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28*悪くない
 初日の演説が終了する。
「じゃあ、昼休みに部室に集合ね」
 約束を取り付け、ひとまず解散した。
 一年組の二人は教室に戻りながら。
「少しは知名度も上がったっぽいな」
 すれ違う生徒達が、こちらに目を向けている。
「私達の知名度が上がっても仕方ないでしょ」
 凛に気付いている。気配は消していないようだ。
「人見知り、治ったんだな」
 凛は少し溜め込んで。
「……もう諦めたわよ」
「そういえば、前から気になってたんだが、白兎はいつから人見知りになったんだ?」
「別に……人見知りってわけじゃないのよ」
「えっ、そうなのか?」
「――私は、避けたいだけ」

 *

 子供の頃から冷静だった。
 白兎凛は、その華やかな容姿とは裏腹に、物心ついた頃から冷静だった。
 例えば、日曜朝の子供向け番組で。
 ヒーローが変身をしたり、味方のロボットが合体をすると、間抜けな敵を見た幼い頃の凛は、
「何でぼーっと突っ立ってるのよ。さっさと妨害しなさいよ」
 などと、身も蓋もない指摘をしていたのだ。
 こんな性格のせいで、小学校中学校と、あまり友達との付き合いがなかった。
 何故か男友達だけは数名いて、本人は全くその気はないのだが、恋愛対象として見られたこともあった。
 付き合いが良いわけでもなく、悪いわけでもないその中立的な立場が功を奏し、イジメや悪い噂などはなかった。
 ただ、中学後半からは受験勉強も始まり、付き合うのも面倒になり――それからだ。
「前に言ったでしょ。気配を消してるって」
「ああ、それでなのか」
 男友達がいたと聞いて、竜二はどこかなるほどと納得する部分があった。
 恐らく、自分がそうだからなのだろう。
「……というか、白兎って勉強できるっぽいけど、実はそうでもないんだな」
 竜二達が通うこの学校は、中の下くらいに位置する。
 受験勉強などせずとも、大半は入れる学校だ。
「――そういうこと、澪先輩と一緒の時には言わないほうがいいわよ」
「! 気付いてたのか!?」
「バレバレよ」
 やはり、白兎は冷静だ。


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