、落ち込んでいた。
<つづく>
クジラの人魚姫5-5
(5)
「やン、ろろひィ、ろ!!(やめろおお!!)」
沙希が作り出した雰囲気に呑まれて――女子たちは仕方なく『セラス』に襲っていると思っていた。
だから真剣に訴え、哀願すれば一人や二人ほど助けてくれるかもと縋る上目遣いをした。
けれども、実際には甘い牝臭を放つ『セラス』の濃艶さに、彼女たちは再び魅了されただけである。
真剣な命乞いは、彼女たちにとってはただの可愛らしい表情でしかなかった。
「めろろ、ん!!んんっぐもょン!!(やめ…ん!! このぉ…っああ!!)」
ビンっ、とほぼ同時に別々の指がクジラの二つの乳首を跳ね除けた。
先程の肉体弄くりの余韻で、肌が余計に敏感だ。
重点的に胸部を触ってくる、揉んでくる、抓ってくる。余りにも大きいおっぱいは、格好の的だ。
やばいぐらいジリジリ痛み出し――甘美が脳に詰め掛ける。
(ひぃあいぃいぃぃ!やめ…!お前らいい加減にぃぃ!!)
むにゅっ、にゅぶりっ、むににぃぃっ、むっにん!
セシリウスや沙希ほどではないが、無邪気な分、手が多い分だけ嫌な疼きが乳房に満ちる。
火照った肺によって、吐息が淫靡に蒸し上がる。
惨めさと屈辱――クジラは本気で、なにもかも嫌になった。
おまけに――。
「んぎぉろゥ!? (ひゃあ!?)」
今までの中で、格段に厭らしい撫で方が股間に生じる。
嫌悪感が極まって、涙が滲んでしまう。そして涎と共に、肌を伝い始めた。
「みぉごぉンンンっ!!んひあろメぇ!?(沙希ィィ!!これッ、ああッ!!?)」
もはやセクハラを超えた行為にクジラは崩れた嬌声で沙希に訴えた。
無論、幼馴染は助けない。
巧みに彼の舌先の動きを指で操り、けして言動を許してくれなかった。
(んあっ!?幾ら、なんでもこれは……いけないだろう!!――ひぁああ!!?)
今までの屈辱は認めてやろう。
納得など出来ないが、それでもクジラは寛大にも沙希や女子たちを許した。
けれども、現在進行形で進む一つの手だけは許せるものではない。
恥骨をを擽りつつ、なんとショーツの上から女陰をピンポイントに摩るのだ。
最早、否――ますます着替えではない。
「さばァ、ろひィ!! んばァっ!!んめェ!!んあ、ダ、メひょ、ロロ!?(沙希イィ!!気がっ!!付いてぇぇ!!あひぃ…ダ、メえええぇ!?)」
一瞬だけ――入った。
誰かの指が、シューツに隠された恥部に侵入する。
首一つ、満足に動かせないまま恐怖と嫌な予感に、身を屈めて下半身を観察しようとした。
しかし、そこに見えるのは、セクシーランジュリーをはち切れんばかりに上下左右に押し広げている
二つの球体。
自前の巨乳が、目先の光景を遮り、とても股座など見えなかった。
(んあっ!! しよぉ――あああ?!!)
無理な捻りで骨格が悲鳴を上げて、本当に痛い。
その上――微かでも、ほんの微かでも――股を覆う下着がぬちょっ、と湿っていた感触までする。
誰かに気付かれてしまったかと、嘆くしかない。――いや、違う。
「もひぉっ!?ああもょ!?(誰!?誰だ!?)」
秘部の内部が湿っていた事実を知るものが、この中に一人だけ居る。今度は逆にクジラが血走った瞳で周囲を見やった。
けれども何十人といる中、犯人を見つけ出すのは容易でなく、しかも全員が発情しているかのような昂ぶりをしているので、ますます検討が付けられない。
(うぁっ!はぐぅっ!!へ、変態ぃ…女っていわるぅ!きっといわれちゃって、…沙希にも!さ、沙希!ひぁやんっ!ひぃ…いや、だそんなの…っ)
痴態を暴露されるかも、と被虐的に考えている最中でも、女子たちは『セラス』の肉体に殺到する。
どうやら下着の牝臭い湿気もそこまで――外見的には――目立つものではないらしい。
騒ぎは無かった。
もっとも、それでも体は女子たちの玩具のままである。
(うわ、ぁっ!!誰……なんだああ!?ひゃぅうんっ!だからおっぱいそんな強くぅ!揉むなっ!!)
激しい女同士のじゃれ付きに、弱気の余りに理性が弛んだ。
この場で一番豊満な美女は、この場で一番稚拙な精神だった。
だから、気付かない。
自分の背後からぬちゃ、れろ、ぬちゃり、と響く舌舐めずり音を。
「ふふ、セラスちゃん――ったら、厭らしいィ――」
ペロペロと一本の指ををしゃぶる少女。沙希。
彼女こそが、クジラの――『セラス』の女性性器を弄った張本人だった。
周辺の女子たちを遥かに圧倒する淫行を達成したその指を愛おしげに舐める。
女王様――と呼ぶに相応しい空気を纏う彼女は妖艶さと言う点では、クジラをも凌駕していた。
「むむン!!あむひぉろ、ろっ!?んんっ――あひィ!!?(ヤダ!!ヤダあああ!? やめ…んっあ!?)」
十分弱ほどは経過しただろう集団セクハラ。
しかし、目的のブルマはメインの下どころか、上の普通着すらも装着しておらず――無数の手による陵辱が続いていた。
「んひぅんんっ…むぅ!んぶぅぃっ…くんっん!(さき…助け…!んあっ…ひゃう!」
もはやブルマを穿いてもいいから助けてくれっ、と彼は観念して助けを心で呼んだ。
その相手が首謀者であることを重々知りつつ、どうしても信じたくなり、念を送る。
「あっ、髪が邪魔になっちゃうからリボンを付けようかァ――私の袋から誰か、とってっ」
だが、しかし――やはり、助けてはくれずに、逆に追い討ちを仕掛けてきた。
沙希の声に操られ、クジラの体を弄れない幾人かが競争する。
そして勝ち取った一人が、可愛らしいリボンを携え、近寄ってきた。
「じゅあ私がヤルねっ!ああ!!もう!!髪も超イイ!!なにこれ!!」
「うふわぁーん!!さみィろ!!んむゥゥっ!!(うわーん!!沙希の!!バッカぁぁ!!)」
蕩けた体で抗おうとするのだが、朦朧とし始めた脳では拙い癇癪しか出来ない。
女陰の肉穴に指を入れたのが沙希であることに気付かない上――沙希がリボンを持っている不自然さにも、まったく気が付けない。
彼女が髪をまとめるのは、何時も紐タイプの髪止めである事実を、彼は忘れていたのだ。
恥ずかしさやら、火照った体の快感で頭が回らず中身が子供な、いい証拠である。
(ふぇぇ~~!ひぃぃんん――っ!!)
そして、ブルマ姿に可愛らしいリボンまで加わって、『白方セラス』は可愛らしく改造されてしまう。
結局――早く準備した筈の女子たちは二十分以上も遅刻してしまい、教師のお怒りを受けることに。
けれども女子生徒たちは甘んじて、怒号を受けていた。
ただ一人を除いて。
「…は…恥かしい…な、んで…おれ…ぶるまっ…。うっ、…うぅ…っ!」
一人だけブルマで、一人だけ抜き出たグラマーな体を持つ――『白方セラス』その人だった。
<つづく>
「やン、ろろひィ、ろ!!(やめろおお!!)」
沙希が作り出した雰囲気に呑まれて――女子たちは仕方なく『セラス』に襲っていると思っていた。
だから真剣に訴え、哀願すれば一人や二人ほど助けてくれるかもと縋る上目遣いをした。
けれども、実際には甘い牝臭を放つ『セラス』の濃艶さに、彼女たちは再び魅了されただけである。
真剣な命乞いは、彼女たちにとってはただの可愛らしい表情でしかなかった。
「めろろ、ん!!んんっぐもょン!!(やめ…ん!! このぉ…っああ!!)」
ビンっ、とほぼ同時に別々の指がクジラの二つの乳首を跳ね除けた。
先程の肉体弄くりの余韻で、肌が余計に敏感だ。
重点的に胸部を触ってくる、揉んでくる、抓ってくる。余りにも大きいおっぱいは、格好の的だ。
やばいぐらいジリジリ痛み出し――甘美が脳に詰め掛ける。
(ひぃあいぃいぃぃ!やめ…!お前らいい加減にぃぃ!!)
むにゅっ、にゅぶりっ、むににぃぃっ、むっにん!
セシリウスや沙希ほどではないが、無邪気な分、手が多い分だけ嫌な疼きが乳房に満ちる。
火照った肺によって、吐息が淫靡に蒸し上がる。
惨めさと屈辱――クジラは本気で、なにもかも嫌になった。
おまけに――。
「んぎぉろゥ!? (ひゃあ!?)」
今までの中で、格段に厭らしい撫で方が股間に生じる。
嫌悪感が極まって、涙が滲んでしまう。そして涎と共に、肌を伝い始めた。
「みぉごぉンンンっ!!んひあろメぇ!?(沙希ィィ!!これッ、ああッ!!?)」
もはやセクハラを超えた行為にクジラは崩れた嬌声で沙希に訴えた。
無論、幼馴染は助けない。
巧みに彼の舌先の動きを指で操り、けして言動を許してくれなかった。
(んあっ!?幾ら、なんでもこれは……いけないだろう!!――ひぁああ!!?)
今までの屈辱は認めてやろう。
納得など出来ないが、それでもクジラは寛大にも沙希や女子たちを許した。
けれども、現在進行形で進む一つの手だけは許せるものではない。
恥骨をを擽りつつ、なんとショーツの上から女陰をピンポイントに摩るのだ。
最早、否――ますます着替えではない。
「さばァ、ろひィ!! んばァっ!!んめェ!!んあ、ダ、メひょ、ロロ!?(沙希イィ!!気がっ!!付いてぇぇ!!あひぃ…ダ、メえええぇ!?)」
一瞬だけ――入った。
誰かの指が、シューツに隠された恥部に侵入する。
首一つ、満足に動かせないまま恐怖と嫌な予感に、身を屈めて下半身を観察しようとした。
しかし、そこに見えるのは、セクシーランジュリーをはち切れんばかりに上下左右に押し広げている
二つの球体。
自前の巨乳が、目先の光景を遮り、とても股座など見えなかった。
(んあっ!! しよぉ――あああ?!!)
無理な捻りで骨格が悲鳴を上げて、本当に痛い。
その上――微かでも、ほんの微かでも――股を覆う下着がぬちょっ、と湿っていた感触までする。
誰かに気付かれてしまったかと、嘆くしかない。――いや、違う。
「もひぉっ!?ああもょ!?(誰!?誰だ!?)」
秘部の内部が湿っていた事実を知るものが、この中に一人だけ居る。今度は逆にクジラが血走った瞳で周囲を見やった。
けれども何十人といる中、犯人を見つけ出すのは容易でなく、しかも全員が発情しているかのような昂ぶりをしているので、ますます検討が付けられない。
(うぁっ!はぐぅっ!!へ、変態ぃ…女っていわるぅ!きっといわれちゃって、…沙希にも!さ、沙希!ひぁやんっ!ひぃ…いや、だそんなの…っ)
痴態を暴露されるかも、と被虐的に考えている最中でも、女子たちは『セラス』の肉体に殺到する。
どうやら下着の牝臭い湿気もそこまで――外見的には――目立つものではないらしい。
騒ぎは無かった。
もっとも、それでも体は女子たちの玩具のままである。
(うわ、ぁっ!!誰……なんだああ!?ひゃぅうんっ!だからおっぱいそんな強くぅ!揉むなっ!!)
激しい女同士のじゃれ付きに、弱気の余りに理性が弛んだ。
この場で一番豊満な美女は、この場で一番稚拙な精神だった。
だから、気付かない。
自分の背後からぬちゃ、れろ、ぬちゃり、と響く舌舐めずり音を。
「ふふ、セラスちゃん――ったら、厭らしいィ――」
ペロペロと一本の指ををしゃぶる少女。沙希。
彼女こそが、クジラの――『セラス』の女性性器を弄った張本人だった。
周辺の女子たちを遥かに圧倒する淫行を達成したその指を愛おしげに舐める。
女王様――と呼ぶに相応しい空気を纏う彼女は妖艶さと言う点では、クジラをも凌駕していた。
「むむン!!あむひぉろ、ろっ!?んんっ――あひィ!!?(ヤダ!!ヤダあああ!? やめ…んっあ!?)」
十分弱ほどは経過しただろう集団セクハラ。
しかし、目的のブルマはメインの下どころか、上の普通着すらも装着しておらず――無数の手による陵辱が続いていた。
「んひぅんんっ…むぅ!んぶぅぃっ…くんっん!(さき…助け…!んあっ…ひゃう!」
もはやブルマを穿いてもいいから助けてくれっ、と彼は観念して助けを心で呼んだ。
その相手が首謀者であることを重々知りつつ、どうしても信じたくなり、念を送る。
「あっ、髪が邪魔になっちゃうからリボンを付けようかァ――私の袋から誰か、とってっ」
だが、しかし――やはり、助けてはくれずに、逆に追い討ちを仕掛けてきた。
沙希の声に操られ、クジラの体を弄れない幾人かが競争する。
そして勝ち取った一人が、可愛らしいリボンを携え、近寄ってきた。
「じゅあ私がヤルねっ!ああ!!もう!!髪も超イイ!!なにこれ!!」
「うふわぁーん!!さみィろ!!んむゥゥっ!!(うわーん!!沙希の!!バッカぁぁ!!)」
蕩けた体で抗おうとするのだが、朦朧とし始めた脳では拙い癇癪しか出来ない。
女陰の肉穴に指を入れたのが沙希であることに気付かない上――沙希がリボンを持っている不自然さにも、まったく気が付けない。
彼女が髪をまとめるのは、何時も紐タイプの髪止めである事実を、彼は忘れていたのだ。
恥ずかしさやら、火照った体の快感で頭が回らず中身が子供な、いい証拠である。
(ふぇぇ~~!ひぃぃんん――っ!!)
そして、ブルマ姿に可愛らしいリボンまで加わって、『白方セラス』は可愛らしく改造されてしまう。
結局――早く準備した筈の女子たちは二十分以上も遅刻してしまい、教師のお怒りを受けることに。
けれども女子生徒たちは甘んじて、怒号を受けていた。
ただ一人を除いて。
「…は…恥かしい…な、んで…おれ…ぶるまっ…。うっ、…うぅ…っ!」
一人だけブルマで、一人だけ抜き出たグラマーな体を持つ――『白方セラス』その人だった。
<つづく>
クジラの人魚姫5-4
(4)
彼女たちの勢いに負けたのか、それとも同情で譲ったのか。
沙希の両腕の感触は何時の間にか消えていた。
だが、逆に複数の手がクジラの怪物おっぱいをしゃぶるように攻め立て始める。
数人――少なくとも4,5人が囲い、指を突っ込んできた。
「うはァ――っ!!欲しい!!この腰周りィィ!!欲しい!!」
「お尻も、美味しそうゥゥ。――ふっくらパンみたいっ!」
「ちょっと、あたしたちにも回しなさいよ!!」
「ダメ……早い者勝ち」
勝ち気な子に弱気な子に真面目な学級委員風の女子まで群がって、肉体を苛めている。
彼女たちは気付いていないのか、気付いてやっているのか、分からない。
だが、クジラの魅力に当てられた彼女たちは知らず内に自身の行為をエスカレートしていく。
「きゃン!?ちょ、ちょっと!!これ、着替え違ァ――う!?」
セクハラ――だ。
これは、セクハラそのものだ。
幾つモノ女子の手が、クジラを捏ね繰り回す。
キュンと子宮が疼きだし、膨大な恥かしさに絶望が圧し掛かる。
「やめっ…ひやっ…すかーと……シャツも…もうないよぉぉ!!」
(なんで、シャツとスカートを外したのに――まだ体を弄るんだァァ!?)
臀部の頼りない柔肌を抓り、ウエストを難癖を付けるように何回も摩る。
巨乳に至っては乳首すらも摘んで遊んでいた。
ティッシュを取るかのように軽い動作だが、敏感な性感帯にそれはないだろう、と声なく絶叫する。

挿絵.倉塚りこ
「ひゃっ…みんなっ…おちゅつっ…んっ!」
「無理ィィ!柔らかいよぉ!すべすべだよぉ!」
「ご利益あるかも!これならきっと私もグラマーに!」
「そんなわけ…くっ、ひぃぃっ、ん、ん!ちょ…乳首…誰え、ぇっ…!?」
ブラジャーとショーツ姿にも関わらず、女子どもは未だに『セラス』の肉体に遊び耽っていた。
巨乳を、腰を、お尻を、否。
女体のスリーポイントだけでなく、髪も肌もうなじも背筋も――耳裏にまで手が這い寄ってくる。
舐めるかのごとき苛烈な愛撫に、脱力的な痺れが全身に突き抜けた。
「くぅ、きゃうぅ…っ!」
直後、糸が切れたように座り込むと、足の付け根に地面がむちっ、と密着する。
悩ましい吐息をこぼし、身じろいだ。
「ハァハァ、――え?まだ、体操服に着替えて無いじゃん!?」
「早くしないと、遅れちゃうよ?なんで着替えていないの…?」
「なに座ってんのよ。ほら――立った! 立った!」
下着姿で息切れを起こしているクジラに、心配や罪悪感をまったく感じない集団。
彼女たちは、ただただ可愛く綺麗なセシリウスの姿をしたクジラを――『弄りたいのだ』。
「ヒィィ――ひぁっ?!きゃぅ、っああぁぁ!!」
それこそ本物の少女のような悲鳴を張り上げ、クジラは無数の魔の手から逃げようとした。
だが、数も力も敵が上で、赤子のように身体を持ち上げられ、無理矢理に立たされてしまう。
「アレ、これ――ぶ、ブルマ!?」
刹那、異常な熱気の篭る女子更衣室に絶叫が響いた。
クジラから奪った袋を物色していた女の子が、突如として狼狽している。 一時的に注目はクジラから、その少女に移る。
「ぶ…ルマ…? はへ、え!? ぶるうぅまああッ!?」
深々とした紺色が妙に艶やかで、小さな布地の物体。
男の精神を宿している『セラス』は否応なく、邪な気分を煽られる。皆の注目を集める少女の手には確かに――ブルマが存った。
(――なんでブルマがあァ!?)
渡されただけで、中身は知らなかった。
何度も酷い目に合わされた彼だったが、心地いい時間に気が緩んでしまったのだろう。
中身のチェックを怠り、謀られた――。
と、思うも、ずるずると彼の周りに『囲い』が出来上がっていく。
「えっ、うそォ――っ。なんでブルマがっ!?」
「ブルマっ!?」
「まさか――しゅ、趣味ィ!?」
今まで自分たちの行いを差し置いてクジラを、『セラス』を危険人物として見やる女子たち。
ブルマの出現に一番驚愕し、戸惑っているのは彼なのだが、生憎と彼女たちには関係ない。
最悪の展開である。
もっとも、一部始終を知り、尚且つ嬉々した衝動を押さえられない人物がいた。
クジラの幼馴染である――麻倉 沙希だ。
「ああ、セラスちゃんの前の学校ではブルマだったらしいよぉ~」
抜け抜けと真顔を幼馴染が呟く。
「え、本当っ」
「――って、いうかなんで沙希が知ってんの?なんだか仲も良いし、もしかして前から、知り合い?」
「うん、そうだよ」
「へぇ~~、にしてもブルマ採用している所って在ったんだ……」
変態扱いされずに済む流れなのだが、なぜか未だ危機感に胃がキリキリと痛み出す。
そこで不意に首を傾け、きょとんと『セラス』は考え込む。
(アレ――なに?この…流、れ…?へっ?じゃあ俺が……)
――ブルマ着るってことじゃん。
血の気がサァァ、と引いた。
ブルマ姿をしている『セラス』を想像し、未来の戦慄が先取りされて、全身が鳥肌立つ。
(落ち着け!落ち着け!そっ、そうだ――気分が悪くなった、といえば……)
『セラス』という仮面を強く顔に癒着し、クジラは覚悟を決めた。
嘘でも押し通すしかない――と、男のプライドを守る為に、減退した気力を振り絞る。
「あ、あのォ――あたし!!」
幸い、まだ女子たちはブルマというマニアックな異物の対応に困っている。
今までとは違い、隙だらけ。
「あ、あたし…気分が悪くなちゃった。だ、誰か保健室まで――んきォろ!?」
これならと大丈夫かと思われた――が、敵は残っていた。
むぐにゅんっ、と胸を持ち上げるように拉げ、喚こうとした口を指の根元ほど突っ込んで塞ぐ。
「ホラ、もう時間がないよ。 早く着替えさせて上げないといけないよ?みんな!」
幼馴染――と言う、難攻不落の敵が、クジラの行動を予測し、逃走を妨げる。
胸を弄られる衝動的な快感に声が狂った。
いや、それ以前に口腔に侵入した二本の指が舌の動きを束縛し、情け容赦なく言葉を破壊する。
「んびぃひょろろ!?んっ!?んぶぅ!!(なにするんだ!?あっ!?だ、め!!)」
沙希の片手が、双乳の片方を圧迫し――もう片方が、クジラの口唇にぬじゅるっ、と注がれた。
乳を揉んでいる方は巨乳を蹂躙し、二本の指が小さな紅唇に涎を強要する。
見事に舌をコントロールされて、絶叫すらも吐き出せない。
「むごっ!ンンっ!?(やめ…ンひィ!?)」
「ふふ、さぁ――皆も手伝って!」
「ん、ろひぉぉ!?(うそぉぉ!?)」
またも沙希が指揮し、女子たちに闘志が戻った。
迫ってくる。ギン、ギランッ、と昂ぶる目付きで。
「ひぁ…んあ!んむぅ!ん、むひぃぃ!!(やだ!やだぁ!やだよぉ!!)」
両腕を駆使しても沙希は離れない。
そして、その間に女子たちが雪崩れ込むように突進して来る。
ぎゅうぎゅうと圧迫される状態に、肢体は強張りを弱め始めていた。
「演技を忘れた罰よ。覚悟を決めてお仕置きされちゃいなさい。クジラちゃん」
「むぼ、ろひよぉぉ!?んきゃぁああ――っ!(そ、そんなああ!?ひぁああ!揉まないでぇぇ!)』
愛撫するのは沙希だけではない。またもや数人の女子たちが輪を作り、手を突き出した。
腰をむにんと撓める者もいれば、マニアックと言うべきか、暴れる手を捕まえてその指の狭間をぷにぷに突っついてくる。
痛みはない。快感も腰を下から撫でられるこそばゆい喜悦に比べたら、皆無に均しい。
だが、無力な自分を知らしめられるには十分で、なぜか――心臓が轟音を立てて興奮する。
<つづく>
彼女たちの勢いに負けたのか、それとも同情で譲ったのか。
沙希の両腕の感触は何時の間にか消えていた。
だが、逆に複数の手がクジラの怪物おっぱいをしゃぶるように攻め立て始める。
数人――少なくとも4,5人が囲い、指を突っ込んできた。
「うはァ――っ!!欲しい!!この腰周りィィ!!欲しい!!」
「お尻も、美味しそうゥゥ。――ふっくらパンみたいっ!」
「ちょっと、あたしたちにも回しなさいよ!!」
「ダメ……早い者勝ち」
勝ち気な子に弱気な子に真面目な学級委員風の女子まで群がって、肉体を苛めている。
彼女たちは気付いていないのか、気付いてやっているのか、分からない。
だが、クジラの魅力に当てられた彼女たちは知らず内に自身の行為をエスカレートしていく。
「きゃン!?ちょ、ちょっと!!これ、着替え違ァ――う!?」
セクハラ――だ。
これは、セクハラそのものだ。
幾つモノ女子の手が、クジラを捏ね繰り回す。
キュンと子宮が疼きだし、膨大な恥かしさに絶望が圧し掛かる。
「やめっ…ひやっ…すかーと……シャツも…もうないよぉぉ!!」
(なんで、シャツとスカートを外したのに――まだ体を弄るんだァァ!?)
臀部の頼りない柔肌を抓り、ウエストを難癖を付けるように何回も摩る。
巨乳に至っては乳首すらも摘んで遊んでいた。
ティッシュを取るかのように軽い動作だが、敏感な性感帯にそれはないだろう、と声なく絶叫する。
挿絵.倉塚りこ
「ひゃっ…みんなっ…おちゅつっ…んっ!」
「無理ィィ!柔らかいよぉ!すべすべだよぉ!」
「ご利益あるかも!これならきっと私もグラマーに!」
「そんなわけ…くっ、ひぃぃっ、ん、ん!ちょ…乳首…誰え、ぇっ…!?」
ブラジャーとショーツ姿にも関わらず、女子どもは未だに『セラス』の肉体に遊び耽っていた。
巨乳を、腰を、お尻を、否。
女体のスリーポイントだけでなく、髪も肌もうなじも背筋も――耳裏にまで手が這い寄ってくる。
舐めるかのごとき苛烈な愛撫に、脱力的な痺れが全身に突き抜けた。
「くぅ、きゃうぅ…っ!」
直後、糸が切れたように座り込むと、足の付け根に地面がむちっ、と密着する。
悩ましい吐息をこぼし、身じろいだ。
「ハァハァ、――え?まだ、体操服に着替えて無いじゃん!?」
「早くしないと、遅れちゃうよ?なんで着替えていないの…?」
「なに座ってんのよ。ほら――立った! 立った!」
下着姿で息切れを起こしているクジラに、心配や罪悪感をまったく感じない集団。
彼女たちは、ただただ可愛く綺麗なセシリウスの姿をしたクジラを――『弄りたいのだ』。
「ヒィィ――ひぁっ?!きゃぅ、っああぁぁ!!」
それこそ本物の少女のような悲鳴を張り上げ、クジラは無数の魔の手から逃げようとした。
だが、数も力も敵が上で、赤子のように身体を持ち上げられ、無理矢理に立たされてしまう。
「アレ、これ――ぶ、ブルマ!?」
刹那、異常な熱気の篭る女子更衣室に絶叫が響いた。
クジラから奪った袋を物色していた女の子が、突如として狼狽している。 一時的に注目はクジラから、その少女に移る。
「ぶ…ルマ…? はへ、え!? ぶるうぅまああッ!?」
深々とした紺色が妙に艶やかで、小さな布地の物体。
男の精神を宿している『セラス』は否応なく、邪な気分を煽られる。皆の注目を集める少女の手には確かに――ブルマが存った。
(――なんでブルマがあァ!?)
渡されただけで、中身は知らなかった。
何度も酷い目に合わされた彼だったが、心地いい時間に気が緩んでしまったのだろう。
中身のチェックを怠り、謀られた――。
と、思うも、ずるずると彼の周りに『囲い』が出来上がっていく。
「えっ、うそォ――っ。なんでブルマがっ!?」
「ブルマっ!?」
「まさか――しゅ、趣味ィ!?」
今まで自分たちの行いを差し置いてクジラを、『セラス』を危険人物として見やる女子たち。
ブルマの出現に一番驚愕し、戸惑っているのは彼なのだが、生憎と彼女たちには関係ない。
最悪の展開である。
もっとも、一部始終を知り、尚且つ嬉々した衝動を押さえられない人物がいた。
クジラの幼馴染である――麻倉 沙希だ。
「ああ、セラスちゃんの前の学校ではブルマだったらしいよぉ~」
抜け抜けと真顔を幼馴染が呟く。
「え、本当っ」
「――って、いうかなんで沙希が知ってんの?なんだか仲も良いし、もしかして前から、知り合い?」
「うん、そうだよ」
「へぇ~~、にしてもブルマ採用している所って在ったんだ……」
変態扱いされずに済む流れなのだが、なぜか未だ危機感に胃がキリキリと痛み出す。
そこで不意に首を傾け、きょとんと『セラス』は考え込む。
(アレ――なに?この…流、れ…?へっ?じゃあ俺が……)
――ブルマ着るってことじゃん。
血の気がサァァ、と引いた。
ブルマ姿をしている『セラス』を想像し、未来の戦慄が先取りされて、全身が鳥肌立つ。
(落ち着け!落ち着け!そっ、そうだ――気分が悪くなった、といえば……)
『セラス』という仮面を強く顔に癒着し、クジラは覚悟を決めた。
嘘でも押し通すしかない――と、男のプライドを守る為に、減退した気力を振り絞る。
「あ、あのォ――あたし!!」
幸い、まだ女子たちはブルマというマニアックな異物の対応に困っている。
今までとは違い、隙だらけ。
「あ、あたし…気分が悪くなちゃった。だ、誰か保健室まで――んきォろ!?」
これならと大丈夫かと思われた――が、敵は残っていた。
むぐにゅんっ、と胸を持ち上げるように拉げ、喚こうとした口を指の根元ほど突っ込んで塞ぐ。
「ホラ、もう時間がないよ。 早く着替えさせて上げないといけないよ?みんな!」
幼馴染――と言う、難攻不落の敵が、クジラの行動を予測し、逃走を妨げる。
胸を弄られる衝動的な快感に声が狂った。
いや、それ以前に口腔に侵入した二本の指が舌の動きを束縛し、情け容赦なく言葉を破壊する。
「んびぃひょろろ!?んっ!?んぶぅ!!(なにするんだ!?あっ!?だ、め!!)」
沙希の片手が、双乳の片方を圧迫し――もう片方が、クジラの口唇にぬじゅるっ、と注がれた。
乳を揉んでいる方は巨乳を蹂躙し、二本の指が小さな紅唇に涎を強要する。
見事に舌をコントロールされて、絶叫すらも吐き出せない。
「むごっ!ンンっ!?(やめ…ンひィ!?)」
「ふふ、さぁ――皆も手伝って!」
「ん、ろひぉぉ!?(うそぉぉ!?)」
またも沙希が指揮し、女子たちに闘志が戻った。
迫ってくる。ギン、ギランッ、と昂ぶる目付きで。
「ひぁ…んあ!んむぅ!ん、むひぃぃ!!(やだ!やだぁ!やだよぉ!!)」
両腕を駆使しても沙希は離れない。
そして、その間に女子たちが雪崩れ込むように突進して来る。
ぎゅうぎゅうと圧迫される状態に、肢体は強張りを弱め始めていた。
「演技を忘れた罰よ。覚悟を決めてお仕置きされちゃいなさい。クジラちゃん」
「むぼ、ろひよぉぉ!?んきゃぁああ――っ!(そ、そんなああ!?ひぁああ!揉まないでぇぇ!)』
愛撫するのは沙希だけではない。またもや数人の女子たちが輪を作り、手を突き出した。
腰をむにんと撓める者もいれば、マニアックと言うべきか、暴れる手を捕まえてその指の狭間をぷにぷに突っついてくる。
痛みはない。快感も腰を下から撫でられるこそばゆい喜悦に比べたら、皆無に均しい。
だが、無力な自分を知らしめられるには十分で、なぜか――心臓が轟音を立てて興奮する。
<つづく>
クジラの人魚姫5-3
(3)
チャイムの音が鳴る頃にはコスプレお姉さんであるクジラは、舞い上がっていた。
優しく扱われることだけでも涙を流すほど嬉しいのに、一時とはいえ、沙希と密着した時間を過ごせて、興奮を隠しきれないのだ。
放置していれば、鼻歌で踊り出してしまうだろう。
(次はなにかなぁ…?)
今度も沙希に教科書を貸して貰おう――などと私欲に燃える。
入れ替わってからずっと受身だった為に、どんな小さなことでも『攻める』ことに貪欲になっていた。
皮肉にも男――元の体――の時よりも、積極的に沙希に関わろうとする。
「じゃあ、行こうか。セラスちゃん」
「うん――って、行くぅ?な、何に?…い、行く?」
が――嫌な予感に幸福感が急激に下がった。
彼の問いに反応したのは、左にいた人物。クジラの姿をしたセシリウスだ。
「おいおい、次は――『体育』だろぉ、ほらっ、時間割にも書いてある」
「なぁーんだ……『体育』かァ。もう脅かさないでよ沙希ちゃん、あたしびっ――って
体育ゥゥ!?」
普通で、平凡で、当たり前な授業。
驚くことはない――と、判断したのは彼の明らかな過失だろう。
そして絶叫したのも間違いだった。
クラスの皆――特に女子たち――が、好奇心で輝いた瞳で近づいてきた。
『セラス』はさらに慄き、沙希と『クジラ』はアイ・コンタクトをする。そして――。
「じゃあ行こうか。 セラスちゃん」
「あっ、ちょ――まぁッ」
問答無用に沙希は困惑していたクジラを、否『白方セラス』を引っ張っていく。
その後を、女子が慌てて追う。
『待って、私たちもクジラさんの体見たいっ』――と異口同音で、口走って。
男子は男子で、悲しみを露にし、中には本当に泣いている者までいた。
余程、女子たちに蹴散らされて『セラス』と仲良くなれなかったのが、悲しいらしい。
「ふぅ、まあ、いいかっ…俺も早く着替えよっ」
戦意喪失する男共を慰めるかどうか迷うも、セシリウスにはそんな義理も義務もなかった。
本心では悲しみに打ちひしがれている男子と同じ心境なのは間違いはない。
(後は――任せたわよ。沙希ちゃん。 メッチャクッチャにしてやってよ!!)
しかし、それでも十分に楽しめると踏んだので、欲望を抑えたのだ。
自分には頼れる共犯者がいる。
だから、ことの顛末を聞けば良いし、魔法で記憶を読取ることも可能である。
彼女の、いや彼女たちの作戦に死角はない。
死角などあってはいけないし、失敗は許されない。
その証拠のように同時刻、『セラス』は既に沙希と多くのクラスメイトに洗礼を受けていた。
――女子特有の裸の付き合い。
クジラにとって地獄でも、セシリウスと沙希、そして女子にとって至福の始まりだった。
~~
漫画などの架空の物語で度々見かける女子同士の裸の弄り合い。
男だった彼は、そんなもの男の勝手な妄想だと思っていた。が――それは間違いだった。
完全なる自分の思い込みだったのである。
にじり寄る興奮した女子の軍勢に、クジラはそう悟った。
「はぁはぁ――イイ体してるじゃねえか!」
「ハァ…ハァ……やる?やっちゃう?…あうっ!かわ…可愛いぃいいい!!」
「じゅるる、ハッ!?無意識に涎がッ!!」
戸惑う彼よりも先に、と音速で着替えた女子たち。
その様子は明らかに常軌を逸していたが、――誰も心配しない。誰も止まらない。
クジラ以外のこの場にいる全員が発情してしまったらしい。
それぞれが熱い吐息をこぼす。
「ちょ――っ!!あ、あのさぁぁ!!落ち着いてよ。 こ、こんなの変だよォ!?」
女子が獣臭い雰囲気を醸し出し、近寄ってくる。
沙希やセシリウスのお仕置みたいに、いや彼女たちの揉み方を真似しているかのような指の蠢き。
過剰な好意に反応したのか、『セラス』の背筋にビクンと電気が走った。
肌に恐怖を擦り込められ、神経が上手に動かない。
「タッタンマ、本当にィィ――」
物理的には指一本すら触れられていないのに、この悪寒。
体から冷汗がこぼれる。
(ヤバイよぉぉ!なんだか分からないけど、ヤバイぃ!ひぃいい!)
潤んだ瞳と微かに染まるピンクの頬、そして美しい紅唇。
――現実を処理できずに小刻みに打ち震えながら、『セラス』は肉体から牝の魅惑をぷんぷん、と匂わせていた。
「セラスさんも早く着替えなよ! ほら、貸して――っ」
「あっ、じ、自分で出来る、…から!!」
「なにいってるの。もう時間ないよ!…ないったらないの!!だから…女の友情を受けなさい…!」
「きゃっ!あっ…ぃ、いいよ!じ、自分で、できるよおぉ…っ!」
セシリウスから渡された薄茶色の布袋を簡単に奪われる。
完全に体が萎縮してしまい体どころか、口も上手く動けない。言い訳すらも半端になる。
「さぁ…さ、沙希…た、助け…てぇ…っ!」
恥も外聞も、そして演技も忘れて幼馴染に助けを求めた
その姿が、さらに少女たちの異常な愛欲を増加させるとも気が付かずに。
幼女の可愛さと、卑猥な体のアンバランスさから生まれる甘美な魅惑に、誰もが抗えない。
『誰も』――が。
彼の幼馴染である沙希も論外ではない。むしろ――。
「ひァんン!!? えっ!? ちょ――ひぃン、?!!」
突如、制服とブラに包まれた乳房に痛みが走る。無視できない快感も炸裂する。
にゅぐっにゅぐっ、とゼリーを彷彿させる変形特有の響きが、脳をジリジリと焦らせた。
「ふ、ぁあン!? やめ、やめ、て……」
乳房を揉まれている。何人もの人の指が、柔房を上手に解していく。
男のモノとは違う細く力のない指が、乳を嬲っていた。
自分よりも弱い柔らかな肉を見下すように。
(やめ…、このォ…ン、……ここは家じゃないん……あっ)
皆が、クラスメイトが見ている中で痴態を晒している自分。胸を弄られ、悶々としている様を『セラス』として見られてしまっている。
恥かしさと妙な快感に体が否応なく、高揚する。
無慈悲に火照るセシリウスの肉体が、どこまでも憎い。
(やめォ!? くそぉぉ!! ひゃあ!!? っさ――)
クジラには、分かっていた。見なくても、誰が自身の胸を揉み解しているのかを。
慣れてしまった特有の揉み方に、確信を持って名を叫ぶ。
「さぁ――沙希ぃぃ!! じょっ冗談、はぁ……んっ……だめぇ…!」
クジラの悲鳴に、沙希は顔を出す。
罪悪感の一つも感じていない惚れ惚れするほどの小悪魔的な笑み。
むしろ、彼女は快感で酔い痴れた声で、皆に命令を下した。
「ほら、みんな。今のうちセラスちゃんを楽しんじゃえ!!」
『おおー!!』
――、といくつもの声をクジラが認識した次の瞬間には、様々な部分が摘まれていた。
沙希の指の上から、またはまだ刺激されていない腰やお尻、太ももまでもが、易々と弄られる。
全身が遊ばれてしまう。
擦って、捻って、揉んで――と。
「んァ!!ダメェェ!!ひぃ!?」
叫ぶ声は届かず、靴と靴下を奪われた。
一気に股の下のほとんどが、外界に晒される。
ストッキングさえも脱がされ下半身に外気が降り掛かる。妙にゾクゾクする疼きに、腰が浮かぶ。
「沙希さんばっかりズルぃ!私にも胸揉ませて――うわっ、何この弾力――癖になりそう~~!?」
「あたしも――エイ!!きゃっ!?すご~ぃ!」
沙希の掴みの隙間を縫って、指がにゅぶっり、と差し込まれる。
痛くはない。けれども房を窪ませる力と衝撃に、痺れが脳裏に走り抜ける。
お尻がむちっ、と弾み上がり、一緒になって胸部がむにょんと上下に踊った。
(うわっ!!そこ…は!?あっダメええ!?ひゃン!?ちょ、ちょとどこにィ!?)
<つづく>
チャイムの音が鳴る頃にはコスプレお姉さんであるクジラは、舞い上がっていた。
優しく扱われることだけでも涙を流すほど嬉しいのに、一時とはいえ、沙希と密着した時間を過ごせて、興奮を隠しきれないのだ。
放置していれば、鼻歌で踊り出してしまうだろう。
(次はなにかなぁ…?)
今度も沙希に教科書を貸して貰おう――などと私欲に燃える。
入れ替わってからずっと受身だった為に、どんな小さなことでも『攻める』ことに貪欲になっていた。
皮肉にも男――元の体――の時よりも、積極的に沙希に関わろうとする。
「じゃあ、行こうか。セラスちゃん」
「うん――って、行くぅ?な、何に?…い、行く?」
が――嫌な予感に幸福感が急激に下がった。
彼の問いに反応したのは、左にいた人物。クジラの姿をしたセシリウスだ。
「おいおい、次は――『体育』だろぉ、ほらっ、時間割にも書いてある」
「なぁーんだ……『体育』かァ。もう脅かさないでよ沙希ちゃん、あたしびっ――って
体育ゥゥ!?」
普通で、平凡で、当たり前な授業。
驚くことはない――と、判断したのは彼の明らかな過失だろう。
そして絶叫したのも間違いだった。
クラスの皆――特に女子たち――が、好奇心で輝いた瞳で近づいてきた。
『セラス』はさらに慄き、沙希と『クジラ』はアイ・コンタクトをする。そして――。
「じゃあ行こうか。 セラスちゃん」
「あっ、ちょ――まぁッ」
問答無用に沙希は困惑していたクジラを、否『白方セラス』を引っ張っていく。
その後を、女子が慌てて追う。
『待って、私たちもクジラさんの体見たいっ』――と異口同音で、口走って。
男子は男子で、悲しみを露にし、中には本当に泣いている者までいた。
余程、女子たちに蹴散らされて『セラス』と仲良くなれなかったのが、悲しいらしい。
「ふぅ、まあ、いいかっ…俺も早く着替えよっ」
戦意喪失する男共を慰めるかどうか迷うも、セシリウスにはそんな義理も義務もなかった。
本心では悲しみに打ちひしがれている男子と同じ心境なのは間違いはない。
(後は――任せたわよ。沙希ちゃん。 メッチャクッチャにしてやってよ!!)
しかし、それでも十分に楽しめると踏んだので、欲望を抑えたのだ。
自分には頼れる共犯者がいる。
だから、ことの顛末を聞けば良いし、魔法で記憶を読取ることも可能である。
彼女の、いや彼女たちの作戦に死角はない。
死角などあってはいけないし、失敗は許されない。
その証拠のように同時刻、『セラス』は既に沙希と多くのクラスメイトに洗礼を受けていた。
――女子特有の裸の付き合い。
クジラにとって地獄でも、セシリウスと沙希、そして女子にとって至福の始まりだった。
~~
漫画などの架空の物語で度々見かける女子同士の裸の弄り合い。
男だった彼は、そんなもの男の勝手な妄想だと思っていた。が――それは間違いだった。
完全なる自分の思い込みだったのである。
にじり寄る興奮した女子の軍勢に、クジラはそう悟った。
「はぁはぁ――イイ体してるじゃねえか!」
「ハァ…ハァ……やる?やっちゃう?…あうっ!かわ…可愛いぃいいい!!」
「じゅるる、ハッ!?無意識に涎がッ!!」
戸惑う彼よりも先に、と音速で着替えた女子たち。
その様子は明らかに常軌を逸していたが、――誰も心配しない。誰も止まらない。
クジラ以外のこの場にいる全員が発情してしまったらしい。
それぞれが熱い吐息をこぼす。
「ちょ――っ!!あ、あのさぁぁ!!落ち着いてよ。 こ、こんなの変だよォ!?」
女子が獣臭い雰囲気を醸し出し、近寄ってくる。
沙希やセシリウスのお仕置みたいに、いや彼女たちの揉み方を真似しているかのような指の蠢き。
過剰な好意に反応したのか、『セラス』の背筋にビクンと電気が走った。
肌に恐怖を擦り込められ、神経が上手に動かない。
「タッタンマ、本当にィィ――」
物理的には指一本すら触れられていないのに、この悪寒。
体から冷汗がこぼれる。
(ヤバイよぉぉ!なんだか分からないけど、ヤバイぃ!ひぃいい!)
潤んだ瞳と微かに染まるピンクの頬、そして美しい紅唇。
――現実を処理できずに小刻みに打ち震えながら、『セラス』は肉体から牝の魅惑をぷんぷん、と匂わせていた。
「セラスさんも早く着替えなよ! ほら、貸して――っ」
「あっ、じ、自分で出来る、…から!!」
「なにいってるの。もう時間ないよ!…ないったらないの!!だから…女の友情を受けなさい…!」
「きゃっ!あっ…ぃ、いいよ!じ、自分で、できるよおぉ…っ!」
セシリウスから渡された薄茶色の布袋を簡単に奪われる。
完全に体が萎縮してしまい体どころか、口も上手く動けない。言い訳すらも半端になる。
「さぁ…さ、沙希…た、助け…てぇ…っ!」
恥も外聞も、そして演技も忘れて幼馴染に助けを求めた
その姿が、さらに少女たちの異常な愛欲を増加させるとも気が付かずに。
幼女の可愛さと、卑猥な体のアンバランスさから生まれる甘美な魅惑に、誰もが抗えない。
『誰も』――が。
彼の幼馴染である沙希も論外ではない。むしろ――。
「ひァんン!!? えっ!? ちょ――ひぃン、?!!」
突如、制服とブラに包まれた乳房に痛みが走る。無視できない快感も炸裂する。
にゅぐっにゅぐっ、とゼリーを彷彿させる変形特有の響きが、脳をジリジリと焦らせた。
「ふ、ぁあン!? やめ、やめ、て……」
乳房を揉まれている。何人もの人の指が、柔房を上手に解していく。
男のモノとは違う細く力のない指が、乳を嬲っていた。
自分よりも弱い柔らかな肉を見下すように。
(やめ…、このォ…ン、……ここは家じゃないん……あっ)
皆が、クラスメイトが見ている中で痴態を晒している自分。胸を弄られ、悶々としている様を『セラス』として見られてしまっている。
恥かしさと妙な快感に体が否応なく、高揚する。
無慈悲に火照るセシリウスの肉体が、どこまでも憎い。
(やめォ!? くそぉぉ!! ひゃあ!!? っさ――)
クジラには、分かっていた。見なくても、誰が自身の胸を揉み解しているのかを。
慣れてしまった特有の揉み方に、確信を持って名を叫ぶ。
「さぁ――沙希ぃぃ!! じょっ冗談、はぁ……んっ……だめぇ…!」
クジラの悲鳴に、沙希は顔を出す。
罪悪感の一つも感じていない惚れ惚れするほどの小悪魔的な笑み。
むしろ、彼女は快感で酔い痴れた声で、皆に命令を下した。
「ほら、みんな。今のうちセラスちゃんを楽しんじゃえ!!」
『おおー!!』
――、といくつもの声をクジラが認識した次の瞬間には、様々な部分が摘まれていた。
沙希の指の上から、またはまだ刺激されていない腰やお尻、太ももまでもが、易々と弄られる。
全身が遊ばれてしまう。
擦って、捻って、揉んで――と。
「んァ!!ダメェェ!!ひぃ!?」
叫ぶ声は届かず、靴と靴下を奪われた。
一気に股の下のほとんどが、外界に晒される。
ストッキングさえも脱がされ下半身に外気が降り掛かる。妙にゾクゾクする疼きに、腰が浮かぶ。
「沙希さんばっかりズルぃ!私にも胸揉ませて――うわっ、何この弾力――癖になりそう~~!?」
「あたしも――エイ!!きゃっ!?すご~ぃ!」
沙希の掴みの隙間を縫って、指がにゅぶっり、と差し込まれる。
痛くはない。けれども房を窪ませる力と衝撃に、痺れが脳裏に走り抜ける。
お尻がむちっ、と弾み上がり、一緒になって胸部がむにょんと上下に踊った。
(うわっ!!そこ…は!?あっダメええ!?ひゃン!?ちょ、ちょとどこにィ!?)
<つづく>
クジラの人魚姫5-2
(2)
彼の可愛らしい応答は席に戻る者、そしてクラスから出て行く者の両者がいなくなるまで続いた。
どうやら他クラスの女子も潜入してきていたらしい。
(……道理で顔の知らない奴もいると思った…)
そこまでの魅力が自分に――あくまでもセシリウスの体に――ある、と思い悩むクジラ。
的外れである。
赤面をしながら能天気に首を傾げている様は、危険なほどプリティーだ。
「うふふ、可愛いねクジラくん」
「……うん、そうだね。可愛いねっ」
ある意味天然な彼を見守るのは、彼の本来の肉体を手にしているセシリウス。
それとクジラの幼馴染の沙希である。
異様に楽しくてしょうがない、と言った込み上げ笑いを二人揃ってしていた。
しかも、クジラに見えないように、死角で思う存分に笑っているのだから、始末が悪い。
「何時ものように演じていればいいんだから……そんなに緊張するなよ、セラス」
――と言うか、悪質である。
観察するのに満足した途端、セシリウスが余裕ぶった笑顔でクジラに近づいた。
「…わっ…分かっているけど…、勢いに呑まれちゃうんだから……しかたないじゃないっ!」
二人の悪巧みを知らないまま、彼は『セラス』として上がった声で応えた。
女性であることに慣れたのか、癖になったのか、雰囲気的もほとんど女の子である。
恥かしさなどの些細なことを克服すれば、本物の女子高校生として生活できる日が来るだろう。
「でも…クジラが――セラスちゃんが、まさかねぇ」
そんな弄られっぱなしの可愛い女子の顔がぴきりっ、と凍ったかのように強張った。
今までとは別種の恐怖が心を縛り上げる。
「……っ」
まさか学校に来た理由を、"そのまま"説明されたのか。『クジラ』に視線を向ける。
『あたしはバラしてないわよ』――と、頭を振るっているが、信用はできない。
信じたばかりに辱めを受けている身としては、不信を抱かないほうがおかしかった。
「なっ、なに…が?」
取り合えず、思い人が気になった彼は、セシリウスへの睨みを中断し、問い返した。
沙希が至極まともな顔付きで、見詰めてくる。
グビリと唾を飲み込み沈黙を続けた――ものの、結局は彼の方が先に口を開いていた。
「いや、実は……」
「そこまで勤勉家だとは知らなかったわ…」
「あ…え?…えっ!?」
「えっ、違うの?クジラに聞いたら授業に追いつけなくなるからっていってたけど……」
(聞いてないぞ!?聞いてないぞっ!?おい、こら!セシリウス…っ!)
再び、クジラは自分自身に、自分の姿をしたセシリウスに怒気を送る。
彼女は人を食ったような笑みを崩さず――『フォローして上げたんだから、いいじゃないのよ』
とウィンクで説明した。
確かに助かる。
しかし――それでも事前連絡があってもいいのではないかと思うのは、間違いではあるまい。
「そ、そう…よ。…あたし…だって…向上心くらいあるんだから…っ」
(もう――どうにでも、なれぇ、っ……)
可能なら今すぐにでも逃げ出したい気分なのだが、それでは本末転倒である。
折角、ここまで恥ずかしさを押し殺して『白方セラス』になったのだ。
ならばっ、と熱意半分やるせなさ半分で、彼は目的である沙希をこっそりと観察した。
惚れた弱みか――やはり綺麗で、可愛い。
(まぁ――無駄足だったかもしれないけど……これは、これで…)
久しぶりの沙希との学園生活。
未だに最大の問題――肉体の入れ替わり――は解決していないが、漸く訪れた小さな幸福に心が緩み、笑みがこぼれた。
そんなクジラの幸せそうな表情に沙希が気付く。
「ん? ――どうしたのセラスちゃん」
不思議そうに首を傾げる彼女。それだけで心が躍った。
だから、ついついと本音を暴露してしまう。
「あっ、そのっ!……沙希!沙希ちゃんと一緒に授業が、…受けれるのが嬉しくて…っ」
直後、言葉の意味を悟り、手をバタバタ動かして、真っ赤に恥じらう。
(わっ!?わあっ!?わあっ!?俺は何をッ!!口走ってるんだぁぁ!?)
無意識に出た言葉は、それほど恥かしかった。
どうすることも出来ずに――それこそ目を瞑ることも出来ずに――幼馴染を見つめるしかない。
すると熱く火照らせた顔に、凛とした笑顔が突き刺さる。
「ふふ――私も嬉しいなァ。セラスちゃんと一緒に勉強できて…」
そして、そして――まさかの惚気とも思える返答。
心が打ち抜かれるほどの歓喜に体が浮かれ上がった。
「ほっ、本当…っ!?」
「うん…本当だよ」
パアア、と世界が明るんだ。
胸を揉まれたり、着せ替え人形にされたりした記憶すらも霞んでしまう。
ただ今の両想い――とも取れる言葉にクジラは酔い痴れた。
「なぁ俺は――どう?」
「えっ?ああ……クジラ君は…」
不意の声に振り向けば、自分の顔が――セシリウスがいた。
微妙に体をさらに近づけ、いつもとは違い心配そうな表情で見てくる。
そんな表情と仕草に沙希が好きな筈なのに、脈が早まってしまう。
甘い毒を盛られたかのように、頬が熱い。
(どうしよう――、一応、セシリウスのお陰だし)
沙希からの苛めは許せてもセシリウスの意地悪は容認できない――筈だった。
(うっ、…うぅ!わ、わかったから、そんな顔するなよ!へ、変な気分になる!)
けれども湧き上がる熱い衝動に根負けして、これはお礼なのだと言い訳がましく考えながら、微笑み返した。
そして、好意を伝える。
「勿論!クジラ君とも勉強できて…あ、あたし……――嬉しいわ」
『本音じゃない』と内心で呟きながら、はしゃぐ『白方 セラス』。
沙希の場合より二倍ほど恥辱色に染まった顔が、魅力たっぷりに色気づく。
女でも、男でも抗えない愛らしさ。
男である『クジラ』は過剰に反応し、吐息がかかるほどに詰め寄ってきた。
「おおっ、さすが親戚。俺たち気が合うな。俺もセラスと勉強出来て嬉しいよ!」
勝手なことを言うなっ、と怒りが浮かぶよりも、しょうがないという気持ちの方が強かった。
クジラは諦め、苦笑する。
「もうっ。お、大げさなんだから…っ、…恥かし、いじゃないのよ!」
(はぁ…でもこれぐらいで、喜ぶんなら…良かったかな?…なんて…ねっ)
沙希と一緒に事業を受けられるのも彼女のお陰だし、これぐらいはいいかな、と思えてしまう。
どうせ本気ではない、お遊び感覚なのだし――と、勝手にセシリウスの心境を決めつけて。
「それじゃあ、国語の事業を始めます。 転校生の白方――あぁ二人いるのか……えっとセラスさんは隣の白方君か麻倉さんに教科書を借りて下さい」
騒がしいが、思ったよりも障害なく進むかつての日常光景。
体は未だに、悩めしい艶美な女体ではあるが、少しだけ『自分』に戻れた気がする。
そんな穏やかな時間。
おまけに……。
「んー、さっきはクジラが貸したから私が貸してあげる――机寄せて、セラスちゃん」
「う、うん――ありがとう、沙希ちゃん」
ボーナスは一杯だった。
鼻を擦るのは女性用のシャンプーの優雅な臭いと、沙希の甘い体臭。
なんとも高揚を促す香りである。
間近まで迫る沙希の横顔も相俟ってとくんっ、と心臓が音を誇張して動き回った。
(うぐっ…!か、かなり…良かったかもしれない……っ)
次々と変わる学園生活への感想。だが、それは仕方のないことだった。
何気に優しいセシリウスや、同じくサービスがいい沙希の存在が幸福に感じられるのだ。
昨日までの二人と、現在の二人を比べると涙が出てしまうほど『今』が優しい。心地いい。
学校に戻ってこれたのは正解だった――とクジラは思った。が……しかし。
(ふふ、可愛いなクジラ――うんん、セラスちゃん)
自分が抱いている感情とは、ちょっと違う好意を幼馴染に注がれていることにも気付かず――
『白方セラス』は幸福感で弛んだ表情を、クラス中に観察されるのだった。
<つづく>
彼の可愛らしい応答は席に戻る者、そしてクラスから出て行く者の両者がいなくなるまで続いた。
どうやら他クラスの女子も潜入してきていたらしい。
(……道理で顔の知らない奴もいると思った…)
そこまでの魅力が自分に――あくまでもセシリウスの体に――ある、と思い悩むクジラ。
的外れである。
赤面をしながら能天気に首を傾げている様は、危険なほどプリティーだ。
「うふふ、可愛いねクジラくん」
「……うん、そうだね。可愛いねっ」
ある意味天然な彼を見守るのは、彼の本来の肉体を手にしているセシリウス。
それとクジラの幼馴染の沙希である。
異様に楽しくてしょうがない、と言った込み上げ笑いを二人揃ってしていた。
しかも、クジラに見えないように、死角で思う存分に笑っているのだから、始末が悪い。
「何時ものように演じていればいいんだから……そんなに緊張するなよ、セラス」
――と言うか、悪質である。
観察するのに満足した途端、セシリウスが余裕ぶった笑顔でクジラに近づいた。
「…わっ…分かっているけど…、勢いに呑まれちゃうんだから……しかたないじゃないっ!」
二人の悪巧みを知らないまま、彼は『セラス』として上がった声で応えた。
女性であることに慣れたのか、癖になったのか、雰囲気的もほとんど女の子である。
恥かしさなどの些細なことを克服すれば、本物の女子高校生として生活できる日が来るだろう。
「でも…クジラが――セラスちゃんが、まさかねぇ」
そんな弄られっぱなしの可愛い女子の顔がぴきりっ、と凍ったかのように強張った。
今までとは別種の恐怖が心を縛り上げる。
「……っ」
まさか学校に来た理由を、"そのまま"説明されたのか。『クジラ』に視線を向ける。
『あたしはバラしてないわよ』――と、頭を振るっているが、信用はできない。
信じたばかりに辱めを受けている身としては、不信を抱かないほうがおかしかった。
「なっ、なに…が?」
取り合えず、思い人が気になった彼は、セシリウスへの睨みを中断し、問い返した。
沙希が至極まともな顔付きで、見詰めてくる。
グビリと唾を飲み込み沈黙を続けた――ものの、結局は彼の方が先に口を開いていた。
「いや、実は……」
「そこまで勤勉家だとは知らなかったわ…」
「あ…え?…えっ!?」
「えっ、違うの?クジラに聞いたら授業に追いつけなくなるからっていってたけど……」
(聞いてないぞ!?聞いてないぞっ!?おい、こら!セシリウス…っ!)
再び、クジラは自分自身に、自分の姿をしたセシリウスに怒気を送る。
彼女は人を食ったような笑みを崩さず――『フォローして上げたんだから、いいじゃないのよ』
とウィンクで説明した。
確かに助かる。
しかし――それでも事前連絡があってもいいのではないかと思うのは、間違いではあるまい。
「そ、そう…よ。…あたし…だって…向上心くらいあるんだから…っ」
(もう――どうにでも、なれぇ、っ……)
可能なら今すぐにでも逃げ出したい気分なのだが、それでは本末転倒である。
折角、ここまで恥ずかしさを押し殺して『白方セラス』になったのだ。
ならばっ、と熱意半分やるせなさ半分で、彼は目的である沙希をこっそりと観察した。
惚れた弱みか――やはり綺麗で、可愛い。
(まぁ――無駄足だったかもしれないけど……これは、これで…)
久しぶりの沙希との学園生活。
未だに最大の問題――肉体の入れ替わり――は解決していないが、漸く訪れた小さな幸福に心が緩み、笑みがこぼれた。
そんなクジラの幸せそうな表情に沙希が気付く。
「ん? ――どうしたのセラスちゃん」
不思議そうに首を傾げる彼女。それだけで心が躍った。
だから、ついついと本音を暴露してしまう。
「あっ、そのっ!……沙希!沙希ちゃんと一緒に授業が、…受けれるのが嬉しくて…っ」
直後、言葉の意味を悟り、手をバタバタ動かして、真っ赤に恥じらう。
(わっ!?わあっ!?わあっ!?俺は何をッ!!口走ってるんだぁぁ!?)
無意識に出た言葉は、それほど恥かしかった。
どうすることも出来ずに――それこそ目を瞑ることも出来ずに――幼馴染を見つめるしかない。
すると熱く火照らせた顔に、凛とした笑顔が突き刺さる。
「ふふ――私も嬉しいなァ。セラスちゃんと一緒に勉強できて…」
そして、そして――まさかの惚気とも思える返答。
心が打ち抜かれるほどの歓喜に体が浮かれ上がった。
「ほっ、本当…っ!?」
「うん…本当だよ」
パアア、と世界が明るんだ。
胸を揉まれたり、着せ替え人形にされたりした記憶すらも霞んでしまう。
ただ今の両想い――とも取れる言葉にクジラは酔い痴れた。
「なぁ俺は――どう?」
「えっ?ああ……クジラ君は…」
不意の声に振り向けば、自分の顔が――セシリウスがいた。
微妙に体をさらに近づけ、いつもとは違い心配そうな表情で見てくる。
そんな表情と仕草に沙希が好きな筈なのに、脈が早まってしまう。
甘い毒を盛られたかのように、頬が熱い。
(どうしよう――、一応、セシリウスのお陰だし)
沙希からの苛めは許せてもセシリウスの意地悪は容認できない――筈だった。
(うっ、…うぅ!わ、わかったから、そんな顔するなよ!へ、変な気分になる!)
けれども湧き上がる熱い衝動に根負けして、これはお礼なのだと言い訳がましく考えながら、微笑み返した。
そして、好意を伝える。
「勿論!クジラ君とも勉強できて…あ、あたし……――嬉しいわ」
『本音じゃない』と内心で呟きながら、はしゃぐ『白方 セラス』。
沙希の場合より二倍ほど恥辱色に染まった顔が、魅力たっぷりに色気づく。
女でも、男でも抗えない愛らしさ。
男である『クジラ』は過剰に反応し、吐息がかかるほどに詰め寄ってきた。
「おおっ、さすが親戚。俺たち気が合うな。俺もセラスと勉強出来て嬉しいよ!」
勝手なことを言うなっ、と怒りが浮かぶよりも、しょうがないという気持ちの方が強かった。
クジラは諦め、苦笑する。
「もうっ。お、大げさなんだから…っ、…恥かし、いじゃないのよ!」
(はぁ…でもこれぐらいで、喜ぶんなら…良かったかな?…なんて…ねっ)
沙希と一緒に事業を受けられるのも彼女のお陰だし、これぐらいはいいかな、と思えてしまう。
どうせ本気ではない、お遊び感覚なのだし――と、勝手にセシリウスの心境を決めつけて。
「それじゃあ、国語の事業を始めます。 転校生の白方――あぁ二人いるのか……えっとセラスさんは隣の白方君か麻倉さんに教科書を借りて下さい」
騒がしいが、思ったよりも障害なく進むかつての日常光景。
体は未だに、悩めしい艶美な女体ではあるが、少しだけ『自分』に戻れた気がする。
そんな穏やかな時間。
おまけに……。
「んー、さっきはクジラが貸したから私が貸してあげる――机寄せて、セラスちゃん」
「う、うん――ありがとう、沙希ちゃん」
ボーナスは一杯だった。
鼻を擦るのは女性用のシャンプーの優雅な臭いと、沙希の甘い体臭。
なんとも高揚を促す香りである。
間近まで迫る沙希の横顔も相俟ってとくんっ、と心臓が音を誇張して動き回った。
(うぐっ…!か、かなり…良かったかもしれない……っ)
次々と変わる学園生活への感想。だが、それは仕方のないことだった。
何気に優しいセシリウスや、同じくサービスがいい沙希の存在が幸福に感じられるのだ。
昨日までの二人と、現在の二人を比べると涙が出てしまうほど『今』が優しい。心地いい。
学校に戻ってこれたのは正解だった――とクジラは思った。が……しかし。
(ふふ、可愛いなクジラ――うんん、セラスちゃん)
自分が抱いている感情とは、ちょっと違う好意を幼馴染に注がれていることにも気付かず――
『白方セラス』は幸福感で弛んだ表情を、クラス中に観察されるのだった。
<つづく>
クジラの人魚姫5-1
(1)
「ねぇ?セラスさんってハーフなの?」
「ちょっと!!この胸、何カップなのよ!?」
「ずるィなあ。高校二年でこんなグラマーなんて…彼氏ぐらいいるんでしょ!」
群がる、女、女、――女子高校生。
転校してきた美少女に興味津々なのだろう。
引っ切り無しに押し寄せる彼女たちに話題の人物である豊満な肉付きの『少女』は、眉根を寄せて、困惑する。
「あ、あの…ちょっと…み、みなさん!そ、そんな詰め寄らないで……ふっ、ぇ」
転校初日で好意的に接してくれたら、それは幸福なのだろう。
だが、しかし、『彼女』は満面を恥じらいの赤に染め上げ、小刻みに震え上がった。
何故なら――体は女でも中身は――心は『男』であるからだ。
(どおっ、どうしろっていうんだよおぉ!この状況!俺…男なのに…っ!こ、こんなに女子に囲まれてっ~~!?)
ボンと突き出た美巨乳とむちと張り出ている臀部、細面のクールな美貌。
そんな艶美な女体であるが、中身は白方 玖史羅と言う少年に過ぎない。
正直、彼は自分のことを『セラス』として扱う女子たちが、怖くて仕方ないのだ。
エッチなお店のコスプレのような女子高校生姿を晒していることもあり、身震いするしかない。
「あっ、あの…その彼氏は…いないし…胸も、そんなに…ィ…」
沙希や、肉体本来の持ち主のセシリウス――おまけに悪友や父も含んだ関係者――たちとは違い、本当に女の子だと疑っていない様子が、あまりにも惨めに思えた。
たぷたぷとした胸が、追い討ちを掛けるようにして弾む。
(そ、そんなに…俺は…女に見えるのかよ…っ)
日常生活でも十分女扱い、いや『セラス』扱いだが、やはり違うのだなと、心の底からクジラは悟る。
彼女たちにその気がなくても、その問題なく接してくる態度そのものに居た堪れなくなる。
恥が密度を増して、脳裏に積み重なり、不覚にも目元が潤んでしまう。
「かっ可愛い……」
「うわっ、ヤバい……やばいッ」
その恥じらい不安がっている仕草が余計に女子たちの『何か』を刺激したらしい。
同性であることは――もう関係なかった。
「う…ぅぅ」
ギャップ萌え、と言う物だった。
律儀に返答していながら――しかも、バリバリのグラマーなお姉様な美貌で――ウルウルと、視線をさ迷わせている『白方 セラス』は可憐以外の何でもない。
余りにも儚く、恐ろしいほど弱弱しい雰囲気に、少女たちは言及することすら忘れて息を呑む。
健気な哀れさを持つ一方で、演劇のクライマックスのような美しさも漂わせるのだから、魅了されずにはいられない。特に、その撓わに育ちすぎた胸に。
(みんな胸…見てるんだ!こっ…こんなに大きい、んっだもんなぁ…)
僅か、数分で女子たちを"よこしまな道"に引き込み掛けているのを、本人だけは気付かなかった。
足元どころか、下にある机を半分も隠しながら波打つおっぱいの怪物。
シャツとブラジャーに捕縛されていながらも抑えきれない様子は、圧倒的と言うしかない。
そんな一般からかけ離れた巨大な美房は自分のモノなのだ。
果てしない恥辱と悲しさに、体が打ち震えた。涙がこぼれそうである。
「はぅ~っ!」
「お姉さま?…いやい、妹!わたしの妹よ!」
「か、かわいい…」
眉毛を下げている顔も実に色っぽく――周りを、さらに燃え上がらせてしまう。
同性でも構わないとばかりに引き付ける彼の魅惑。
セシリウスを――『セラス』を演じるクジラは、過激にエロすぎた。
「お~い、どうでもいいけどもう直ぐ二時限目だろ。 早く用意した方がいいぞっ」
「もう、白方君はセラスさんのこと独占していたんだから、もう少し良いじゃない」
そうよ、そうよ、と一致団結する女子軍団。
別に独占された覚えはないが、親戚であり前からセラスを知っていた設定のセシリウス――もとい『白方 玖史羅』は彼女たちの中では敵らしい。
もっとも、ほぼ全女子の敵意を、むしろ飄々と 『クジラ』は受け流した。
「なにいってるんだ。お前たちが騒いでセラスが注意されたら、困るだろ?特にコイツは昔から奥ゆかしいっていうか、奥手っていうか……照れ屋で本音がいえない性質なんだよ」
「あ――っ、納得」
「うんうん――納得」
「そうか、そうだよね――ごめんね、白方くん…納得したわ」
「それなら――納得するしかないわぁー」
(――なんで全員一致で、納得するんだァァ!!?)
またしても催眠術か何かではないか、と疑うクジラだが、生憎と違う。
純然たる事実として彼女たちを説得できるほど、セシリウスの言葉は的を得ていた。
朝の自己紹介から頬は桜色に上気したまま、消えたためしがない。
会話も碌に出来ない上、時折ぴくんっぴくんっ、と身悶えしている。
女子たちが『セラス』を極度の恥かしがり屋なのだと確信するに十分だった。
「じゃね、セラスちゃん!またね!」
「あ…う…うん!」
「じゃあね、白方さん!」
「うん、あ、ありがとう…」
自分の純情少女説を否定したかったが、先手を突くように女子たちが離れていく。
理性が上手く働いていないせいか、つい女性として――『セラス』として振舞ってしまう。
(うっ、ちぃ…くしょう!…なんでお礼なんていってるんだろう、俺…っ)
<つづく>
「ねぇ?セラスさんってハーフなの?」
「ちょっと!!この胸、何カップなのよ!?」
「ずるィなあ。高校二年でこんなグラマーなんて…彼氏ぐらいいるんでしょ!」
群がる、女、女、――女子高校生。
転校してきた美少女に興味津々なのだろう。
引っ切り無しに押し寄せる彼女たちに話題の人物である豊満な肉付きの『少女』は、眉根を寄せて、困惑する。
「あ、あの…ちょっと…み、みなさん!そ、そんな詰め寄らないで……ふっ、ぇ」
転校初日で好意的に接してくれたら、それは幸福なのだろう。
だが、しかし、『彼女』は満面を恥じらいの赤に染め上げ、小刻みに震え上がった。
何故なら――体は女でも中身は――心は『男』であるからだ。
(どおっ、どうしろっていうんだよおぉ!この状況!俺…男なのに…っ!こ、こんなに女子に囲まれてっ~~!?)
ボンと突き出た美巨乳とむちと張り出ている臀部、細面のクールな美貌。
そんな艶美な女体であるが、中身は白方 玖史羅と言う少年に過ぎない。
正直、彼は自分のことを『セラス』として扱う女子たちが、怖くて仕方ないのだ。
エッチなお店のコスプレのような女子高校生姿を晒していることもあり、身震いするしかない。
「あっ、あの…その彼氏は…いないし…胸も、そんなに…ィ…」
沙希や、肉体本来の持ち主のセシリウス――おまけに悪友や父も含んだ関係者――たちとは違い、本当に女の子だと疑っていない様子が、あまりにも惨めに思えた。
たぷたぷとした胸が、追い討ちを掛けるようにして弾む。
(そ、そんなに…俺は…女に見えるのかよ…っ)
日常生活でも十分女扱い、いや『セラス』扱いだが、やはり違うのだなと、心の底からクジラは悟る。
彼女たちにその気がなくても、その問題なく接してくる態度そのものに居た堪れなくなる。
恥が密度を増して、脳裏に積み重なり、不覚にも目元が潤んでしまう。
「かっ可愛い……」
「うわっ、ヤバい……やばいッ」
その恥じらい不安がっている仕草が余計に女子たちの『何か』を刺激したらしい。
同性であることは――もう関係なかった。
「う…ぅぅ」
ギャップ萌え、と言う物だった。
律儀に返答していながら――しかも、バリバリのグラマーなお姉様な美貌で――ウルウルと、視線をさ迷わせている『白方 セラス』は可憐以外の何でもない。
余りにも儚く、恐ろしいほど弱弱しい雰囲気に、少女たちは言及することすら忘れて息を呑む。
健気な哀れさを持つ一方で、演劇のクライマックスのような美しさも漂わせるのだから、魅了されずにはいられない。特に、その撓わに育ちすぎた胸に。
(みんな胸…見てるんだ!こっ…こんなに大きい、んっだもんなぁ…)
僅か、数分で女子たちを"よこしまな道"に引き込み掛けているのを、本人だけは気付かなかった。
足元どころか、下にある机を半分も隠しながら波打つおっぱいの怪物。
シャツとブラジャーに捕縛されていながらも抑えきれない様子は、圧倒的と言うしかない。
そんな一般からかけ離れた巨大な美房は自分のモノなのだ。
果てしない恥辱と悲しさに、体が打ち震えた。涙がこぼれそうである。
「はぅ~っ!」
「お姉さま?…いやい、妹!わたしの妹よ!」
「か、かわいい…」
眉毛を下げている顔も実に色っぽく――周りを、さらに燃え上がらせてしまう。
同性でも構わないとばかりに引き付ける彼の魅惑。
セシリウスを――『セラス』を演じるクジラは、過激にエロすぎた。
「お~い、どうでもいいけどもう直ぐ二時限目だろ。 早く用意した方がいいぞっ」
「もう、白方君はセラスさんのこと独占していたんだから、もう少し良いじゃない」
そうよ、そうよ、と一致団結する女子軍団。
別に独占された覚えはないが、親戚であり前からセラスを知っていた設定のセシリウス――もとい『白方 玖史羅』は彼女たちの中では敵らしい。
もっとも、ほぼ全女子の敵意を、むしろ飄々と 『クジラ』は受け流した。
「なにいってるんだ。お前たちが騒いでセラスが注意されたら、困るだろ?特にコイツは昔から奥ゆかしいっていうか、奥手っていうか……照れ屋で本音がいえない性質なんだよ」
「あ――っ、納得」
「うんうん――納得」
「そうか、そうだよね――ごめんね、白方くん…納得したわ」
「それなら――納得するしかないわぁー」
(――なんで全員一致で、納得するんだァァ!!?)
またしても催眠術か何かではないか、と疑うクジラだが、生憎と違う。
純然たる事実として彼女たちを説得できるほど、セシリウスの言葉は的を得ていた。
朝の自己紹介から頬は桜色に上気したまま、消えたためしがない。
会話も碌に出来ない上、時折ぴくんっぴくんっ、と身悶えしている。
女子たちが『セラス』を極度の恥かしがり屋なのだと確信するに十分だった。
「じゃね、セラスちゃん!またね!」
「あ…う…うん!」
「じゃあね、白方さん!」
「うん、あ、ありがとう…」
自分の純情少女説を否定したかったが、先手を突くように女子たちが離れていく。
理性が上手く働いていないせいか、つい女性として――『セラス』として振舞ってしまう。
(うっ、ちぃ…くしょう!…なんでお礼なんていってるんだろう、俺…っ)
<つづく>
クジラの人魚姫4-4
(4)
(本当のことは――ダメだ、いえない)
改めて考えてみると、制服を着ただけで学校に潜入できると言う以前に――どうして、自分が通う高校指定の女子の制服が、あったのだろうか。
信じて貰えるかと言うよりも、こうなるように仕組んだのではないか、と彼はセシリウスを疑った。
「ちょっとしたイタズラ程度で、そんな顔されると悪者になった気分になるし……ほら、笑う笑う」
「い…イタズラ…?」
「そ…制服も含めてね…だから笑う、笑う」
「あ…うん。あ、あはっ…はは……っ」
やはり、何時もと違うが、だからと言って、信用して良い訳ではない。
胸を揉まれた回数は既に百回を越えただろう。
ブラやショーツの着け方を無理矢理に教えられた挙句、寝るときもネグリジェの着用を義務付けられた。
恥かしい、嫌だ――と言っても、最後にはクジラに『女』を強要するのが、セシリウスと、ここにはいない幼馴染なのだ。
信じる気が嫌でも削がれ、ビクビクと彼は彼女の行動の一つ一つを見やる。
「あっ…だから…これはっ。別にコスぅ…コスプレをしたかったわけじゃなくて…だなっ…」
「分かってるって、コスプレなんかじゃないのはぁ。キミが制服を着た理由は――」
身構えるクジラ。
どんな、とんでもないことを言い出すのか――と。
もっとも、それは単なる杞憂でしかなかった。
「沙希ちゃんのことが気になって学校に潜入しようとしたんでしょ?」
「あ、いや…違いますゥ。じっ、じ実は――って……はイ?」
予想してなかった応えに固まる彼に、彼女は優しく微笑む。
いや、むしろ自分の予測が外れてしまったのかと、少し顔をしかめてすらもいた。
「違うの?」
「あっ違う!! っいや!いやいや…この違いますは…違う!…じゃなくて…っ」
「あはは、落ち着いて――沙希ちゃんのことが心配になったから制服を着たのね」
「う、…はい――」
コクコクと顔を動かしたクジラ。
勿論、縦にだ。
夢のように優しい――自分に都合よ過ぎる彼女に彼は、本気で自分は夢の中だと思った。
しかし、どうやら現実に違いなく、微笑むセシリウスの表情が、彼の疑心を解かして行く。
「あたしと沙希ちゃんが仲良すぎだから心配だったんだよねえ。あたしたちが影で付き合っているかもしんないって…思ってたんでしょ…?」
「うあっ、その…それは」
「好きなんでしょ?」
「うく…っ!?、――は…はぃ」
「でしょ。大丈夫あたしは良く知ってるから、キミが沙希ちゃんのこと好きなの」
「……っ」
恥らう乙女になっていたクジラも徐々に『男』になる――というよりも、自分を取り戻していく。
時間は掛かりそうだが、それでも彼女とは、目と目をしっかりと合わせられるほどには、回復した。
「あの…っ…このことは……」
「クジラ君も心配症ね。大丈夫、あたしとキミだけの秘密にしてあげるから…」
ここに来て漸く、本当に安堵するクジラ。
今日のセシリウスは自分の――味方なんだ、と。
「じゃあ、早速 ――」
「えっ?…え…?なああぁぁっ!?」
…………………………………
…………………………
……………
……
…
「はい、それじゃあ――転入生を紹介します!入ってきて、白方 セラスさん」
「はっ――はいィっ!!」
ガラガラ、ガシャ。
ドアを開けてから再び締め、教卓の横にぎこちなく立ち尽くした女子生徒。
そこにいる者全てが、魅了された。
(うわぁぁ見てるよ!!みんなして注目してるよ!!)
一人どぎまぎと、内心で叫ぶのは転入生――と、されているクジラ。
(…う…ひくっ…ううぅ…無理…だって…ぇ…っ)
セシリウスの体のままなので、制服を付けたままなので――その姿は、風俗店のコスプレ・ガールのままだ。
目のやり場に困ると言う言葉は、彼にこそ、否――『彼女』にこそ相応しい。
当然、恥かしさも、凄まじかった。
「えっ、えっと――初めまして、……白方 セラスですぅ。おっ、お気付きの方はいると、おっ…思いますがっ……白方 クジラくっ…くん…とは……親戚です」
しかし、ここまで来たら遣ってやると、意気込み、恥じ入るのを一転、クジラは『セラス』になった。
24時間ほぼ女性を演じさせられたせいか、割かし自然である。
もっとも、その姿は、やはりシャツが胸で切り裂かれそうだし、スカートは鞄で隠さないと下着が見えてしまいそうなどと、卑猥な箇所が多いままだった。
(ほっーんとうにイっ!!…俺のためなんだよなッ!?信じるぞ…っ!!)
恥辱の果てに見る、というか睨むのは沙希の横で意地悪に笑う『白方 玖史羅』
無論、中身はセシリウスだ。
気のせいか、幼馴染の沙希も小悪魔的に笑っている。
(ああぁ、もう!!信じるからな!?だから…嘘だったら、なっ…泣いちゃうぞ…っ!)
――"もうジタバタしないの!!まだ余裕があるとはいえ、急がないと"――
――"えっ、何するんだ?なにって学校行く準備じゃない"――
――"無理じゃないわよ、あたしに任せなさい。それとも本当はコスプレが目的だったの?"――
――"ほら、大丈夫だったでしょ。えっ?ああぁ、魔法といっても催眠術みたいなモノを掛けたのよ。軽めに遣ったから日暮れ前には戻っているわ。え…可哀想?そうね、少し可哀想だったかな…けど、あたしたちのセラスちゃんに……あっ!?な、なんでもない!…ホラっ…急がないと遅刻しちゃうわよ"――
――"もうっ…!ココまで来たんだから勇気を出しなさい!…男の子でしょ!それじゃあ、これからよろしくね…転校生の白方セラスちゃん"――
と――『催眠術』なるもので、セシリウスに身を任せるがまま、学校に潜入したクジラ。
確かに注目されることはあっても、通報は一度もされていない。
何故か、沙希が驚かず笑っているのが気になるが、今は演じる――もっとい、信用するしかない。
逃げ場はないのだと、覚悟を締め直し、最後の言葉を言う。
「これから!よ――よろしくお願いしますぅ!!」
にこっと、光輝く笑顔で迎えた二度目の自己紹介。
完全に転校生の『セラス』と成り、馴染み深い皆に、女の自分を見せたクジラ。
それが、幸か不幸かは、本人しか分からない――が。
「ふふ、作戦通りぃぃ」
「このまま、第二、第三と行って――最後には、美味しく頂きましょうね」
「ふふ、待ち遠しいわ」
「あ~、いよいよ……『あの』私をクジラに見せられるんだ。ドキドキしちゃう」
こっそりと、聞こえないように話す沙希と、クジラの姿をしたセシリウス。
どうやら彼の未来は、大荒れ模様――確実だった。

挿絵:倉塚りこ http://surubure.sakura.ne.jp/
【続く……】
(本当のことは――ダメだ、いえない)
改めて考えてみると、制服を着ただけで学校に潜入できると言う以前に――どうして、自分が通う高校指定の女子の制服が、あったのだろうか。
信じて貰えるかと言うよりも、こうなるように仕組んだのではないか、と彼はセシリウスを疑った。
「ちょっとしたイタズラ程度で、そんな顔されると悪者になった気分になるし……ほら、笑う笑う」
「い…イタズラ…?」
「そ…制服も含めてね…だから笑う、笑う」
「あ…うん。あ、あはっ…はは……っ」
やはり、何時もと違うが、だからと言って、信用して良い訳ではない。
胸を揉まれた回数は既に百回を越えただろう。
ブラやショーツの着け方を無理矢理に教えられた挙句、寝るときもネグリジェの着用を義務付けられた。
恥かしい、嫌だ――と言っても、最後にはクジラに『女』を強要するのが、セシリウスと、ここにはいない幼馴染なのだ。
信じる気が嫌でも削がれ、ビクビクと彼は彼女の行動の一つ一つを見やる。
「あっ…だから…これはっ。別にコスぅ…コスプレをしたかったわけじゃなくて…だなっ…」
「分かってるって、コスプレなんかじゃないのはぁ。キミが制服を着た理由は――」
身構えるクジラ。
どんな、とんでもないことを言い出すのか――と。
もっとも、それは単なる杞憂でしかなかった。
「沙希ちゃんのことが気になって学校に潜入しようとしたんでしょ?」
「あ、いや…違いますゥ。じっ、じ実は――って……はイ?」
予想してなかった応えに固まる彼に、彼女は優しく微笑む。
いや、むしろ自分の予測が外れてしまったのかと、少し顔をしかめてすらもいた。
「違うの?」
「あっ違う!! っいや!いやいや…この違いますは…違う!…じゃなくて…っ」
「あはは、落ち着いて――沙希ちゃんのことが心配になったから制服を着たのね」
「う、…はい――」
コクコクと顔を動かしたクジラ。
勿論、縦にだ。
夢のように優しい――自分に都合よ過ぎる彼女に彼は、本気で自分は夢の中だと思った。
しかし、どうやら現実に違いなく、微笑むセシリウスの表情が、彼の疑心を解かして行く。
「あたしと沙希ちゃんが仲良すぎだから心配だったんだよねえ。あたしたちが影で付き合っているかもしんないって…思ってたんでしょ…?」
「うあっ、その…それは」
「好きなんでしょ?」
「うく…っ!?、――は…はぃ」
「でしょ。大丈夫あたしは良く知ってるから、キミが沙希ちゃんのこと好きなの」
「……っ」
恥らう乙女になっていたクジラも徐々に『男』になる――というよりも、自分を取り戻していく。
時間は掛かりそうだが、それでも彼女とは、目と目をしっかりと合わせられるほどには、回復した。
「あの…っ…このことは……」
「クジラ君も心配症ね。大丈夫、あたしとキミだけの秘密にしてあげるから…」
ここに来て漸く、本当に安堵するクジラ。
今日のセシリウスは自分の――味方なんだ、と。
「じゃあ、早速 ――」
「えっ?…え…?なああぁぁっ!?」
…………………………………
…………………………
……………
……
…
「はい、それじゃあ――転入生を紹介します!入ってきて、白方 セラスさん」
「はっ――はいィっ!!」
ガラガラ、ガシャ。
ドアを開けてから再び締め、教卓の横にぎこちなく立ち尽くした女子生徒。
そこにいる者全てが、魅了された。
(うわぁぁ見てるよ!!みんなして注目してるよ!!)
一人どぎまぎと、内心で叫ぶのは転入生――と、されているクジラ。
(…う…ひくっ…ううぅ…無理…だって…ぇ…っ)
セシリウスの体のままなので、制服を付けたままなので――その姿は、風俗店のコスプレ・ガールのままだ。
目のやり場に困ると言う言葉は、彼にこそ、否――『彼女』にこそ相応しい。
当然、恥かしさも、凄まじかった。
「えっ、えっと――初めまして、……白方 セラスですぅ。おっ、お気付きの方はいると、おっ…思いますがっ……白方 クジラくっ…くん…とは……親戚です」
しかし、ここまで来たら遣ってやると、意気込み、恥じ入るのを一転、クジラは『セラス』になった。
24時間ほぼ女性を演じさせられたせいか、割かし自然である。
もっとも、その姿は、やはりシャツが胸で切り裂かれそうだし、スカートは鞄で隠さないと下着が見えてしまいそうなどと、卑猥な箇所が多いままだった。
(ほっーんとうにイっ!!…俺のためなんだよなッ!?信じるぞ…っ!!)
恥辱の果てに見る、というか睨むのは沙希の横で意地悪に笑う『白方 玖史羅』
無論、中身はセシリウスだ。
気のせいか、幼馴染の沙希も小悪魔的に笑っている。
(ああぁ、もう!!信じるからな!?だから…嘘だったら、なっ…泣いちゃうぞ…っ!)
――"もうジタバタしないの!!まだ余裕があるとはいえ、急がないと"――
――"えっ、何するんだ?なにって学校行く準備じゃない"――
――"無理じゃないわよ、あたしに任せなさい。それとも本当はコスプレが目的だったの?"――
――"ほら、大丈夫だったでしょ。えっ?ああぁ、魔法といっても催眠術みたいなモノを掛けたのよ。軽めに遣ったから日暮れ前には戻っているわ。え…可哀想?そうね、少し可哀想だったかな…けど、あたしたちのセラスちゃんに……あっ!?な、なんでもない!…ホラっ…急がないと遅刻しちゃうわよ"――
――"もうっ…!ココまで来たんだから勇気を出しなさい!…男の子でしょ!それじゃあ、これからよろしくね…転校生の白方セラスちゃん"――
と――『催眠術』なるもので、セシリウスに身を任せるがまま、学校に潜入したクジラ。
確かに注目されることはあっても、通報は一度もされていない。
何故か、沙希が驚かず笑っているのが気になるが、今は演じる――もっとい、信用するしかない。
逃げ場はないのだと、覚悟を締め直し、最後の言葉を言う。
「これから!よ――よろしくお願いしますぅ!!」
にこっと、光輝く笑顔で迎えた二度目の自己紹介。
完全に転校生の『セラス』と成り、馴染み深い皆に、女の自分を見せたクジラ。
それが、幸か不幸かは、本人しか分からない――が。
「ふふ、作戦通りぃぃ」
「このまま、第二、第三と行って――最後には、美味しく頂きましょうね」
「ふふ、待ち遠しいわ」
「あ~、いよいよ……『あの』私をクジラに見せられるんだ。ドキドキしちゃう」
こっそりと、聞こえないように話す沙希と、クジラの姿をしたセシリウス。
どうやら彼の未来は、大荒れ模様――確実だった。
挿絵:倉塚りこ http://surubure.sakura.ne.jp/
【続く……】
クジラの人魚姫4-3
(3)
「なんで!? ど、どうし てっ!?」
「バッグを整理していたら、コレがないことに気が付いて…」
「――べ、弁当ぅ?」
弁当箱を軽く持ち上げながら彼女は意気揚々と笑う。
いや、違った。
目は微笑んでいると言うよりも、獲物を狙う獣の目だ。
そして瞬時に思い出す。
今の自分が、セシリウスの体が、どう言う姿なのか、を。
「いやっ、こぉ、これは――」
「ふぅン…俺や沙希がいないと…こんなことしてるんですか…意外ですねぇ」
「ちが――っ!違う!…ち…違うわよ…っ!!」
クジラに残っている意地が、瞬時に否定する。
しかし、単に激情に駆られて出た言葉など、意味はなく、むしろ、セシリウスを興奮させたようだ。
意地悪く、彼女が聞いてくる。
「知りませんでしたよ。セリスさんが隠れてコスプレ趣味があるなんてっ」
「だから違うのよッ!!こっこれは…」
「――どう違うんですか? ホラっ」
脳が言葉を選ぶのに戸惑っている間に、セシリウスがクジラの動きを封じた。
流れ作業のように後ろに回り、両手首を捕まえて強制的に鏡を見させる。
鏡に映るのは、どこか大人の『クジラ』と、歳も考えずに妹の服を着た『セシリウス』――いや。
「はっはな…して!! んん…こォのッ!!」
「ふふ、ダメじゃないですか。こんな綺麗で、こんな色っぽい人が男言葉使っちゃ…っ。ホラ――これがセラスさんですよ?」
「あっ…くう」
彼女にとって、セシリウスの体でいるクジラは『セラス』なのだ。
言い逃れが出来ない痴態――女子高校生の姿――を見られたクジラ。
自分が男なのか、女なのか、分らなくなるほどの恥かしさである。
(う、ぁ…だ、ダメ)
考えることを放棄し、ただ彼女が勧めるがまま、鏡の中の自分を見やる。
また一味も違うセシリウスの体。
震える胸はシャツを切り開きたいほどまん丸で、悲哀に満ちた表情は、虐めたくなるほど可憐だ。
(これが……俺…な、のか)
「ふふ、こんな色っぽいコスプレして――しかも、これ沙希が予備用に貰ってきたお古の制服じゃないですか……なんでセラスさんが穿いているんですか? まさか、着たくなっちゃったとか?」
「う、ぁ…ちが…うのォ……」
言葉で責められるが、怖くて、情けなくて、逃げ出そうとするクジラ。
しかし、様々な思いで固まっている体は、彼が思うよりも、役立たずで。
腕の拘束どころか、顔を鏡から背けることも、ままならない。
(や、ばい…今日はなんだか)
普段の3倍ぐらい、妙な雰囲気に流されている。
いよいよ、このまま性行為を強要されるのかと、クジラは覚悟を決めた。
「――なーんてね……」
「へァ――あっ」
――が、外される手首。
咄嗟に腰を引き、彼は胸元を庇いながら体を回転した。
「あはは、ごめん、ごめん。キミが、クジラ君が可愛くて、つい悪乗りしちゃった」
笑いながら謝罪し、演技を止めている彼女。
腕をクロスさせて押さえているのに、かなり揺れる胸元の刺激も、今のクジラには無意味だった。
「え…あの…あ…あれ?」
なんせ圧政のようなルールを取り決めてから、初めて彼女は素に戻ったのだ。
そんなセシリウスに――驚かないわけにはいかなかった。
「あっ、その……セシリ……クジ、ラくん?」
一方で、クジラはルールを護らずには居られなかった。
自分の名前に、本当の名前に――どう反応して良いのか、完全に忘れていたのだ。
呆然と、『セラス』という女性を無意識に演じてしまう。
その様子に、微笑みながらセシリウスは、優しく諭した。
「今は演技しないでいいわよ。 あぁ――胸揉みもなしだから、安心していいわよ」
「本当――ぅ?」
「勿論!でなきゃ自由にしないし、クジラ君のことを――『クジラ君』っていわないわ…」
声の質から彼は漸く、セシリウスの言葉を信じ、胸元の防御を崩す。
先ほどの素早い反応は、巨乳のため身に付けてしまった癖でも合ったが――何よりも胸揉みに対する防衛策だった。
彼女に害がないと分れば、意味はなくなる。
むしろ、女性っぽくて、早々に止めたかったのである。
「もう、幾らなんでもこんなことで泣かない――男の子でしょ」
軽くため息を付き、指でクジラの目下を拭うセシリウス。
安心したせいで、涙を流したらしい。
(…でも、それは俺の所為じゃないっ)
この体が、女の涙腺が緩いのが悪いのだ、と怒鳴りたい。
けれども歯を食いしばり、止めた。
言い訳臭いし、何よりも今優先して考えることは別にある。
(制服――のこと、どう話せば…)
コスプレしたかったから、女子制服を着たのだと思われている。
無論、違う――のだが、彼女を通じて沙希にも勘違いされてしまうのは、最悪だ。
信じたいが、身内に変態がいるだけに、高確率で誤解されそうである。
<つづく>
「なんで!? ど、どうし てっ!?」
「バッグを整理していたら、コレがないことに気が付いて…」
「――べ、弁当ぅ?」
弁当箱を軽く持ち上げながら彼女は意気揚々と笑う。
いや、違った。
目は微笑んでいると言うよりも、獲物を狙う獣の目だ。
そして瞬時に思い出す。
今の自分が、セシリウスの体が、どう言う姿なのか、を。
「いやっ、こぉ、これは――」
「ふぅン…俺や沙希がいないと…こんなことしてるんですか…意外ですねぇ」
「ちが――っ!違う!…ち…違うわよ…っ!!」
クジラに残っている意地が、瞬時に否定する。
しかし、単に激情に駆られて出た言葉など、意味はなく、むしろ、セシリウスを興奮させたようだ。
意地悪く、彼女が聞いてくる。
「知りませんでしたよ。セリスさんが隠れてコスプレ趣味があるなんてっ」
「だから違うのよッ!!こっこれは…」
「――どう違うんですか? ホラっ」
脳が言葉を選ぶのに戸惑っている間に、セシリウスがクジラの動きを封じた。
流れ作業のように後ろに回り、両手首を捕まえて強制的に鏡を見させる。
鏡に映るのは、どこか大人の『クジラ』と、歳も考えずに妹の服を着た『セシリウス』――いや。
「はっはな…して!! んん…こォのッ!!」
「ふふ、ダメじゃないですか。こんな綺麗で、こんな色っぽい人が男言葉使っちゃ…っ。ホラ――これがセラスさんですよ?」
「あっ…くう」
彼女にとって、セシリウスの体でいるクジラは『セラス』なのだ。
言い逃れが出来ない痴態――女子高校生の姿――を見られたクジラ。
自分が男なのか、女なのか、分らなくなるほどの恥かしさである。
(う、ぁ…だ、ダメ)
考えることを放棄し、ただ彼女が勧めるがまま、鏡の中の自分を見やる。
また一味も違うセシリウスの体。
震える胸はシャツを切り開きたいほどまん丸で、悲哀に満ちた表情は、虐めたくなるほど可憐だ。
(これが……俺…な、のか)
「ふふ、こんな色っぽいコスプレして――しかも、これ沙希が予備用に貰ってきたお古の制服じゃないですか……なんでセラスさんが穿いているんですか? まさか、着たくなっちゃったとか?」
「う、ぁ…ちが…うのォ……」
言葉で責められるが、怖くて、情けなくて、逃げ出そうとするクジラ。
しかし、様々な思いで固まっている体は、彼が思うよりも、役立たずで。
腕の拘束どころか、顔を鏡から背けることも、ままならない。
(や、ばい…今日はなんだか)
普段の3倍ぐらい、妙な雰囲気に流されている。
いよいよ、このまま性行為を強要されるのかと、クジラは覚悟を決めた。
「――なーんてね……」
「へァ――あっ」
――が、外される手首。
咄嗟に腰を引き、彼は胸元を庇いながら体を回転した。
「あはは、ごめん、ごめん。キミが、クジラ君が可愛くて、つい悪乗りしちゃった」
笑いながら謝罪し、演技を止めている彼女。
腕をクロスさせて押さえているのに、かなり揺れる胸元の刺激も、今のクジラには無意味だった。
「え…あの…あ…あれ?」
なんせ圧政のようなルールを取り決めてから、初めて彼女は素に戻ったのだ。
そんなセシリウスに――驚かないわけにはいかなかった。
「あっ、その……セシリ……クジ、ラくん?」
一方で、クジラはルールを護らずには居られなかった。
自分の名前に、本当の名前に――どう反応して良いのか、完全に忘れていたのだ。
呆然と、『セラス』という女性を無意識に演じてしまう。
その様子に、微笑みながらセシリウスは、優しく諭した。
「今は演技しないでいいわよ。 あぁ――胸揉みもなしだから、安心していいわよ」
「本当――ぅ?」
「勿論!でなきゃ自由にしないし、クジラ君のことを――『クジラ君』っていわないわ…」
声の質から彼は漸く、セシリウスの言葉を信じ、胸元の防御を崩す。
先ほどの素早い反応は、巨乳のため身に付けてしまった癖でも合ったが――何よりも胸揉みに対する防衛策だった。
彼女に害がないと分れば、意味はなくなる。
むしろ、女性っぽくて、早々に止めたかったのである。
「もう、幾らなんでもこんなことで泣かない――男の子でしょ」
軽くため息を付き、指でクジラの目下を拭うセシリウス。
安心したせいで、涙を流したらしい。
(…でも、それは俺の所為じゃないっ)
この体が、女の涙腺が緩いのが悪いのだ、と怒鳴りたい。
けれども歯を食いしばり、止めた。
言い訳臭いし、何よりも今優先して考えることは別にある。
(制服――のこと、どう話せば…)
コスプレしたかったから、女子制服を着たのだと思われている。
無論、違う――のだが、彼女を通じて沙希にも勘違いされてしまうのは、最悪だ。
信じたいが、身内に変態がいるだけに、高確率で誤解されそうである。
<つづく>
クジラの人魚姫4-2
(2)
「はっ…ハァ――ちくしょぅぅ――くっ」
血の熱も抜けなければ、心臓は未だに鼓動が煩く、彼を攻め立てる。
数秒後も。数分後も――。
「……くそ…あいつら…仲よすぎ…だよ…っ」
まるで、恋人のようだ――と、考えるのを止め、クジラはお腹を押さえた。
ぐるる、るゥ。
お腹が鳴る。取りあえず、食事が先だ。
これ以上、考えたくなかったのも理由だが、エネルギーが減るのは、人魚も変わらない。
食事を探そうとするクジラの目に机に置かれている料理が映る。
これは、せめてものセシリウスの良心なのか。
(――ん?これは…?)
そして、気が付いた。
自分のために作られたと思われる料理の横に置かれた物を。
「う…い、いやいや…」
最初は、不思議だなと思いながらも気にしなかったが、段々と意識を持っていかれる。
ワザとらしく畳まれていたこともあり、不意に思ってしまったのだ。
これを――この衣装を着て行けば、幼馴染と自分の姿をした人魚の仲に割り込めるかもしれない、と。
食事が終わっても、なおその服が気になった。
「た…試す…だけなら…いいよな」
暇だし、気になるしと、言い訳を重ね、終にその衣装に手を伸ばしてしまうクジラ。
恥じ入りながらも、鏡に向かう姿は――そう、まるでデートのために着飾る少女のようである。
そして、数分後、その赤みを帯びた乙女の顔が、完璧な青色に変わり果てた。
「――かっ、完全に…失敗した」
瞳に映るのは普通の制服――学校用シャツにスカート――を身に纏う『セシリウス』。
いや、『セラス』か。
どちらにしても、鏡の中の女性は女子高校生ではない。
もっと、卑猥で、エロい、何かだ。
「着る前に気づけよ俺……」
漫画とかで、良く出てくる変装しての学校潜入を、少しでも夢見たクジラは、作意を感じながらも、放置されていた自分の学校指定の女子制服に身を包んだのである。
が、明らかに失敗だった。
ネクタイだけは、普通だが、それ以外は普通ではない。
ぎゅうぎゅうに伸びたシャツに、それでも隠せずお肉とブラを見せてしまう胸元。
スカートは、臀部が収まりきらず、ミニスカと化している。
その他の、肩や袖も、むちむちと色気付いていた。
服のサイズに収まりきらないほど、体が大人すぎたのだ。
(どこかのエロゲー!? なにかの撮影かよ!?)
罪なほど――『女』に特化されたセシリウスの体。
それが、女子高生の"コスプレ"をして、眉を不安げに曲げている。
扇情的で、しかも可愛い。
実際にクジラは心拍数を上昇させ、鏡の――制服姿の『自分』――に、魅入ってしまう。
(――うわっ!? 可愛い…ってなに俺は顔を赤らめているんだっ!?)
こんなんだから二人に女性扱いどころか、お嬢ちゃん扱いされるんだと奮起する彼だが、顔は赤いまま。
やはり、鏡に映る『セラス』に興味津々だった。
「結構……背もあったんだなぁ…これでこの胸…反則だなぁ」
ある意味で、裸よりも卑猥だ。
はっきり言って、小学生の中に高校生が入り込む以上に困難である。
潜入作戦――する以前に、大失敗だ。
「ハアァァ――着替えよ……」
ふと、鏡の中の自分と目が合う。
これは自分だ。
外見は、セシリウスという女の人魚が人間になった姿であるが、間違いなく白方 玖史羅。
そう、自分なのだ。
しかし、それなのに――。
(うわッ、やばぃ――ゾクゾクする)
自然に体が姿見と向かい合った。さらに、じっと見る。
「これ――本当に……エロすぎるぅ」
自分で言っていて物悲しいが、それでも、この『セラス』は反則だった。
思わず頬に触り、鏡の中の『彼女』にも手を伸ばすクジラ。
次に胸を持ち上げる。
倒錯的な震えに、心まで女になったようで、怖かった。
(俺、――『俺』に…興奮してる…)
だが、それでも、止められない。
弾む心を制御できずに、むしろ、ヒート・アップさせて、クジラは体に触った。
(可愛いも、綺麗も…本当に、当てはまるよなぁ…っ)
体を弄るだけでなく、その表情すらもクジラは楽しんだ。
ワザと眼つきを弱め、上目遣いにして鏡を覗き込む。
次は爽快に髪をなびかせた後、一回転して真正面を向く。
表情一つで、仕草一つで――何にでも変わった。
大人の雰囲気を出す『セシリウス』にも、少女のような『セラス』にも。
(――もっと、大胆なこと…しようか、なぁ…)
誰もいない家。
唯一の邪魔者――女装癖のある父親は、起きる前にぐるぐるに縛り上げている。
だから、今ここにいるのは自分だけ。
誰にも咎められることのない探究心が、狂気的な興奮に変わるのに、時間は掛からなかった。
両腕で胸を挟み、前屈みに移動し、瞳を欲情で潤ませ、エロくて可愛いポーズを決め込む――筈だった。
誰もいない筈の家に、この体の本当の持ち主であるセシリウスが背後に現れるまでは……。
「なにしてるんですか? セラスさん」
「うきゃあァァああ――――ッ?!」
知性の欠片もない悲鳴を上げると同時に、クジラは自分のアイデンティティーが崩れる音を、確かに――聞いた。
<つづく>
「はっ…ハァ――ちくしょぅぅ――くっ」
血の熱も抜けなければ、心臓は未だに鼓動が煩く、彼を攻め立てる。
数秒後も。数分後も――。
「……くそ…あいつら…仲よすぎ…だよ…っ」
まるで、恋人のようだ――と、考えるのを止め、クジラはお腹を押さえた。
ぐるる、るゥ。
お腹が鳴る。取りあえず、食事が先だ。
これ以上、考えたくなかったのも理由だが、エネルギーが減るのは、人魚も変わらない。
食事を探そうとするクジラの目に机に置かれている料理が映る。
これは、せめてものセシリウスの良心なのか。
(――ん?これは…?)
そして、気が付いた。
自分のために作られたと思われる料理の横に置かれた物を。
「う…い、いやいや…」
最初は、不思議だなと思いながらも気にしなかったが、段々と意識を持っていかれる。
ワザとらしく畳まれていたこともあり、不意に思ってしまったのだ。
これを――この衣装を着て行けば、幼馴染と自分の姿をした人魚の仲に割り込めるかもしれない、と。
食事が終わっても、なおその服が気になった。
「た…試す…だけなら…いいよな」
暇だし、気になるしと、言い訳を重ね、終にその衣装に手を伸ばしてしまうクジラ。
恥じ入りながらも、鏡に向かう姿は――そう、まるでデートのために着飾る少女のようである。
そして、数分後、その赤みを帯びた乙女の顔が、完璧な青色に変わり果てた。
「――かっ、完全に…失敗した」
瞳に映るのは普通の制服――学校用シャツにスカート――を身に纏う『セシリウス』。
いや、『セラス』か。
どちらにしても、鏡の中の女性は女子高校生ではない。
もっと、卑猥で、エロい、何かだ。
「着る前に気づけよ俺……」
漫画とかで、良く出てくる変装しての学校潜入を、少しでも夢見たクジラは、作意を感じながらも、放置されていた自分の学校指定の女子制服に身を包んだのである。
が、明らかに失敗だった。
ネクタイだけは、普通だが、それ以外は普通ではない。
ぎゅうぎゅうに伸びたシャツに、それでも隠せずお肉とブラを見せてしまう胸元。
スカートは、臀部が収まりきらず、ミニスカと化している。
その他の、肩や袖も、むちむちと色気付いていた。
服のサイズに収まりきらないほど、体が大人すぎたのだ。
(どこかのエロゲー!? なにかの撮影かよ!?)
罪なほど――『女』に特化されたセシリウスの体。
それが、女子高生の"コスプレ"をして、眉を不安げに曲げている。
扇情的で、しかも可愛い。
実際にクジラは心拍数を上昇させ、鏡の――制服姿の『自分』――に、魅入ってしまう。
(――うわっ!? 可愛い…ってなに俺は顔を赤らめているんだっ!?)
こんなんだから二人に女性扱いどころか、お嬢ちゃん扱いされるんだと奮起する彼だが、顔は赤いまま。
やはり、鏡に映る『セラス』に興味津々だった。
「結構……背もあったんだなぁ…これでこの胸…反則だなぁ」
ある意味で、裸よりも卑猥だ。
はっきり言って、小学生の中に高校生が入り込む以上に困難である。
潜入作戦――する以前に、大失敗だ。
「ハアァァ――着替えよ……」
ふと、鏡の中の自分と目が合う。
これは自分だ。
外見は、セシリウスという女の人魚が人間になった姿であるが、間違いなく白方 玖史羅。
そう、自分なのだ。
しかし、それなのに――。
(うわッ、やばぃ――ゾクゾクする)
自然に体が姿見と向かい合った。さらに、じっと見る。
「これ――本当に……エロすぎるぅ」
自分で言っていて物悲しいが、それでも、この『セラス』は反則だった。
思わず頬に触り、鏡の中の『彼女』にも手を伸ばすクジラ。
次に胸を持ち上げる。
倒錯的な震えに、心まで女になったようで、怖かった。
(俺、――『俺』に…興奮してる…)
だが、それでも、止められない。
弾む心を制御できずに、むしろ、ヒート・アップさせて、クジラは体に触った。
(可愛いも、綺麗も…本当に、当てはまるよなぁ…っ)
体を弄るだけでなく、その表情すらもクジラは楽しんだ。
ワザと眼つきを弱め、上目遣いにして鏡を覗き込む。
次は爽快に髪をなびかせた後、一回転して真正面を向く。
表情一つで、仕草一つで――何にでも変わった。
大人の雰囲気を出す『セシリウス』にも、少女のような『セラス』にも。
(――もっと、大胆なこと…しようか、なぁ…)
誰もいない家。
唯一の邪魔者――女装癖のある父親は、起きる前にぐるぐるに縛り上げている。
だから、今ここにいるのは自分だけ。
誰にも咎められることのない探究心が、狂気的な興奮に変わるのに、時間は掛からなかった。
両腕で胸を挟み、前屈みに移動し、瞳を欲情で潤ませ、エロくて可愛いポーズを決め込む――筈だった。
誰もいない筈の家に、この体の本当の持ち主であるセシリウスが背後に現れるまでは……。
「なにしてるんですか? セラスさん」
「うきゃあァァああ――――ッ?!」
知性の欠片もない悲鳴を上げると同時に、クジラは自分のアイデンティティーが崩れる音を、確かに――聞いた。
<つづく>
クジラの人魚姫4-1
作:黒い枕
キャラデザ&挿絵:倉塚りこ
(1)
(ねむ…ィ――凄い眠い、ぞ)
桜色のネグリジェを可愛く着ていた『セラス』こと、クジラは寝起き特有の気だるさと戦っていた。
女性の体に――人魚と体が入れ替わると言う劇的な環境変化のため、安眠できない毎日が続いていたのだ。
だから、その分だけ、体が睡眠を欲していた。
「あ……っ」
ぷるん、ぷるん。
歩くたびに響く胸と臀部の膨らみが、意識をぐるぐるに束縛する。
気絶したくても、それこそ現実から逃げたくても、覚醒を促す女性の感覚。
クジラは心底、巨乳を憎んだ。
「くぅ…っ」
歩む度に砲撃のような反動を宿す胸元。
自暴自棄になるには、十分だった。
不幸中の幸い、とまではいえないが、蠢く巨乳に瞬く間に眠気は解消される。
当然、感謝などしないし、余計に異性体の感覚が頭に入りこんでくる。
――訂正、やはり、この乳は敵である。
「はあぁぁ」
納得できない心を仕方ない、と諦めさせ、洗面所のドアを開ける。
真正面にあるのは光る輝く鏡面。
そこにあるのが白方 玖史羅の肉体だったら、どんなにいいだろうか。
「そんな訳はないか……取りあえず、顔洗うか」
しかし、映るのは、ピンクのネグリジェを着た女性。
豊満な身体に、スラリと伸びた手足。
潤んだ瞳も、微かに染まった頬も、瑞々しい唇も、実に素晴らしい。
恰好と姿だけでいえば、完璧な美女となっている現実に、クジラの心は、さらに挫けた。
「ふうぅ――」
頬が熱いのが嫌だったのか、冷水を顔に何度も当てるクジラ。
そして、すぐに洗面所を後にする。
もう用はない、と。
いや――ただ単に見ていたくなかったのだ。
キュートなネグリジェを着込み『セラス』と成っている自分自身の姿、を。
(ん?――あれ)
リビングから声が聞こえた。
クジラの体をしたセシリウスの声――そして。
「おはよう、セラスさん! ネグリジェも似合いますねっ!」
沙希だ。
意味不明な行動が多くなった自分の想い人である麻倉 沙希が微笑み、挨拶して来た。
何故か――白方家の広間で。
「えっと――」
「あっ、おはよう。セラスさん」
今度はペコリっ、とお辞儀してくるのはクジラ――の姿をしたセシリウス。
こっちも最高に爽やかな笑顔だが、クジラには何がなんだか分からない。
むしろ、先に沙希に触れられたくない――寝巻き姿――を褒められたことを思い出し、咄嗟に胸元を隠す始末である。
「今日から一緒に登校することにしたんです――クジラと」
「えっ!?」
一緒に登校することにした――と笑顔で言われても、今のクジラはセシリウスの体だ。
盛り上がっている胸に、むちむちの臀部。
そして、すっきりした股間。
白方 玖史羅どころか、男装しても、男に見えないだろう。
と、なると、彼女が指し示している『クジラ』は――。
「ほら、一応サポートするなら長い時間いないと、ってことになって――特に今のクジラはしっかり面倒を見ないと」
「おいおい、俺はそこまでおっちょこちょいじゃないぞっ」
あはは、と笑い合う沙希とセシリウス。
決定である。
今は『白方 玖史羅』となっている彼女と一緒に学校に行く――と、言う事だ。
まるで沙希すらも、今の『クジラ』こそ本人だと言わんばかりに。
(……仲良すぎねェ!?)
一緒に登校し、帰宅する。
それは昔は当たり前で、けれども今は出来なくなってしまったこと。
密かなクジラの望みでもあった。
その過去の幸せと呼べる時間を二人は復元したのだ。
自分を、完全にのけ者にして。
(なんで――セシリウスなんだよっ!!)
難なく、沙希との仲を深めていく『クジラ』の様子にクジラの胸が痛んだ。
自分のことは許せたが、幼馴染のことになると、危険を承知で彼女らに近づく。
いや、危険なのを忘れて、沙希に詰め寄ったのだ。
「あ、あの…セラスさん?」
「もういい加減にしろっ!!俺は――俺がクジラだろォ!!」
「あっ、ちょっと」
あまりにもクジラ――を、演じているセシリウスが、彼女の恋人のような光景が続き、彼の怒りが一気に爆発した。
むしろ、よく堪えた方だろう。
頭に血を集め、ギロリと、『睨んだつもり』で、彼女の肩を掴んだ。
「く、クジラ…?」
流石の沙希もたじろき、素直な反応を返す。
もっとも、それは恐怖からではなかった。
「じゅるる――クジラぁ、なんでそんなに可愛いのよぉ」
「はァァ!?」
「あっ、いや――ああ、それよりも後ろ……」
「誤魔化すな!!最近、沙希もセシリウスもっはあううぅ??!」
「遅かった――ね」
意味不明な涎を垂らす沙希を涙目で睨むクジラ。
彼は気付いていないが、その顔を真っ赤にして怒鳴る姿は、異様に可愛く――そんな愛らしい女性の胸に無粋な手が触れた。
「ひぃあ…ん!こ…こら!」
クジラは慣れたくないのに熟知してしまった胸部への攻撃に下を見た。
見開いた眼に映るのは苛められている物――自身の巨乳――と、苛めている指。
男の、『白方 玖史羅』の手だ。
丈夫な男の指が、ピンクのネグリジェの布地を胸の奥へ、奥へと、押し込む。
「セシりうスぅぅ!! やめ、…ン、はむンっ」
「あーあっ…セシリウスさんは、私ほど優しくないから…注意したのに…。お馬鹿さんなんだから…クジラは…」
「そ、そんなぁ!んっ…あん!はっんん、ちょっバカ! …っあんひィィ」
(くそぉォ、……あっ、――んふゥ)
後ろから乳房を鷲摑みにしている十本の指は平気に乳首を蹂躙しつつ、全体を絞った。
家畜の牛から牛乳を搾るように――乳の全てを苛め抜く。
もはや罰ゲーム云々ではなくい。
実際に性行為の前戯とも言える卑猥な行為を、クジラは受けている……されている。

「ンひゃっ! あ、ンああぁ!! ――ふにぁ!!」
確実に体は火照っている。
そんな女として感じている『セラス』をセシリウスどころか、沙希に見られているなど、恥かしいと言うレベルではなかった。
汚辱である。
さぞかし無様な姿なのだろう――が、何故か、沙希は不機嫌そうに目を細めていた。
「むう…っ。私もクジラのお胸…揉みたい」
「――続きは帰ってから遣るから覚悟してて下さいよ? じゃあ行こうか、沙希…!」
「本当に…うらやましい。……はっ!? じぁ、じゃぁ、クジ――セラスさん行って来ますっ!」
「んっ…はぁ…ァ…っま…まて……まだはな…し…はなしはあ…っ」
へばり付く足腰。
胸の愛撫が終わっても、その余波でクジラの体は動かなかった。
腕を伸ばすことも出来ずに、沙希とセシリウスの背後は消えていく。
そして玄関のドア音が鳴る。
言いたいことを何一ついえないままに――幼馴染と『クジラ』は、学校に行ってしまった。
<つづく>
キャラデザ&挿絵:倉塚りこ
(1)
(ねむ…ィ――凄い眠い、ぞ)
桜色のネグリジェを可愛く着ていた『セラス』こと、クジラは寝起き特有の気だるさと戦っていた。
女性の体に――人魚と体が入れ替わると言う劇的な環境変化のため、安眠できない毎日が続いていたのだ。
だから、その分だけ、体が睡眠を欲していた。
「あ……っ」
ぷるん、ぷるん。
歩くたびに響く胸と臀部の膨らみが、意識をぐるぐるに束縛する。
気絶したくても、それこそ現実から逃げたくても、覚醒を促す女性の感覚。
クジラは心底、巨乳を憎んだ。
「くぅ…っ」
歩む度に砲撃のような反動を宿す胸元。
自暴自棄になるには、十分だった。
不幸中の幸い、とまではいえないが、蠢く巨乳に瞬く間に眠気は解消される。
当然、感謝などしないし、余計に異性体の感覚が頭に入りこんでくる。
――訂正、やはり、この乳は敵である。
「はあぁぁ」
納得できない心を仕方ない、と諦めさせ、洗面所のドアを開ける。
真正面にあるのは光る輝く鏡面。
そこにあるのが白方 玖史羅の肉体だったら、どんなにいいだろうか。
「そんな訳はないか……取りあえず、顔洗うか」
しかし、映るのは、ピンクのネグリジェを着た女性。
豊満な身体に、スラリと伸びた手足。
潤んだ瞳も、微かに染まった頬も、瑞々しい唇も、実に素晴らしい。
恰好と姿だけでいえば、完璧な美女となっている現実に、クジラの心は、さらに挫けた。
「ふうぅ――」
頬が熱いのが嫌だったのか、冷水を顔に何度も当てるクジラ。
そして、すぐに洗面所を後にする。
もう用はない、と。
いや――ただ単に見ていたくなかったのだ。
キュートなネグリジェを着込み『セラス』と成っている自分自身の姿、を。
(ん?――あれ)
リビングから声が聞こえた。
クジラの体をしたセシリウスの声――そして。
「おはよう、セラスさん! ネグリジェも似合いますねっ!」
沙希だ。
意味不明な行動が多くなった自分の想い人である麻倉 沙希が微笑み、挨拶して来た。
何故か――白方家の広間で。
「えっと――」
「あっ、おはよう。セラスさん」
今度はペコリっ、とお辞儀してくるのはクジラ――の姿をしたセシリウス。
こっちも最高に爽やかな笑顔だが、クジラには何がなんだか分からない。
むしろ、先に沙希に触れられたくない――寝巻き姿――を褒められたことを思い出し、咄嗟に胸元を隠す始末である。
「今日から一緒に登校することにしたんです――クジラと」
「えっ!?」
一緒に登校することにした――と笑顔で言われても、今のクジラはセシリウスの体だ。
盛り上がっている胸に、むちむちの臀部。
そして、すっきりした股間。
白方 玖史羅どころか、男装しても、男に見えないだろう。
と、なると、彼女が指し示している『クジラ』は――。
「ほら、一応サポートするなら長い時間いないと、ってことになって――特に今のクジラはしっかり面倒を見ないと」
「おいおい、俺はそこまでおっちょこちょいじゃないぞっ」
あはは、と笑い合う沙希とセシリウス。
決定である。
今は『白方 玖史羅』となっている彼女と一緒に学校に行く――と、言う事だ。
まるで沙希すらも、今の『クジラ』こそ本人だと言わんばかりに。
(……仲良すぎねェ!?)
一緒に登校し、帰宅する。
それは昔は当たり前で、けれども今は出来なくなってしまったこと。
密かなクジラの望みでもあった。
その過去の幸せと呼べる時間を二人は復元したのだ。
自分を、完全にのけ者にして。
(なんで――セシリウスなんだよっ!!)
難なく、沙希との仲を深めていく『クジラ』の様子にクジラの胸が痛んだ。
自分のことは許せたが、幼馴染のことになると、危険を承知で彼女らに近づく。
いや、危険なのを忘れて、沙希に詰め寄ったのだ。
「あ、あの…セラスさん?」
「もういい加減にしろっ!!俺は――俺がクジラだろォ!!」
「あっ、ちょっと」
あまりにもクジラ――を、演じているセシリウスが、彼女の恋人のような光景が続き、彼の怒りが一気に爆発した。
むしろ、よく堪えた方だろう。
頭に血を集め、ギロリと、『睨んだつもり』で、彼女の肩を掴んだ。
「く、クジラ…?」
流石の沙希もたじろき、素直な反応を返す。
もっとも、それは恐怖からではなかった。
「じゅるる――クジラぁ、なんでそんなに可愛いのよぉ」
「はァァ!?」
「あっ、いや――ああ、それよりも後ろ……」
「誤魔化すな!!最近、沙希もセシリウスもっはあううぅ??!」
「遅かった――ね」
意味不明な涎を垂らす沙希を涙目で睨むクジラ。
彼は気付いていないが、その顔を真っ赤にして怒鳴る姿は、異様に可愛く――そんな愛らしい女性の胸に無粋な手が触れた。
「ひぃあ…ん!こ…こら!」
クジラは慣れたくないのに熟知してしまった胸部への攻撃に下を見た。
見開いた眼に映るのは苛められている物――自身の巨乳――と、苛めている指。
男の、『白方 玖史羅』の手だ。
丈夫な男の指が、ピンクのネグリジェの布地を胸の奥へ、奥へと、押し込む。
「セシりうスぅぅ!! やめ、…ン、はむンっ」
「あーあっ…セシリウスさんは、私ほど優しくないから…注意したのに…。お馬鹿さんなんだから…クジラは…」
「そ、そんなぁ!んっ…あん!はっんん、ちょっバカ! …っあんひィィ」
(くそぉォ、……あっ、――んふゥ)
後ろから乳房を鷲摑みにしている十本の指は平気に乳首を蹂躙しつつ、全体を絞った。
家畜の牛から牛乳を搾るように――乳の全てを苛め抜く。
もはや罰ゲーム云々ではなくい。
実際に性行為の前戯とも言える卑猥な行為を、クジラは受けている……されている。
「ンひゃっ! あ、ンああぁ!! ――ふにぁ!!」
確実に体は火照っている。
そんな女として感じている『セラス』をセシリウスどころか、沙希に見られているなど、恥かしいと言うレベルではなかった。
汚辱である。
さぞかし無様な姿なのだろう――が、何故か、沙希は不機嫌そうに目を細めていた。
「むう…っ。私もクジラのお胸…揉みたい」
「――続きは帰ってから遣るから覚悟してて下さいよ? じゃあ行こうか、沙希…!」
「本当に…うらやましい。……はっ!? じぁ、じゃぁ、クジ――セラスさん行って来ますっ!」
「んっ…はぁ…ァ…っま…まて……まだはな…し…はなしはあ…っ」
へばり付く足腰。
胸の愛撫が終わっても、その余波でクジラの体は動かなかった。
腕を伸ばすことも出来ずに、沙希とセシリウスの背後は消えていく。
そして玄関のドア音が鳴る。
言いたいことを何一ついえないままに――幼馴染と『クジラ』は、学校に行ってしまった。
<つづく>
六鏡 玲人の暗躍――水野 希光の場合 ――(22) by.黒い枕
ドアが開いたと思ったら、そこにはスクール水着――しかも、サイズが合っていないかのようにピチピチに肉体に張り付けている――痴女が居たならば、大抵の男は引くだろう。
が、ここにいる水野希光は違かった。
素晴らしいほど眩い笑顔で、褒められる。
「あはは…似合うじゃないか…ん?――楓希」
この場合、褒め言葉ではない。責め言葉である。
だから、きつく唇を閉じ、必死に応えないようにするスクール水着の美女――楓希。
巨大な乳房が代わりに振動する。
そして、彼女が沈黙を保てたのは三秒だけだった。
「あ…はい…あ、ありがとう、ございます…」
「そうそう…でも――まだ覚悟を決めていないんですか?もう諦めちゃいましょうよ…ね」
希光が優しく、けれどもオカマ口調で、さらに問いかけると、またも彼女は口を閉ざした。
どう見ても、屈辱のあまりに固まっている顔だ。
と、同時に、またも水着の布地を切り裂こうとするほど、乳房が蠢く。
「へぇ…反抗するんですか?だったら、現マスターであり、新マスターであるボクが調教しないといけませんね」
「…だ…っ…ん」
「はい?なんですか?」
「だ、だから…結局…調教、するん、だろ…んんっ!あっんん!」
羞恥心に触発されて、楓希はかつての『自分』として発言した。
完全な自爆である。
マスターである希光ですらも変えられない【楓希】として、根幹が彼女を発情させた。
生命としては有り得ない異質な興奮に、楓希は簡単に股間を濡らす。
「んあっ…ああ!」
「あーあ、こうなることが分かっていた筈なのに、イケない子だ…」
「ひぃ…ひんん!」
座り込む暇なく襲う快感に、本物の少女のように無抵抗に喘ぎを洩らす楓希の股間に手を伸ばすのは簡単なことだった。
指で一回、二回と、弄るだけで、びくんびくん!
この頃は、罪悪感を感じる以上に、可愛いと思えるようになり、希光は狂い踊る楓希を微笑んで見下ろした。
「可愛い奴だ…こんなに濡らして…マスターに抱かれたくて…仕方ないんだな?」
ぬとぬと感で分かる。
今、感じて洩らしたにしては粘着質が強く、香りが強い。
恐らく、水着に着替えて、家に着く前までにたっぷりと興奮してしまっていたのだろう。
一層強く、顔を赤らめる楓希の反応が、何よりの証拠である。
「あ…ちが…んん!!」
「違う?じゃあ、先に負けたのは?あの日の夜――ボクに何をしたのか忘れたのかい?」
「だから…あれは…この体の、この体のせいぃ……ですぅ」
根負けした――否、命の危険を感じるほどの体の疼きに、メイドのような口調に戻る楓希。
はっきりと、息遣いすらも、立て直していく。
人間から見れば、異常以外のなにものでもないのだろう。
「だから――違う…です。あれは…私の意思じゃ…」
「だったら、しっかりと説明してくれかな?マスターであるボクに…ああ、勿論、これは命令だ」
「か…畏まりました…マスター…っ」
火照って汗を掻いた乳房に、余計に張り付いてくる水着の恥ずかしさ。
女として興奮した証拠をたくさんこびり付かせた股間の辱め。
全身が羞恥心を刺激する諸悪の根源。
なのに、それでも彼女はマスターの命令に従う。
(おれが…俺が…希光…なのに…俺はフブキじゃ、ない…のにぃ…っ)
付け足し、顔はおろか全身が熱いのに、燃えているのに――と、悲しみながら、楓希はマスターである希光の命令に従い、説明していく。
「あ…あの日、わた、私は…マスターのご厚意を断わって…そして、そ、して…っ」
「うん、それで――なに?」
「あっ、はい…そ、それで…っ」
(この悪魔……っ!!あっくぅ!き、記憶が…ひっいんん!!)
思い出したくないのに、この脳は、使っている者の意思を無視する。
続きを求められれば、それこそ泥酔したみたいに口が滑った。
いや、言葉を発してしまう。
「わた、しは…お、おお、女と、して…マスターを…マスターの童貞を…いっ、頂きぃました…っ」
「違うだろ?強引に――奪ったんだ…今の姿でね…」
「は…はい……」
しゅんと、頭を垂れる楓希。
そう、彼が希望を掛けて、【楓希】の中から『希光』の意識を呼び起こそうとした日。
彼女はマスターを襲った。
それも、今の姿――スクール水着に着替えてから、性行為を強要したのだ。
「でも…でも…それは、その…」
赤く染まった顔もあり、従順なさまが愛らしい楓希。
彼女は、促されていないにも関わらず言葉を続けようとした。
それこそ、子宮がどくんどくんと、勝手な行動の罰で起動しても――。
「この体が、勝手に動いた…からです…」
言わなければいけないことがあると言わんばかりに強く、抗議する。
あの日、確かに楓希はマスターである希光を性的な意味で頂いた。無論、『女』として。
しかも『マスターを男にするのが、私の務めです』――と、宣言して、驚き、硬直し、遂には泣き出してしまうほど恐怖していた彼を絶頂させてしまった。
これが彼女自身の本心からの行いなら、今の状況は、間違いなく自業自得である。
しかし、しかし――だ。
「シークレット…モードか…」
「はい…そうです。そうなんども言っているじゃないですか…」
″シークレット・モード″。
その文字が、メモか何かに書かれているかのように頭の中に出現した瞬間、嫌がる楓希を追い遣り、男を責め立てる【楓希】――でもない、第三の人格と評していいほどの情欲が体を支配した。
つまり、楓希の意思はなかったのだ――が、それでも、それは 水野希光にとっては、六鏡 玲人の意思であることには変わらなかった。
「私でも知らない機能…つまり、そう言うことなんですよね…」
「だ、だから…なんでそう…んんっ…なるん…ですか…っ」
それが、彼の意思ならばと、楓希は兎も角、【楓希】として生まれた希光は、従うことしか考えていなかった。
何度、説明しても、哀願しても彼の思考はそこに戻り、手招きする希光。
それに抗う術を持たない彼女は近づくしかなかった。
「だって…一度交わったら、最後…融合機能が失われるなんて、どう考えても、”元に戻るな”…って言っているようなものじゃないですか」
この肉体が逆レイプして以来、融合と言う能力が――いや、この場合は、二人が元に戻るための力が、と言った方がいいだろう。
兎に角、初めて交わった日、その力が失われた。
希光は責めるつもりで言っているのではないだろうが、スクール水着と言う恥以外の何ものでもない衣装で視姦されている楓希は心が弱く、簡単に泣いてしまう。
「う…うぅ…ひく…っ」
「だから、私は水野希光として、楓希を所有しないといけないことなんですよ――ねぇ楓希」
「は、はぃ……」
苦しめと命令するなら、喜んで――それが、『彼女』たちの生き方なのだ。
楓希には、どうすることも出来ない。
彼女の方は、心が反対しても、体が従うのだから、現実世界では無抵抗も同じである。
「それじゃあ、なんて言うんだい楓希。ボクに、マスターに言ってごらん」
「わ、私は…私は…っ…!」
(ふぐう――ゥ!?んあっああ!…ひぃああん!)
否、精神においても、楓希はどんどんと、従順に興奮していった。
マスターの意思。
巧みに発情を促されてしまう肉体の”機能”。
そして、純粋なる――自分から痛みを求めるマゾ的な悦楽が、彼女を追い詰める。
「私は楓希…水野希光…さまの…奴隷…ですぅ…」
泣きながらも彼女は人形――ではなく、『女』であり、性奴隷であることを宣言しなければならない。
それが希光の嫉妬であり、最後の慈悲だった。
「まぁ、まだ五日目だから、ボクから行くけど…来週辺りからは、ちゃんと自分から誘うように…っ」
「…ひんっ…ん!」
「返事は…?」
「あ――っ、はい…ど、努力、しますう…」
彼に言わせれば、楓希は『人形』として失格らしい。それは楓希本人も理解していた。
心の底から、人形に、希光を愛しているつもりだったが、性行為の前では、そんなもの紙のように破れた。
兎に角、怖い。震えるほど、おぞましい。
だから、彼の指摘は正しい――が、そこからが問題だった。
「ほら…ベッドに横になれ…」
「は、はい…マスター…っ」
続けて言う言葉は『股を開きやすいように蟹股になれ――』である。
恥辱の思いを、胸に――文字通り、両手で胸を押さえ――溜め込みながら、瞳を瞑る楓希。
しかし、それが癪に障ったのか、希光はさらに命令した。
「目を瞑ってどうする!しっかりと、学ばないとだめだろ!?」
「も、申し訳ありませーんっ!!」
元マスターのためだとか、少しでも気を楽にするためだとか、言っている割りにはイラつき、怒鳴り続けている希光。
どうやら、慈悲以上に嫉妬の――【楓希】の体でいることに対しての――気持ちが、強いようである。
益々、息遣いを荒くすると、ズドンっ!!
開かせていた楓希の脚と脚の付根に入り込むと、一気に、その男性器で貫いた。
「ひぎゃああっ!んんっぐっ…うぅ!くうぅん!」
「こら、なに獣みたいな叫びを出しているんだ!?こう言うときこそちゃんと嬌声で、悩ましい女の言葉で誘わないとダメだろ!?ボクの話を聞いているのか――!?」
「ひぁああん!ご…ごしゅ…ああっ!しゅみ…ま、まっせん、んんんっ!!んぎぃぃっ!?」
ギシギシと、倒壊寸前のような建物のような軋みが、悲鳴が、下半身から生じる。
全身が砕かれたような衝撃。
濡れている筈なのに、ここまでの激痛――決まっていた。
楓希を出来る限り『女』にしようと、ワザと希光は強姦のような勢いでペニスを突き刺したのである。
(おれ…おれぇ!あ…あくぅ!ああ…わた、し)
激しい痛みの中、段々と感じる快感に、楓希の中の――『彼』の心が削れてしまう。
もっとも、けして、その意地は無くならない。
そう作られた【楓希】の肉体が、そうさせないのだ。
快と獄に挟まれ、彼女は醜く、喘ぐことしかままならない。
(わたしぃ…わたしいぃ!!はっうん、ん――っ!!)
彼女は、完全には【楓希】ではなかった。
かつて、楓希だった精神が言うには、完全に成り切られると面白くないからと、最初っから肉体の方に組み込まれているシステム――自我保存の力らしい。
その隠された機能によって『彼』は自身を保ったまま女として屈辱を味わっていた。
もう、何度も泣いたことか。
それこそ、女の子みたいにワンワン、と枕を涙で汚した。
しかし、だからと言って、この体から解放される訳でもなく、こうして希光の最後の優しさをもって、調教されていく。
「あぐっ!!ひあぁぁぁ――っ!!」

挿絵:神山 響
人形でなく、悲しみ、もがく心を保たなくてはいけない――【性奴隷<オモチャ>】として楓希は、今日もマスターに抱かれるのだった。
【完】
が、ここにいる水野希光は違かった。
素晴らしいほど眩い笑顔で、褒められる。
「あはは…似合うじゃないか…ん?――楓希」
この場合、褒め言葉ではない。責め言葉である。
だから、きつく唇を閉じ、必死に応えないようにするスクール水着の美女――楓希。
巨大な乳房が代わりに振動する。
そして、彼女が沈黙を保てたのは三秒だけだった。
「あ…はい…あ、ありがとう、ございます…」
「そうそう…でも――まだ覚悟を決めていないんですか?もう諦めちゃいましょうよ…ね」
希光が優しく、けれどもオカマ口調で、さらに問いかけると、またも彼女は口を閉ざした。
どう見ても、屈辱のあまりに固まっている顔だ。
と、同時に、またも水着の布地を切り裂こうとするほど、乳房が蠢く。
「へぇ…反抗するんですか?だったら、現マスターであり、新マスターであるボクが調教しないといけませんね」
「…だ…っ…ん」
「はい?なんですか?」
「だ、だから…結局…調教、するん、だろ…んんっ!あっんん!」
羞恥心に触発されて、楓希はかつての『自分』として発言した。
完全な自爆である。
マスターである希光ですらも変えられない【楓希】として、根幹が彼女を発情させた。
生命としては有り得ない異質な興奮に、楓希は簡単に股間を濡らす。
「んあっ…ああ!」
「あーあ、こうなることが分かっていた筈なのに、イケない子だ…」
「ひぃ…ひんん!」
座り込む暇なく襲う快感に、本物の少女のように無抵抗に喘ぎを洩らす楓希の股間に手を伸ばすのは簡単なことだった。
指で一回、二回と、弄るだけで、びくんびくん!
この頃は、罪悪感を感じる以上に、可愛いと思えるようになり、希光は狂い踊る楓希を微笑んで見下ろした。
「可愛い奴だ…こんなに濡らして…マスターに抱かれたくて…仕方ないんだな?」
ぬとぬと感で分かる。
今、感じて洩らしたにしては粘着質が強く、香りが強い。
恐らく、水着に着替えて、家に着く前までにたっぷりと興奮してしまっていたのだろう。
一層強く、顔を赤らめる楓希の反応が、何よりの証拠である。
「あ…ちが…んん!!」
「違う?じゃあ、先に負けたのは?あの日の夜――ボクに何をしたのか忘れたのかい?」
「だから…あれは…この体の、この体のせいぃ……ですぅ」
根負けした――否、命の危険を感じるほどの体の疼きに、メイドのような口調に戻る楓希。
はっきりと、息遣いすらも、立て直していく。
人間から見れば、異常以外のなにものでもないのだろう。
「だから――違う…です。あれは…私の意思じゃ…」
「だったら、しっかりと説明してくれかな?マスターであるボクに…ああ、勿論、これは命令だ」
「か…畏まりました…マスター…っ」
火照って汗を掻いた乳房に、余計に張り付いてくる水着の恥ずかしさ。
女として興奮した証拠をたくさんこびり付かせた股間の辱め。
全身が羞恥心を刺激する諸悪の根源。
なのに、それでも彼女はマスターの命令に従う。
(おれが…俺が…希光…なのに…俺はフブキじゃ、ない…のにぃ…っ)
付け足し、顔はおろか全身が熱いのに、燃えているのに――と、悲しみながら、楓希はマスターである希光の命令に従い、説明していく。
「あ…あの日、わた、私は…マスターのご厚意を断わって…そして、そ、して…っ」
「うん、それで――なに?」
「あっ、はい…そ、それで…っ」
(この悪魔……っ!!あっくぅ!き、記憶が…ひっいんん!!)
思い出したくないのに、この脳は、使っている者の意思を無視する。
続きを求められれば、それこそ泥酔したみたいに口が滑った。
いや、言葉を発してしまう。
「わた、しは…お、おお、女と、して…マスターを…マスターの童貞を…いっ、頂きぃました…っ」
「違うだろ?強引に――奪ったんだ…今の姿でね…」
「は…はい……」
しゅんと、頭を垂れる楓希。
そう、彼が希望を掛けて、【楓希】の中から『希光』の意識を呼び起こそうとした日。
彼女はマスターを襲った。
それも、今の姿――スクール水着に着替えてから、性行為を強要したのだ。
「でも…でも…それは、その…」
赤く染まった顔もあり、従順なさまが愛らしい楓希。
彼女は、促されていないにも関わらず言葉を続けようとした。
それこそ、子宮がどくんどくんと、勝手な行動の罰で起動しても――。
「この体が、勝手に動いた…からです…」
言わなければいけないことがあると言わんばかりに強く、抗議する。
あの日、確かに楓希はマスターである希光を性的な意味で頂いた。無論、『女』として。
しかも『マスターを男にするのが、私の務めです』――と、宣言して、驚き、硬直し、遂には泣き出してしまうほど恐怖していた彼を絶頂させてしまった。
これが彼女自身の本心からの行いなら、今の状況は、間違いなく自業自得である。
しかし、しかし――だ。
「シークレット…モードか…」
「はい…そうです。そうなんども言っているじゃないですか…」
″シークレット・モード″。
その文字が、メモか何かに書かれているかのように頭の中に出現した瞬間、嫌がる楓希を追い遣り、男を責め立てる【楓希】――でもない、第三の人格と評していいほどの情欲が体を支配した。
つまり、楓希の意思はなかったのだ――が、それでも、それは 水野希光にとっては、六鏡 玲人の意思であることには変わらなかった。
「私でも知らない機能…つまり、そう言うことなんですよね…」
「だ、だから…なんでそう…んんっ…なるん…ですか…っ」
それが、彼の意思ならばと、楓希は兎も角、【楓希】として生まれた希光は、従うことしか考えていなかった。
何度、説明しても、哀願しても彼の思考はそこに戻り、手招きする希光。
それに抗う術を持たない彼女は近づくしかなかった。
「だって…一度交わったら、最後…融合機能が失われるなんて、どう考えても、”元に戻るな”…って言っているようなものじゃないですか」
この肉体が逆レイプして以来、融合と言う能力が――いや、この場合は、二人が元に戻るための力が、と言った方がいいだろう。
兎に角、初めて交わった日、その力が失われた。
希光は責めるつもりで言っているのではないだろうが、スクール水着と言う恥以外の何ものでもない衣装で視姦されている楓希は心が弱く、簡単に泣いてしまう。
「う…うぅ…ひく…っ」
「だから、私は水野希光として、楓希を所有しないといけないことなんですよ――ねぇ楓希」
「は、はぃ……」
苦しめと命令するなら、喜んで――それが、『彼女』たちの生き方なのだ。
楓希には、どうすることも出来ない。
彼女の方は、心が反対しても、体が従うのだから、現実世界では無抵抗も同じである。
「それじゃあ、なんて言うんだい楓希。ボクに、マスターに言ってごらん」
「わ、私は…私は…っ…!」
(ふぐう――ゥ!?んあっああ!…ひぃああん!)
否、精神においても、楓希はどんどんと、従順に興奮していった。
マスターの意思。
巧みに発情を促されてしまう肉体の”機能”。
そして、純粋なる――自分から痛みを求めるマゾ的な悦楽が、彼女を追い詰める。
「私は楓希…水野希光…さまの…奴隷…ですぅ…」
泣きながらも彼女は人形――ではなく、『女』であり、性奴隷であることを宣言しなければならない。
それが希光の嫉妬であり、最後の慈悲だった。
「まぁ、まだ五日目だから、ボクから行くけど…来週辺りからは、ちゃんと自分から誘うように…っ」
「…ひんっ…ん!」
「返事は…?」
「あ――っ、はい…ど、努力、しますう…」
彼に言わせれば、楓希は『人形』として失格らしい。それは楓希本人も理解していた。
心の底から、人形に、希光を愛しているつもりだったが、性行為の前では、そんなもの紙のように破れた。
兎に角、怖い。震えるほど、おぞましい。
だから、彼の指摘は正しい――が、そこからが問題だった。
「ほら…ベッドに横になれ…」
「は、はい…マスター…っ」
続けて言う言葉は『股を開きやすいように蟹股になれ――』である。
恥辱の思いを、胸に――文字通り、両手で胸を押さえ――溜め込みながら、瞳を瞑る楓希。
しかし、それが癪に障ったのか、希光はさらに命令した。
「目を瞑ってどうする!しっかりと、学ばないとだめだろ!?」
「も、申し訳ありませーんっ!!」
元マスターのためだとか、少しでも気を楽にするためだとか、言っている割りにはイラつき、怒鳴り続けている希光。
どうやら、慈悲以上に嫉妬の――【楓希】の体でいることに対しての――気持ちが、強いようである。
益々、息遣いを荒くすると、ズドンっ!!
開かせていた楓希の脚と脚の付根に入り込むと、一気に、その男性器で貫いた。
「ひぎゃああっ!んんっぐっ…うぅ!くうぅん!」
「こら、なに獣みたいな叫びを出しているんだ!?こう言うときこそちゃんと嬌声で、悩ましい女の言葉で誘わないとダメだろ!?ボクの話を聞いているのか――!?」
「ひぁああん!ご…ごしゅ…ああっ!しゅみ…ま、まっせん、んんんっ!!んぎぃぃっ!?」
ギシギシと、倒壊寸前のような建物のような軋みが、悲鳴が、下半身から生じる。
全身が砕かれたような衝撃。
濡れている筈なのに、ここまでの激痛――決まっていた。
楓希を出来る限り『女』にしようと、ワザと希光は強姦のような勢いでペニスを突き刺したのである。
(おれ…おれぇ!あ…あくぅ!ああ…わた、し)
激しい痛みの中、段々と感じる快感に、楓希の中の――『彼』の心が削れてしまう。
もっとも、けして、その意地は無くならない。
そう作られた【楓希】の肉体が、そうさせないのだ。
快と獄に挟まれ、彼女は醜く、喘ぐことしかままならない。
(わたしぃ…わたしいぃ!!はっうん、ん――っ!!)
彼女は、完全には【楓希】ではなかった。
かつて、楓希だった精神が言うには、完全に成り切られると面白くないからと、最初っから肉体の方に組み込まれているシステム――自我保存の力らしい。
その隠された機能によって『彼』は自身を保ったまま女として屈辱を味わっていた。
もう、何度も泣いたことか。
それこそ、女の子みたいにワンワン、と枕を涙で汚した。
しかし、だからと言って、この体から解放される訳でもなく、こうして希光の最後の優しさをもって、調教されていく。
「あぐっ!!ひあぁぁぁ――っ!!」
挿絵:神山 響
人形でなく、悲しみ、もがく心を保たなくてはいけない――【性奴隷<オモチャ>】として楓希は、今日もマスターに抱かれるのだった。
【完】
六鏡 玲人の暗躍――水野 希光の場合 ――(21) by.黒い枕
ここは、名もなきメイド喫茶の一つ。
名前は敢えて、記入しないが、ベタなネーミングだからこそ、愛嬌があると言うコアな客層もいる店でもある。
特に今は――
「いらっしゃいませ。ご主人さま」
通称メロンちゃんと言われる看板メイドのお陰で客足は三倍強にも、成っていた。
むろん、名前でなく、ニックネームだ。
しかし、その名付けは、実に論理的に適うものだった、と認めるしかないだろう。
なぜなら――。
ぶにゅんびゅん。ぱふぱふ――ん!!
「うおおお!! メロンちゃん、最高!」
「巨乳メイド……万歳!」
「チクショウ!!また、アイツに…負けた!」
胸元を卑猥に強調するメイド服から零れてしまいそうなほど揺れる乳房。
その大きさは、正しくメロン級だ。
むしろ、スイカちゃん――と、呼びたくなるほどのサイズだ。
「あ…あはは…また今度、お願いしますね…っ」
そう思うほど、形もよく、重量感が溢れ出る乳房を携え、メロンちゃんと、呼ばれた女性――楓希は早歩きで仕事場に向かう。
「またかよ!」
「フブキちゃ~ん!! 俺を見捨てないでくれ!!」
「チクショウ!チクショウ!!巨乳メイドの夢がああぁ!!」
楓希のメイド仕事は特殊だった。
なんせ、制服であるメイド服から、異質なのである。
他のみんなは安全と倫理観を考慮に入れた許容範囲のデザインだが、彼女は違った。根本的に。
色合いは文字通りメロンを思わせる緑色を基調とし、淫靡な谷間の強調。
あたかもギャルゲーに出てくるようなメイド服だ。
よく見れば彼女の首には、首輪のようなモノがあるではないか。
胸が、巨乳が服に合わなかった、と言えばそれまでであるが、それにしても、エロい。
エロ、過ぎる。
(くっ……見るんじゃねえェェ……)
煌びやかなピンクの毛。
突起し、簡単に擦れてしまう胸部と臀部の膨らみ。
腰周りの触りたくなるほど、急なカーブ。
そして、例の恥かしいメイド服。これで目立つな、と命令するほうが、おかしいだろう。
注目される羞恥心と、視線で犯される屈辱は、どうにも成らなかった。
そして――。
「お帰り…なっ、なさいませ…。…ご主人さま」
少々、ぎこちないものの、メイドとして礼をする楓希。
必然にメロン級以上の乳が蠢き、背後から喝采が沸き立つ。
(くそぉお!なんで俺がこんなことをォォ!!)
若干、女性の声が混じっていた賞賛や叫び、そして自分に対する会話。
鼓膜からの甘酸っぱいとも、辛いとも言える仕打ちに楓希は、堪えた。
本当なら、メイド喫茶で働くことはおろか、メイド服を着込むことすら嫌なのだ。
まざまざと自分が『女装させられていること』を自覚されるから――と、微かに瞳を潤ませ、彼女は、ご主人さまである男性の横に座った。
「なんだよ……そんな畏まらなくても、いいじゃないか」
そしてご主人さま――水野希光は、平然と、砕けた口調で会話を開始した。
その意味が、何を意味するのか、よく知っている筈なのに。
彼女の心境を察しながら、メイドの楓希でなく、自身の恋人としての楓希を望むマスター。
非道な仕打ちである――が。
「だっ、ダメだよ。ショウくん……」
マスターに望まれれば、逆らえない体と心で楓希は恋人として対応する。
じゅん…ぴちゃりと、音を立ててしまいほど、女性器が湿った。
「いいじゃないか。俺たち恋人なんだし…それとも、他に困ることでもあるのか?」
大有りだ。
叫びたいほど、感情が爆発し、彼女はこめかみを歪ませる。
ただ、やはり肉感的且つ可愛らしい存在には、威圧感と言うものは、まるで無かった。
(ん…あっ…ひどい…んんっ!)
【楓希】の内部には様々なギミックが、隠されていた。
本来、楓希だった希光にも知らされていない機能の数々。
例えば、マスターたる存在に対する相応しい言動と態度をしなければ、発情してしまう――と、言ったように。
「…………っ」
かつて、自分だった体に、存在に、メイドのように平伏し、服従する。
それは自分に実った乳房への愛撫以上に屈辱だった。
汚辱と言ってもいい。
しかも、同時にマスターの命令は聞かなくてはならない。
矛盾した生き地獄だった。
「しょうがないなあ。じゃあ、今日はBコースでお願いするね。メロンちゃん」
その様子が哀れに思ったのだろう。彼は優しく、メイドの望みを承諾した。
囁かれるマスターの甘美なお言葉。
楓希は胸の重みが取れた開放感と爽快さに、笑みを零す。
「ありがとう御座います。――フブキ、Bコース入ります」
注文されたコースを他のメイドに伝え、再びマスターに向き合う。
その乙女な笑顔に、ご主人さまである希光は勿論のこと、その場に居た誰もが心を奪われる。
――メロンちゃんと呼ばれるメイドが、ここまで人気な理由。
それは、ここでの楓希は特殊だったからに他ならない。
官能的すぎる体や弾けんばかりの胸元もそうだが、何よりも彼女の、彼女だけのサービスが特殊であり、また店の売りになっていたのだ。
その名も、メロンちゃんのパフパフサービス。
内容は語らずとも分かるように、楓希の、その豊満すぎる乳房を揉める権利を得るのだ。
この場合は、水野希光が。
「くくっ……凄い。マシュマロみたいだ」
「んんっ…あんっ!…んっ」
マユとは違い、本当に触れているか否か――のような優しいタッチである。
当然だが、正常なメイド喫茶のサービスではない。
【楓希】の能力で、この行為を常識なのだと世界に誤認させているに過ぎないのだ。
故に、水野希光以外には、このサービスを受けたことはなかった。
――つまり、注目を集めるだけ集めて、楓希を苦しめるだけのイベントなのである。

挿絵:神山 響
(くそっ…んっ…気持ち、いい…)
子供の遊戯のような指使い。
そんな行為に、彼女の肉体は無情にも、喜びはしゃいだ。
「ど、どうでしたご主人さま?フブキのおっぱいは気持ち良かったですかぁ?」
「うん……本当のメロンのような甘い香りがしたよ」
自然とメイドとして――正確には従順な人形として――笑みを振り撒く。
胸の疼きが収まるにつれ、理性が戻り、自己嫌悪に心が押しつぶされた。
(くそ…この変態が…)
暴力を振いたくなるほど--『男』としての--気力を取り戻した楓希。
だが、それはさらなる悪夢に彼女を追いやる副産物でしかなかった。
「どうぞ。ご主人さま――オムライスです」
タイミングよく、運ばれるオムライス。
既に衣服の乱れを直した楓希は、ふーふーと熱い玉子とライスを冷ましていく。
「…ご主人さま。熱いのでお気をつけ下さい」
あ~ん、と言う恥かしい言葉すらも忘れない。
今の彼女に出来ることはただひとつ――目の前の、かつて自分だった存在に尽くすことしか、許されていないのだ。
「ん、美味しいけど…まだ慣れてないんだな--元マスターはいけない子ですね?」
「ひぃあっ!あっ…す、すみま…せん!」
「ダメですよ?許しません…仕事が終わったら…例の服装で帰って来て下さいね…」
「はい…っ…お、仰せのままに…っ」
故に、どんな屈辱でも――コクコクと、首を縦に揺らして、受け止めるしかなかった。首にある首輪のせいか、今の楓希はメイドと言うよりは、『奴隷』のようである。
<つづく>
名前は敢えて、記入しないが、ベタなネーミングだからこそ、愛嬌があると言うコアな客層もいる店でもある。
特に今は――
「いらっしゃいませ。ご主人さま」
通称メロンちゃんと言われる看板メイドのお陰で客足は三倍強にも、成っていた。
むろん、名前でなく、ニックネームだ。
しかし、その名付けは、実に論理的に適うものだった、と認めるしかないだろう。
なぜなら――。
ぶにゅんびゅん。ぱふぱふ――ん!!
「うおおお!! メロンちゃん、最高!」
「巨乳メイド……万歳!」
「チクショウ!!また、アイツに…負けた!」
胸元を卑猥に強調するメイド服から零れてしまいそうなほど揺れる乳房。
その大きさは、正しくメロン級だ。
むしろ、スイカちゃん――と、呼びたくなるほどのサイズだ。
「あ…あはは…また今度、お願いしますね…っ」
そう思うほど、形もよく、重量感が溢れ出る乳房を携え、メロンちゃんと、呼ばれた女性――楓希は早歩きで仕事場に向かう。
「またかよ!」
「フブキちゃ~ん!! 俺を見捨てないでくれ!!」
「チクショウ!チクショウ!!巨乳メイドの夢がああぁ!!」
楓希のメイド仕事は特殊だった。
なんせ、制服であるメイド服から、異質なのである。
他のみんなは安全と倫理観を考慮に入れた許容範囲のデザインだが、彼女は違った。根本的に。
色合いは文字通りメロンを思わせる緑色を基調とし、淫靡な谷間の強調。
あたかもギャルゲーに出てくるようなメイド服だ。
よく見れば彼女の首には、首輪のようなモノがあるではないか。
胸が、巨乳が服に合わなかった、と言えばそれまでであるが、それにしても、エロい。
エロ、過ぎる。
(くっ……見るんじゃねえェェ……)
煌びやかなピンクの毛。
突起し、簡単に擦れてしまう胸部と臀部の膨らみ。
腰周りの触りたくなるほど、急なカーブ。
そして、例の恥かしいメイド服。これで目立つな、と命令するほうが、おかしいだろう。
注目される羞恥心と、視線で犯される屈辱は、どうにも成らなかった。
そして――。
「お帰り…なっ、なさいませ…。…ご主人さま」
少々、ぎこちないものの、メイドとして礼をする楓希。
必然にメロン級以上の乳が蠢き、背後から喝采が沸き立つ。
(くそぉお!なんで俺がこんなことをォォ!!)
若干、女性の声が混じっていた賞賛や叫び、そして自分に対する会話。
鼓膜からの甘酸っぱいとも、辛いとも言える仕打ちに楓希は、堪えた。
本当なら、メイド喫茶で働くことはおろか、メイド服を着込むことすら嫌なのだ。
まざまざと自分が『女装させられていること』を自覚されるから――と、微かに瞳を潤ませ、彼女は、ご主人さまである男性の横に座った。
「なんだよ……そんな畏まらなくても、いいじゃないか」
そしてご主人さま――水野希光は、平然と、砕けた口調で会話を開始した。
その意味が、何を意味するのか、よく知っている筈なのに。
彼女の心境を察しながら、メイドの楓希でなく、自身の恋人としての楓希を望むマスター。
非道な仕打ちである――が。
「だっ、ダメだよ。ショウくん……」
マスターに望まれれば、逆らえない体と心で楓希は恋人として対応する。
じゅん…ぴちゃりと、音を立ててしまいほど、女性器が湿った。
「いいじゃないか。俺たち恋人なんだし…それとも、他に困ることでもあるのか?」
大有りだ。
叫びたいほど、感情が爆発し、彼女はこめかみを歪ませる。
ただ、やはり肉感的且つ可愛らしい存在には、威圧感と言うものは、まるで無かった。
(ん…あっ…ひどい…んんっ!)
【楓希】の内部には様々なギミックが、隠されていた。
本来、楓希だった希光にも知らされていない機能の数々。
例えば、マスターたる存在に対する相応しい言動と態度をしなければ、発情してしまう――と、言ったように。
「…………っ」
かつて、自分だった体に、存在に、メイドのように平伏し、服従する。
それは自分に実った乳房への愛撫以上に屈辱だった。
汚辱と言ってもいい。
しかも、同時にマスターの命令は聞かなくてはならない。
矛盾した生き地獄だった。
「しょうがないなあ。じゃあ、今日はBコースでお願いするね。メロンちゃん」
その様子が哀れに思ったのだろう。彼は優しく、メイドの望みを承諾した。
囁かれるマスターの甘美なお言葉。
楓希は胸の重みが取れた開放感と爽快さに、笑みを零す。
「ありがとう御座います。――フブキ、Bコース入ります」
注文されたコースを他のメイドに伝え、再びマスターに向き合う。
その乙女な笑顔に、ご主人さまである希光は勿論のこと、その場に居た誰もが心を奪われる。
――メロンちゃんと呼ばれるメイドが、ここまで人気な理由。
それは、ここでの楓希は特殊だったからに他ならない。
官能的すぎる体や弾けんばかりの胸元もそうだが、何よりも彼女の、彼女だけのサービスが特殊であり、また店の売りになっていたのだ。
その名も、メロンちゃんのパフパフサービス。
内容は語らずとも分かるように、楓希の、その豊満すぎる乳房を揉める権利を得るのだ。
この場合は、水野希光が。
「くくっ……凄い。マシュマロみたいだ」
「んんっ…あんっ!…んっ」
マユとは違い、本当に触れているか否か――のような優しいタッチである。
当然だが、正常なメイド喫茶のサービスではない。
【楓希】の能力で、この行為を常識なのだと世界に誤認させているに過ぎないのだ。
故に、水野希光以外には、このサービスを受けたことはなかった。
――つまり、注目を集めるだけ集めて、楓希を苦しめるだけのイベントなのである。
挿絵:神山 響
(くそっ…んっ…気持ち、いい…)
子供の遊戯のような指使い。
そんな行為に、彼女の肉体は無情にも、喜びはしゃいだ。
「ど、どうでしたご主人さま?フブキのおっぱいは気持ち良かったですかぁ?」
「うん……本当のメロンのような甘い香りがしたよ」
自然とメイドとして――正確には従順な人形として――笑みを振り撒く。
胸の疼きが収まるにつれ、理性が戻り、自己嫌悪に心が押しつぶされた。
(くそ…この変態が…)
暴力を振いたくなるほど--『男』としての--気力を取り戻した楓希。
だが、それはさらなる悪夢に彼女を追いやる副産物でしかなかった。
「どうぞ。ご主人さま――オムライスです」
タイミングよく、運ばれるオムライス。
既に衣服の乱れを直した楓希は、ふーふーと熱い玉子とライスを冷ましていく。
「…ご主人さま。熱いのでお気をつけ下さい」
あ~ん、と言う恥かしい言葉すらも忘れない。
今の彼女に出来ることはただひとつ――目の前の、かつて自分だった存在に尽くすことしか、許されていないのだ。
「ん、美味しいけど…まだ慣れてないんだな--元マスターはいけない子ですね?」
「ひぃあっ!あっ…す、すみま…せん!」
「ダメですよ?許しません…仕事が終わったら…例の服装で帰って来て下さいね…」
「はい…っ…お、仰せのままに…っ」
故に、どんな屈辱でも――コクコクと、首を縦に揺らして、受け止めるしかなかった。首にある首輪のせいか、今の楓希はメイドと言うよりは、『奴隷』のようである。
<つづく>
六鏡 玲人の暗躍――水野 希光の場合 ――(20) by.黒い枕
ずらりと並んだ大きなロッカーと、十個以上はある女の子らしいヌイグルミが置かれた机では、そこが何処であるのかは分からない。
だが、そこにメイド服を着た女の子や女性が居たら、どうだろうか。
さらに日本の都心部の七十坪以上、八十坪未満の土地と言う限定があれば、さらに絞られる。
――と言うか、もう分かるだろう。
ここは、数人のアルバイトが、メイドごっこをする場所。
メイド喫茶の更衣室だ。
「ひゃああ!!こら……マユ!」
「うわ…これが噂のIカップ――ごっさんですぅ!」
そして――そこでは一人の先輩が、にゅぐにゅぐと、後輩に後ろから胸を揉まれていた。
許可していないのに胸を触られれば、揉まれれば例え同性でも許せるものではない。
楓希は弄ばれつつも、そこはしっかりと叱った。
しかし、怒られた筈の後輩であるマユ――十八歳未満ぐらいの女の子――は、楓希の胸を揉み解すのを止めない。
むしろ体重ごと傾けて、背中に密着。
守るのがブラだけなので、マユが述べるようにIカップの乳房に布地と指が、深々と食い込んだ。
「こっ、こらああ!! ああっ……ちょっと!!」
「うわああっ!! 凄い!凄い!」
マユは、体格差のある楓希の体に負けないように、ハァハァしながら熱烈な愛撫を続けた。
性行為が目的だったのかは分からないが、責められている彼女の乳に薄っすらと血が集まっていく。
(いい加減に……!)
「――こらっ! なにやってんの!」
「あだっ!?」
容赦なく背後から、節操なしにセクハラを噛ましてくる後輩を振る払おうとしたら、別の誰かが止めてくれた。
天は人を見放さないものだと、乳房とブラを両手で庇いながら、楓希は感謝――しない。
(いや……運がないから…)
自分は不幸だから、運がないから、後輩に巨乳を弄られ、『女』を強いられているのだ。
彼女には、マスターを愛し、マスターの恋人役を演じ、――可愛らしいメイド衣装に着替えて、働かなくてはならなかった。
自分は、そう言う存在なのだから。
「ほら……楓希も早く着替えなさい――彼、待っているわよ?」
(その話題に触れるなああぁ!!)
やはり、自分は幸運に見放された、つくづく不幸な存在らしい。
助けてくれた先輩――メイド姿のユイに愚痴交じりの叫びを、ぶつけた。無論、脳内で。
(くそぉおお!!言いたくないのにィィ!!)
話を振り直したいが、行き成り彼氏の話しから遠ざかるのは不自然だった。
そもそも、『設定』違反になってしまう――と言うこともあり、楓希は愛想よく且つ、恥じらいながら、返した。
「もう!…ショウくんったら……」
我ながら上手くぶりっ子を、純情な女の子を演じられたと、楓希は誇る。
だが、瞬時に精神は陽気から陰気に変わった。
悲しみと切なさが急激に襲い掛かる。
おまけに――。
(はっ、ううぅ!! 来たよお――ォ!!)
背筋に無視できない電気が流された。
溜まらず、楓希は背筋を仰け反らせ、子宮を奮わす。
「まあまあ。彼氏として心配なんでしょ?許してあげなよっ」
「そうですよ。って言うか、どこであんな美形を捕まえたんですか?」
二人には知られないように――発情を隠した――最小限の動作と仕草。
故に、ユイもマユも罪悪感なしに会話を続けてきた。
「えへへ。羨ましいでしょ。マユ」
ゾクゾク……じゅっくうぅ。
またも、神経をむず痒くさせる痺れが襲いかかり、子宮が覚醒へと鼓動を開始する。
ダメだと思いつつも、停止できないむらむらの――欲情。
『設定』されているシステムであるため、抑制することすらも不可能。
楓希は思わず、その誇る巨乳に抱きついて、広がっていく衝動を宥めつかせる。
当たり前だが、気休め程度。
だが、その気休め程度が、彼女にとってはなによりも助かった。
「ん?どうしたの?ここ…寒いの?」
反射的に刺激してしまった乳房に感覚に悶絶している楓希に、ユイの声が掛かる。
どうやら、冷気によって乳に抱き付いたのだと勘違いしているらしい。
チャンス、とばかりに今ある羞恥心、不快感、そして性欲を押し殺し、彼女は話題を一転させた。
「大丈夫だよ。あっそれよりも急がないと!時間!時間!」
「えっ、あ本当だ!!」
「ふええ!フブキ先輩の胸に夢中になっていたら時間がっ!?」
一人、今すぐ叱りたいが、時間がないのは事実である。
――自分は特に時間は掛かるので、急がなくてはならなかった。
(はぁ…なんで俺がこんなことを…うぅ)
特注の、とっても凝っているメイド服だからである。
けっして、マスターを待たせているからでは――ない。多分。
(って――俺はなんで、アイツのことを考えているんだあぁぁ!?)
忙しく着替える最中、瞬間的でも自分の彼氏――水野希光のことを思ってしまい、メイド服を抱きしめたまま、頭を大きく振るう楓希だった。
<つづく>
だが、そこにメイド服を着た女の子や女性が居たら、どうだろうか。
さらに日本の都心部の七十坪以上、八十坪未満の土地と言う限定があれば、さらに絞られる。
――と言うか、もう分かるだろう。
ここは、数人のアルバイトが、メイドごっこをする場所。
メイド喫茶の更衣室だ。
「ひゃああ!!こら……マユ!」
「うわ…これが噂のIカップ――ごっさんですぅ!」
そして――そこでは一人の先輩が、にゅぐにゅぐと、後輩に後ろから胸を揉まれていた。
許可していないのに胸を触られれば、揉まれれば例え同性でも許せるものではない。
楓希は弄ばれつつも、そこはしっかりと叱った。
しかし、怒られた筈の後輩であるマユ――十八歳未満ぐらいの女の子――は、楓希の胸を揉み解すのを止めない。
むしろ体重ごと傾けて、背中に密着。
守るのがブラだけなので、マユが述べるようにIカップの乳房に布地と指が、深々と食い込んだ。
「こっ、こらああ!! ああっ……ちょっと!!」
「うわああっ!! 凄い!凄い!」
マユは、体格差のある楓希の体に負けないように、ハァハァしながら熱烈な愛撫を続けた。
性行為が目的だったのかは分からないが、責められている彼女の乳に薄っすらと血が集まっていく。
(いい加減に……!)
「――こらっ! なにやってんの!」
「あだっ!?」
容赦なく背後から、節操なしにセクハラを噛ましてくる後輩を振る払おうとしたら、別の誰かが止めてくれた。
天は人を見放さないものだと、乳房とブラを両手で庇いながら、楓希は感謝――しない。
(いや……運がないから…)
自分は不幸だから、運がないから、後輩に巨乳を弄られ、『女』を強いられているのだ。
彼女には、マスターを愛し、マスターの恋人役を演じ、――可愛らしいメイド衣装に着替えて、働かなくてはならなかった。
自分は、そう言う存在なのだから。
「ほら……楓希も早く着替えなさい――彼、待っているわよ?」
(その話題に触れるなああぁ!!)
やはり、自分は幸運に見放された、つくづく不幸な存在らしい。
助けてくれた先輩――メイド姿のユイに愚痴交じりの叫びを、ぶつけた。無論、脳内で。
(くそぉおお!!言いたくないのにィィ!!)
話を振り直したいが、行き成り彼氏の話しから遠ざかるのは不自然だった。
そもそも、『設定』違反になってしまう――と言うこともあり、楓希は愛想よく且つ、恥じらいながら、返した。
「もう!…ショウくんったら……」
我ながら上手くぶりっ子を、純情な女の子を演じられたと、楓希は誇る。
だが、瞬時に精神は陽気から陰気に変わった。
悲しみと切なさが急激に襲い掛かる。
おまけに――。
(はっ、ううぅ!! 来たよお――ォ!!)
背筋に無視できない電気が流された。
溜まらず、楓希は背筋を仰け反らせ、子宮を奮わす。
「まあまあ。彼氏として心配なんでしょ?許してあげなよっ」
「そうですよ。って言うか、どこであんな美形を捕まえたんですか?」
二人には知られないように――発情を隠した――最小限の動作と仕草。
故に、ユイもマユも罪悪感なしに会話を続けてきた。
「えへへ。羨ましいでしょ。マユ」
ゾクゾク……じゅっくうぅ。
またも、神経をむず痒くさせる痺れが襲いかかり、子宮が覚醒へと鼓動を開始する。
ダメだと思いつつも、停止できないむらむらの――欲情。
『設定』されているシステムであるため、抑制することすらも不可能。
楓希は思わず、その誇る巨乳に抱きついて、広がっていく衝動を宥めつかせる。
当たり前だが、気休め程度。
だが、その気休め程度が、彼女にとってはなによりも助かった。
「ん?どうしたの?ここ…寒いの?」
反射的に刺激してしまった乳房に感覚に悶絶している楓希に、ユイの声が掛かる。
どうやら、冷気によって乳に抱き付いたのだと勘違いしているらしい。
チャンス、とばかりに今ある羞恥心、不快感、そして性欲を押し殺し、彼女は話題を一転させた。
「大丈夫だよ。あっそれよりも急がないと!時間!時間!」
「えっ、あ本当だ!!」
「ふええ!フブキ先輩の胸に夢中になっていたら時間がっ!?」
一人、今すぐ叱りたいが、時間がないのは事実である。
――自分は特に時間は掛かるので、急がなくてはならなかった。
(はぁ…なんで俺がこんなことを…うぅ)
特注の、とっても凝っているメイド服だからである。
けっして、マスターを待たせているからでは――ない。多分。
(って――俺はなんで、アイツのことを考えているんだあぁぁ!?)
忙しく着替える最中、瞬間的でも自分の彼氏――水野希光のことを思ってしまい、メイド服を抱きしめたまま、頭を大きく振るう楓希だった。
<つづく>
六鏡 玲人の暗躍――水野 希光の場合 ――(19) by.黒い枕
命じられれば、しっかりと従うものの、やはり恥じ入り、眼前まで来たら瞳すらもぎゅっと閉じてしまう楓希――これでは従順な奴隷ではないか。
人形とは違い、確かな自我があり、個性が彼女にはあった。
(そこは、はいっ…でしょ!なんで顔を赤くするんですか!?)
とてもじゃないが、見ていられない。
人形なら、本当の【人形】なら、そうするべきだと憤慨する希光。
彼女自身の価値観は――作り主から作られたものだが、その精神構造は――少なくとも【楓希】そのものなのだ。
そして、その精神が、魂が叫ぶ。
(…私なら…臭いも気にしないのにィィー!)
彼女には、かつてマスターだった楓希には、恥があり、後悔があり、切なさまで備わっていた。
人形にはいらない感情である。
人形には――『愛』さえ、あればいいのだ。それが、希光の中にいる精神の結論である。
同時に――。
(やっぱり…無理が有りますよ…)
お互いに、【人形】にも、【人間】にも成りきれない、とも考え至った。
幾ら、あの方の、六鏡 玲人の命令とは言え――辛い。
辛すぎた。
【楓希】の心は、そう言う風に作られていないのだから……。
(私だって、文句の一つも言いたくなりますよぉぉ――六鏡さまぁぁぁ!!)
矛盾した命令に設定。
六鏡の絶対さと、人形としての穢れない恋慕の板ばさみ。
――現に、希光は脳内とは言え、絶対なる主に”不満”を抱いてしまったことすらも、気付かない。
「あ、あの…マスター?」
「もーう!マスターじゃなくて、ショウくんでしょ…あっ!だろ…!?」
「は、はい…スミマセン。あっでも…考え事をしていた…みたいだったから……うぅ!」
激情のまま思わず素を出してしまう希光だったが、もう一人の異端者は、もっと酷い。
敬語を使わないで良いと命令しているのに、屈服することしか頭に無いのである。
屈服することと、愛することは、ほんの少し違う。
誇りを持っているか、どうかの違いで――ぶっちゃけ言えば、目の前の『女』は、快感に酔っているだけなのだ。
なので、ますます腹が立つ。こんなにも自分が悩んでいるのに、と。
「少し様子を見ようと思ったけど…止めだ…」
もう少し、様子を見てから、『最後のチャンス』に掛けようとしたが、時間の無駄だった。いや、もう手遅れかもしれない。
「ショウくん……?」
(だから…その、ああこのような言い方をして大丈夫かしらーな顔は止めろォォ!!お願いだから…)
うじうじと、恋人を演じていることを快く思っていない楓希。
ただ肉体から来る高揚感に現を抜かしているだけで、マスターを、自分を愛しているわけではない。
【楓希】として、誇りを持って、働いてきただけに――彼には、果てしなく、ムカついた。
「……んはぁぁ!もういいから…こっちこい…」
もっとも、ただイライラしているだけでは事態の好転は望めない。
兎に角――自分に課せられた『設定』を守りつつ――行動あるのみである。
希光はベッドに腰を掛けると、楓希を手招きした。
「ほら…座れ…」
「は…え?あ、あの」
「ああもう!いいから…俺の上に座れって言っているんだ…」
優柔不断で迷っている彼女。
支配力を働かせて従わせた方が良かったかもしれない――が、それでは意味がない。
仕方なく、力任せに体を引き寄せると、彼女は可愛らしい叫びを発した。
「ひゃあ!?あ…そんな!ダメ…です!」
聞く気はない。いや、聞きたくもなかった。
馴染み深い声が、恥かしがり、命令に背こうとする口調。
体も、もがいている。
さながら、腕の中で暴れる子猫のように。
(まっ…メッキを剥がしたら…こんなものでしょう)
「どうした?んん?これも、マスターの命令なんけど…」
内心、元マスターとは言え、”マスター”を苦しめていることに罪悪感が生まれる。
マスターとして義務を全うするように作られたが――マスターとして定めた人物を愛するように、尽くすようにとも作られているためである。
だから――尚更、止めることは出来なかった。
「あ…済みません。あの…これから何を…?」
「何を…って…そのナニだよ」
一瞬、キョトンと呆ける楓希。
だが、流石は元男なのか――二秒と掛からずに、絶叫する。
「え――?あ、ちょ――!?」
声を張り上げると共に、起き上がろうとしたため、体ごと捕まえ、ぐぐっと、押さえ込む。
丁度、胡坐を組んでいる自分の上に収まるように。
神経を支配されてはいないとは言え、力尽くで体を圧迫されれば似たようなものである。
案の定、楓希は、その瞳をウルウルさせて、哀願してきた。
「離して下さい!…嘘ですよね?マスター…っ…そうですよね…」
無論、本気だ。
無言のまま、力で彼女を支配するとベッドの奥へと運ぶ。
「嘘じゃないぞ…お前はなんだ?俺に仕える人形の【楓希】じゃないのか?」
そして、彼が口を開いたのは、楓希が『下』になり、希光が『上』となった瞬間だった。
準備万端である。
「そうです…ですが…でも、こんな行き成り…」
「だってお前は、マスターに戻るのが嫌なんだろ?」
なんて言い表せばいいのか分らないが、兎に角、快楽のままに楓希は【楓希】を受け入れている。
いや、受け入れた気になっているのだ。
少なくとも、性行為のことを視野に入れていなかったのだから、余計に【楓希】として、失格である。
「は、はい…そうです。わ、私はマスターにぃ…でも…でもまだ――」
「なら、早いも遅いも関係ない。違うか…?」
「違、い…ません」
正論で攻めているだけに、見る見るうちに楓希は消沈していく。
もはや、その顔には恋慕で頬を染めておらず、ただただ恐怖に引き摺っていた。
それでも従おうとしているのだから、そこは評価してあげよう。
あくまでも、『人間』としての話だが……。
「なら…お前はどうするべきだ?」
「ま、マスターが望むがまま、だっ…抱かれますぅ…っ」
合意するものの、瞳をきつく閉じ、肉体を大きく揺らす彼女。
ぷるぷると、巨乳が淫靡に異性を誘うが、それでも、乗り気ではないのは確かであり――同時に、彼女が、まだ『彼』に戻れることを示していた。
(ああ…良かった。私はこれで……)
一種の賭けだが、希光の企みは成功したと言える。
【人形】としての矛盾を指摘して自我の復活を促すだけではダメだった。
そこで彼は、「彼女に、自分が『女』であることの自覚することに重みを置き、その異性との性行為の迫力を持って、正気に戻らせようとしたのである。
そして、今、完全に恐怖に支配されている――眼前の”少女”が、その答えだ。
「…さあ!どうする!?今ならまだ間に合うかも――しれませんよ!?」
「も、元に…」
「なに!?聞こえないぞ…?」
「私は…元にっ…」
「元にい?」
「――戻りたくなどありません!!」
希光の問いかけに、震える少女から突如、積極的な女性に変わる。
叫びと同時に、彼女は希光に抱きつく。
ぎゅううぅ――と。
「……ア、レ…?え、ええ――と?」
希光の誤算であり、敗因。
それは、六鏡玲人の思惑と、『彼女』の本当のあり方を誤解していたことである。
『水野希光』の体と、『楓希』の体を入れ替えたことがゲームなのではない。
「んんっ!」
「んちゅ…あむぅ!んんっ…」
【楓希】の精神と肉体も含めてこそ――【ゲーム】だったのだ。
「はぁはぁ…うふふ、マスター。フブキが、気持ちよくして、差し上げますね…?」
積極的にキスを仕掛けてきた楓希の妖艶な笑みに当てられた希光は、なす術もなく『男』としての初夜を――強いられてしまうのだった。
<つづく>
人形とは違い、確かな自我があり、個性が彼女にはあった。
(そこは、はいっ…でしょ!なんで顔を赤くするんですか!?)
とてもじゃないが、見ていられない。
人形なら、本当の【人形】なら、そうするべきだと憤慨する希光。
彼女自身の価値観は――作り主から作られたものだが、その精神構造は――少なくとも【楓希】そのものなのだ。
そして、その精神が、魂が叫ぶ。
(…私なら…臭いも気にしないのにィィー!)
彼女には、かつてマスターだった楓希には、恥があり、後悔があり、切なさまで備わっていた。
人形にはいらない感情である。
人形には――『愛』さえ、あればいいのだ。それが、希光の中にいる精神の結論である。
同時に――。
(やっぱり…無理が有りますよ…)
お互いに、【人形】にも、【人間】にも成りきれない、とも考え至った。
幾ら、あの方の、六鏡 玲人の命令とは言え――辛い。
辛すぎた。
【楓希】の心は、そう言う風に作られていないのだから……。
(私だって、文句の一つも言いたくなりますよぉぉ――六鏡さまぁぁぁ!!)
矛盾した命令に設定。
六鏡の絶対さと、人形としての穢れない恋慕の板ばさみ。
――現に、希光は脳内とは言え、絶対なる主に”不満”を抱いてしまったことすらも、気付かない。
「あ、あの…マスター?」
「もーう!マスターじゃなくて、ショウくんでしょ…あっ!だろ…!?」
「は、はい…スミマセン。あっでも…考え事をしていた…みたいだったから……うぅ!」
激情のまま思わず素を出してしまう希光だったが、もう一人の異端者は、もっと酷い。
敬語を使わないで良いと命令しているのに、屈服することしか頭に無いのである。
屈服することと、愛することは、ほんの少し違う。
誇りを持っているか、どうかの違いで――ぶっちゃけ言えば、目の前の『女』は、快感に酔っているだけなのだ。
なので、ますます腹が立つ。こんなにも自分が悩んでいるのに、と。
「少し様子を見ようと思ったけど…止めだ…」
もう少し、様子を見てから、『最後のチャンス』に掛けようとしたが、時間の無駄だった。いや、もう手遅れかもしれない。
「ショウくん……?」
(だから…その、ああこのような言い方をして大丈夫かしらーな顔は止めろォォ!!お願いだから…)
うじうじと、恋人を演じていることを快く思っていない楓希。
ただ肉体から来る高揚感に現を抜かしているだけで、マスターを、自分を愛しているわけではない。
【楓希】として、誇りを持って、働いてきただけに――彼には、果てしなく、ムカついた。
「……んはぁぁ!もういいから…こっちこい…」
もっとも、ただイライラしているだけでは事態の好転は望めない。
兎に角――自分に課せられた『設定』を守りつつ――行動あるのみである。
希光はベッドに腰を掛けると、楓希を手招きした。
「ほら…座れ…」
「は…え?あ、あの」
「ああもう!いいから…俺の上に座れって言っているんだ…」
優柔不断で迷っている彼女。
支配力を働かせて従わせた方が良かったかもしれない――が、それでは意味がない。
仕方なく、力任せに体を引き寄せると、彼女は可愛らしい叫びを発した。
「ひゃあ!?あ…そんな!ダメ…です!」
聞く気はない。いや、聞きたくもなかった。
馴染み深い声が、恥かしがり、命令に背こうとする口調。
体も、もがいている。
さながら、腕の中で暴れる子猫のように。
(まっ…メッキを剥がしたら…こんなものでしょう)
「どうした?んん?これも、マスターの命令なんけど…」
内心、元マスターとは言え、”マスター”を苦しめていることに罪悪感が生まれる。
マスターとして義務を全うするように作られたが――マスターとして定めた人物を愛するように、尽くすようにとも作られているためである。
だから――尚更、止めることは出来なかった。
「あ…済みません。あの…これから何を…?」
「何を…って…そのナニだよ」
一瞬、キョトンと呆ける楓希。
だが、流石は元男なのか――二秒と掛からずに、絶叫する。
「え――?あ、ちょ――!?」
声を張り上げると共に、起き上がろうとしたため、体ごと捕まえ、ぐぐっと、押さえ込む。
丁度、胡坐を組んでいる自分の上に収まるように。
神経を支配されてはいないとは言え、力尽くで体を圧迫されれば似たようなものである。
案の定、楓希は、その瞳をウルウルさせて、哀願してきた。
「離して下さい!…嘘ですよね?マスター…っ…そうですよね…」
無論、本気だ。
無言のまま、力で彼女を支配するとベッドの奥へと運ぶ。
「嘘じゃないぞ…お前はなんだ?俺に仕える人形の【楓希】じゃないのか?」
そして、彼が口を開いたのは、楓希が『下』になり、希光が『上』となった瞬間だった。
準備万端である。
「そうです…ですが…でも、こんな行き成り…」
「だってお前は、マスターに戻るのが嫌なんだろ?」
なんて言い表せばいいのか分らないが、兎に角、快楽のままに楓希は【楓希】を受け入れている。
いや、受け入れた気になっているのだ。
少なくとも、性行為のことを視野に入れていなかったのだから、余計に【楓希】として、失格である。
「は、はい…そうです。わ、私はマスターにぃ…でも…でもまだ――」
「なら、早いも遅いも関係ない。違うか…?」
「違、い…ません」
正論で攻めているだけに、見る見るうちに楓希は消沈していく。
もはや、その顔には恋慕で頬を染めておらず、ただただ恐怖に引き摺っていた。
それでも従おうとしているのだから、そこは評価してあげよう。
あくまでも、『人間』としての話だが……。
「なら…お前はどうするべきだ?」
「ま、マスターが望むがまま、だっ…抱かれますぅ…っ」
合意するものの、瞳をきつく閉じ、肉体を大きく揺らす彼女。
ぷるぷると、巨乳が淫靡に異性を誘うが、それでも、乗り気ではないのは確かであり――同時に、彼女が、まだ『彼』に戻れることを示していた。
(ああ…良かった。私はこれで……)
一種の賭けだが、希光の企みは成功したと言える。
【人形】としての矛盾を指摘して自我の復活を促すだけではダメだった。
そこで彼は、「彼女に、自分が『女』であることの自覚することに重みを置き、その異性との性行為の迫力を持って、正気に戻らせようとしたのである。
そして、今、完全に恐怖に支配されている――眼前の”少女”が、その答えだ。
「…さあ!どうする!?今ならまだ間に合うかも――しれませんよ!?」
「も、元に…」
「なに!?聞こえないぞ…?」
「私は…元にっ…」
「元にい?」
「――戻りたくなどありません!!」
希光の問いかけに、震える少女から突如、積極的な女性に変わる。
叫びと同時に、彼女は希光に抱きつく。
ぎゅううぅ――と。
「……ア、レ…?え、ええ――と?」
希光の誤算であり、敗因。
それは、六鏡玲人の思惑と、『彼女』の本当のあり方を誤解していたことである。
『水野希光』の体と、『楓希』の体を入れ替えたことがゲームなのではない。
「んんっ!」
「んちゅ…あむぅ!んんっ…」
【楓希】の精神と肉体も含めてこそ――【ゲーム】だったのだ。
「はぁはぁ…うふふ、マスター。フブキが、気持ちよくして、差し上げますね…?」
積極的にキスを仕掛けてきた楓希の妖艶な笑みに当てられた希光は、なす術もなく『男』としての初夜を――強いられてしまうのだった。
<つづく>
六鏡 玲人の暗躍――水野 希光の場合 ――(18) by.黒い枕
「ただいまあ」
「たっ――ただいま戻りました」
同じ意味、内容の言葉。
しかし、それに込められた感情は相反し、水野 希光と楓希は自宅の戸を潜った。
アレから――自ら突発的且つ無自覚にキスしてから――楓希は『人間』に戻れないでいた。
(なんでこんなにドキドキするのよおお~~~っ!!?)
『マスター』の邪魔にならないか。
『マスター』にご迷惑をかけていないだろうか。
『マスター』のご家族に不審に思われないだろうか。
元に戻れるのだろうか――などとは露ほど考えない。 あるのは主への敬愛。
内から湧き上がる『モノ』としてのプライドや意地、そして愛に楓希は溺れていた。
(うわああ!! お姉さまと合うよおお!!)
記憶は消えず、人格もそのまま。
なのに、感情の大半を肉体に支配された彼女には『女』となっていた。
――というか、自分が『男』である意識が限りなく薄くなる。
(ううぅ)
不安を隠すように、不遜などではないかと思いつつも、彼女は希光に抱きついた。
疼く心にじゅっ、と安堵が染み渡る。
(あ――待ってくださいィィ)
楓希が心の天秤に振り回されていくうちに、彼がリビングのドアを開ける。
「お帰えりぃ――相変わらず、見せ付けてくれるわね、アンタたち」
モソモソ、と口を動かす水野 芙美奈。ポテトチップスを、雄々しく、食していた。
外見的に中々の美女なのだが、この情景を見たら、男どもは求愛を躊躇するだろう。
要は、どんな人にでも欠点があり、隙がある好例なのだ。
「からかわないで下さい!おね――芙美奈…さん」
頬を染めながら勢い良く文句を言おうとして止めた楓希。
危うくお姉さま、もしくは芙美奈様――と、呼びそうだったからだ。
自分は楓希。
人形――としてではなく、水野 希光の恋人。
さらに言えば水野家容認の同居人。
それが『自分』なのだと記憶と『設定』を読み上げ、彼女は照れ惑う。
(わ――私が、マスターの恋人……)
「おー、おー、 照れちゃって可愛いのぉー」
「ちゃ、茶化さないでください!!」
それは何時も通りの光景、展開。
記憶と言う名の『設定』通りに自分は、楓希は受け入れられている。
「じゃあ――俺、先に風呂は入っているわ」
「じゃあ、楓希ちゃんは夕食よろしくねえぇ」
「はい! すぐに作ります」
希光は風呂場に向かう前に二階に、自室に向かい、芙美奈はそのままテレビと間食を楽しむ。
これまた、問題ない――日常。
体験することは初めてなのに、違和感なく楓希自身も受け入れられ、彼女は台所に向かった。
「え…っと…あった…あった…」
――これまた、覚えのない思い出、自分の可愛いエプロン
彼女の着物とは似合わなそうであるが、意外なことにマッチする。
具体的に言うなら――。
「よし…ふぶき、張り切って作ります!」
奥様、もしくはメイド、召使――と言う名の雰囲気が醸し出された。
(今日は……煮魚がいいかな?)
元・水野希光は料理をしたことはなかった。
しかし、今はもう違う。
まるで糸に操られるように、それでいて明確な意思で、体は料理に取り掛かる。
(ふふ……マスター喜んでくれるかな?)
彼女は嫌悪のひとつも見せずに嬉々して魚を捌き、副菜の下ごしらえを終える。
そして、それらを鍋に加えた後、醤油やみりんなどで味を調えていく。
人形としての喜び。
人間には不自由な、枷でしかないのかもしれない。しかし、人形にはそれが歓喜なのだ。
(あっ、そうだ。 マスターの後は私が入らせて貰おう…)
【楓希】の肉体は、その内装された精神、否―― 魂そのものを楓希に変えた。
入れ物の中に入れられた水のように。
何時から、と言う認識すらも脱げ落ち、彼女は純粋な敬愛の念を抱きながら、愛しき人のために仕事をこなしていく。
恋人でありマスターである人のために――祈るように食材に愛情を奮った。
~~~
「あ…っ、あのマスター…じゃなくて…ショウくん…私もお風呂に入りたいのです…入りたいんだけど……」
食事が終わり、そのままお風呂場に向かおうとした彼女を、希光は自室に待機させていた。
――つまり、自分こと水野 希光の部屋に。
そして待っていたのは幼妻なのか、初々しい恋人なのか、よく分らない存在だった。
(…はぁ…全然ダメじゃないですか…これ…)
ハッキリ言って、自分から見たら、彼女は『人形』ではない。
体に縛られ、『設定』に引き摺られ、【楓希】に成り切っているつもりなのだろう――が、元楓希としては、全然”ダメ”である。
「これはマスターとしての命令だ」
「あ…申し訳ありません……っ」
どこがと言えば、不安定に喜怒哀楽にぶれ動いているところだ。
実際に、胸を張って服従しているかと思えば、モジモジと顔を赤くし、手を弄っている。
まるで汗臭い体を愛しい人に嗅がれたくない、と言った感じに。
そして、それは当っているのだろう。
「…ん、どうしたんだ?楓希…」
希光が近寄り、髪を流して上げただけで、さらに赤く燃え上がり恥じ入る楓希。
「あ…ま、マスター…ダメ…っ」
そして、嫌々とばかりに後ろに下がる。
これのどこが、人形なのだろう。
「いいから…俺の近くに…来なさい」
「は…はい」
<つづく>
「たっ――ただいま戻りました」
同じ意味、内容の言葉。
しかし、それに込められた感情は相反し、水野 希光と楓希は自宅の戸を潜った。
アレから――自ら突発的且つ無自覚にキスしてから――楓希は『人間』に戻れないでいた。
(なんでこんなにドキドキするのよおお~~~っ!!?)
『マスター』の邪魔にならないか。
『マスター』にご迷惑をかけていないだろうか。
『マスター』のご家族に不審に思われないだろうか。
元に戻れるのだろうか――などとは露ほど考えない。 あるのは主への敬愛。
内から湧き上がる『モノ』としてのプライドや意地、そして愛に楓希は溺れていた。
(うわああ!! お姉さまと合うよおお!!)
記憶は消えず、人格もそのまま。
なのに、感情の大半を肉体に支配された彼女には『女』となっていた。
――というか、自分が『男』である意識が限りなく薄くなる。
(ううぅ)
不安を隠すように、不遜などではないかと思いつつも、彼女は希光に抱きついた。
疼く心にじゅっ、と安堵が染み渡る。
(あ――待ってくださいィィ)
楓希が心の天秤に振り回されていくうちに、彼がリビングのドアを開ける。
「お帰えりぃ――相変わらず、見せ付けてくれるわね、アンタたち」
モソモソ、と口を動かす水野 芙美奈。ポテトチップスを、雄々しく、食していた。
外見的に中々の美女なのだが、この情景を見たら、男どもは求愛を躊躇するだろう。
要は、どんな人にでも欠点があり、隙がある好例なのだ。
「からかわないで下さい!おね――芙美奈…さん」
頬を染めながら勢い良く文句を言おうとして止めた楓希。
危うくお姉さま、もしくは芙美奈様――と、呼びそうだったからだ。
自分は楓希。
人形――としてではなく、水野 希光の恋人。
さらに言えば水野家容認の同居人。
それが『自分』なのだと記憶と『設定』を読み上げ、彼女は照れ惑う。
(わ――私が、マスターの恋人……)
「おー、おー、 照れちゃって可愛いのぉー」
「ちゃ、茶化さないでください!!」
それは何時も通りの光景、展開。
記憶と言う名の『設定』通りに自分は、楓希は受け入れられている。
「じゃあ――俺、先に風呂は入っているわ」
「じゃあ、楓希ちゃんは夕食よろしくねえぇ」
「はい! すぐに作ります」
希光は風呂場に向かう前に二階に、自室に向かい、芙美奈はそのままテレビと間食を楽しむ。
これまた、問題ない――日常。
体験することは初めてなのに、違和感なく楓希自身も受け入れられ、彼女は台所に向かった。
「え…っと…あった…あった…」
――これまた、覚えのない思い出、自分の可愛いエプロン
彼女の着物とは似合わなそうであるが、意外なことにマッチする。
具体的に言うなら――。
「よし…ふぶき、張り切って作ります!」
奥様、もしくはメイド、召使――と言う名の雰囲気が醸し出された。
(今日は……煮魚がいいかな?)
元・水野希光は料理をしたことはなかった。
しかし、今はもう違う。
まるで糸に操られるように、それでいて明確な意思で、体は料理に取り掛かる。
(ふふ……マスター喜んでくれるかな?)
彼女は嫌悪のひとつも見せずに嬉々して魚を捌き、副菜の下ごしらえを終える。
そして、それらを鍋に加えた後、醤油やみりんなどで味を調えていく。
人形としての喜び。
人間には不自由な、枷でしかないのかもしれない。しかし、人形にはそれが歓喜なのだ。
(あっ、そうだ。 マスターの後は私が入らせて貰おう…)
【楓希】の肉体は、その内装された精神、否―― 魂そのものを楓希に変えた。
入れ物の中に入れられた水のように。
何時から、と言う認識すらも脱げ落ち、彼女は純粋な敬愛の念を抱きながら、愛しき人のために仕事をこなしていく。
恋人でありマスターである人のために――祈るように食材に愛情を奮った。
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「あ…っ、あのマスター…じゃなくて…ショウくん…私もお風呂に入りたいのです…入りたいんだけど……」
食事が終わり、そのままお風呂場に向かおうとした彼女を、希光は自室に待機させていた。
――つまり、自分こと水野 希光の部屋に。
そして待っていたのは幼妻なのか、初々しい恋人なのか、よく分らない存在だった。
(…はぁ…全然ダメじゃないですか…これ…)
ハッキリ言って、自分から見たら、彼女は『人形』ではない。
体に縛られ、『設定』に引き摺られ、【楓希】に成り切っているつもりなのだろう――が、元楓希としては、全然”ダメ”である。
「これはマスターとしての命令だ」
「あ…申し訳ありません……っ」
どこがと言えば、不安定に喜怒哀楽にぶれ動いているところだ。
実際に、胸を張って服従しているかと思えば、モジモジと顔を赤くし、手を弄っている。
まるで汗臭い体を愛しい人に嗅がれたくない、と言った感じに。
そして、それは当っているのだろう。
「…ん、どうしたんだ?楓希…」
希光が近寄り、髪を流して上げただけで、さらに赤く燃え上がり恥じ入る楓希。
「あ…ま、マスター…ダメ…っ」
そして、嫌々とばかりに後ろに下がる。
これのどこが、人形なのだろう。
「いいから…俺の近くに…来なさい」
「は…はい」
<つづく>