2012年04月12日
佐藤乙一 「関係法規」 （医歯薬出版）
医歯薬出版が発行している関係法規の教科書（2011年1月発行の臨床検査学講座『 関係法規 第４版 』）を読んだら間違いが多いので驚いています。ちなみに、間違いが多すぎて、一度に全部の指摘はできないので、少しずつ書き込んでいきたいと思います。
ところで、医歯薬出版さんは、間違いだらけの教科書を今年も技師学生に販売するのでしょうか？
医歯薬出版さんは間違いだらけの教科書を
今年も技師学生に販売するのですか？
教科書の１ページ
１ページに、「道徳と法律は不離不即のものとなっている」とありますが、現代においては、道徳と法律は峻別されています。大昔は、法と宗教、法と道徳の区別がなかったわけですが、17世紀あるいは18世紀ぐらいから法と道徳を区別する学者が現れだし、現代においては（少なくとも英米法や大陸法の法圏に属する国においては）、法と道徳は峻別されています。
もっとも、「それ自体悪 mala in se 」とされる自然犯は「道徳に反する行為」と考えることもできますが、「禁じられた悪 mala prohibita 」とされる法定犯は道徳とは無関係です。したがって、「道徳と法律は不離不即のものとなっている」と言い切ってしまうのは不適切です。
１ページに、「日本国憲法は、わが国の最高規範であって、〜」とありますが、「最高規範」ではなく「最高法規」とすべきでしょう。
＜参考条文＞
◎ 日本国憲法 第９８条１項
この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
１ページに、「日本国憲法は〜基本組織法である〜」とありますが、「基本組織法」ではなく「国の基本法」と言うべきです。確かに、憲法には組織法的な側面もありますが、憲法の根本的な役割は国家権力に歯止めをかけて国民の人権を保障することです。つまり、単なる組織法でもなければ基本組織法でもないのです。
１ページに、「法令に効力を与えるのも、これまた憲法である。」とありますが、法令が効力（強制力）を有するのは国家権力の裏付けがあるからであって、その権力が暴走しないように歯止めをかけるのが憲法の根本的な役割りです。日本の法体系は憲法を頂点とするピラミッド型であり、下位の法令は憲法の範囲内で存在しているわけですが、憲法が下位の法令に効力を与えているわけではありません。憲法が下位の法令に与えているのは憲法的正当性であると考えられます。
１ページに、「そして第10章では本法が日本国の最高法規である旨を明確にし、現在から将来に向けて侵すことのできない永久の権利であると定めている。」とありますが、「侵すことのできない永久の権利」というのは「基本的人権」のことであって、最高法規たる憲法が「侵すことのできない永久の権利」というわけではありません。
１ページに、「〜を最終的に判断するのは最高裁判所であって、違憲法令審査権のあることも定めている。」とありますが、違憲審査の対象は法令に限らず、規則や処分も違憲審査の対象になるので、「違憲法令審査権」という記述は不適切です。法律（特に憲法学）の専門書を見ると、「違憲審査権」と書いてあるのが普通です。ところで、有斐閣のポケット六法を見ると「法令審査権と最高裁判所」という見出しがついていますが、この見出しは不適切です。ちなみに、三省堂の新六法（2004年版）には「法令等の合憲性審査権」という見出しがついています。有斐閣よりは三省堂の見出しのほうがいいと思います。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 違憲審査の対象は？
Ａ ： 憲法第81条は違憲審査の対象として「一切の法律、命令、規則又は処分」を挙げていますが、これは例示であって、81条に明記されていない国家行為であっても違憲審査の対象になると解されています。では、条例はどうかというと、条例も当然、違憲審査の対象になると解されています。
『関係法規』の著者である佐藤乙一氏は憲法について色々と述べていますが、肝心なこと（すなわち憲法の意義）については一言も述べていません。教科書のなかで憲法について語るのであれば、ヘンテコリンなことや意味のないことを長々と書くのではなく、憲法の意義（目的）について書くべきです。
それにしても、最初の１ページだけでツッコミどころが満載の教科書ですね。こんなにヒドイ教科書というのは前代未聞です。ここまでくると著者だけの問題ではなく、こういう教科書を発行し続けている出版社（医歯薬出版）の編集体制も問いたくなります。さらに言うと、こういう教科書を平気で使っている関係法規の教員にも問題があると言うべきでしょう。
医歯薬出版は、医学書に関しては非常に高いノウハウを持っていると思うのですが、関係法規の分野に関しては、ほとんどノウハウを持っていないのでしょうね。
医歯薬出版が医学書を専門にしているように、法学書を専門にしている出版社もありますので、関係法規の教科書は、法学書を専門にしている出版社にまかせたほうがいいと思います。
教科書の２ページ
天皇に法律の裁可権はありません
２ページに、「法律は〜天皇の裁可を得て公布されるもので〜」とありますが、天皇が法律を裁可したのは大日本帝国憲法（いわゆる明治憲法）時代の話です。
法律を公布することは天皇の国事行為ですが、国事行為は「内閣の助言と承認」に基づくものです。つまり、国事行為である「法律の公布」は、天皇が内閣の助言と承認に基づいて行うものであって、天皇の裁可を得て行うものではありません。
＜参考条文＞
◎ 大日本帝国憲法 第６条
天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス
◎ 日本国憲法 第４条１項
天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
21世紀に入って10年以上が過ぎたというのに、いまだに「天皇の裁可を得て公布」だなんて、時代遅れも甚だしいと思いませんか。
ちなみに、現行憲法（日本国憲法）の第４条１項に「天皇は〜国政に関する権能を有しない。」と明記してあるので、「天皇の裁可を得て公布される」というのは間違いです。
医歯薬出版さん、これはヒドイ間違いだよ。
２ページに、「法律案は〜衆議院および参議院の議決を経て公布、施行されなければ効力を生じない。」とありますが、「効力を生じない」という書き方をしてしまうと、「法律は公布・施行されなければ効力がない」という誤った印象を技師学生に与えてしまう恐れがあります。法律案は憲法に特別の規定がある場合を除いては、両議院で可決したときに法律となるので、法律案が両議院で可決されれば、公布・施行という手続きの前であっても法律としては有効に成立しているのです。ただ、公布・施行という手続きを経なければ、法律の規定を機能させることができないのです。つまり、「効力はあるけど機能させることができない」ということです。これをクルマにたとえると、エンジンはかかっているけど、ギアがニュートラル・ポジションなので、アクセルを踏んでもクルマを動かすことができない、という状態です。
＜参考条文＞
◎ 日本国憲法 第５９条１項
法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
２ページに、「予算案の可決方法は異なり、衆議院で先議し、参議院に回って30日以内に議決しないときは衆議院の議決が国会の議決となる。」とありますが、この説明は中途ハンパですね。それにしても、この教科書の執筆者は、憲法について重要なことは書かずに、予算案の議決のような細かいことは書くんですね。しかも中途ハンパに・・・ちなみに、予算案は衆議院で先議し、衆議院で可決した予算案の送付を受けた参議院が衆議院と異なった議決をした場合は両議院の協議会を開くことになっていますが、それでも意見が一致しないときや、参議院が衆議院の可決した予算案を受け取ったのち、国会休会中の期間を除いて30日以内に議決しないときは、衆議院の議決が国会の議決になります。
※ 成立前の予算（すなわち予算案）のことも憲法では予算といっていますが、理解しやすくするために、成立前の予算には「案」をつけて「予算案」としています。
＜参考条文＞
◎ 日本国憲法 第６０条
１項 ： 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
２項 ： 予算について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 衆議院で可決した予算案の送付を受けた参議院が議決しないうちに衆議院が解散された場合、予算はどうなるの？
Ａ ： 衆議院が解散された場合、参議院も同時に閉会となるので予算は成立しません。ただし、参議院の緊急集会で予算を成立させることは可能です。
２ページに、「命令は内閣府や厚生労働省等各行政機関の長によって制定されるものである。」とありますが、命令（政令・内閣府令・省令）のうち政令は内閣が発する命令（閣議で決定された命令）であって、「内閣府や厚生労働省等各行政機関の長によって制定されるもの」ではありません。ちなみに、内閣府令は内閣府の長である内閣総理大臣が発する命令であり、省令は各省大臣が発する命令です。つまり、「命令は内閣府や厚生労働省等各行政機関の長によって制定されるものである。」という記述は、命令（政令・内閣府令・省令）のなかの内閣府令と省令に関する記述に過ぎないのです。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 内閣府令と政令とでは、どちらが上位の命令でしょうか。
Ａ ： 内閣府の主任大臣としての内閣総理大臣が発する内閣府令より、内閣が発する政令のほうが上です。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 内閣府令と省令とでは、どちらが上位の命令でしょうか。
Ａ ： 内閣府令と省令は同格です。内閣府令も省令も当該行政機関の長である主任の大臣が発する命令なので、同格なのです。
２ページに、「施行令は別名政令ともいい〜」とありますが、これは逆です。すなわち、政令の場合は、それが政令であることを示すために「〜施行令」や「〜に関する政令」という題名を付けるのです。ですから、施行令のことを別名「政令」というのではなく、政令に「〜施行令」や「〜に関する政令」という題名を付けるのです。
それにしても、『関係法規』の著者は、いったい何を考えているのでしょうか。この教科書を読むと、読んでいる私のほうが恥ずかしくなってきます。医歯薬出版は、「技師学生の教科書は、この程度で十分だ」と思っているのでしょうか。もしそうだとすれば、臨床検査技師をナメてますね。ホント腹が立ちますよ。この教科書は、もうメチャクチャです。明らかな欠陥商品ですよ。欠陥商品を技師学生に販売するんですか？医歯薬出版の企業倫理が問われているような気がします。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 「〜施行令」と「〜に関する政令」は、どう違うの？
Ａ ： その政令が委任命令の場合は「〜に関する政令」、執行命令の場合は「〜施行令」という題名が付けられます。執行命令は、上位の法令を執行するための具体的細目事項を定めた命令であって、新たな権利義務の設定を伴うものではないので、法律の授権の程度は一般的・抽象的でよいのです。一方、委任命令は国民の権利義務を新たに定めるものなので、個別的・具体的な法律の授権が必要です。
２ページに、「法律に附属しているものは附属政令とも呼ばれ〜」とありますが、現行の憲法下では、法律に附属していない独立した命令は認められていません。つまり、政令はすべて法律に基づく命令なのです。ですから、わざわざ「附属政令」なんて言い方はしませんよ。教科書に「法律に附属しているものは附属政令とも呼ばれ〜」なんて書いてしまうと、法律に基づかない独立命令も存在しているような印象を技師学生に与えてしまう恐れがあります。ちなみに、旧憲法下（明治憲法下）では法律に基づかない独立命令が認められていましたが、現行の憲法下では、先に述べたように、法律に基づかない独立命令は否定されています。
２ページに、「施行規則は別名を府令、省令ともいい〜府および各省庁の長が制定する命令である」とありますが、省令を発するのは「各省大臣」ですので、「各省庁の長」という記述は誤りです。
『関係法規』の著者は、「庁の長」も省令を発することができると思っているのでしょうか。
＜参考条文＞
◎ 国家行政組織法 第１２条１項
各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれの機関の命令として省令を発することができる。
２ページに、「法令とは、法律と命令（政令、省令）をまとめた用語である。」とありますが、「関係法令」とか「法令順守」とかいう場合の法令には条例や各種規則も含まれます。すなわち、法令とは「法律と命令（政令、省令）をまとめた用語」ではなく、一定の手続きと形式とに従って制定された成文法を総称して法令と呼んでいるのです。
２ページに、「憲法第94条は、これらの団体が〜条例を定めることができることを定めており、その地方議会が制定する。」とありますが、正確に言うと、条例を制定するのは「地方議会」ではなく「地方公共団体」です。
＜参考条文＞
◎ 憲法 第９４条
地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
◎ 地方自治法 第１４条１項
普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる。
２ページに、「法律の範囲内で条例を定めることができる〜」とありますが、地方自治法には「法令に違反しない限りにおいて」と謳ってあります。つまり、憲法第９４条には「法律の範囲内で」とあり、地方自治法第１４条１項には「法令に違反しない限りにおいて」と謳ってあるのです。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 条例の所管事項（条例を定め得る範囲）は？
Ａ ： 法律の範囲内、すなわち地方自治法第２条第２項に挙げてある事務の範囲内であれば、法令に違反しない限りにおいて、条例を制定することができます。
２ページに、「告示 ： 〜正式に公告することをいう。」とありますが、公示をする必要がある場合に告示という方法（形式）がとられるのであって、「正式に公告することを告示という」のではありません。ちなみに、行政庁舎の掲示板を見ると、告示がいっぱい張ってあります。
＜参考条文＞
◎ 内閣府設置法 第７条第５項
内閣総理大臣は、内閣府の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。
◎ 国家行政組織法 第１４条第１項
各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。
それにしても、この教科書は間違いが多いですね。
この教科書の著者は、法学の知識が欠けていますよ。
この教科書の間違いに気づかず、この教科書を授業で使っている関係法規の教員も法学の知識が欠けていると思います。
こんなに間違いだらけの教科書を平気で販売している医歯薬出版は、いったい何を考えているのでしょうか。
教科書の３ページ
３ページに、「厳密に解釈すれば通達と通知の意味は異なるとされている。」とありますが、厳密に解釈しなくても通達と通知には根本的な違いがあります。すなわち、意味が異なると言うよりは、根本的な違いがあるのです。
＜参考条文＞
◎ 内閣府設置法 第７条第６項
内閣総理大臣は、内閣府の所掌事務について、命令又は示達するため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる。
◎ 国家行政組織法 第１４条第２項
各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令又は示達するため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 訓令とは？
Ａ ： 同一の行政組織の中で、上級機関から下級機関に文書又は口頭で発せられる命令や指示を訓令という。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 通達とは？
Ａ ： 同一の行政組織の中で、上級機関が下級機関に法令の解釈や運用の指針を文書で示したものを通達という。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 通知とは？
Ａ ： 昔は、厚生省（現在の厚生労働省）の課長や局長が都道府県知事に対して通達を出していたが、通達というのは「 同一の行政組織の中で、上級機関が下級機関に対して出すもの」なので、中央官庁の課長や局長が都道府県知事に対して通達を出してしまうと、都道府県知事よりも中央官庁の課長や局長のほうが上位者ということになってしまう。そこで、近年は通達という言葉のかわりに「通知」という言葉が多く使用されるようになった。通知というのは、いわゆる「お知らせ」である。もっとも、組織上の指揮命令権に基づいて上級の行政機関が下級の行政機関に法令の解釈や運用の指針を文書で示す場合は、現在でも「通達」という形式がとられている。
教科書の４ページ
教科書の４ページに「職業選択自由思想が明治以降帝国憲法に盛り込まれ〜」とありますが、帝国憲法（大日本帝国憲法）に職業選択の自由は盛り込まれていません。もっとも、「居住及移転ノ自由」は謳ってあるので、これによって事実上「職業選択の自由」が可能になりましたが、帝国憲法に職業選択の自由が「盛り込まれた」わけではないのです。
＜参考条文＞
◎ 大日本帝国憲法 第２２条
日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ居住及移転ノ自由ヲ有ス
「なんびと」 ではなく 「なんぴと」
４ページに憲法第22条「何人も〜を有する」とあり、その「何人」に「なんびと」という読み仮名が振ってありますが、「なんびと」ではなく「なんぴと」と読むのが普通です。「なんびと」と読んでも間違いではありませんが、憲法や法律の条文に「何人も〜」とある場合は「なんぴと」と読むのが普通です。せっかく読み仮名を振るのであれば、「なんぴと」のほうがいいですよ。
教科書の４ページに、「有名な判例がある。その一部を引用する。」とあり、「昭和36年12月3日、Ｔ高裁判」と称する判例があげてありますが、私が調べた限りでは、「昭和36年12月3日、Ｔ高裁判」に該当する判例は見つかりませんでした。『関係法規』の著者は、「昭和36年12月3日、Ｔ高裁判」の出典を明確にすべきです。ちなみに、『関係法規』の著者は「有名な判例」と述べていますが、有名な判例であれば、医療訴訟の判例集に載っているはずです。しかし、「昭和36年12月3日、Ｔ高裁判」に該当する判例は、医療訴訟の判例集にも最高裁のホームページからアクセスできる裁判例にも載っていないのです。
『関係法規』の著者に抗議します。
判例を引用するのであれば、
その出典を明確に示しなさい。
教科書の１０ページ
教科書の１０ページに、「検体検査業務独占不要論が相次ぎ〜」とありますが、「検体検査業務独占不要論」というのを太字にして強調する必要はないでしょう。佐藤乙一氏は、検体検査業務独占不要論を技師学生の頭に刷り込もうとしているのですか。こういう「ウソかホントか分からないような昔話」を教科書に載せる必要はないし、ましてや太字にして強調する必要は全くないですよ。佐藤乙一氏は、いったい何を狙っているのでしょうか。
教科書の１４ページ
教科書の１４ページに、「本条は、たんにこの法律の目的を定めたものにすぎないので、直接、法律としての効果はないとされているが〜」とありますが、この説明は非常にマズイです。臨技法の第１条は臨床検査技師の権利・義務を直接的に定めた規定ではないので、佐藤乙一氏は「法律としての効果はない」と思っているのかもしれませんが、佐藤乙一氏も「全条文は第１条の精神に反して制定することはできず、この条文に拘束される。」と書いているように、第１条にも法律としての効果はあるのです。そもそも、国会で可決成立し、公布・施行という手続きを経た臨技法の条文（第１条）に対して「法律としての効果はないとされている」とは、いったいぜんたい、どういう意味ですか。「法律としての効果はない」という不適切な説明は、国権の最高機関であり、唯一の立法機関である国会に対して失礼ですよ。唖然として「あいた口がふさがらない」とは、このことだ。
教科書の１４ページに、「臨技制度の４本柱〜�０綮佞泙燭六�科医師の指示を受ける」とありますが、正確に言うと「〜指示の下に」であって「〜指示を受ける」ではありません。すなわち、診療放射線技師の場合は「〜指示を受け」ですが、臨技の場合は「〜指示の下に」なんです。臨技の場合は「指示の下に」だから、医師から「指示を受け」なくても、医師の「指示の下に」あればいいのでしょうね。たとえば、検査センターの臨技は医師の「指示を受け」ているわけではありませんが、医師の「指示の下に」あるので適法なんでしょう。ちなみに、採血は「医師又は歯科医師の具体的な指示を受けて」ですから診療放射線技師と同じです。条文を読むと、「指示を受け」と「指示の下に」をうまく使い分けていますね。ところで、ブランチラボは請負契約に基づくものですから、ブランチで働く検査センターの技師は「指示の下に」であって「指示を受け」ではないですね。仮に「指示を受け」だとすると、いわゆる偽装請負になってしまいます。こうしてみると、臨技法の条文を作った人は、うまく使い分けていますね。さすがです。
教科書の１４ページに、「採血行為は〜本来業務ではない」とありますが、関係法令（臨技法、臨技法施行令、臨技法施行規則）には、そのような規定はありません。『関係法規』の著者である佐藤乙一氏は、いったい何を根拠にして「採血行為は〜本来業務ではない」と言っているのでしょうか。おそらく佐藤乙一氏は、昭和四五年一二月三日の通達（各都道府県医務主管部局長あて厚生省医務局医事課長通達）を根拠にして「採血行為は〜本来業務ではない」と言っているのでしょう。しかし、通達というのは法規ではないのです。「通達は法規ではない」ということは「通達には一般国民に対する法的拘束力はない」ということです。通達は法規ではないのに、佐藤乙一氏は通達を法規だと思い込んで、いまだに「採血行為は〜本来業務ではない」と言い切っているのでしょう。昭和45年に出された通達を根拠にして、いまだに「採血行為は〜本来業務ではない」と言ってるなんて・・・
＜通達は法規ではありません＞
法規ではない通達を根拠にして、臨技の
権利・義務を規定することはできません。
教科書の１５ページ
教科書の１５ページに、「医師の指示内容はこの法律で定めている臨技業務範囲に限定され、この範囲を超えての指示はできないし、仮に指示されても効力はないものと解される。」とありますが、関係法令（臨技法、臨技法施行令、臨技法施行規則）には、そのような規定はありません。佐藤乙一氏は、いったい何を根拠にして「医師の指示内容はこの法律で定めている臨技業務範囲に限定」されるとか「この範囲を超えての指示はできないし、仮に指示されても効力はない」などと無責任なことを言っているのでしょうか。
医師や臨技の業務に制限を加えるためには法令の根拠が必要です。法令の根拠がないのに佐藤乙一氏の勝手な解釈で医師や臨技の業務に制限を加えることはできません。
教科書の１５ページに、「指示は指導監督より強いと解釈され〜」とありますが、「指示」と「指導監督」は、意味に本質的な違いがあるので、どっちが強いとか弱いとか、そういう類（たぐい）のものではないはずです。
教科書の１５ページに、「改正前の臨衛技法には歯科医師の指示は入っていなかった。」とありますが、改正前の条文では、臨技が「医師の指導監督の下に」あれば、歯科医師の指示で検体検査をしても差し支えなかったはずです。なぜなら、「医師の指導監督の下に」という文言は、歯科医師の指示を禁じているわけではないので、臨技が「医師の指導監督の下に」あれば、歯科医師が臨技に検体検査の指示を出しても構わないからです。
教科書の１５ページに、「検体検査は〜医行為とは認められず〜開放業務であるとされている（昭和４５．５ 衆議院社会労働委員会議事録等）」とありますが、私が調べたところ、昭和45年5月の衆議院社会労働委員会議事録に「検体検査は〜医行為とは認められず」という記述はありませんでした。佐藤乙一氏は、昔から検体検査は医行為ではないということを盛んに主張されていますが、佐藤乙一氏が根拠としてあげた衆議院社会労働委員会議事録には、そのような記述はありませんよ。
『検体検査は医行為ではないので、検体検査を業務独占にすることはできない』という話を医療界に広めたのは、日臨技の名誉会員でもある佐藤乙一氏の業績でしょうかね？
教科書の１５ページに、「病理組織の診断は医師の独占業務であって、臨技の行える範囲は標本作製までである（平元．１２．２８．医事発第９０号）」とありますが、「平元．１２．２８．医事発第９０号」には、「臨技の行える範囲は標本作製までである」という記述はありません。そもそも、「平元．１２．２８．医事発第９０号」というのは、「病理学的診断を行うことは〜医行為であると考えるがどうか」という日本病理学会からの照会に、厚生省健康政策局医事課長が「貴見のとおりである」と回答したものであって、「臨技の行える範囲は標本作製までである」という記述は一切ありません。佐藤乙一氏は、いったい何を根拠にして「臨技の行える範囲は標本作製までである」というデタラメなことを述べているのでしょうか。ちなみに、「貴見のとおりである」という回答の「貴見」には「病理学的所見を客観的に記述することは医行為ではない」という日本病理学会の見解も入っているので、「異型細胞が見られる」とか「好中球が多い」といった所見を臨床検査技師が述べるのは差し支えない（構わない）ということになります。実際、医療現場では病理検査を専門とする技師が医師とディスカッションしたり、検査技師が病理のカンファレンスに参加したりしているので、「臨技の行える範囲は標本作製までである」という佐藤乙一氏の見解は、臨床検査技師の足を引っ張る有害な間違いですよ。
＜佐藤乙一氏へ＞
あなたのトンチンカンな教科書が臨床検査技師の足を引っ張っているのですよ。
教科書の１６ページ
教科書の１６ページに、「検体検査は臨技の名称を使用しなければ誰でも行いうる開放業務となっている〜」とありますが、この記述は非常にマズイですね。検体検査が解放業務とされている理由（表向きの理由）は、「電子工学をいろいろやられた専門家の方でありますとか、あるいは生化学等の専門家でございますとか、あるいは物理学等の専門家でございますとか、そういう方々がやはり医療の中の検査にいろいろと入ってきていただく」（昭和45年5月13日 参議院 - 社会労働委員会）ためであって、「臨技の名称を使用しなければ誰でも行いうる」検査だからという理由で開放業務になっているのではありません。佐藤乙一氏の記述を読むと、「検体検査は、臨技の名称を使用しなければ誰でも行いうる検査だから開放業務となっている」という意味に誤解されてしまいます。佐藤乙一氏は、「検体検査は誰でも行いうる検査」だと思っているのでしょうか。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 検体検査は誰が行ってもいいの？
Ａ ： 佐藤乙一氏は関係法規の教科書の中で「検体検査は臨技の名称を使用しなければ誰でも行いうる開放業務となっている」と述べていますが、社会通念上、つまり法律以前の常識問題として、「誰でも行いうる開放業務」という考え方は間違っています。つまり、開放業務だからといって「臨技の名称を使用しなければ誰でも行いうる」というわけではなく、一定の知識と技術が要求されるのは当然のことです。これは法律以前の常識レベルの問題ですよ。
「検体検査は誰でも行いうる検査だから開放業務となっている」という誤った考えを医療界に普及させたのは、佐藤乙一氏ですね。
教科書の１６ページに、「保健医療関係者の免許には、２つの性格があるという。��特許のような意味があるとする説もある。」とありますが、そのような説は存在しません。佐藤乙一氏は、いったい何を根拠に「特許のような意味がある」というトンチンカンな説を述べているのでしょうか。医師免許に代表される医療系免許の法的性質は法律行為的行政行為の「許可」であると解されており、佐藤乙一氏が述べているような「特許」という説はありません。
＜佐藤乙一氏へ＞
デタラメなことを書かないで下さい。
＜教科書の１８ページ＞
教科書の１８ページに、「その資格を公式に証明するために免許を与え、その証拠として、免許証を交付する。」とありますが、臨技免許の法的性質は、法律行為的行政行為の「許可」であると解されているので、「証明するために免許を与え」という記述はおかしいです。
＜教科書の１９ページ＞
教科書の１９ページに、「申請書の提出先は〜保健所長であるが〜ここは知事の代行機関となっている。」とありますが、「知事の代行機関」という書き方をすると、保健所長は免許申請に関して知事から権限を委任されているのか？それとも権限の代理なのか？という疑問がわいてくるので、「知事の代行機関」という難しい書き方をせずに、「住所地の保健所が免許申請の窓口になっている」という説明でいいと思いますよ。
教科書の１９ページに、「登録免許税法別表第１−２３」とありますが、「別表第１−２３」というのは間違いで、正しくは「別表第１−３２」です。
＜教科書の３０ページ＞
教科書の３０ページに、「法定業務が例外的に行えるようになったこと。」とありますが、臨技法の第２条に定めてある法定業務は、佐藤乙一氏の言葉を借りれば「臨技の本来業務」ですよ。佐藤乙一氏も教科書の１４ページで本来業務だと述べているではありませんか。いいですか、臨技法に定められた臨技の法定業務は臨技の本来業務であって特例業務ではありません。仮に、「例外的に行えるようになった」というのであれば、それは佐藤乙一氏がいう特例業務ということになりますよね。しかし、法定業務は、佐藤乙一氏も言うように臨技の本来業務であって、特例業務ではありません。とにかく、佐藤乙一氏の説明は支離滅裂で整合性が欠けていますね。
＜佐藤乙一さんへ＞
あなたの説明は支離滅裂です。
＜教科書の３１ページ＞
教科書の３１ページに、「直接人体に危害を及ぼすおそれのない範囲の業務は必ずしも医師が行わなくてもよいとされ〜これを診療の補助（行為）という。」とありますが、臨技が「診療の補助」として行っている生理学的検査と採血は「直接人体に危害を及ぼすおそれ」があるから業務制限がかけられているのでしょう。佐藤乙一氏は、生理学的検査と採血は「直接人体に危害を及ぼすおそれ」がないと思っているのでしょうか。あいかわらず、佐藤乙一氏の説明はデタラメですね。
＜教科書の３２ページ＞
臨技は専門職なのか？ 「専門職」論争
教科書の３２ページに、「診療の補助業務は看護師等の業務独占とはなっているものの、専門的な診療の補助業務すべてを行うことは事実上不可能である。そこで臨技等の専門職が制度化され〜」と書いてありますので、佐藤乙一氏は、「臨技は補助業務の専門職」だと考えているのですね。これまで数十年にわたって「専門職」論争が繰り返されてきましたが、結局、専門職は専門職でも補助業務の専門職ということですか。でも、補助はあくまでも補助ですよね。たとえば、看護助手や検査助手のことを「助手の専門職」だとは言いませんよね。佐藤乙一氏は「臨技は補助業務の専門職」だと述べていますが、これは「看護助手は助手業務の専門職」だと言っているのと同じことですよ。職業に貴賤はないので、助手さんのことをアレコレ言うつもりはありませんが、専門職という観点で言えば、助手業務や補助業務のことを専門職とは言いませんよね。ですから、「臨技は補助業務の専門職」という表現は、まさにコメディー（喜劇） comedy ですよ。佐藤乙一氏が「臨技は補助業務の専門職」という笑い話を教科書に書くから、われわれはコメディカルと呼ばれているのですね。
＜教科書の３４ページ＞
教科書の３４ページに、「大２．１２．３ 大二（れ）1731号 大審院判」とあるのは、「大判大正２．１２．１８」のことですね。この判決が出たのは「大正２年１２月３日」ではなく「大正２年１２月１８日」ですよ。ちなみに、佐藤乙一氏は「この判決は現在もなお効力があるという。」と述べていますが、「効力があるという」というのは、どういう効力があるというのでしょうか。
教科書の３４ページに、「臨技や看護師が本来医師みずからが行うべき医行為を、診療の補助と位置づけて医師の指示などの下に行えるようになったのも、その根拠はこの判決に基づいている〜」とありますが、「この判決」というのは佐藤乙一氏が前述している「大２．１２．３． 大二（れ）1731号 大審院判」（正しくは「大判大正２．１２．１８」）ですよね。この判決は、無資格者を医師の手足として使う「医師の手足論」に関する判例であって、臨技や看護師などの有資格者が「診療の補助」として行う医行為に関する判例ではありません。したがって、佐藤乙一氏の説明は不適切です。そもそも日本は制定法の国であって、判例法の国ではありませんから、大審院の判決が根拠だとする佐藤乙一氏の説明は不適切です。佐藤乙一氏だって、教科書の３ページで「業務の独占、権利、義務、制裁、刑罰など重要なことは、法律でなければ定めることはできない。」と述べているではありませんか。ですから、「診療の補助」の根拠は法律です。ちなみに、臨技の場合は臨技法が「診療の補助」の根拠になります。日臨技の名誉会長でもある佐藤乙一氏は、臨技は医師の手足だと思っているのでしょうか。それとも臨技を無資格者と同様に医師の手足にしようと考えているのでしょうか。佐藤乙一氏は、臨技を貶めるために、臨技にとって不利になるようなデタラメを教科書に書いているのでしょうか。佐藤乙一氏に「日臨技の名誉会長」としての自覚がないのであれば、名誉会長を自ら辞退すべきです。日臨技の名誉会長が臨床検査技師の足を引っ張っているなんて、裏切り行為ですよ。
＜教科書の３７ページ＞
教科書の３７ページに、「１，３，４，６，９、１３にはそれぞれ（ ）内に実施上の除外業務があり〜これらの行為を業として行うことは許されない。」とありますが、（ ）内に書いてある「体表誘導によるものに限る。」とか「頭皮誘導によるものに限る。」というのは、「体表誘導による心電図検査に限る」、「頭皮誘導による脳波検査に限る」という意味ですから除外業務ではなく、臨技が医師または歯科医師の指示の下に実施することができる業務ですよ。ちなみに、「〜を除く」という場合の「〜を」は除外業務になります。
教科書の３７ページに、「１，３，４，６，９、１３にはそれぞれ（ ）内に実施上の除外業務があり〜これらの業務は臨技の行う診療の補助行為の範囲を超え、高度の医療行為に該当するものと解されるのでこれらの行為を業として行うことは許されない。」とありますが、佐藤乙一氏は、臨技には許されていない散瞳薬を投与して行う眼底写真検査は「高度の医療行為に該当する」と考えているのですね。そうすると、散瞳薬を投与することができる視能訓練士は臨技よりも高度の医療行為をすることができる、ということになりますよ。そもそも佐藤乙一氏は教科書の３３ページで「高度の医療行為（絶対的医行為）を業として行わせたときは医師法に違反〜」と述べているではありませんか。佐藤乙一氏の勝手な判断で「高度の医療行為に該当する」と決めつけないで下さい。あなたのデタラメな判断で、臨床検査技師は迷惑しているのですよ。
佐藤乙一氏が執筆した関係法規の教科書には法的な間違いも多いけど、日本語の間違いも多いですよ。
教科書の３７ページに、「相手が患者の場合には、実施時に言語聴覚士同様、主治医の指導を受けて行うものと解される（平１０．９．１．健政発第９７０号）」とありますが、佐藤乙一氏が根拠としてあげている「平１０．９．１．健政発第９７０号」というのは、「言語聴覚士法の施行について」という表題の通知（各都道府県知事あて厚生省健康政策局長通知）ですよ。そもそも通知というのは法規ではないですし、その上この通知は言語聴覚士に関する通知ですから、はたして臨技法を解釈する上での根拠になるのでしょうか。話を本題に戻すと、ここで問題になっている千ヘルツと四千ヘルツの聴力検査は、労働安全衛生法に基づく健康診断の選別聴力検査で使うので、あえて「診療の補助」から外してあるんですよ。たとえば、メガネ屋さんの店員がお客さんに合ったメガネを作るために視力検査をしたり、学校の教員が児童生徒の健康診断でスクリーニング的な視力検査をしたりするのと同様に、医療系の国家資格を有しない健診スタッフであっても、選別聴力検査に関する講習を受けた者は、健診で千ヘルツと四千ヘルツの選別聴力検査をすることができるのです。それなのに佐藤乙一氏は第３版の教科書で千ヘルツと四千ヘルツの聴力検査について「これらの業務は臨技の行う診療の補助行為を超え、高度の医療行為等に該当するものと解されるので、これらの行為を業として行うことは許されない。」と書いていましたね。私はこれを読んでビックリ仰天したので、医歯薬出版に抗議の電話をしましたよ。そうしたら、第４版では訂正してくれましたね。それにしても佐藤乙一氏は、医療系の国家資格を有しない健診スタッフであっても、一定の講習を受ければすることができる千ヘルツと四千ヘルツの選別聴力検査について「これらの業務は臨技の行う診療の補助行為を超え、高度の医療行為等に該当するものと解される〜」なんてトンチンカンなことを書いていたんですからね。ところで、この間違いは重大な間違いだと思うのですが、医歯薬出版さんは発行元の会社として、学校関係者にお詫びと訂正の文章を出したのでしょうか。もし、「知らん顔」して、こっそり訂正していたとしたら、医歯薬出版の企業モラルを疑いますよ。
＜教科書の３９ページ＞
教科書の３９ページに、「１回の採血量は２０ml以内を原則とすることが通達で示されている。」とありますが、この通達は、平成20年1月17日付の医政医発第0117001号で事実上、撤回されていますよね。
そもそも通達は法規ではありませんから、通達を根拠にして臨技を罰することはできません。つまり、「１回の採血量は２０ml以内を原則とする」という通達が撤回されずに残っていたとしても、医師の具体的な指示があれば、臨技が２０mlを超える採血をしても構わないのです。
臨技の多くは、「１回の採血量は２０ml以内を原則とする」という通達を法規だと思っていましたよね。昔は「２０ml以内」というのが国試にも出ていたぐらいですから・・・
法規ではない通達を法規にしてしまったのは、佐藤乙一氏の業績でしょう。
教科書の８９ページ
教科書の８９ページに、「労働者の派遣は原則自由に改められた。」とありますが、「原則自由」という表現は誤解をうむ恐れがあるので、教科書の記述としては不適切です。労働者派遣の対象業務が、ポジティブ・リスト方式からネガティブ・リスト方式に変更されたことを受けて、佐藤乙一氏のように「労働者の派遣は原則自由に改められた」という人がいますが、労働者派遣が禁止されている業務（ネガティブ・リスト）が存在する以上、「原則自由」という表現は不適切です。そもそも、労働者派遣という制度は、長い間「禁じ手（違法行為）」として封印されていたんですよ。つまり、本来は認めてはいけない制度なんです。認めてはいけない労働者派遣を認めた結果、どうなったか・・・ピンハネ（中間搾取）が横行して、ワーキングプアが増えましたね。つまり、労働者派遣法は典型的な悪法なんです。それにしても佐藤乙一氏は、「労働者の派遣は原則自由に改められた。」なんて、ひどいことを書いて平気なんでしょうか？ まぁ〜平気だから能天気（ノーテンキ）なことを書いているのでしょう。佐藤乙一さん、あなたはノーテンキですね。
教科書の８９ページに、「派遣禁止職種は港湾運送・建設・警備等であり〜」とありますが、肝心の「医療関係業務」が抜けていますよ。また、派遣法以外の法律で派遣が禁止されている業務もあるので、派遣が禁止されている業務は少なくありません。佐藤乙一さんは、派遣が禁止されている業務は「港湾運送・建設・警備等」だけだと思っているのでしょうか。
＜佐藤乙一さんへ＞
医療関係業務も原則 『派遣禁止』ですよ。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 医療関係業務はネガティブ・リスト（派遣が禁止されている業務）に入っているの？
Ａ ： はい。医療関係業務はネガティブ・リストに入っているので、例外的に派遣が認められる場合を除き、原則として医療関係業務への派遣は禁止されています。根拠は、派遣法の第４条第１項第３号に謳ってある「政令で定める業務」（その業務の実施の適性を確保するためには業として行う労働者派遣により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務）です。ちなみに、政令（労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令）の第２条に派遣禁止の対象となる医療関係業務が挙げてあります。
教科書の９３ページ
教科書の９３ページに、「昭３８．６．１８ Ｙ地裁判」、「昭３６．５．２２ Ｓ高裁判」とありますが、判例を引用する場合は、出典を明確に示しなさい。出典を示すのは当然のルールですよ。佐藤乙一氏は、「当然のルール」も知らずに教科書の執筆をしているのですか。
教科書の９５ページ
教科書の９５ページに、「肉体的（禁錮、懲役等）にその責任を果たさせる。」とありますが、懲役・禁錮・拘留は自由を剥奪する自由刑であって、手足の切断や鞭打ちなどの身体刑ではありません。佐藤乙一氏は「肉体的」と書いていますが、「肉体的」と書いてしまうと「身体刑」を連想させてしまうので、「肉体的」という記述は不適切です。関係法規の教科書は、法学を専門としない技師学生のための教科書ですから、基本に徹して正確な記述をするべきです。佐藤乙一氏は、法学の知識が乏しいわけですから、知ったかぶりをして、トンチンカンなことを教科書に書かないで下さい。
教科書の９５ページに、「民法第709条 故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス」という改正前の古い条文が載っていますが、現行の民法第709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」です。
教科書の９５ページに、「民法第415条 債務者カ其債務ノ本旨ニ従ヒタル履行ヲ為ササルトキハ債権者ハソノ損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得．債務者ノ責ニ帰スヘキ事由ニ因リテ履行ヲ為スコト能ハサルニ至リタルトキ亦同シ」という改正前の古い条文が載っていますが、現行の民法第415条は「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。」です。
平成16年の民法改正（施行は平成17年）で第709条や第415条の条文は文語体から口語体（現代語）に変わりました。つまり、７年も前に改正されているのに、『関係法規』の教科書には、いまだに改正前の古い条文が載っているのです。
関係法規の教科書の著者略歴のページを見ると、2006年（平成18年）に第３版、2009年（平成21年）に第４版が発行されているので、新しい条文に書き換えるチャンスが２回はあったはずです。それなのに、いまだに古い文語体の条文が載っているなんて、恥ずかしいではありませんか。怠慢にもほどがありますよ。
教科書の９６ページ
教科書の９６ページに、「健康であれば法令の定める範囲で自由に行動できる自由権がある。」とありますが、病人やケガ人であっても自由権を有してますよ。佐藤乙一氏は、「自由権を有しているのは健康な人だけで、不健康な人には自由権がない」と思っているのでしょうか。
教科書の９６ページに、「民法には因リテという用語があり」とありますが、平成16年の民法改正（施行は平成17年）で、第709条や第415条の条文は文語体から口語体（現代語）に変わりました。つまり、７年前の改正で「因リテ」は「よって」に書き換えられていますよ。佐藤乙一さんは、本当にダメですね。
技師学生に関係法規を教えている先生方は、間違いだらけの教科書を学生に買わせるつもりですか？
ー つづく ー
ところで、医歯薬出版さんは、間違いだらけの教科書を今年も技師学生に販売するのでしょうか？
医歯薬出版さんは間違いだらけの教科書を
今年も技師学生に販売するのですか？
教科書の１ページ
１ページに、「道徳と法律は不離不即のものとなっている」とありますが、現代においては、道徳と法律は峻別されています。大昔は、法と宗教、法と道徳の区別がなかったわけですが、17世紀あるいは18世紀ぐらいから法と道徳を区別する学者が現れだし、現代においては（少なくとも英米法や大陸法の法圏に属する国においては）、法と道徳は峻別されています。
もっとも、「それ自体悪 mala in se 」とされる自然犯は「道徳に反する行為」と考えることもできますが、「禁じられた悪 mala prohibita 」とされる法定犯は道徳とは無関係です。したがって、「道徳と法律は不離不即のものとなっている」と言い切ってしまうのは不適切です。
１ページに、「日本国憲法は、わが国の最高規範であって、〜」とありますが、「最高規範」ではなく「最高法規」とすべきでしょう。
＜参考条文＞
◎ 日本国憲法 第９８条１項
この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
１ページに、「日本国憲法は〜基本組織法である〜」とありますが、「基本組織法」ではなく「国の基本法」と言うべきです。確かに、憲法には組織法的な側面もありますが、憲法の根本的な役割は国家権力に歯止めをかけて国民の人権を保障することです。つまり、単なる組織法でもなければ基本組織法でもないのです。
１ページに、「法令に効力を与えるのも、これまた憲法である。」とありますが、法令が効力（強制力）を有するのは国家権力の裏付けがあるからであって、その権力が暴走しないように歯止めをかけるのが憲法の根本的な役割りです。日本の法体系は憲法を頂点とするピラミッド型であり、下位の法令は憲法の範囲内で存在しているわけですが、憲法が下位の法令に効力を与えているわけではありません。憲法が下位の法令に与えているのは憲法的正当性であると考えられます。
１ページに、「そして第10章では本法が日本国の最高法規である旨を明確にし、現在から将来に向けて侵すことのできない永久の権利であると定めている。」とありますが、「侵すことのできない永久の権利」というのは「基本的人権」のことであって、最高法規たる憲法が「侵すことのできない永久の権利」というわけではありません。
１ページに、「〜を最終的に判断するのは最高裁判所であって、違憲法令審査権のあることも定めている。」とありますが、違憲審査の対象は法令に限らず、規則や処分も違憲審査の対象になるので、「違憲法令審査権」という記述は不適切です。法律（特に憲法学）の専門書を見ると、「違憲審査権」と書いてあるのが普通です。ところで、有斐閣のポケット六法を見ると「法令審査権と最高裁判所」という見出しがついていますが、この見出しは不適切です。ちなみに、三省堂の新六法（2004年版）には「法令等の合憲性審査権」という見出しがついています。有斐閣よりは三省堂の見出しのほうがいいと思います。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 違憲審査の対象は？
Ａ ： 憲法第81条は違憲審査の対象として「一切の法律、命令、規則又は処分」を挙げていますが、これは例示であって、81条に明記されていない国家行為であっても違憲審査の対象になると解されています。では、条例はどうかというと、条例も当然、違憲審査の対象になると解されています。
『関係法規』の著者である佐藤乙一氏は憲法について色々と述べていますが、肝心なこと（すなわち憲法の意義）については一言も述べていません。教科書のなかで憲法について語るのであれば、ヘンテコリンなことや意味のないことを長々と書くのではなく、憲法の意義（目的）について書くべきです。
それにしても、最初の１ページだけでツッコミどころが満載の教科書ですね。こんなにヒドイ教科書というのは前代未聞です。ここまでくると著者だけの問題ではなく、こういう教科書を発行し続けている出版社（医歯薬出版）の編集体制も問いたくなります。さらに言うと、こういう教科書を平気で使っている関係法規の教員にも問題があると言うべきでしょう。
医歯薬出版は、医学書に関しては非常に高いノウハウを持っていると思うのですが、関係法規の分野に関しては、ほとんどノウハウを持っていないのでしょうね。
医歯薬出版が医学書を専門にしているように、法学書を専門にしている出版社もありますので、関係法規の教科書は、法学書を専門にしている出版社にまかせたほうがいいと思います。
教科書の２ページ
天皇に法律の裁可権はありません
２ページに、「法律は〜天皇の裁可を得て公布されるもので〜」とありますが、天皇が法律を裁可したのは大日本帝国憲法（いわゆる明治憲法）時代の話です。
法律を公布することは天皇の国事行為ですが、国事行為は「内閣の助言と承認」に基づくものです。つまり、国事行為である「法律の公布」は、天皇が内閣の助言と承認に基づいて行うものであって、天皇の裁可を得て行うものではありません。
＜参考条文＞
◎ 大日本帝国憲法 第６条
天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス
◎ 日本国憲法 第４条１項
天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
21世紀に入って10年以上が過ぎたというのに、いまだに「天皇の裁可を得て公布」だなんて、時代遅れも甚だしいと思いませんか。
ちなみに、現行憲法（日本国憲法）の第４条１項に「天皇は〜国政に関する権能を有しない。」と明記してあるので、「天皇の裁可を得て公布される」というのは間違いです。
医歯薬出版さん、これはヒドイ間違いだよ。
２ページに、「法律案は〜衆議院および参議院の議決を経て公布、施行されなければ効力を生じない。」とありますが、「効力を生じない」という書き方をしてしまうと、「法律は公布・施行されなければ効力がない」という誤った印象を技師学生に与えてしまう恐れがあります。法律案は憲法に特別の規定がある場合を除いては、両議院で可決したときに法律となるので、法律案が両議院で可決されれば、公布・施行という手続きの前であっても法律としては有効に成立しているのです。ただ、公布・施行という手続きを経なければ、法律の規定を機能させることができないのです。つまり、「効力はあるけど機能させることができない」ということです。これをクルマにたとえると、エンジンはかかっているけど、ギアがニュートラル・ポジションなので、アクセルを踏んでもクルマを動かすことができない、という状態です。
＜参考条文＞
◎ 日本国憲法 第５９条１項
法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
２ページに、「予算案の可決方法は異なり、衆議院で先議し、参議院に回って30日以内に議決しないときは衆議院の議決が国会の議決となる。」とありますが、この説明は中途ハンパですね。それにしても、この教科書の執筆者は、憲法について重要なことは書かずに、予算案の議決のような細かいことは書くんですね。しかも中途ハンパに・・・ちなみに、予算案は衆議院で先議し、衆議院で可決した予算案の送付を受けた参議院が衆議院と異なった議決をした場合は両議院の協議会を開くことになっていますが、それでも意見が一致しないときや、参議院が衆議院の可決した予算案を受け取ったのち、国会休会中の期間を除いて30日以内に議決しないときは、衆議院の議決が国会の議決になります。
※ 成立前の予算（すなわち予算案）のことも憲法では予算といっていますが、理解しやすくするために、成立前の予算には「案」をつけて「予算案」としています。
＜参考条文＞
◎ 日本国憲法 第６０条
１項 ： 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
２項 ： 予算について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 衆議院で可決した予算案の送付を受けた参議院が議決しないうちに衆議院が解散された場合、予算はどうなるの？
Ａ ： 衆議院が解散された場合、参議院も同時に閉会となるので予算は成立しません。ただし、参議院の緊急集会で予算を成立させることは可能です。
２ページに、「命令は内閣府や厚生労働省等各行政機関の長によって制定されるものである。」とありますが、命令（政令・内閣府令・省令）のうち政令は内閣が発する命令（閣議で決定された命令）であって、「内閣府や厚生労働省等各行政機関の長によって制定されるもの」ではありません。ちなみに、内閣府令は内閣府の長である内閣総理大臣が発する命令であり、省令は各省大臣が発する命令です。つまり、「命令は内閣府や厚生労働省等各行政機関の長によって制定されるものである。」という記述は、命令（政令・内閣府令・省令）のなかの内閣府令と省令に関する記述に過ぎないのです。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 内閣府令と政令とでは、どちらが上位の命令でしょうか。
Ａ ： 内閣府の主任大臣としての内閣総理大臣が発する内閣府令より、内閣が発する政令のほうが上です。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 内閣府令と省令とでは、どちらが上位の命令でしょうか。
Ａ ： 内閣府令と省令は同格です。内閣府令も省令も当該行政機関の長である主任の大臣が発する命令なので、同格なのです。
２ページに、「施行令は別名政令ともいい〜」とありますが、これは逆です。すなわち、政令の場合は、それが政令であることを示すために「〜施行令」や「〜に関する政令」という題名を付けるのです。ですから、施行令のことを別名「政令」というのではなく、政令に「〜施行令」や「〜に関する政令」という題名を付けるのです。
それにしても、『関係法規』の著者は、いったい何を考えているのでしょうか。この教科書を読むと、読んでいる私のほうが恥ずかしくなってきます。医歯薬出版は、「技師学生の教科書は、この程度で十分だ」と思っているのでしょうか。もしそうだとすれば、臨床検査技師をナメてますね。ホント腹が立ちますよ。この教科書は、もうメチャクチャです。明らかな欠陥商品ですよ。欠陥商品を技師学生に販売するんですか？医歯薬出版の企業倫理が問われているような気がします。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 「〜施行令」と「〜に関する政令」は、どう違うの？
Ａ ： その政令が委任命令の場合は「〜に関する政令」、執行命令の場合は「〜施行令」という題名が付けられます。執行命令は、上位の法令を執行するための具体的細目事項を定めた命令であって、新たな権利義務の設定を伴うものではないので、法律の授権の程度は一般的・抽象的でよいのです。一方、委任命令は国民の権利義務を新たに定めるものなので、個別的・具体的な法律の授権が必要です。
２ページに、「法律に附属しているものは附属政令とも呼ばれ〜」とありますが、現行の憲法下では、法律に附属していない独立した命令は認められていません。つまり、政令はすべて法律に基づく命令なのです。ですから、わざわざ「附属政令」なんて言い方はしませんよ。教科書に「法律に附属しているものは附属政令とも呼ばれ〜」なんて書いてしまうと、法律に基づかない独立命令も存在しているような印象を技師学生に与えてしまう恐れがあります。ちなみに、旧憲法下（明治憲法下）では法律に基づかない独立命令が認められていましたが、現行の憲法下では、先に述べたように、法律に基づかない独立命令は否定されています。
２ページに、「施行規則は別名を府令、省令ともいい〜府および各省庁の長が制定する命令である」とありますが、省令を発するのは「各省大臣」ですので、「各省庁の長」という記述は誤りです。
『関係法規』の著者は、「庁の長」も省令を発することができると思っているのでしょうか。
＜参考条文＞
◎ 国家行政組織法 第１２条１項
各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれの機関の命令として省令を発することができる。
２ページに、「法令とは、法律と命令（政令、省令）をまとめた用語である。」とありますが、「関係法令」とか「法令順守」とかいう場合の法令には条例や各種規則も含まれます。すなわち、法令とは「法律と命令（政令、省令）をまとめた用語」ではなく、一定の手続きと形式とに従って制定された成文法を総称して法令と呼んでいるのです。
２ページに、「憲法第94条は、これらの団体が〜条例を定めることができることを定めており、その地方議会が制定する。」とありますが、正確に言うと、条例を制定するのは「地方議会」ではなく「地方公共団体」です。
＜参考条文＞
◎ 憲法 第９４条
地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
◎ 地方自治法 第１４条１項
普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる。
２ページに、「法律の範囲内で条例を定めることができる〜」とありますが、地方自治法には「法令に違反しない限りにおいて」と謳ってあります。つまり、憲法第９４条には「法律の範囲内で」とあり、地方自治法第１４条１項には「法令に違反しない限りにおいて」と謳ってあるのです。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 条例の所管事項（条例を定め得る範囲）は？
Ａ ： 法律の範囲内、すなわち地方自治法第２条第２項に挙げてある事務の範囲内であれば、法令に違反しない限りにおいて、条例を制定することができます。
２ページに、「告示 ： 〜正式に公告することをいう。」とありますが、公示をする必要がある場合に告示という方法（形式）がとられるのであって、「正式に公告することを告示という」のではありません。ちなみに、行政庁舎の掲示板を見ると、告示がいっぱい張ってあります。
＜参考条文＞
◎ 内閣府設置法 第７条第５項
内閣総理大臣は、内閣府の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。
◎ 国家行政組織法 第１４条第１項
各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。
それにしても、この教科書は間違いが多いですね。
この教科書の著者は、法学の知識が欠けていますよ。
この教科書の間違いに気づかず、この教科書を授業で使っている関係法規の教員も法学の知識が欠けていると思います。
こんなに間違いだらけの教科書を平気で販売している医歯薬出版は、いったい何を考えているのでしょうか。
教科書の３ページ
３ページに、「厳密に解釈すれば通達と通知の意味は異なるとされている。」とありますが、厳密に解釈しなくても通達と通知には根本的な違いがあります。すなわち、意味が異なると言うよりは、根本的な違いがあるのです。
＜参考条文＞
◎ 内閣府設置法 第７条第６項
内閣総理大臣は、内閣府の所掌事務について、命令又は示達するため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる。
◎ 国家行政組織法 第１４条第２項
各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令又は示達するため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 訓令とは？
Ａ ： 同一の行政組織の中で、上級機関から下級機関に文書又は口頭で発せられる命令や指示を訓令という。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 通達とは？
Ａ ： 同一の行政組織の中で、上級機関が下級機関に法令の解釈や運用の指針を文書で示したものを通達という。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 通知とは？
Ａ ： 昔は、厚生省（現在の厚生労働省）の課長や局長が都道府県知事に対して通達を出していたが、通達というのは「 同一の行政組織の中で、上級機関が下級機関に対して出すもの」なので、中央官庁の課長や局長が都道府県知事に対して通達を出してしまうと、都道府県知事よりも中央官庁の課長や局長のほうが上位者ということになってしまう。そこで、近年は通達という言葉のかわりに「通知」という言葉が多く使用されるようになった。通知というのは、いわゆる「お知らせ」である。もっとも、組織上の指揮命令権に基づいて上級の行政機関が下級の行政機関に法令の解釈や運用の指針を文書で示す場合は、現在でも「通達」という形式がとられている。
教科書の４ページ
教科書の４ページに「職業選択自由思想が明治以降帝国憲法に盛り込まれ〜」とありますが、帝国憲法（大日本帝国憲法）に職業選択の自由は盛り込まれていません。もっとも、「居住及移転ノ自由」は謳ってあるので、これによって事実上「職業選択の自由」が可能になりましたが、帝国憲法に職業選択の自由が「盛り込まれた」わけではないのです。
＜参考条文＞
◎ 大日本帝国憲法 第２２条
日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ居住及移転ノ自由ヲ有ス
「なんびと」 ではなく 「なんぴと」
４ページに憲法第22条「何人も〜を有する」とあり、その「何人」に「なんびと」という読み仮名が振ってありますが、「なんびと」ではなく「なんぴと」と読むのが普通です。「なんびと」と読んでも間違いではありませんが、憲法や法律の条文に「何人も〜」とある場合は「なんぴと」と読むのが普通です。せっかく読み仮名を振るのであれば、「なんぴと」のほうがいいですよ。
教科書の４ページに、「有名な判例がある。その一部を引用する。」とあり、「昭和36年12月3日、Ｔ高裁判」と称する判例があげてありますが、私が調べた限りでは、「昭和36年12月3日、Ｔ高裁判」に該当する判例は見つかりませんでした。『関係法規』の著者は、「昭和36年12月3日、Ｔ高裁判」の出典を明確にすべきです。ちなみに、『関係法規』の著者は「有名な判例」と述べていますが、有名な判例であれば、医療訴訟の判例集に載っているはずです。しかし、「昭和36年12月3日、Ｔ高裁判」に該当する判例は、医療訴訟の判例集にも最高裁のホームページからアクセスできる裁判例にも載っていないのです。
『関係法規』の著者に抗議します。
判例を引用するのであれば、
その出典を明確に示しなさい。
教科書の１０ページ
教科書の１０ページに、「検体検査業務独占不要論が相次ぎ〜」とありますが、「検体検査業務独占不要論」というのを太字にして強調する必要はないでしょう。佐藤乙一氏は、検体検査業務独占不要論を技師学生の頭に刷り込もうとしているのですか。こういう「ウソかホントか分からないような昔話」を教科書に載せる必要はないし、ましてや太字にして強調する必要は全くないですよ。佐藤乙一氏は、いったい何を狙っているのでしょうか。
教科書の１４ページ
教科書の１４ページに、「本条は、たんにこの法律の目的を定めたものにすぎないので、直接、法律としての効果はないとされているが〜」とありますが、この説明は非常にマズイです。臨技法の第１条は臨床検査技師の権利・義務を直接的に定めた規定ではないので、佐藤乙一氏は「法律としての効果はない」と思っているのかもしれませんが、佐藤乙一氏も「全条文は第１条の精神に反して制定することはできず、この条文に拘束される。」と書いているように、第１条にも法律としての効果はあるのです。そもそも、国会で可決成立し、公布・施行という手続きを経た臨技法の条文（第１条）に対して「法律としての効果はないとされている」とは、いったいぜんたい、どういう意味ですか。「法律としての効果はない」という不適切な説明は、国権の最高機関であり、唯一の立法機関である国会に対して失礼ですよ。唖然として「あいた口がふさがらない」とは、このことだ。
教科書の１４ページに、「臨技制度の４本柱〜�０綮佞泙燭六�科医師の指示を受ける」とありますが、正確に言うと「〜指示の下に」であって「〜指示を受ける」ではありません。すなわち、診療放射線技師の場合は「〜指示を受け」ですが、臨技の場合は「〜指示の下に」なんです。臨技の場合は「指示の下に」だから、医師から「指示を受け」なくても、医師の「指示の下に」あればいいのでしょうね。たとえば、検査センターの臨技は医師の「指示を受け」ているわけではありませんが、医師の「指示の下に」あるので適法なんでしょう。ちなみに、採血は「医師又は歯科医師の具体的な指示を受けて」ですから診療放射線技師と同じです。条文を読むと、「指示を受け」と「指示の下に」をうまく使い分けていますね。ところで、ブランチラボは請負契約に基づくものですから、ブランチで働く検査センターの技師は「指示の下に」であって「指示を受け」ではないですね。仮に「指示を受け」だとすると、いわゆる偽装請負になってしまいます。こうしてみると、臨技法の条文を作った人は、うまく使い分けていますね。さすがです。
教科書の１４ページに、「採血行為は〜本来業務ではない」とありますが、関係法令（臨技法、臨技法施行令、臨技法施行規則）には、そのような規定はありません。『関係法規』の著者である佐藤乙一氏は、いったい何を根拠にして「採血行為は〜本来業務ではない」と言っているのでしょうか。おそらく佐藤乙一氏は、昭和四五年一二月三日の通達（各都道府県医務主管部局長あて厚生省医務局医事課長通達）を根拠にして「採血行為は〜本来業務ではない」と言っているのでしょう。しかし、通達というのは法規ではないのです。「通達は法規ではない」ということは「通達には一般国民に対する法的拘束力はない」ということです。通達は法規ではないのに、佐藤乙一氏は通達を法規だと思い込んで、いまだに「採血行為は〜本来業務ではない」と言い切っているのでしょう。昭和45年に出された通達を根拠にして、いまだに「採血行為は〜本来業務ではない」と言ってるなんて・・・
＜通達は法規ではありません＞
法規ではない通達を根拠にして、臨技の
権利・義務を規定することはできません。
教科書の１５ページ
教科書の１５ページに、「医師の指示内容はこの法律で定めている臨技業務範囲に限定され、この範囲を超えての指示はできないし、仮に指示されても効力はないものと解される。」とありますが、関係法令（臨技法、臨技法施行令、臨技法施行規則）には、そのような規定はありません。佐藤乙一氏は、いったい何を根拠にして「医師の指示内容はこの法律で定めている臨技業務範囲に限定」されるとか「この範囲を超えての指示はできないし、仮に指示されても効力はない」などと無責任なことを言っているのでしょうか。
医師や臨技の業務に制限を加えるためには法令の根拠が必要です。法令の根拠がないのに佐藤乙一氏の勝手な解釈で医師や臨技の業務に制限を加えることはできません。
教科書の１５ページに、「指示は指導監督より強いと解釈され〜」とありますが、「指示」と「指導監督」は、意味に本質的な違いがあるので、どっちが強いとか弱いとか、そういう類（たぐい）のものではないはずです。
教科書の１５ページに、「改正前の臨衛技法には歯科医師の指示は入っていなかった。」とありますが、改正前の条文では、臨技が「医師の指導監督の下に」あれば、歯科医師の指示で検体検査をしても差し支えなかったはずです。なぜなら、「医師の指導監督の下に」という文言は、歯科医師の指示を禁じているわけではないので、臨技が「医師の指導監督の下に」あれば、歯科医師が臨技に検体検査の指示を出しても構わないからです。
教科書の１５ページに、「検体検査は〜医行為とは認められず〜開放業務であるとされている（昭和４５．５ 衆議院社会労働委員会議事録等）」とありますが、私が調べたところ、昭和45年5月の衆議院社会労働委員会議事録に「検体検査は〜医行為とは認められず」という記述はありませんでした。佐藤乙一氏は、昔から検体検査は医行為ではないということを盛んに主張されていますが、佐藤乙一氏が根拠としてあげた衆議院社会労働委員会議事録には、そのような記述はありませんよ。
『検体検査は医行為ではないので、検体検査を業務独占にすることはできない』という話を医療界に広めたのは、日臨技の名誉会員でもある佐藤乙一氏の業績でしょうかね？
教科書の１５ページに、「病理組織の診断は医師の独占業務であって、臨技の行える範囲は標本作製までである（平元．１２．２８．医事発第９０号）」とありますが、「平元．１２．２８．医事発第９０号」には、「臨技の行える範囲は標本作製までである」という記述はありません。そもそも、「平元．１２．２８．医事発第９０号」というのは、「病理学的診断を行うことは〜医行為であると考えるがどうか」という日本病理学会からの照会に、厚生省健康政策局医事課長が「貴見のとおりである」と回答したものであって、「臨技の行える範囲は標本作製までである」という記述は一切ありません。佐藤乙一氏は、いったい何を根拠にして「臨技の行える範囲は標本作製までである」というデタラメなことを述べているのでしょうか。ちなみに、「貴見のとおりである」という回答の「貴見」には「病理学的所見を客観的に記述することは医行為ではない」という日本病理学会の見解も入っているので、「異型細胞が見られる」とか「好中球が多い」といった所見を臨床検査技師が述べるのは差し支えない（構わない）ということになります。実際、医療現場では病理検査を専門とする技師が医師とディスカッションしたり、検査技師が病理のカンファレンスに参加したりしているので、「臨技の行える範囲は標本作製までである」という佐藤乙一氏の見解は、臨床検査技師の足を引っ張る有害な間違いですよ。
＜佐藤乙一氏へ＞
あなたのトンチンカンな教科書が臨床検査技師の足を引っ張っているのですよ。
教科書の１６ページ
教科書の１６ページに、「検体検査は臨技の名称を使用しなければ誰でも行いうる開放業務となっている〜」とありますが、この記述は非常にマズイですね。検体検査が解放業務とされている理由（表向きの理由）は、「電子工学をいろいろやられた専門家の方でありますとか、あるいは生化学等の専門家でございますとか、あるいは物理学等の専門家でございますとか、そういう方々がやはり医療の中の検査にいろいろと入ってきていただく」（昭和45年5月13日 参議院 - 社会労働委員会）ためであって、「臨技の名称を使用しなければ誰でも行いうる」検査だからという理由で開放業務になっているのではありません。佐藤乙一氏の記述を読むと、「検体検査は、臨技の名称を使用しなければ誰でも行いうる検査だから開放業務となっている」という意味に誤解されてしまいます。佐藤乙一氏は、「検体検査は誰でも行いうる検査」だと思っているのでしょうか。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 検体検査は誰が行ってもいいの？
Ａ ： 佐藤乙一氏は関係法規の教科書の中で「検体検査は臨技の名称を使用しなければ誰でも行いうる開放業務となっている」と述べていますが、社会通念上、つまり法律以前の常識問題として、「誰でも行いうる開放業務」という考え方は間違っています。つまり、開放業務だからといって「臨技の名称を使用しなければ誰でも行いうる」というわけではなく、一定の知識と技術が要求されるのは当然のことです。これは法律以前の常識レベルの問題ですよ。
「検体検査は誰でも行いうる検査だから開放業務となっている」という誤った考えを医療界に普及させたのは、佐藤乙一氏ですね。
教科書の１６ページに、「保健医療関係者の免許には、２つの性格があるという。��特許のような意味があるとする説もある。」とありますが、そのような説は存在しません。佐藤乙一氏は、いったい何を根拠に「特許のような意味がある」というトンチンカンな説を述べているのでしょうか。医師免許に代表される医療系免許の法的性質は法律行為的行政行為の「許可」であると解されており、佐藤乙一氏が述べているような「特許」という説はありません。
＜佐藤乙一氏へ＞
デタラメなことを書かないで下さい。
＜教科書の１８ページ＞
教科書の１８ページに、「その資格を公式に証明するために免許を与え、その証拠として、免許証を交付する。」とありますが、臨技免許の法的性質は、法律行為的行政行為の「許可」であると解されているので、「証明するために免許を与え」という記述はおかしいです。
＜教科書の１９ページ＞
教科書の１９ページに、「申請書の提出先は〜保健所長であるが〜ここは知事の代行機関となっている。」とありますが、「知事の代行機関」という書き方をすると、保健所長は免許申請に関して知事から権限を委任されているのか？それとも権限の代理なのか？という疑問がわいてくるので、「知事の代行機関」という難しい書き方をせずに、「住所地の保健所が免許申請の窓口になっている」という説明でいいと思いますよ。
教科書の１９ページに、「登録免許税法別表第１−２３」とありますが、「別表第１−２３」というのは間違いで、正しくは「別表第１−３２」です。
＜教科書の３０ページ＞
教科書の３０ページに、「法定業務が例外的に行えるようになったこと。」とありますが、臨技法の第２条に定めてある法定業務は、佐藤乙一氏の言葉を借りれば「臨技の本来業務」ですよ。佐藤乙一氏も教科書の１４ページで本来業務だと述べているではありませんか。いいですか、臨技法に定められた臨技の法定業務は臨技の本来業務であって特例業務ではありません。仮に、「例外的に行えるようになった」というのであれば、それは佐藤乙一氏がいう特例業務ということになりますよね。しかし、法定業務は、佐藤乙一氏も言うように臨技の本来業務であって、特例業務ではありません。とにかく、佐藤乙一氏の説明は支離滅裂で整合性が欠けていますね。
＜佐藤乙一さんへ＞
あなたの説明は支離滅裂です。
＜教科書の３１ページ＞
教科書の３１ページに、「直接人体に危害を及ぼすおそれのない範囲の業務は必ずしも医師が行わなくてもよいとされ〜これを診療の補助（行為）という。」とありますが、臨技が「診療の補助」として行っている生理学的検査と採血は「直接人体に危害を及ぼすおそれ」があるから業務制限がかけられているのでしょう。佐藤乙一氏は、生理学的検査と採血は「直接人体に危害を及ぼすおそれ」がないと思っているのでしょうか。あいかわらず、佐藤乙一氏の説明はデタラメですね。
＜教科書の３２ページ＞
臨技は専門職なのか？ 「専門職」論争
教科書の３２ページに、「診療の補助業務は看護師等の業務独占とはなっているものの、専門的な診療の補助業務すべてを行うことは事実上不可能である。そこで臨技等の専門職が制度化され〜」と書いてありますので、佐藤乙一氏は、「臨技は補助業務の専門職」だと考えているのですね。これまで数十年にわたって「専門職」論争が繰り返されてきましたが、結局、専門職は専門職でも補助業務の専門職ということですか。でも、補助はあくまでも補助ですよね。たとえば、看護助手や検査助手のことを「助手の専門職」だとは言いませんよね。佐藤乙一氏は「臨技は補助業務の専門職」だと述べていますが、これは「看護助手は助手業務の専門職」だと言っているのと同じことですよ。職業に貴賤はないので、助手さんのことをアレコレ言うつもりはありませんが、専門職という観点で言えば、助手業務や補助業務のことを専門職とは言いませんよね。ですから、「臨技は補助業務の専門職」という表現は、まさにコメディー（喜劇） comedy ですよ。佐藤乙一氏が「臨技は補助業務の専門職」という笑い話を教科書に書くから、われわれはコメディカルと呼ばれているのですね。
＜教科書の３４ページ＞
教科書の３４ページに、「大２．１２．３ 大二（れ）1731号 大審院判」とあるのは、「大判大正２．１２．１８」のことですね。この判決が出たのは「大正２年１２月３日」ではなく「大正２年１２月１８日」ですよ。ちなみに、佐藤乙一氏は「この判決は現在もなお効力があるという。」と述べていますが、「効力があるという」というのは、どういう効力があるというのでしょうか。
教科書の３４ページに、「臨技や看護師が本来医師みずからが行うべき医行為を、診療の補助と位置づけて医師の指示などの下に行えるようになったのも、その根拠はこの判決に基づいている〜」とありますが、「この判決」というのは佐藤乙一氏が前述している「大２．１２．３． 大二（れ）1731号 大審院判」（正しくは「大判大正２．１２．１８」）ですよね。この判決は、無資格者を医師の手足として使う「医師の手足論」に関する判例であって、臨技や看護師などの有資格者が「診療の補助」として行う医行為に関する判例ではありません。したがって、佐藤乙一氏の説明は不適切です。そもそも日本は制定法の国であって、判例法の国ではありませんから、大審院の判決が根拠だとする佐藤乙一氏の説明は不適切です。佐藤乙一氏だって、教科書の３ページで「業務の独占、権利、義務、制裁、刑罰など重要なことは、法律でなければ定めることはできない。」と述べているではありませんか。ですから、「診療の補助」の根拠は法律です。ちなみに、臨技の場合は臨技法が「診療の補助」の根拠になります。日臨技の名誉会長でもある佐藤乙一氏は、臨技は医師の手足だと思っているのでしょうか。それとも臨技を無資格者と同様に医師の手足にしようと考えているのでしょうか。佐藤乙一氏は、臨技を貶めるために、臨技にとって不利になるようなデタラメを教科書に書いているのでしょうか。佐藤乙一氏に「日臨技の名誉会長」としての自覚がないのであれば、名誉会長を自ら辞退すべきです。日臨技の名誉会長が臨床検査技師の足を引っ張っているなんて、裏切り行為ですよ。
＜教科書の３７ページ＞
教科書の３７ページに、「１，３，４，６，９、１３にはそれぞれ（ ）内に実施上の除外業務があり〜これらの行為を業として行うことは許されない。」とありますが、（ ）内に書いてある「体表誘導によるものに限る。」とか「頭皮誘導によるものに限る。」というのは、「体表誘導による心電図検査に限る」、「頭皮誘導による脳波検査に限る」という意味ですから除外業務ではなく、臨技が医師または歯科医師の指示の下に実施することができる業務ですよ。ちなみに、「〜を除く」という場合の「〜を」は除外業務になります。
教科書の３７ページに、「１，３，４，６，９、１３にはそれぞれ（ ）内に実施上の除外業務があり〜これらの業務は臨技の行う診療の補助行為の範囲を超え、高度の医療行為に該当するものと解されるのでこれらの行為を業として行うことは許されない。」とありますが、佐藤乙一氏は、臨技には許されていない散瞳薬を投与して行う眼底写真検査は「高度の医療行為に該当する」と考えているのですね。そうすると、散瞳薬を投与することができる視能訓練士は臨技よりも高度の医療行為をすることができる、ということになりますよ。そもそも佐藤乙一氏は教科書の３３ページで「高度の医療行為（絶対的医行為）を業として行わせたときは医師法に違反〜」と述べているではありませんか。佐藤乙一氏の勝手な判断で「高度の医療行為に該当する」と決めつけないで下さい。あなたのデタラメな判断で、臨床検査技師は迷惑しているのですよ。
佐藤乙一氏が執筆した関係法規の教科書には法的な間違いも多いけど、日本語の間違いも多いですよ。
教科書の３７ページに、「相手が患者の場合には、実施時に言語聴覚士同様、主治医の指導を受けて行うものと解される（平１０．９．１．健政発第９７０号）」とありますが、佐藤乙一氏が根拠としてあげている「平１０．９．１．健政発第９７０号」というのは、「言語聴覚士法の施行について」という表題の通知（各都道府県知事あて厚生省健康政策局長通知）ですよ。そもそも通知というのは法規ではないですし、その上この通知は言語聴覚士に関する通知ですから、はたして臨技法を解釈する上での根拠になるのでしょうか。話を本題に戻すと、ここで問題になっている千ヘルツと四千ヘルツの聴力検査は、労働安全衛生法に基づく健康診断の選別聴力検査で使うので、あえて「診療の補助」から外してあるんですよ。たとえば、メガネ屋さんの店員がお客さんに合ったメガネを作るために視力検査をしたり、学校の教員が児童生徒の健康診断でスクリーニング的な視力検査をしたりするのと同様に、医療系の国家資格を有しない健診スタッフであっても、選別聴力検査に関する講習を受けた者は、健診で千ヘルツと四千ヘルツの選別聴力検査をすることができるのです。それなのに佐藤乙一氏は第３版の教科書で千ヘルツと四千ヘルツの聴力検査について「これらの業務は臨技の行う診療の補助行為を超え、高度の医療行為等に該当するものと解されるので、これらの行為を業として行うことは許されない。」と書いていましたね。私はこれを読んでビックリ仰天したので、医歯薬出版に抗議の電話をしましたよ。そうしたら、第４版では訂正してくれましたね。それにしても佐藤乙一氏は、医療系の国家資格を有しない健診スタッフであっても、一定の講習を受ければすることができる千ヘルツと四千ヘルツの選別聴力検査について「これらの業務は臨技の行う診療の補助行為を超え、高度の医療行為等に該当するものと解される〜」なんてトンチンカンなことを書いていたんですからね。ところで、この間違いは重大な間違いだと思うのですが、医歯薬出版さんは発行元の会社として、学校関係者にお詫びと訂正の文章を出したのでしょうか。もし、「知らん顔」して、こっそり訂正していたとしたら、医歯薬出版の企業モラルを疑いますよ。
＜教科書の３９ページ＞
教科書の３９ページに、「１回の採血量は２０ml以内を原則とすることが通達で示されている。」とありますが、この通達は、平成20年1月17日付の医政医発第0117001号で事実上、撤回されていますよね。
そもそも通達は法規ではありませんから、通達を根拠にして臨技を罰することはできません。つまり、「１回の採血量は２０ml以内を原則とする」という通達が撤回されずに残っていたとしても、医師の具体的な指示があれば、臨技が２０mlを超える採血をしても構わないのです。
臨技の多くは、「１回の採血量は２０ml以内を原則とする」という通達を法規だと思っていましたよね。昔は「２０ml以内」というのが国試にも出ていたぐらいですから・・・
法規ではない通達を法規にしてしまったのは、佐藤乙一氏の業績でしょう。
教科書の８９ページ
教科書の８９ページに、「労働者の派遣は原則自由に改められた。」とありますが、「原則自由」という表現は誤解をうむ恐れがあるので、教科書の記述としては不適切です。労働者派遣の対象業務が、ポジティブ・リスト方式からネガティブ・リスト方式に変更されたことを受けて、佐藤乙一氏のように「労働者の派遣は原則自由に改められた」という人がいますが、労働者派遣が禁止されている業務（ネガティブ・リスト）が存在する以上、「原則自由」という表現は不適切です。そもそも、労働者派遣という制度は、長い間「禁じ手（違法行為）」として封印されていたんですよ。つまり、本来は認めてはいけない制度なんです。認めてはいけない労働者派遣を認めた結果、どうなったか・・・ピンハネ（中間搾取）が横行して、ワーキングプアが増えましたね。つまり、労働者派遣法は典型的な悪法なんです。それにしても佐藤乙一氏は、「労働者の派遣は原則自由に改められた。」なんて、ひどいことを書いて平気なんでしょうか？ まぁ〜平気だから能天気（ノーテンキ）なことを書いているのでしょう。佐藤乙一さん、あなたはノーテンキですね。
教科書の８９ページに、「派遣禁止職種は港湾運送・建設・警備等であり〜」とありますが、肝心の「医療関係業務」が抜けていますよ。また、派遣法以外の法律で派遣が禁止されている業務もあるので、派遣が禁止されている業務は少なくありません。佐藤乙一さんは、派遣が禁止されている業務は「港湾運送・建設・警備等」だけだと思っているのでしょうか。
＜佐藤乙一さんへ＞
医療関係業務も原則 『派遣禁止』ですよ。
＜法学 Ｑ ＆ Ａ ＞
Ｑ ： 医療関係業務はネガティブ・リスト（派遣が禁止されている業務）に入っているの？
Ａ ： はい。医療関係業務はネガティブ・リストに入っているので、例外的に派遣が認められる場合を除き、原則として医療関係業務への派遣は禁止されています。根拠は、派遣法の第４条第１項第３号に謳ってある「政令で定める業務」（その業務の実施の適性を確保するためには業として行う労働者派遣により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務）です。ちなみに、政令（労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令）の第２条に派遣禁止の対象となる医療関係業務が挙げてあります。
教科書の９３ページ
教科書の９３ページに、「昭３８．６．１８ Ｙ地裁判」、「昭３６．５．２２ Ｓ高裁判」とありますが、判例を引用する場合は、出典を明確に示しなさい。出典を示すのは当然のルールですよ。佐藤乙一氏は、「当然のルール」も知らずに教科書の執筆をしているのですか。
教科書の９５ページ
教科書の９５ページに、「肉体的（禁錮、懲役等）にその責任を果たさせる。」とありますが、懲役・禁錮・拘留は自由を剥奪する自由刑であって、手足の切断や鞭打ちなどの身体刑ではありません。佐藤乙一氏は「肉体的」と書いていますが、「肉体的」と書いてしまうと「身体刑」を連想させてしまうので、「肉体的」という記述は不適切です。関係法規の教科書は、法学を専門としない技師学生のための教科書ですから、基本に徹して正確な記述をするべきです。佐藤乙一氏は、法学の知識が乏しいわけですから、知ったかぶりをして、トンチンカンなことを教科書に書かないで下さい。
教科書の９５ページに、「民法第709条 故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス」という改正前の古い条文が載っていますが、現行の民法第709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」です。
教科書の９５ページに、「民法第415条 債務者カ其債務ノ本旨ニ従ヒタル履行ヲ為ササルトキハ債権者ハソノ損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得．債務者ノ責ニ帰スヘキ事由ニ因リテ履行ヲ為スコト能ハサルニ至リタルトキ亦同シ」という改正前の古い条文が載っていますが、現行の民法第415条は「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。」です。
平成16年の民法改正（施行は平成17年）で第709条や第415条の条文は文語体から口語体（現代語）に変わりました。つまり、７年も前に改正されているのに、『関係法規』の教科書には、いまだに改正前の古い条文が載っているのです。
関係法規の教科書の著者略歴のページを見ると、2006年（平成18年）に第３版、2009年（平成21年）に第４版が発行されているので、新しい条文に書き換えるチャンスが２回はあったはずです。それなのに、いまだに古い文語体の条文が載っているなんて、恥ずかしいではありませんか。怠慢にもほどがありますよ。
教科書の９６ページ
教科書の９６ページに、「健康であれば法令の定める範囲で自由に行動できる自由権がある。」とありますが、病人やケガ人であっても自由権を有してますよ。佐藤乙一氏は、「自由権を有しているのは健康な人だけで、不健康な人には自由権がない」と思っているのでしょうか。
教科書の９６ページに、「民法には因リテという用語があり」とありますが、平成16年の民法改正（施行は平成17年）で、第709条や第415条の条文は文語体から口語体（現代語）に変わりました。つまり、７年前の改正で「因リテ」は「よって」に書き換えられていますよ。佐藤乙一さんは、本当にダメですね。
技師学生に関係法規を教えている先生方は、間違いだらけの教科書を学生に買わせるつもりですか？
ー つづく ー
この記事へのコメント
テーマとずれしまって申し訳ありません。
会長選の話題でコメントしたのですが、お目にとまるように、ここにも書かせていただきました。
以下、同じ文面です。
日臨技会員です。
重要な会長選を迎え悩んでいたところこのブログを見ました。特に、関係法規に関する知識と考察の深さには感銘を受けました。この見識をして高田氏を推薦するのであれば、その意味の重さを十分に考えねばならないと感じました。ひとつ『独立独歩の一人親方』さんの御意見をお聞かせください。共に医療の道を歩む看護師で組織する職能団体が公益法人を取得したことについて見解をお聞かせください。同じコメディカルとして『職能団体は職能団体らしく一般社団法人になるべきです。』という貴兄の考えと一致しなかったのは何故なんでしょうか？
よろしくお願いします。
会長選の話題でコメントしたのですが、お目にとまるように、ここにも書かせていただきました。
以下、同じ文面です。
日臨技会員です。
重要な会長選を迎え悩んでいたところこのブログを見ました。特に、関係法規に関する知識と考察の深さには感銘を受けました。この見識をして高田氏を推薦するのであれば、その意味の重さを十分に考えねばならないと感じました。ひとつ『独立独歩の一人親方』さんの御意見をお聞かせください。共に医療の道を歩む看護師で組織する職能団体が公益法人を取得したことについて見解をお聞かせください。同じコメディカルとして『職能団体は職能団体らしく一般社団法人になるべきです。』という貴兄の考えと一致しなかったのは何故なんでしょうか？
よろしくお願いします。
Posted by 末端の日臨技会員 at 2012年03月25日 21:06
コメントありがとうございます。
大変うれしく思っております。
＞共に医療の道を歩む看護師で組織する職能団体が公益法人を取得したことについて見解をお聞かせください。
看護協会のますますの御発展をお祈り申し上げます。
＞同じコメディカルとして『職能団体は職能団体らしく一般社団法人になるべきです。』という貴兄の考えと一致しなかったのは何故なんでしょうか？
上記の御質問は、看護協会にされたほうがよろしいかと存じます。
これからも、お気軽にコメントして下さいませ。よろしくお願い致します。
大変うれしく思っております。
＞共に医療の道を歩む看護師で組織する職能団体が公益法人を取得したことについて見解をお聞かせください。
看護協会のますますの御発展をお祈り申し上げます。
＞同じコメディカルとして『職能団体は職能団体らしく一般社団法人になるべきです。』という貴兄の考えと一致しなかったのは何故なんでしょうか？
上記の御質問は、看護協会にされたほうがよろしいかと存じます。
これからも、お気軽にコメントして下さいませ。よろしくお願い致します。
Posted by Free Man at 2012年03月26日 08:11