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2012年4月11日(水)付

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日銀人事否決―国会同意のはき違えだ

日本銀行の政策決定に携わる審議委員の人事案が、国会で否決された。日銀人事の国会同意は、日銀の独立性を尊重しつつ、金融政策に貢献できる能力や識見がある人物かどうかをチェッ[記事全文]

鳩山元首相―もう、見ていられない

これは外交とは言えない。鳩山元首相はいったい何をしに、イランに行ったのか。残ったのは「言った、言わない」の空騒ぎだけだ。イラン大統領府は、アフマデ[記事全文]

日銀人事否決―国会同意のはき違えだ

 日本銀行の政策決定に携わる審議委員の人事案が、国会で否決された。

 日銀人事の国会同意は、日銀の独立性を尊重しつつ、金融政策に貢献できる能力や識見がある人物かどうかをチェックするのが役割だ。ところが、国会は「自分たちが求める政策と合わない」という理由で人事案を蹴った。国会同意の意味をはき違えた愚挙というほかない。

 対象となったのは、BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏だ。審議委員6人のうち2人の任期が切れ、うち1人の後任として、政府が内定し、国会に同意を求めた。

 これに対し、足元の民主党内から「河野氏は金融緩和に消極的で財政再建に熱心。政策的立場が望ましくない」との異論が上がった。それに乗じて、参院で多数を握る自民・公明両党などが人事案に反対した。消費税政局のもとでの戦術であるのは言うまでもない。

 もちろん政治家が金融政策を議論するのは結構だ。しかし、「政策が合わない」というだけで人事を葬るのでは、政治による日銀への脅しである。

 日銀の審議委員は学界や経済界、金融界など多様な背景をもつ人材から選ぶ。金融政策は正副総裁を加えた9人の合議制で決める。

 何より重要なのは全体のバランスだ。金融政策が一方に偏って、バブルを引き起こしたり、過度な引き締めで経済を失速させたりしないための知恵だ。

 現状では、金融緩和に積極的なメンバーはいるが、一貫した慎重派は昨春に須田美矢子・元学習院大教授が退任してからは見当たらない。多様性という点で今回は妥当な人選だった。

 衆参ねじれ国会では、参院で多数を持つ野党が拒否権を持つに等しい。これを人事でも振り回すなら、金融政策の中身に野党が介入することになる。これは明らかな越権だ。日銀の独立性と相いれない。

 やはり、ねじれ国会だった4年前、自公政権が日銀総裁に武藤敏郎・元財務次官を内定した際、民主党は「財務省による日銀支配につながる」と拒んだ。「政争の具にした」と非難されたが、今回はそれ以下だ。

 解散・総選挙をにらみ、手段を選ばず日銀を揺さぶり、金融緩和させ、政治的得点にしたいとの思惑が渦巻いている。

 日本は中央銀行いびりで得意がる政治家ばかりなのか――。この事態を金融市場が国家全体の信用の低下と受け止めてしまう前に、少しは「良識」があるところを見せてほしい。

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鳩山元首相―もう、見ていられない

 これは外交とは言えない。

 鳩山元首相はいったい何をしに、イランに行ったのか。残ったのは「言った、言わない」の空騒ぎだけだ。

 イラン大統領府は、アフマディネジャド大統領との会談で、鳩山氏が「国際原子力機関(IAEA)はイランなど一部の国に二重基準を適用しており、公正ではない」と語ったと、ホームページに掲載した。

 これに対し、おととい帰国した鳩山氏は「完全な捏造(ねつぞう)だ」と反論した。結局、在日イラン大使館は鳩山氏に謝罪し、該当部分を削除した。

 いま、イランの核開発は、国際社会の最大の懸案の一つだ。軍事衝突も招きかねない緊張状態にある。今週にはG8外相会合や、国連安全保障理事会の常任理事国など6カ国とイランとの協議も予定されている。

 もし、鳩山氏が核開発への日本政府の考え方を伝える特使だったのなら、微妙な時期の訪問もまだわかる。だが、首相や外相の中止要請を振り切って行った。そして「首相経験者として国益のために働くことができるのではないかという思いから、このタイミングで行かせていただいた」と説明するだけだ。

 さっぱり意味がわからない。

 もとより、議員外交の重要性は認める。政府間の関係が悪化したときに、議員交流で信頼関係を修復する。軍縮など政府の腰が重い分野で、各国の議員が連帯して政府の背中を押す。そんな効用は間違いなくある。

 だが、現下のイランに、のこのこと出かけて行くのは百害あって一利なしだ。案の定、「日本がIAEAを批判している」と吹聴されかけた。

 そもそも、鳩山氏は外交を何だと心得ているのか。

 沖縄の米軍普天間飛行場の県外移設を宣言し、米大統領に「トラスト・ミー」と言った揚げ句に断念した。その際に「米軍の抑止力」の必要性を語ったが、首相退任後には「方便」だったと述べて国民を驚かせた。

 先月も、民主党訪問団と同時期に訪中し、習近平国家副主席とそれぞれ会談していた。あれも何だったのか。

 鳩山氏は首相退任時に公言した「任期限り」の議員辞職を撤回している。一方で、母親から毎月1500万円をもらっていた件は、秘書の有罪確定後もだんまりを決め込んでいる。

 こうした言動が、国民の政治不信を増幅させ続けている。

 それでも対外的には「元首相」の肩書は重い。もう外交にしゃしゃり出るべきではない。お騒がせは、たくさんだ。

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