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てんかん、最新の診断法/脳波検査、精度より高く
 | 中里信和教授 |
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東北大のサイエンスカフェが3月30日、「大脳電磁気生理学の最前線〜脳活動をみる、脳を刺激する、てんかん患者を救う!」をテーマに、仙台市青葉区のせんだいメディアテークで開かれた。東北大大学院医学系研究科の中里信和教授が、東北大病院で実施している電気や磁気を活用した最新の診断法を紹介し、てんかんの現状について講演した。
◎講演/微弱な磁気の測定も/東北大大学院医学系研究科 中里信和教授
てんかんは脳の異常活動(てんかん発作)が繰り返し起きる疾患で、患者は発作以外にもいろいろな症状や悩みを抱えている場合が多い。患者は人口の1%ほどいると言われ、さまざまな病気が原因となって何歳でも発症する。 「ただし、正しい診断と投薬治療などで7、8割の人は普通の生活ができる」と中里教授は説く。 発作は一目で分かる大きなものばかりではない。他人からは意識があるように見えても、実は意識を失っているというような小さな発作もある。「そのため発作を捉えるためには脳波の検査がとても大事だ」と言う。 会場では、医師が患者役となり頭皮の表面に電極を付けて、脳波の見方の実演が行われた。まばたきしたり、開いた目を左右に動かしたりするだけでモニターに映された脳波計の波が変化する。 中里教授は「機器はとても進歩しているが、多くの雑音が混ざるため脳波を読み取るのは本当に難しい」と説明した。 脳波検査の精度をより高めるためにさまざまな最新手法の開発が進む。手術によって脳の表面や内部に電極を入れる検査では、脳波を測定するほか、脳に電気刺激を加えて脳機能の位置関係を把握する。 「脳磁図」という検査は、機器によって頭皮の外から脳の微弱な磁気を測る。頭皮に電極を付けて測定した脳波に比べて診断精度が高く、てんかんの外科的治療の方針を決めるのに役立つ。 会場のテーブルごとに行われた討論では、「例えば歩きながら脳磁図が測定できれば、てんかん発作が起きる前の変化を捉えて発作が起きないような治療につなげられるのではないか」などの意見が出された。 最新技術の紹介を終え、中里教授は「患者さんが幸せになることがうれしいという熱い気持ちがないと、新たなサイエンスを突き進めていくことはできないと思う」と締めくくった。
<なかさと・のぶかず>東北大医学部卒。東北大助手、広南病院副院長を経て2010年から現職。専門はてんかん学。陸前高田市出身。52歳。
2012年04月11日水曜日
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