社説:韓国総選挙 隣の国の政治的現実は
毎日新聞 2012年04月13日 02時30分
韓国総選挙で予想を覆す結果が出た。劣勢が見込まれ、一時は大敗確実との観測さえ出ていた李明博(イ・ミョンバク)政権の与党セヌリ党(旧ハンナラ党)が単独過半数を維持し、勝利した。
この結果、今年12月の大統領選挙の与党候補は、非常対策委員長として総選挙を陣頭指揮した朴槿恵(パク・クンへ)氏でほぼ決まりと言ってよさそうだ。
朴槿恵氏は、故・朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領の長女である。父と母を別々の暗殺事件で失い、そのつど親が着ていた血染めのシャツを洗った経験があるという。自らも以前の選挙遊説中、暴漢に顔を切られたことがある。
こういう人が初の女性大統領を目指す韓国政治のダイナミズムを、私たちはもっと知ってよいだろう。
もちろん韓国民の主要な政治的関心は、政治家の経歴や性別ではなく、だれが、どの政党が、自分を幸福にしてくれるかにある。
そもそも総選挙で与党劣勢が予測された最大の理由は、李明博政権の立場が大企業寄りで弱者に冷たいという見方が広がったことだ。「経済大統領」への期待が高かった時期とは一変し、民主統合党など野党勢力の訴えが共感を呼んだのである。
そこで朴槿恵氏は大統領と距離を置き、福祉や暮らしを重視する姿勢を強く打ち出した。この作戦が奏功したわけだが、むしろ野党側のエラーを重く見る識者も多い。