くらい寒い日もあったここ北海道もやっと夏らしい天気になってきました。
…と言っても、まだ扇風機を使うほど暑くはない我が家ですが。。。
夏の暑いこの時期になると、暑さ対策として被毛をとっても短くしている
ワンちゃんをよく見かけます。
この時期は「サマーカットでお願いします」というトリミング要望が多く
なってきます。
犬は、私たち人間のように全身に汗をかいて体温調節をすることができない
ため、暑さに弱く熱中症になりやすい。
暑くてつらそう…暑いのは苦手だから…と、少しでも涼しくなるようにと
被毛を短く丸刈り状態のサマーカットにする。
(アメリカのショップで私がサマーカットをしたシェルティです)
ちょっと待ってください
サマーカットは本当に愛犬のためになっていると思いますか?
暑さ対策のサマーカットには危険な落とし穴があるんですよ。
サマーカットについては以前記事にもしました
犬の被毛には大切な役目があるのはご存知ですよね?
犬の皮膚の角質層は人間に比べ薄く、外的刺激に弱い。
そのため、全身が被毛に覆われて外的刺激から守っています。
夏になると外的刺激になるのは、直射日光や太陽の紫外線です。
被毛は弱い皮膚を直射日光や太陽の紫外線から守ってくれているのです。
しかし、皮膚が見えるほど被毛を短くしてしまうと、紫外線のダメージが
直に皮膚に突き刺さることになるのです。
そして、直射日光から受ける高温をそのまま皮膚に受けます。
被毛中央部分のメデュラは、断熱・保温の役割をしています。
被毛が断熱の役割で直射日光から受ける高温を断ってくれるのです。
(被毛の構造についてはこちら
暑さ対策と言ってサマーカットすると、暑さ対策とは逆効果になってしまい
余計に暑さに弱くしてしまうのが、サマーカットなのです。
外的刺激といえば、もうひとつ…。
散歩など行くと草むらなどの中に入っていくことがありますよね?
草むらなどに入ると、今まで体を守っていた被毛が短くなった事で草で
皮膚を傷つけたり、虫がついたりしやすくなります。
こういった外的刺激からも被毛が守ってくれているのです。
なぜ犬は全身に毛が生えているのかわかりましたよね?
人間だって大切な部分やデリケートな部分には毛が生えてますよね?
被毛はとても大事な役割を持っているんですよ。
暑いからといってバリカンで皮膚が見えるほど短くツルツルに丸刈りに
することはかえって愛犬のためになっていないということなのです。
サマーカットの恐ろしさはもうひとつあります。
なぜ私がバリカンで丸刈りをせず、ハサミである程度被毛を残すカットを
しているかというと…
短くしたことにより、毛質が変わったり、元のように被毛が伸びてこない場合
もあるのです。
特に、下毛と上毛のダブルコート(2重毛)のポメラニアンやシェルティなど
はあまり短くしすぎるとホルモンの異常を起こして生えてこなくなることも
あるので要注意です!
毛質が変わるのは、ポメやシェルティだけではないのです。
ダブルコートではないプードルにも起こることはあります。
定期的にトリミングしていた白プードル。
今年のお正月に飼い主さんの実家の大阪へ一緒に帰省して、白プーちゃんだけ
そのまま大阪の実家に4月までいたという。
またトリミングお願いしたいと依頼があったので、白プーちゃんと久々の再会。
しかし…姿かたち、毛質、毛色が変わってしまっていた白プーちゃん。
以前、トリミングしていたときの白プーちゃん
真っ白い毛色とフワフワの毛質が魅力的。
しかし、大阪から戻ってきた白プーちゃんは…以前とは違う姿かたち…
飼い主さんは…
「大阪から戻ってきた当時は毛がすごく短くて皮膚が見えていたんです。2ヶ月たってこれだけ伸びてきたけど、色が茶色くなってバリバリと硬い毛になってしまったんです」
真っ白くてフワフワの毛質がどうしてこんなになってしまったのか戸惑って
いました。
体全体に茶色の被毛が生えていて、触るとバリバリ硬くそして、パサパサと
水分がない状態でとてもプードルの毛質とは思えない…。
あきらかに、何度もバリカンで短く刈り上げて仕上げた感じ。。。
ホワイトからアプリコットに変色してしまうのか?!
あの真っ白でフワフワの白プーちゃんはどこに行ってしまったの〜
この毛色と毛質を何とかしなければと、毛質改善計画を立てました!
トリマーの腕がなるぅ〜〜〜
シャンプーとリンスの組み合わせを考え、トリートメントもしました。
今回使ったトリートメントはラファンシーズの
「PPTコートリコンデイショナー」です。
ラファンシーズ http://www.lafancys.co.jp/
ベイシング(入浴)には時間をかけましたよ。
毛質改善の基本はシャンプー剤の選択と洗い方で決まりますからね。。。
シャンプー後のドライングはしっかりと乾かしして下さい。
夏だからといって自然乾燥はしないほうがいいです。
日本の夏は高温多湿なので、湿ったままの状態だと皮膚炎の原因を
作ってしまう場合もあります。
しっかり乾かすことで皮膚炎も防げます。
もちろん、カットは全部ハサミで丁寧に仕上げました。
「普通のノーマルなカットにして欲しい」との要望でした。
トリミング前の姿…Before
トリミング後…After
茶色の毛も目立たなくなり、バリバリパサパサだった毛もなんとかふんわりと
仕上げることに成功しました。
飼い主さんが「すごく柔らかくてフワフワになったぁ〜」と喜んでくれました。
私の前では意外と冷静だった飼い主さんですが、玄関を出て戸を閉めた瞬間、
飼い主さんの声が聞こえてきました。
「キャ〜〜〜かっわいい〜〜〜!フワフワになったね〜!!」
そして、白プーちゃんの楽しそうにワンワン吠えている声がきこえる。
トリマーとして喜び、そして幸せを感じました
でも…気になることが…
バリカンで刈り込んで仕上げたのは、プロのトリマーさんですよね…。
皮膚や被毛のことを考えるのなら、バリカンで刈り込むようなことは
プロならしないはずだと思うけど。。。
以前、東京と京都でプロのトリマーへトリミング講習会をしたとき
「私はどんなに短くカットする犬でもバリカンを使うことはしません。
ハサミを使って適度な長さに残すカットをします」
と話したとき、トリマーさんたちは「えっ?」と驚いていたのを思い出した。
トリマーのみなさんの大半はバリカンで短くカットすることをしていたよう
ですね。。。
飼い主さんが、いくらサマーカットをして欲しいと要望しても、被毛や皮膚
役割を説明して、短くするにしてもバリカンで刈り込むのではなく、時間は
かかるがハサミで短く適度な長さの被毛を残しながらカットするのがプロ
だと思うのだが…。
飼い主へのこのようなアドバイスもトリマーの大切な仕事だと思います。
サマーカットは見た目はスッキリして手入れが楽だと思っているのは
飼い主さん側の言い分。
犬にはとっては困ったカットになってしまうのです。
皮膚病や病犬、老犬など特別な理由がない限り、愛犬のためにサマーカット
にはご注意ください。