[普天間爆音]教育が脅かされている

2012年4月12日 09時49分
(29時間8分前に更新)

 岩国基地(山口県)に一時配備されている米軍のFA18Dホーネット戦闘攻撃機が10日、普天間飛行場に飛来、離着陸訓練を繰り返し、激しい爆音をまき散らした。同日行われた普天間第二小学校の入学式が、爆音のため一時中断されるという異常な事態を招いている。

 宜野湾市には1日だけで29件の苦情が殺到し、浦添市にも3件の苦情が寄せられた。

 日常的にヘリの騒音にさいなまれている上、入学式という晴れの舞台でさえ、まともに進行できない現状に、あらためて怒りがわく。しかもFA18は、F型機が7日に、米南部の住宅地区に墜落したばかりだ。飛行場周辺住民の不安は計り知れない。

 教室内の騒音に関しては、文部科学省が、県内小中学校の騒音調査を徹底するよう県教育庁に指導・助言した。測定機器がないなどの理由で調査を実施していない学校があるためだ。同省の学校環境衛生管理マニュアルは、教室内の騒音レベルについて「窓を閉めた場合は50デシベル以下、窓を開けている時は55デシベル以下が望ましい」としている。

 同飛行場や嘉手納基地周辺の多くの学校では、マニュアルが定める基準を上回る騒音にさらされているのではないか。9日に図書室の騒音測定を行った嘉手納町立屋良小学校では、窓を開けた状態で68デシベルを記録した。

 教育庁は来月にも各教育事務所などに測定への協力を呼び掛ける方針だが、早急に実施に向けた態勢を整えてほしい。静かな環境の下で教育を受ける権利さえ脅かされている状況をこれ以上放置してはならない。

 国は普天間問題について、名護市辺野古への移設を唯一の解決策として掲げる一方、移設までの間、同飛行場の危険性除去策を進めるとしている。2007年には日米でヘリの飛行経路見直しと安全対策をまとめた。

 しかし、宜野湾市の調査では、日米で合意した経路は守られず、住宅地上空の飛行が日常化している。相次ぐ外来機の飛来もあり、危険性や住民の負担は増すばかりだ。しかも、米軍再編見直しをめぐる日米協議では、米側が滑走路などの大規模補修のため、8年間で巨額の負担を日本政府に求めており、固定化の懸念も高まっている。

 そもそも普天間飛行場の騒音は、08年に言い渡された「第1次普天間爆音訴訟」の判決で違法性が認定され、10年の控訴審判決で確定している。それでも改善されない現状に、3000人を超える住民が先月30日、夜間・早朝などの騒音差し止めと損害賠償を国に求める「第2次爆音訴訟」を起こした。原告数は1次の約8倍だ。「静かな日常を取り戻す」というごく当たり前の権利さえ実現できない国に対する憤りが、原告数の増加に表れているのではないか。

 普天間飛行場の周囲には、12の市立小・中学校と私立の小中学校、三つの高校、約50の保育所がある。違法である騒音について実効的な対策を示さず、教育の現場を劣悪な環境のまま置いておくことは犯罪行為にも等しい。

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