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女装
「兄様頑張ってね、お見合い」
「僕が!?」

学院から帰るなり、兄様のところに直行。
はたから見れば妹思いの兄だな。実際は逆なわけだけれども。
そんな兄妹思いの私に対し、兄様が素っ頓狂な声を上げる。

「だって、私今兄様になってるし、兄様が私でしょ。私の縁談は、兄様の縁談」
「嫌だよ! 男とお見合いなんて」
「じゃあ、私に出ろと? つまり、兄様のまま、ドレス着て化粧して、女装をしろ、と」
「ぐっ・・・」

兄様の苦悩が手に取るように分かる。
女装をする自分と、男と見合いをする自分。
どっちを想定しても嫌だろう。

「まあ、言われなくてもそうするつもりだったけど」
「ちょっと!」

兄様が抗議の声を上げる。
とは言え、これ以上の案はないと思うのだけれど。

「だって、断れるようにもってかなきゃいけないのよ? 兄様に任せてたらうっかり流されてまとまってそうで怖いじゃない。身体は女とは言え、友人に兄様が食われるなんて嫌だもの」
「女の子がそういうこと言わない!」
「だって、兄様引きこもってばかりだから、人とあんまり話さないじゃない。あんな曲者相手に出来ないわよ。ねえ、リノ?」

むしろ深窓のご令嬢っぽくて気に入られてしまう可能性がある。
おどおどしてるところが初々しくて可愛いなどと思われかねない。考えるだけでキモい。

そんな事態には絶対させられないと、傍に控えて私たちの話を聞いていた侍女のリノに話を振る。
リノは私たちの事情を知っている、王女(兄様)付きの侍女だ。
入れ替わり当初から兄様と一緒にいるから、兄様の扱い方は心得ている。

「そうですね。シア様のおっしゃる通りかと」
「リノ、君は僕の侍女だよね!?」
「ですから、カリム様の為にもシア様に対応をお願いされた方がよろしいかと存じます」
「僕に女装しろと!?」
「されるのは、シア様です。シア様は女性ですから、女装とは言いません」
「そんな無茶苦茶な…」
「そうでなければ、カリム様は日々女装なさってることになりますが、そう認識してよろしいのですか?」
「良いわけないよ!!」

よし。あと一押しだ。

「断ったら、兄様が色男に散々口説かれるという苦行に耐えなきゃいけなくなるけど、いいの?」
「それは嫌だ!!」
「はい決定」
「でも女装も嫌だ…」
「我侭言わなーい」
「これって我侭なの!?」
「元に戻れるまでまだ時間かかるんだから仕方ないじゃない」
「って成人の儀まで、あと三ヶ月切ってるじゃないか。それくらい待てないの?」

この国では17になると一人前とみなされる。
魔女のいう「おとな」の刻限はこの時だろうというのが周囲の見解だ。
確かにあと少しではあるし、延ばすことも不可能ではない。が。

「嫌なことはさっさと済ませたい主義なの。三ヶ月もあんなのを押し付けられるかもしれないと思って過ごすなんて嫌!!」
「…学院の友達なんだよね?」
「だって、頭良いし、話聞いてるのはおもしろいんだもの。女性関係の話は不快だから聞かないけど」
「…なんか、シアの友人って気がしてきたよ」
「だから友人だって言ってるじゃない。間違っても恋人じゃないわ」


さて、兄様の許可もとったことだし、あとは実行あるのみだ。

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