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阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか) 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)「裁判狂時代」「裁判狂事件簿」(河出文庫)、「被告人、もう一歩前へ。」(ゴマブックス)、「アホバカ裁判傍聴記」(創出版)。

運転だけで10万円...密航の手助けだった

11年3月16日 [08:52]

 今回は先週火曜に行われた額田昭嘉被告人の裁判の話。罪名は出入国管理及び難民認定法違反幇助。事件の内容は逮捕時の記事から。

 漁船で不法に出国する韓国人に協力したとして、無職額田昭嘉容疑者(68)を逮捕した。

 調べによると、額田昭嘉容疑者は「韓国人に頼まれてやった。10万円ほどもらった」と供述していると言う。

 逮捕容疑は、平成21年12月ごろ、不法出国しようとした韓国籍の男女計3人を長崎県の漁港までレンタカーで送り、手助けしたとしている。

 いわゆる密航ブローカーの事件です。

 起訴されたのは、一昨年の12月24日であると日時がはっきりしていることを除けば、報道の通り。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は平成21年に無許可のデリバリーヘルスを経営し、同年夏ごろに同業者である韓国籍の男性A(法廷では実名)と知り合ったという。

 被告人は、平成21年夏ごろ、Aからの頼みで出国者を車で港まで送り届けたことがあり、5万円の報酬を受け取ったという。

 そして、犯行当日。被告人は福岡空港でレンタカーを借り、不法に出国する韓国籍の3人を乗せて出発。目的地である港に到着したものの、密航船が来なかったらしい。

 船が来るのを待ち、日が変わった12月24日。被告人は密航船に3人を送り届け、その船に乗っていた密入国者5人を乗せて、その5人をファミリーレストランで降ろしたとのこと。

 これにより、被告人はAから10万円を受け取ったという。これが事件の詳細です。

 ちなみに出国しようとした3人は、船にロープが絡まって動けなくなってしまっているところを海上保安庁の船に発見され、逮捕されたらしいです。

 公判では多くは語られなかったんだけど、この事件はたくさんの関係者が逮捕されたと報道されたことからして、大掛かりな組織になっていそうですね。

 調べに対し、出国しようとした3人は「韓国人向けの雑誌に"急に韓国に行きたい方"という広告が載っていて連絡した」と述べているらしい。

 共犯であるAは「今回はいつもと違う密航ブローカーからの依頼だった。以前も頼んだ被告人に運転手を頼んだ」と述べているそうな。密航ブローカーってそんなにいくつもあるのか......。

 そして、被告人質問。まずは弁護人から。

弁護人「簡単に言うと、あなたは今回どんなことをしたんですか?」
被告人「安易な気持ちで引き受けたんですけど、大変なことをしてしまいました」
弁護人「誰からの指示だったんですか?」
被告人「ハヤシさんと呼んでた人です」
弁護人「それは検察官がAと言っている人物のことだと思いますか?」
被告人「はい」
弁護人「なんて言われたんですか?」
被告人「一昨年の夏に"釣りに行くから"と運転を頼まれて。でも、車に道具もないし、どうもおかしいと思ってたんですけど......」

 今回起訴はされていない、一昨年の夏のときは、被告人は騙されて運転をしたと主張です。

弁護人「仕事ですけど、社会復帰した際はデリヘルの仕事に戻るんですか?」
被告人「後ろめたいころなので辞めます。生活保護の申請をしたいと思います」
弁護人「あなたが前科6犯で、刑務所に何度も行っていますが、今後についてどう考えますか?」
被告人「今後2度と悪いことをせず、後ろ指さされないよう、残りの人生を送りたいです」

 と、再犯しないことを約束して、質問終了。

 次は、検察官から。

検察官「動機は報酬目当てなんですか?」
被告人「それもありますし、世話になったので」
検察官「世話って?」
被告人「仕事がないときに回してもらったり」

 共犯者のことを"ハヤシさん"と呼んでいることから察するに、断りにくい関係だったのかもしれませんね。

 しかし、ここから検察官がまくしたてました。

検察官「こんなことをしていたら、(日本に)どんな悪い人が入ってくるのか、どんな悪いことした人が出て行くのか!わかりますよね」
被告人「はい」
検察官「運転するだけで10万円って、ロクなことじゃないってわかってましたよね?」
被告人「捕まって、気付きました」
検察官「なぜ、誘われたと思ってます?」
被告人「日本人がいないとレンタカーが借りられないかと」
検察官「密航組織に利用されてどう思ってます?」
被告人「自分が一番悪いと思っています」

 と、ビシッと責める質問をしたあと、

検察官「ところで、籍を入れている中国人の奥さんと同居していないのはなぜですか?」
 と、本件とは関係のなさそうな質問をしたんです。すると、弁護人が勢いよく立ち上がり、

弁護人「異議あり!」

 と、異議の申し立て。これに対し、

検察官「本件の規範意識の確認です」

 と、説明すると、裁判官のジャッジは、

裁判官「検察官、その範囲内で......」

 と、弁護人の異議は認められませんでした。せっかく、元気よく立ち上がったのにねぇ。

検察官「で、同居していないのは?」
被告人「元々、集団お見合いで知り合いまして、その後籍を入れたら中国に戻って......」
検察官「ん? 集団お見合いって何ですか?」
被告人「中国の女性が12~13人いまして」
検察官「日本人と籍を入れるのが目的で集まってくるの?」
被告人「そうです。気に入った人が喋って」
検察官「それって、偽装結婚に使われるのでは?」
被告人「いや、私が行ったときはなかったです」

 なんで被告人は、本件といい集団お見合いといい、怪しげなものに手を出すのやら。

 この後、検察官が懲役6月と罰金15万円を求刑して閉廷でした。

 知らないところで知らないことが行われているもんだなぁ。ポジティブに考えれば、それだけ日本が魅力的なんだろうけどさ。

注目の裁判

4月11日(水)
被告人・市橋達也(控訴審判決)

4月13日(金)
被告人・鈴木秀則、他3人(初公判)

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