だぶーん。
あ、やめて!石を投げないで!
更新不定期ですが、なにとぞ皆様よろしくお願いいたします
金髪碧眼美幼女だとよ!ぷろろーぐ!!
ピピピピピピピピピピピピピーーーー!
そんな無機質でけたたましい音が部屋中に響いた。
布団から手を伸ばし目覚ましのスイッチを切る。
気持ちよく熟睡していたところにこの音量。
思わず殴りつけようとしたことも一度二度ではない。
俺に、朝可愛らしく肩をゆすって甘い声で起こしてくれる幼馴染がいれば…っ!
もしくは澄んだきれいな声で「ご主人様、起きてください」なんて言って起こしてくれる美人メイドがいればっ!!
…所詮平凡ないち高校生にそんなシチュエーションはやってこないか。
…いや待てよ……そういえばこのまえ新聞で来栖川エレクトロニクスが『次世代の日本の家庭を支えるロボット』なんて銘打って新型二足歩行のロボットの試験なんかをやっていたな…。
どこからどうみても人間にしか見えなかったし、それも滅茶苦茶かわいい女の子だったからもしかしたらメイドロボという線で俺の願いは叶えられるかもしれない。
いや、それよりそろそろ起きて着替えないと。
今日はあいつ(注:男)に今話題のKGB48の新曲を買いについて来てもらうんだった。
遅くなってグチグチ言われるのはかなわん、そんなとりとめもないことを考えながら布団から身を起こした。
――その時。
「――っ!?」
髪の毛を無理やり引っ張ったときと同じ痛みが頭を襲う。
見ると金色に輝く艶のある髪の毛がベッド一面に広がっていた。
なぜか上のパジャマはずり落ち、露になった上半身はまさしく幼児のそれだった。
触れれば折れてしまいそうなか細い腕。
膨らみかけの乳房の頂点で小さくも自己主張をする蕾。
肌は黄色人種のような小麦色ではなく、透き通るような白い肌。
何故、どうして――
そんな当然の疑問さえ浮かばず、まるでフリーズしたかのように思考がとまる。
そのままの状態でどれほどの時間固まっていただろうか。
不意に誰かが階段を上がってくる音がしたかと思うと、部屋の扉が開いた。
「流衣、起きてる…か?」
「へっ…義治?」
もう何がなんだかわかんないZE的な感じで唖然とする俺、部屋のドアを開けた時の体勢のまま固まっている友人。
沈黙、沈黙、沈黙――
そんなこの上なく息苦しく、気まずい時間が永久に続くかと思われたが、あっさり向こうが口を開いてくれた。
「お前…だれだ?」
もっとも、相手の言葉が必ずしも状況を好転させるとは限らないわけであって。
「俺だよ、俺……ワリヲだよ?」
「いや……意味分からん」
渾身のギャグも笑いの通じないカタブツ野郎に一蹴され、おれはもうどうにでもなれー、と一切の思考を放棄するのだった、まる!
「朝起きたら女の子になってました。」
俄かには信じがたいこの話。されど真実。
「本当のことを言いなさい、お嬢ちゃん」
「誰がお嬢ちゃんだ!アン!?」
キッ!と睨み付けるとどこから出したのか、俺に手鏡を差し出してきた。
覗いてみると、そこには金髪碧眼の小学生くらいの可愛らしい女の子が。
「……ってやっぱりか!?やっぱり俺ロリなのか!?」
分かってた!分かっていたさ!ただ、信じたくなかっただけなんだ!!
「女の子が俺とか言っちゃだめだぞ?」
「うるせーー!!だから俺は水無月流衣だって言ってるだろ!」
頭をなでて諭すように目線を合わせてくる義治に思わずがなる。
「そうだ、そこが問題なんだ。俺の知ってる水無月流衣は間違ってもこんな可愛らしい女の子じゃなかった。どっちかっていうとRPGのラスボスに出てくる魔王みたいなやつだ」
おまえ俺のことそんな風に思ってたんだな…。
「っじゃあ!どうしたら俺が本物だって認めてくれるんだよ!?」
「ふむ……誕生日は?
「先月、三月十一日」
「なら、俺がやったプレゼントは?」
「ぼろぼろになったからってお前が財布くれたじゃねえか」
「…本当に流衣だったのか」
「だからそう言ってるだろ!」
何回も言ってたのに!もうこいつとは口利かねー!
「……俺が悪かったよ、流衣。それにしても…随分と可愛くなったなー」
「!?にゃっ・・・にゃっ……にゃにするんだー!!」
いきなり俺の腰に手を回したかと思えば、そのまま抱き上げてひざの上に置かれてしまった。
義治には妹がいるから、この行動も妹にするようなものだと思うのだけど正直恥ずかしい。
第一、今の俺は合う服がないのでバスタオル一枚を羽織っているだけの状態なのだ。
こいつが変態だとは思ってないが……こんなことされると正直困る。
「よしよし」
「だ…だから撫でるなってばー……うぅー」
「こら、あんまりじたばたするな」
この身体になって精神のほうが引きずられるのだろうか、妙に言動が子供っぽくなっている気がする。
じたばたなんて……まるっきり子供じゃないか!
体格で圧倒的に負けているため無理やり膝の上から抜け出すことはできない。
ならなんとかしてこの恥ずかしさを誤魔化さなければ。
「それより!早くKGB48の新曲買いに行くぞ!」
「待て。服はあるのか?」
「うっ……ない」
子供の頃の服なんて残ってるはずがない。
短パンなら長さはちょうどいいと思うけど、目一杯ベルトで締めてもウエストがぶかぶかになってしまう。
シャツなんて大きすぎてすぐずり落ちてしまいそうだ。
「なあ・・・カッターシャツだけじゃ駄目――」
「駄目に決まってるだろ!そんな格好で駅前出てみろ、買い物どころじゃないぞ!」
「うぅー・・・」
確かにそんな格好で出たら間違いなく大勢の人に注目される。
別に見られるのは構わないが、どさくさにまぎれて体を触られたりするかもしれない。
男に触られるなんて・・・想像しただけで吐き気がする。
「じゃあどうすんだよ?」
「待ってろ……」
そう言うと義治は携帯を取り出し、どこかに電話をかけ始めた。
いったい何をするというのか。
「もしもし、母さん?ちょっと流衣の家まで来てくれないか――」
「やーん、この娘めちゃくちゃかわいいー!」
「ひゃんっ!?は・・・はなしてください・・・」
「母さん、苦しがってる苦しがってる」
義治の電話から約二十分後、超絶美人な義治のお母さんの香奈さんが俺の家にやってきた。
香奈さんは着いて早々、なぜか俺を抱きしめてほっぺにキスし始めた。
その後ほっぺたをすりすりされたかと思うと、その豊満な胸に顔を埋められてしまう。
・・・うれしいけど、くるしい。
「母さん、そろそろ離してやれ。息できてない」
「あら、大変」
「ぷはっ!・・・はあ・・・はあ・・・」
危うく、『友人の母の胸で窒息死』なんて見出しが新聞に載るトコだった。
それにしても、香奈さんとは何回か会ってるが、本当に三人の子供がいるとは思えないほど若い。
見た目二十代だから義治と並んでいると姉に見える。
「ところで、この娘だれなの?ルンルンの妹ってわけでもないでしょ?」
香奈さん・・・その問い少し遅いよ。
というか、ルンルンとかいうのやめて・・・。
「はっ・・・まさか、あんたどっかからさらってきたんじゃ――」
「そんなわけないだろう」
「イタッ・・・ちょっと、母親に何すんのよー」
「馬鹿なこと言うからだ」
ははは……やっぱり面白い親子だな……。
義治とは中学校からの知り合いで、家に何度も遊びに行ってる。
初めて義治の家に遊びに行ったときには、その大きさに唖然とした。
なんでも、香奈さんは有名ファッションデザイナーで、駅前に大きな店を構えていてとても繁盛している。
他にも何件かチェーンの店舗もあり、社長さんもやっているとのこと。
「香奈さん、俺です。水無月です」
とりあえず、このままでは話が進まないのでさらっとカミングアウトする。
「へー・・・ルンルン可愛くなったね……って、そんなわけないでしょ!」
「あいたっ!?」
どこから出したのか、でっかいハリセンでしばかれる俺。
ナイスノリツッコミ。
「違うんだ香奈さん。朝起きたら……女の子になってたんだ」
俄かには信じがたいこの話。されど真実。←今日二回目。
「本当のこと言いなさい、お嬢ちゃん」
「その台詞も二回目だ!?」
「母さん、信じられないと思うが、信じてやってくれ」
「うーん……信じがたいけど、言われてみたらしゃべり方とかルンルンっぽいわね……。よし、仕方ない。信じてあげるわ」
「香奈さん……っ!」
あなたなら分かってくれると思ってた!
「そっちのほうが面白そうだしね。いやー、でもホント可愛くなったわねールンルン」
「返せ、俺の感動。そして抱きしめるなーー!!」
「あははははは!うりうりー!」
「ふかーー!!」
やめろ!ほっぺた突付くんじゃない!
そんな抵抗もむなしく、その後十分ほど俺は香奈さんのおもちゃになったのであった。
「第一回、ルンルン大改造計画ーーー!どんどんぱふぱふー!」
「「………」」
「さて、私が用意した女の子用の可愛い服を今からルンルンに着てもらいます!」
「「………」」
「最初はこちら!」
でーん、という効果音とともに用意されたのは、なぜかメイド服。
「メイドすきーなルンルンには、自らメイドさんになってもらいましょう!」
「そんなので外歩けるか!っていうか何故俺がメイド好きだと分かった!?」
「勘」
即答!?しかも根拠ないし!
「とにかくメイド服はなし!」
「えー……まあいいわ。クローゼットの中に入れとくから、好きなときに着てね」
「………」
「さて、お次はこれ!」
次に出てきたのは白のワンピース。
まださっきのよりはましだが、可愛らしすぎる。
「香奈さん……ちょっと可愛すぎるってそれは」
「ルンルン、注文多くない?」
「自分が着るんだから当たり前です」
「じゃあー、もうちょっと大人しいのにしとこうか。それじゃ、次はこれだ!」
今度は黒を基調とした、いわゆるゴスロリとかいうものだった。
初めて実物を見たが、これならまだ大丈夫かもしれない。
ヒラヒラとかフリルとかが着いていて少し目立つかもしれないが、この際もうこれでいいだろう。
ちらっと残りの服を見た限り、これが一番大人しそうだ。
「うーん。これでいいかな」
「よしっ!じゃあ、早速お着替えしましょうねー♪」
「って、え!?なんで抱き上げて……ま、まさか・・・よ、義治!助け――」
「大丈夫よ。やさしくしてあげるから♪」
「いやーーーーー!?」
―――数分後
「もう……お婿にいけない・・・」
「あら、今は女の子なんだからお嫁さんよ♪」
「なんというか・・・ご愁傷様だな」
「うるさいうるさい!今まで空気だったくせに!」
「…………」
あ、義治落ち込んだ。
べ、別に俺が悪いんじゃないんだからな!
「それにしても、ホントよく似合ってるわ!後はこれ用にブーツを履いてっと」
「それにしてもよくサイズ合いましたね」
なぜかサイズはぴったり。
下着もこの服装用に用意されていて、そのサイズも完璧だった
「それ言っちゃ駄目。今回は小説補正かかってるんだから」
は?小説補正?
「ははは・・・気にしないことにします」
「そうよ。そんな些細なこと気にしてちゃ人生生きていけないわ」
「で?終わったか?」
復活した義治が聞いてきた。
ごめんな、ひどいこと言って。
「ああ、これで買い物いけるぞ!」
「あら、これからお出かけ?」
「ああ、流衣がKGB48の新曲買いに行きたいらしい」
「そうだったのね。それじゃ、二人はデートかー♪」
「で、デート!?」
ありえない……俺と義治だぞ?
まさか手とかつないだり!?
もしかすると、ホテルに連れ込まれたり!?
「いやだー!犯されるーー!」
「待て、その発言は聞き捨てならない」
「義治、優しくリードしてあげるのよ?」
「うわーーーーん、やっぱりーーーーー!!」
「…………」
「それじゃ、母さんは一旦家に帰るわね」
「あ、香奈さん今日はありがとうございました」
「いえいえ、楽しんできてね♪義治、帰りはちゃんと送っていってあげるのよ?」
「分かってる。母さんも気をつけて」
そういって、香奈さんはバイクにまたがり颯爽と去っていった。
「それじゃ、そろそろ行くか」
「おう、売り切れたら行けないしな」
いろいろとあったが、やっとKGB48の新曲を買える!!
「待ってろよ、俺のKGB48!!」
「こら、落ち着かないと転ぶぞ」
「へっ、俺の進行は誰にも止められやしないぜ!」
わいわいぎゃーぎゃー言いながら(主に俺が)俺たちは歩き始めた。
このときは、あまりにいろいろなことが多すぎて、俺も義治も思考が鈍っていたのかもしれない。
女になるとはどういうことなのか。
これから先どうやって生活していくのか。
学校、戸籍、そんなことさえ俺たちの頭からは抜け落ちていた。
桜舞い散る頃、俺の物語の歯車は回り始めた。
これから何が起こるか。
それはまさしく、天のみぞ知るのであった。
義治空気。
作者変態。
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