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【社会】

浜岡停止の舞台裏 経産、再稼働へ思惑 官邸、発表文を修正

 昨年五月六日に中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の全面停止を要請した政府の対応をめぐり、経済産業省と当時の菅直人首相ら官邸が激しい主導権争いをしていた。経産省は当初、浜岡停止と引き換えに他の原発の再稼働を画策。官邸側はこれに反発し、経産省の発表を直前に見送り、首相自らが会見する異例の展開をたどっていたことが関係者の証言から分かった。

 本紙は浜岡原発の停止に関わった閣僚や官邸のメンバー、経産官僚から話を聞いた。

 証言を総合すると、停止は当時の海江田万里経産相が昨年四月二十八日、松永和夫次官に「浜岡を止めた場合の影響を検討してみてくれ」と指示したのがきっかけ。松永氏は「浜岡を止めて、他の原発を立ち上げるシナリオを詰めてみたい」と応じた。

 福島第一原発事故で、東海地震の震源域に立つ浜岡は地震や津波への危険性が指摘されていた。夏場の電力不足を懸念していた経産省は浜岡を停止することで国民感情を和らげ、他の原発を再稼働させる狙いだった。

 浜岡停止は、省内で極秘に進められた。現行法では事故や不祥事のない原発を止めることができず、大臣の行政指導で対応することが決まった。経産相が浜岡の現地視察を経て五月六日午後四時に発表することになったが、官邸には当日まで伝えなかった。

 菅首相が経産省の意向を聞いたのは発表の三時間前。首相は浜岡の停止には賛成したが「法律で何とかできないのか」など行政指導に難色を示し、四時の発表は見送られた。

 その後、総理執務室で再び会議が開かれ、経産省幹部や枝野幸男官房長官、仙谷由人副長官ら官邸の主要メンバー二十人以上が出席。首相は「おれが会見する」と発言し、主導権を握った。

 官邸側は、経産省の発表では他の原発の再稼働を容認することになりかねないと警戒。経産省が事前に作った発表文を見た福山哲郎官房副長官は「(他の)原発を動かすというメッセージ」と漏らした。官邸に知らせず、独自で計画を進めていたことにも不信感を抱いたという。

 菅首相は午後七時十分に記者会見。浜岡3号機の再稼働見送りと運転中の4、5号機の停止を中電に要請したことを述べたが、他の原発には触れなかった。

 中電は要請を受け入れ、会見から八日後の昨年五月十四日、浜岡が全面停止した。

 

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