大宅壮一賞に本社増田記者ら　

　第４３回大宅壮一ノンフィクション賞（日本文学振興会主催）は１０日、中日スポーツ報道部記者の増田俊也（としなり）さん（４６）の「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」（新潮社）と、フリーライター森健さん（４４）の「『つなみ』の子どもたち−作文に書かれなかった物語」（文芸春秋）、「つなみ−被災地のこども八十人の作文集」（同）に決まった。賞金各１００万円。贈呈式は６月中旬、東京都内で。

　増田記者の受賞作は１９５４（昭和２９）年、「昭和の巌流島の決戦」といわれた元力士の力道山とのプロレス対決で敗れた柔道家、木村政彦の生涯を追った。取材、執筆に１８年を費やしたという。北海道大で柔道部員だった増田記者は柔道着姿で会見し、「木村先生を復権させたいとの思いがあった。柔道経験者としていろんな人の思いを背負って書いた」と話した。

　選考委員の猪瀬直樹さんは「ページをめくらせる力強さと面白さがある。木村さんの人生を描くことで武道の歴史が描かれている」と評価した。

　増田記者は愛知県出身、同県春日井市在住。９２年に中日新聞社に入社し、中日スポーツに配属。記者の傍ら作家として活動し「シャトゥーン　ヒグマの森」で２００６年、第５回「このミステリーがすごい！」大賞優秀賞に選ばれている。

　森さんは宮城と岩手両県の被災地の幼児から高校生まで８０人が参加した「作文集」を企画・構成。さらに、子供たちと家族のその後を追った「『つなみ』の子どもたち」を発表した。作文を寄せた子どもたちも受賞者となる。

（中日新聞）