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【芸能・社会】中日スポーツ増田記者が大宅壮一賞 柔道着はおり受賞の喜び2012年4月11日 紙面から
第43回大宅壮一ノンフィクション賞(日本文学振興会主催)は10日、増田俊也さん(46)の「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」(新潮社刊)、フリージャーナリスト森健さん(44)の「『つなみ』の子どもたち」(文芸春秋刊)と「つなみ 被災地のこども80人の作文集」(同)に決まった。「木村−」の著者は実は中日スポーツ記者。受賞の喜び、故木村政彦さんらへの熱き思いを本紙につづった。贈呈式は6月、東京都内のホテルで行われる。賞金は各100万円。 会見場に現れた増田記者は、「よろしいでしょうか」と許しを求めてやおら北大時代の柔道着をはおった。手には木村政彦の遺影。ともに名古屋から持参した品だ。 「木村先生、無念晴らしました! と言うつもりでしたが、そういうことじゃなかったんです」と語り始めた。 本にしようと書き始めて18年。柔道界だけでなく力道山との戦いに敗れ、やがてプロレス界からも排斥された木村の名誉を復権させるのが筆をとらせる動機だった。だが、行き着いたのは愛。「(同時受賞の)『つなみ』もそうですが、両方の本に救いがあったからでは」と話す。 単行本は約700ページにおよぶ超大作だが、選考委員を務めた猪瀬直樹さんは「ページをめくらせる力強さと面白さがある。立花隆さんも言っていた」と評価。「木村さんの人生を描くことで武道の歴史が描かれ、世界史的な視点からも近代を見つめている。初めて見つけた事実が圧倒的に多かった」と受賞理由を話した。 大宅壮一賞の価値について問われ、「木村さんは命をかけて天覧試合を闘った。ぼくにとっては、きょうが天覧試合でした」と万感の思いを口にした増田記者。受賞の連絡が入った時は男泣きし、家族や取材で世話になった関係者にお礼を述べていたが、最後は満面に笑みを浮かべていた。 ●増田俊也(ますだ・としなり) 1965(昭和40)年11月8日生まれ。愛知県出身。同県立旭丘高を経て北大中退。高校、大学を通じて柔道部に所属する。北海タイムス社を経て92年に中日新聞社に入社し、中日スポーツ配属。記者のかたわら作家としても精力的に活動。「シャトゥーン ヒグマの森」で第5回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞している。 ▼「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」 『ゴング格闘技』誌に4年に渡って連載され、昨年9月30日に新潮社から発売された木村の評伝。取材執筆に18年を費やした。原稿用紙1600枚、701ページ2段組という分厚さから話題に。題名は、昭和の巌流島決戦の後、木村が短刀を手に力道山を殺すために付けねらいながらそれを果たさなかったことから付けられている。
▼力道山(りきどうざん) 1924(大正13)年11月14日、現在の北朝鮮統治地域生まれ。本名・百田光浩(ももた・みつひろ)、朝鮮名・金信洛(キム・シルラク)。1940年に来日、二所ノ関部屋に入門。1950年、関脇時に廃業して日本に帰化、プロレスラーに転向。日本にプロレスの大ブームを巻き起こし、プロレスの父と呼ばれる。1963年、酒場でのけんかでナイフで刺され、12月15日没。
▼木村政彦(きむら・まさひこ) 1917(大正6)年9月10日、熊本県生まれ。旧制鎮西中学(現鎮西高校)時代に同郷の柔道家・牛島辰熊が開く東京の「牛島塾」に引き取られ旧制拓大予科(現拓殖大学)に入学。1937年から全日本柔道選士権を連覇、1940年には天覧試合も制覇。1949年の全日本選手権で優勝するまで12年間連続で日本一を保持、15年不敗のまま引退し、「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」「鬼の木村」とうたわれた史上最強の柔道家。1950年に師匠牛島の立ち上げたプロ柔道に転向し、さらにプロレスラーに転向したため、柔道史からその名は抹殺されている。1993年4月18日没。 ▼昭和の巌流島 1954年2月、アメリカからシャープ兄弟を招いて木村政彦と力道山のタッグチームと14連戦、木村が“負け役”をやらされ、力道山が空手チョップで勝つというパターンが演じられた。これに木村の鬱憤(うっぷん)がたまり「真剣勝負で力道山と1対1の決着をつけたい」と朝日新聞紙上でぶち上げた。他紙も含め、マスコミは「昭和の巌流島」とあおった。しかし同年12月22日、蔵前国技館で戦われたこの試合は力道山のブック(台本)破りで木村が血まみれになってKOされる凄惨(せいさん)なものに。普及しはじめたばかりのTV視聴率100%のなかの出来事だった。恥辱にまみれた木村は力道山の約束破りを許せず、短刀を手に力道山を殺すために付けねらう。 ◆大宅壮一ノンフィクション賞 評論家大宅壮一氏の功績をたたえ1970年に制定された。ルポルタージュ、内幕もの、旅行記、伝記、戦記、ドキュメンタリーなどノンフィクション作品全般で、1月1日から12月31日までに公表もしくは応募された原稿が対象で、芥川賞、直木賞と並ぶ栄誉ある賞。 ◆過去の主な受賞作品 「日本人とユダヤ人」(イザヤ・ベンダサン) 「サンダカン八番娼館」 (山崎 朋子) 「テロルの決算」 (沢木耕太郎) 「気がつけば騎手の女房」 (吉永みち子) 「ミカドの肖像」 (猪瀬 直樹) 「私を抱いてそしてキスして」(家田 荘子) 「リターンマッチ」 (後藤 正治) PR情報
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