中国:減速…しぼむ不動産ブーム 一段の金融緩和、視野

 中国国家統計局が13日発表した12年1〜3月期の国内総生産(GDP)成長率(速報値)は、物価の影響を除いた実質で前年同期比8.1%増となり、5四半期連続で減少した。中国政府は同日、不動産市場の落ち込みや輸出の鈍化を踏まえ、成長持続に向けて景気対策を打ち出す方針を決定。一段の金融緩和も視野に入れるが、インフレ懸念も根強く、経済政策は難しいかじ取りを迫られる。中国を最大の輸出先とする日本企業にも、影響が及びそうだ。

 「季節は春なのに不動産業界はまだ冬のままだ」。北京を中心に展開する大手不動産会社「陽光100」の範小衝副総裁(47)は嘆く。政府は昨年1月、過熱した不動産市場を抑制するため、住宅ローンの貸し出し条件厳格化など住宅購入規制を強化した。北京市の規制は国よりも厳しい。北京市住宅協会によると、12年1〜3月期の北京市内の新築商品住宅の取引件数は、前年同期比19.6%減少。陽光の販売価格は「平均で13〜18%下落した」という。

 販売不振で在庫は増加し、陽光では「売れるまでに平均13カ月かかるようになった」。過去の不動産ブーム時の借入金が返済時期を迎え、資金繰りに窮する企業も続出。先月末には浙江省杭州の中堅不動産会社が資金難で倒産した。不動産ブームの崩壊を契機に銀行の不良債権が増え、貸し渋りなどで景気が悪化しないか心配だ。

 外需も勢いは弱まっている。3月の輸出額は、欧州向けなどが落ち込み前年同月比8.9%増と1〜2月(累計)に続いて1ケタの伸びにとどまった。

 一方、足元ではインフレ懸念が再燃している。3月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同月比3.6%と、2月(3.2%)から反転した。政府目標(4%)よりは低いが、野菜が20%超値上がりするなど生活への影響は大きい。北京市内の市場で買い物をしていた年金生活者の楊さん(52)は「昨年末に500グラム3元(約36円)だったヘチマが倍になった。毎日少しずつ値上がりする」と不満を漏らす。

 中国人民銀行(中央銀行)は昨秋、金融緩和に転換し、銀行から強制的に預金を預かる預金準備率を引き下げ市場に資金が流れるようにした。だが、インフレ圧力が消えないと、一段の金融緩和には動きにくく、金融政策でどこまで景気を下支えできるか予断を許さない。政府は金融機関に中小零細企業への貸し出しを促すとともに、低所得者向け住宅建設などの公共投資を進める考えだ。【北京・井出晋平】

 ◇日本「中国依存」見直しも

 中国に進出している日本企業は、中国の景気減速が一時的に収益を下押しすると見る。このまま景気が失速するとの見方は少ないが、「中国依存」の企業は収益の分散など見直しを迫られそうだ。

 日本自動車工業会の志賀俊之会長(日産自動車最高執行責任者)は13日の定例記者会見で中国市場について「トラックを含めた商用車(の販売)は減っている」と述べ、ビジネス需要への警戒感を示した。ただ「乗用車販売は伸びている」といい、成長が続くとの見方は変わりない。日産は中国で4番目の工場を建設する計画だ。

 建機メーカーとして中国で外資トップクラスのコマツは「(中国経済は)調整段階に入った」と分析。中国の売上高は11年4〜12月期に前年同期比32%減少した。斎藤尚登・大和総研シニアエコノミストは「中国政府は8%後半〜9%の水準で安定成長させたいはず。2ケタ成長に戻ることはない」と分析、中国の高成長への過度な期待や依存は見直すよう主張する。【高橋慶浩】

 ◇Key Word◇中国の経済成長

 市場経済化に道を開いた1978年の改革開放後、中国は豊富な労働力と安い人件費を武器に外資を呼び込み「世界の工場」として急成長を遂げた。実質国内総生産(GDP)は07年まで5年間、2ケタ成長を達成。10年には日本を抜き、米国に次ぐ世界2位の経済大国となった。

 しかし、経済格差の拡大やインフレなどで社会の不満も増大。農村からの出稼ぎ労働者など雇用維持には8%台の成長が必要と言われていたが、政府は今年、7年間維持してきた8%の成長率目標を7.5%に引き下げ、成長追求から社会の安定維持にかじを切った。今後は内陸部の開発に力を入れるほか、賃上げや消費拡大などで輸出主導から内需主導への転換をめざす。

2012年04月14日 01時16分

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