27*立候補代行作戦!
拡張器を通して話す人見知りの彼女の声は、曲がりなりにも演説らしくなっていた。
場所は、玄関前。
登校時刻真っ只中の時間とあって、人通りは多い。
人通りも多ければ、見る目も多い。
そりゃそうだ。
さほど知名度のない生徒でも、そんな見てくれの場所に立って、しかも拡張器まで持ち出されたら、誰だって目はいく。
おまけに、名前が目立つ。
スメラギ=フェイト。
ありふれた名前でないだけに、頭に残る。
しかも、マスコットみたいな容姿だから、印象としてはバッチリだ。
「――成功みたいですね」
竜二は傍らに立つ里穂子に、小声で話しかけた。
男装姿で応援団長気取りを里穂子は、腕を後ろで組んで、胸を張って、
「押忍!」
と、返事をした。
「デカいデカい」
慌てて止めに入るも、
「押忍!!」
倍の声量で跳ね返された。
(……駄目だ。完全に役に成りきっている)
「――成功とも言えないんじゃない?」
凛は言う。
「そうか?」
「そうよ。結構、気付いてるわよ。――澪先輩の声だって」
竜二は澪を見た。
実は、里穂子以外の皆が拡張器を持っているのだが、フェイトのだけスイッチが入っていない。
選挙に参加するはずの本人がだ。
しかし、フェイトは演説をしている。
理由は簡単。
「私が当選した暁には――」
澪が代わりに喋っているからだ。
当然、話す内容はフェイトが決めている。厳密には、後に皆で相談して決議してだが。
その時、竜二が提案したのが、澪の声で引きつけるということ。
ならば、いっそのこと、代わりに喋る――という具合に、色々と話が浮かび。
現在の立候補代行作戦に至る。
「――この学校から、人見知りを無くします!」
三階の生徒会室。
「いいんですか、会長。何か好き勝手やってますけど」
窓際から下を覗く神楽は、震え上がる闘志に笑っていた。
「受けて立ってやろうじゃねえか。おもしれえ」
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