Fri, February 03, 2012 posted by mothra-flight

ヘニング・マンケル『リガの犬たち』(創元推理文庫)

テーマ:ミステリ
$灰色の脳細胞:JAZZよりほかに聴くものもなし
リガの犬たち (創元推理文庫)

スウェーデン警察小説というより、もはや世界的なそれとして評価されるクルト・ヴァランダー刑事シリーズの第二作目。原著初版1992年。

前作の影を引きずるところもあるが、本書から読み始めても問題はない。

それよりもスウェーデン近辺の地図を見ておくと、本書の魅力が増すことまちがいなしなので、グーグルマップあたりで一手間かけて、バルト三国との距離を確認しておきたい。

何しろ本書の最大の魅力は、ヴァランダーがスウェーデンの田舎町イースタから出て、アウェイで孤独な戦いを強いられる、そのホームとの距離感、緊張感にあるからだ。

スウェーデン南部の海岸に、ゴムボートが漂着する。中には高級スーツを見まとった男性が二人、抱きあうように死んでいた。指先は万力で潰され、全身に火傷痕。明らかに拷問の犠牲者であった。

身元調査の結果、ラトビアの犯罪者と判明。急遽、ラトビア警察から捜査官が送られてくることになり、ヴァランダーとの連携で、ゴムボート殺人に挑む。

ここまでで約100頁。これだけなら凝った異常犯罪ものかと思うのが普通だろうが、この後の急展開ぶりは凄まじい。ある出来事が発生し、一気に緊張感が高まり、ヴァランダーは単身ラトビアへ飛ぶはめとなる。

ちょうど、1991年のバルト三国が舞台ということは、ソ連からの独立運動が盛り上がり、各地で秘密組織が体制側との暗闘を繰り広げている時期であって、これはちょっと思い出せないくらい特殊な状況下での警察小説といえる。

そこに平和なスウェーデンからヴァランダーが登場ということで、スパイ小説までいかないが、国際関係の緊張と弛緩という対比が見事なのだ。

警察署あげての捜査ではなく、あくまで単身での活動なので、ヴァランダーの動きは地味ともいえるだろうが、そこはマンケル節。なぜか未亡人に惚れてみたり、敵地潜入中に緊張で便意を催しゴミ箱に排泄するなど、相変わらずなキャラである。

それでも前作に比べて本作の重さは圧倒的で、好みはわかれるだろうが、おそらくシリーズの特徴は、このあたりにあると思われる。

早速次作を読んでみるとするが、将来的には歴史小説に近いものとして分類されるかもしれない。

★★★★☆

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