2011-03-27 13:37:39
【風に乗せて君に】 第一話 『再会』
テーマ:小説『風に乗せて君に』和哉サイド
初めて、中学の同窓会に参加した。
今までも行われてはいたが、8月ではプロ野球選手の僕が参加するのはどう考えても無理だった。
阪急河原町駅から歩いてすぐの雑居ビルの1階のアイリッシュパブが会場だ。
幹事と挨拶を交わし、隅の席に腰かけると懐かしい顔が声を掛けてくる。
「よっ、出世頭」
野球部で唯一同じクラスだった豊能(とよの)だ。
「あの和哉が今や日本代表のクローザーやもんなぁ・・・」
既に相当な量の酒が入っているのか、真っ赤な顔で笑いながら言った。
「そんなんじゃねえって、去年のパンパシはフェニックスの馬出さんとカーディナルスの岩佐さんがケガしてたし、ジャガースの藤倉さんのポスティングが揉めて長引いてたから、僕に声が掛っただけ」
休み時間に教室でするような馬鹿話、酔いのせいもあるのか心地良い。
「そうだ、あっちに横山おったで呼んできたるわ」
豊能が突然そんな事を言い出し、テーブル席でお喋りしている女子のところへ行ってしまう。
「あ、あほっ、呼ばんでええって!」
横山由依・・・幼い頃の少し苦い思い出と共に刻み込まれた名前・・・
「和哉、連れて来たでぇ~」
豊能に手を引かれてやってきた彼女は、あの頃よりちょっと大人に、そしてぐっと美人になっていた・・・
つづく