[金正恩新体制]「先軍」ではなく対話を

2012年4月13日 09時03分
(23時間31分前に更新)

 北朝鮮の朝鮮労働党トップ、党第1書記に金正恩(キムジョンウン)氏が就任した。昨年12月に急死した父、金正日(キムジョンイル)氏の後継者として国のかじ取りを担うことになった。祖父、金日成(キムイルソン)氏から数えて3世代が国家運営を世襲する世界的にも極めて異例な体制となる。

 北朝鮮の国家体制は「永遠の総書記」とされる正日氏が指導した「先軍政治」に基づく。「軍隊がすなわち人民であり、党だ」という思想の下、軍が国家の中核になっている。

 「先軍政治」は相次ぐミサイル発射や核開発につながり、国際社会の反発を招いた。結果、北朝鮮は孤立してさらに経済が苦しくなる、悪循環に陥っている。

 同国が「人工衛星」と主張する長距離弾道ミサイルの12日の発射は見送られたが、強行すれば国際社会の新たな制裁発動につながる。

 そうなれば、ただでさえ厳しい北朝鮮経済が打撃を受け、国民はさらに苦しい生活を強いられる。

 正恩氏と北朝鮮指導部は「衛星」発射が国威発揚どころか、逆に国を疲弊させるきっかけになりかねないことを自覚すべきだろう。国際社会と対決するのではなく「対話」を最優先にしてほしい。

 ミサイル発射や核開発などで危機を演出し、断念の見返りに食糧などの援助を求める瀬戸際外交は、もはや通用しない。国民の生活向上を目指す「強盛大国」の実現は国際社会との連携でしかあり得ない。

 政府は北朝鮮のミサイル発射に対処するとして、宮古島や石垣島、沖縄本島に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を配備し、約950人の自衛隊員を派遣している。

 自衛隊が駐屯しない石垣市では野営のテントが張られ、拳銃を携行した隊員が警備に当たるなど実に物々しい。今まで、沖縄では見られなかった光景に、住民の不安も増している。

 防衛省は、落下したミサイルや破片をPAC3で打ち落とすなどとしているが、具体的に何が危険なのかの説明はまだない。例えば、ミサイルを迎撃した後のPAC3はどうなるのか。破片は海に落下するのか、陸地に落ちることはないのかなど、懸念はたくさんある。

 適切な危機対応が重要なことは論を待たないが、無用な不安の拡大は混乱を招く。政府はPAC3配備と自衛隊派遣の理由とその効果を県民に詳しく説明する責任がある。

 朝鮮半島は1950~53年の朝鮮戦争後、北朝鮮と韓国の「休戦」が続いている。休戦とはいえ、戦争状態の継続が情勢の不安定化を招く原因になっている。

 朝鮮半島の緊張緩和には、朝鮮戦争の「休戦状態」を解消することが不可欠だが日本、韓国、北朝鮮、中国などとの6カ国協議さえ中断したままで、対話の見通しすら立たない。

 現状が困難なことは理解できるが、政府は北朝鮮との直接対話の可能性を模索すべきだろう。対話の窓口を閉ざすことがあってはならない。

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