ミニブログの普及は当局にとって想定外の事態を作り出す。11年に相次いで発生した高速鉄道や地下鉄の事故に関する情報はミニブログで全国に広まった。遼寧省大連市で起きた石油化学工場の移転を求めるデモもミニブログで呼び掛けられて1万人以上が集まり、工場移転を勝ち取る原動力となった。
2010年 | 1月 | グーグル、中国からのサイバー攻撃を公表し、中国語版のネット検索サービスの自主検閲を停止 |
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3月 | グーグル、中国版ネット検索サービスを香港に移して提供継続 | |
2011年 | 2月 | ミニブログなどで中国で民主化を求める「ジャスミン革命」集会の呼び掛け |
5月 | 中国政府、インターネットの情報管理を統合して強化する専門部署を創設 | |
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ、米フェイスブックが中国市場進出のために中国治安当局に妥協する懸念を表明 | ||
7月 | 中国の高速鉄道事故でミニブログなどが活躍 | |
11月 | 中国当局、中国の有力ネット企業を集めて管理強化を指導 | |
12月 | 中国当局、北京や広東省でミニブログの実名制導入計画を発表 | |
2012年 | 3月 | 新華社が薄氏の重慶市共産党委員会書記解任を報道、薄氏の保守系サイトの閲覧が数日間できなくなる |
北京市と広東省がミニブログに実名制導入 | ||
ミニブログで北京市でクーデター計画などのうわさが広がる | ||
中国当局、新浪微博などミニブログ大手2社に4月3日まで一部機能の中止を命令 | ||
4月 | 湖南省長沙市がミニブログに実名制を導入 | |
中国当局、保守系サイトに1カ月間の閉鎖を命令 |
当局はミニブログの規制に動き出している。政府でネットを統括する「国家インターネット情報弁公室」は昨年8月、国内サイトの管理を強化する通知を出し、同年11月には中国の通信・ネット大手39社の経営トップを呼び集め、ネット世論の取り締まりを強化する方針を伝えた。
ミニブログ規制の目玉は実名制だ。本名や身分証番号などを登録しなければ、ミニブログを利用できない規制で、北京市と広東省が3月16日に導入した。北京市の担当者は「無責任なデマなどを防ぐことができる」と狙いを説明する。湖南省長沙市でも4月に導入を決めた。
実名制の導入の効果は出ているのか。実は抜け穴だらけのため、実効性に欠けているのが現状だ。北京市では3月16日以前に登録したミニブログ利用者は実名を再登録する必要がないうえ、携帯電話を使って登録する場合は本名や身分証番号などが不要だからだ。
中国での携帯電話の多くは携帯電話端末とSIMカードを別々に購入する仕組み。最近になってSIMカードを購入する際に身分証の登録が必要になっているが、多くの携帯電話利用者は身分証の登録なしでSIMカードは取得しており、ミニブログに携帯電話番号を登録しても本人確認できない。
一方、当局の命令に従って、ミニブログ大手は政治家に関する書き込みの削除を強化している。しかし、利用者は政治家をネット特有の隠語で示すほか、ネット上の隠語も次々と変わるため、「素早い削除は簡単ではない」(中国のネット企業大手幹部)。
例えば、薄熙来氏のネット隠語は「不厚(厚くない=薄い)」、「火鍋(重慶名物の辛い鍋)」、「渝督(渝は重慶の別称であるため、重慶トップを意味する)」などと多岐に渡る。胡錦濤・国家主席や温家宝首相、習近平・国家副主席らにもそれぞれ複数のネット隠語がある。
「上有政策、下有対策(上に政策あれば、下に対策あり)」とは中国のことわざ。当局はミニブログの言論統制を強化する見通しだが、「網民」と呼ばれる中国のネット利用者は統制を乗り越える試みを続けていくはずで、両者のせめぎ合いには終わりがない。
(北京=多部田俊輔)
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