白川総裁がデフレ脱却の決意を再表明、次回会合へ緩和期待つなぐ

2012年 04月 10日 21:49 JST
 
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[東京 10日 ロイター] 日銀は10日に開いた金融政策決定会合で、金融政策運営の現状維持を決定したが、その後の会見で白川方明総裁は、デフレ脱却に向けた決意をあらためて表明するとともに、次回27日の会合で公表する「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)の重要性にも言及した。

追加緩和に向けた市場の期待をつなぎとめた格好で、次回会合で日銀が目指す消費者物価(CPI)の前年比上昇率1%への距離や、押し上げる力の弱さが意識される場合、あらためて日銀の明確な姿勢を行動で示す可能性がある。

日銀が毎年4、10月に公表している展望リポートでは、経済・物価見通しや、その上振れ・下振れ要因を点検し、それを踏まえた先行きの金融政策運営の考え方を示す。合わせて当該年度と翌年度の実質国内総生産(GDP)、国内企業物価指数、消費者物価指数(除く生鮮食品)の政策委員の見通しも公表する。

白川総裁は会見で、次回4月の展望リポートについて「非常に大事」と強調し、「経済・物価情勢を特に念入りに点検して適切に政策運営をしたい」と発言。さらにデフレ脱却は日銀にとって「極めて重要な課題」と繰り返し、望ましい物価上昇率を「できるだけ早く実現したい」とも語った。日銀は2月に「中長期的な物価安定の目途」を導入し、CPI上昇率1%を目指して強力な金融緩和政策を推進していく姿勢を明確にしたばかり。「物価安定の目途」導入後で初めてとなる展望リポートに対する総裁の思い入れの強さを示した格好だが、同時に追加金融緩和も実施した2月の決定を受けて「物価と金融政策との結びつきが強まった」(国内シンクタンク)と見る市場の期待もつなぎとめた。日銀は2月会合において、景気が下振れしなくとも、物価が期待通りに上昇しない場合に追加緩和に踏み切る姿勢を示しており、日銀の物価見通しが示される展望リポートの重要性が一段と増している。

展望リポートでは、白川総裁が「欧州債務問題が金融市場や世界経済に甚大な影響を及ぼすテールリスクは低下している」と語ったように、中間見直しを実施した1月に比べて世界・日本経済に前向きな動きがみられていることが、議論の前提になる可能性が大きい。このため、先行きの日本経済は「緩やかな回復経路に復していく」との基本シナリオが維持され、需給ギャップも縮小傾向をたどることが見込まれる。しかし、CPIについては、1月に示した2012年度にプラス0.1%、13年度にプラス0.5%との見通しから大きく改善することは見込みづらい状況だ。むしろ、欧州債務問題の展開や米経済、新興国経済の動向など景気・物価をめぐる先行きリスクも引き続き横たわる。次回会合時の世界経済や金融市場など環境次第では、CPI1%への足どりの鈍さがかえって意識されることも否定できない。CPI1%が展望しづらい中、日銀が次回会合で、成長力強化に向けた官民の取り組みの重要性をあらためて強調するとともに、資産買入基金の増額など追加金融緩和という具体的な行動を示す可能性がある。

(ロイターニュース 伊藤純夫 竹本能文;編集 石田仁志)

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4月10日、日銀は金融政策決定会合で、金融政策運営の現状維持を決定したが、その後の会見で白川方明総裁は、デフレ脱却に向けた決意をあらためて表明するとともに、次回27日の会合で公表する「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)の重要性にも言及した。都内で2012年2月撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)
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