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メイド服〈ハル編〉 ★
 変人二名が現れて。メモリーさんが、さぁ大変。
半狂乱になりながら、必死の抵抗だ。

「何するの!? 冗談止めてよ! 大体、君達は何なの!? 人の部屋に勝手に入ってきて! ちょっと、止めてって!」
「あなた様にはこのお服がお似合いでありますですよ~」とマティー。
「オプションでネコ耳もどうですか!?」続いて、ロックさん。

 マティーがメイド服を取り出し、ロックさんがネコ耳を取り出す。それを見て、仰天するメモリーさん。二人に向いて、口を開く。

「何それ!? メイド服!? 何で僕がそんなの着なきゃいけないの!?」
「きっとお似合いですよ!」とロックさん。
「あなた様は素材が良いので、最高の作品ができますですよ!」マティーが言う。

 変人二人のもくろみを知って、二人から逃げ惑うメモリーさん。
もちろん、変人二人は罪意識など持っていない。
諦める素振りもない。
容赦のない変人達に対して、メモリーさんが打ち切れる。

「止めろって、言ってるだろ! あんまり調子に乗ってると、マジでお前らぶっ殺すぞ! 警察呼ぶぞ! あっち行けよ! くそったれバカ!」

 メモリーさん……口が悪い。
まぁ、必死なのはわかるけど。
いつもよりも数倍は酷い口調。
メモリーさんの言葉を聞いて、KYさんが口を開く。

「マジ切れだな。ヒッキーは切れたら、口が悪くなるらしい。ハルは真似するなよ」
「ん~」

 適当に誤魔化す僕。
自信はない。
マジ切れしたら、やっぱり冷静でいられないから。

 未だに続く乱闘。
メモリーさんが押され気味。
何せ相手は一般男性と女神様だ。
ロックさんは体力がありそうだし。
マティーにおいては、いくら女性でも神力という荒技がある。
普段から動かないメモリーさんは初めから力負けしている。
僕のように魔力を操れるわけでもなく、
未来さんのように超人的な体力があるわけでもない。
勝ち目なんて、ないに等しい。

 しばらくもしないうちに、メモリーさんの口調が変わる。

「本当、すみません。僕が悪かったです。ごめんなさい。反省しています。お願いですから、止めて下さい。今日から心を入れ替えますから、許して下さい」
「それではこれを着て下さい!」とロックさん。
「きっとお似合いでありますですよ~!」マティーが言う。

 それにしても、メモリーさん……謝罪モード。
急に弱気になった。
もちろん、KYさんが反応する。

「弱いな……ヒッキー。もうちょっと頑張れよ」
「だけど、勝ち目ありませんよ。あんな変人二人を相手にしたら」
「いや、それ以前にヒッキー体力なさすぎ」
「うーん……確かに。一分も持ちませんでしたね」
「せめて五分は耐えてほしかったなぁ~」

 そう言いながら、助ける気のないKYさん。
僕は……どうすればいいの?
助けたいけど……。
助けたら、KYさんに怒られる?
おろおろと戸惑っていたら、メモリーさんが吹っ切れた。

「わかったよ! 着りゃいいんでしょ! 自分で着るから、無理矢理に着替えさせるのは止めてよね!」

 え? 着るの?
冗談かと思っていたら、メモリーさん……マジで着替えだす。
唖然とする僕。
KYさんに目を向けたら、冷蔵庫を漁っている。
もう話に飽きたみたい。
KYさんって本当に飽き性。

 メモリーさんがネコ耳メイド服を着て、不満そうに話しだす。

「これで満足?」
「お似合いでありますですよ~」
「最高です! その不満げな顔がグッときます」

 鼻血を流すマティーの隣では、ロックさんが写真を撮っている。
やっぱりこの二人は変人だな。
改めて確認できた。
皆でワイワイと騒いでいたら、KYさんがやってくる。
メモリーさんを見て、眉をしかめる。

「何してるの?」
「メイド」
「いや、まぁ……そりゃわかってるんだけど」
「さっさとこの二人を処分して」

 メモリーさんが変人二人に指を差す。
KYさんが頷いて、杖を振る。
二人が消え去り、部屋に静けさが。
もう一度、KYさんが口を開く。

「マジで着るとは思わなかった。っていうか、かなり冷静だな。もうちょっと……落ち込んだりショックを受けたりしないの?」
「ない」
「せめて恥ずかしがるとかさぁ……」
「面倒くさい」
「…………」

 KYさんが言葉を無くし、僕に向く。

「このメイド、可愛くないな」
「カッコいいです」
「そうか? 俺は何か……全然面白くないんだけど」
「こんなのアニメだけだと思ってたのに……」

 メモリーさんがぼやく。
KYさんがメモリーさんに目を向ける。

「じゃあ、せっかくだし、メイドごっこでもしようか?」
「うん、いいよ」
「俺がご主人様ね」
「うん、わかったよ」
「えーっとな……まずは……」
「ほら、ご主人。そんなに暇なら掃除機かけてよ」

挿絵(By みてみん)

 メモリーさんがKYさんに命令を下す。
あれ? 何か間違ってない?
KYさんが眉をしかめて、メモリーさんに口を開こうとする。
だけど、それを遮って、メモリーさんが続けて言う。

「それが終わったら、洗い物ね。後、ゴミ捨てと買い物よろしく。僕は寝るから、後は頼んだよ。頑張ってね」
「いや、ちょいま……」

 KYさんが止める間もなく、メモリーさんがベッドに向かった。
もちろん、メイド服のまま……。
沈黙する僕達。
KYさんが僕に言う。

「何か間違ってない?」
「そんなことありませんよ」
「…………」

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