29*金髪は不良の象徴で、パツキンは美女の象徴
約束の昼休みとなる。
「何だよ、また部室に行くのか」
最近付き合いの悪い竜二に、喜孝は不満そうな顔で物言う。
「悪い。今日は打ち合わせがあるから、また今度な」
そそくさと竜二は教室を立ち去り、一人取り残された喜孝は、しかし悪い気分ではなかった。
むしろ、少しホッとしていた。
人の趣味をとやかく言うのは野暮な話だが、今、ようやく真っ当な青春を送っている親友を見て、安心すると同時に羨ましくもあり、少し悔しくもあった。
部活なんて遊ぶ時間が減るだけで何も楽しくないと思っていたが、
「……俺も、どっかの部活に入ってみるかな」
なんてことを、思うようにもなっていた。
前の自分が見たら、なにを魔が差したことを言っているのだろうと、小馬鹿にしていたに違いない。
*
一番乗りで来たつもりだったが、既に部室には人がいた。
フェイトだ。
しかし、つい数時間前まで演説をしていたフェイトとは違った。
大きな違いはない。
一つ、金髪という点を除けばだ。
「えーと……フェイト先輩?」
「そうだよ」
明らかに違うものがある。
それは、竜二にしか分からない、ほんの些細な違い。
「……じゃないですね」
声だ。
廊下から里穂子のはしゃぐ声が届く。
竜二に遅れて、里穂子、澪、凛と順番に入ってきた。
先頭で入った里穂子が、フェイト似の金髪美女を見て、真っ先にリアクションする。
「ふ、フェイトちゃんが不良になってしまったーっ!!」
驚愕する里穂子の肩を、ぽん、と軽く叩く者がいた。
「んっ……?」
振り返り、確認する。
フェイトだ。
「えっ、えっ!? フェイトちゃんが分身した!?」
双方を見比べて、あまりに似すぎている――というより、もはやコピーというべきレベルのクォリティーに、里穂子は益々混乱させられた。
「……はは、分かってたよ。フェイトちゃんが伊賀忍だったということわね」
かくいう私は甲賀忍――とかなんとか言っている里穂子を、澪と凛が左右で手を掴み、撤収させた。
「フェイト先輩、この人は?」
フェイトは一言、そう呟く。
「妹」
部員全員が、一様に驚愕する。
「い、妹ォォ!?」
こくん、と頷くフェイト。
多少は真似ていた金髪美女が、妹フェイトが、つまらそうに本性を現す。
「あーあ、バレちゃったか」
席を立ち、机の上に腰を下ろす。
ズシンと構えたそこから、凍らすような冷たい瞳で、姉もろとも部員全員を見下す。
「スメラギ=アビス。次期生徒会長になる妹よ」
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