吸血ヴァンパイア
飽和したような意識。
当然の様に頭は働いていなかった。
―麻酔みたいだ。
意識がはっきりしない。
感覚、意識、視界、全てが霞み、ぼやけている。
なんだか眠い。このままオヤスミと呟いて二度寝したい。そして実際そうするつもりだった。
のに、
「―起きたのなら何か言うことがあるんじゃないのか」
水を差された。
…んだよ母ちゃん…後五分…
…じゃなくて。
…何だよ誰だよ…。
「…は…?」
聞き返す。見ようにも視界はピンボケしてるし、脳は動かない。
「―『初めまして』。我が下僕。調子はどうだ。まだ意識ははっきりしないか」
下僕…?
誰が下僕だこんにゃろぉぉ〜…
「…う、るせ…」
怒鳴ろうとしても腹筋に力が入らない。
聴覚だけは鮮明だった。
足音が徐々に大きくなり、ピントの合わない視野に変化がある。
「闇の世界にようこそ。我が下僕にして夜の世界の住人よ」
はぁ…?
何だよ、頭おかしいんじゃないのか?
「お前は余りに美味かった。つい、独占したくなったのだ」
…いや〜ん。食べないでぇ、俺の童貞がぁ。
…ばーか、何言ってやがる。
ホントにイッちゃってるんじゃないかな。
110?119だっけ?精神鑑定宜しく。
「私の物だ、お前は」
ふわり、と
「―…?」
体温のある何かが覆い被さった。
…あ、いい匂い。
…髪柔らけぇー…
………うえ?
うえぇぇぇぇぇ!!!!!?
声低いし胸無いしまず状況からして男に抱き付かれてる!!!?
お、男に口説かれてる!!!?
そっちの人か!?
えぇっとそれで頭おかしいんだろ?
……異常者か…!!
…あ…、いい匂いとか思っちまったよ…
俺ももれなくおかしいよ。
俺どうしたんだろ
―と、ぼぅっと考えていると、突然、おもむろに
ずるり、と皮膚の下に
何かが侵入するのが分かった。
「…ぃって…!」
痛さは採血の注射くらいだけど、なんせ突然だし
「―ぁ…」
溜めていた尿を放尿した時の様な爽快感と快感が、身体に走った。
感覚が鮮明になってゆく。
濁った思考回路が澄んでゆく。
―俺は、怪しい金髪に咬まれて、
―急に眠くなって、眠ってしまった。
―きんぱつ?
―で、俺は今血を吸われてる…のか?金髪に。
―いやいやいや!!
おかしいだろ!!!?
何一つ状況の理解が出来ない!
ってか俺の血を吸ってるのは、きん―
「金髪…っ!?」
はぁぁ!?
訳わかんねぇよ!!!!
どういうことなんだよ!!
ズル、と
体内から何かが抜き取られた。
「―ぅぐ…っ!」
普通に痛い。
傷口を男が舌先で舐める。
不思議に、痛みはすぐに引いていった。
「分かったか?」
唇を舐めながら言う。
…何だよこの仰天野郎は。
脈略って知ってるか?
我輩の辞書に無いとか言うんじゃねぇぞ!
「何がだよ―!!」
「お前の置かれた状況」
「分かるかドアホ!!」
「私はお前の主人だ。そんな罵倒は許されんぞ」
「はぁーん?許さなかったらどうなるんだよ?」
ポーカーフェイスの癖にぺろりと舌を出す。
正直ミスマッチ。
「更に飲むぞ」
―びく、と
―肩が、震えた。
―何でだ。
―今、怖いと思った。
「お前は私の下僕。服従の証に血を献上しろ。私はお前に主人の慈悲において血を提供してやる」
何だよそれ。
「…意味わかんねー」
「お前と私は吸血鬼。」
もう、それこそ―
血が凍った。
「大昔、人の進化と枝分かれした人種だ」
男は妖艶に笑った。
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