こんにちは。
ネットでも、企画書の書き方についての記事をよく見かけますよね。どれも「なるほどー」と思うことが書いてありますが、しかし、それを実行するのは案外難しいものです。それはなぜかというのを一言で説明すると、「企画書を書く方が企画書の書き方を覚えてバージョンアップしても、企画書を読む方の頭はバージョンアップしていないから、あんまり芳しい評価が得られない」という仕組みだからです。
ということで、今回は、会社での人間関係も十分考慮に入れた上で、「本当に企画書を書く上で大事にしなければいけないのは何か」というテーマに斬りこんでいきたいと思います。
7月2日に発売した『クビにならない日本語』には含まれていない話も多いので、お求めになった方も、こちらの記事を参考にしてくださいませ!
読んでいて「え~!そんな身も蓋もない!」と椅子からズリ落ちそうになるかもしませんが、たとえ椅子からズリ落ちたとしてもディスプレイから目を離さず、刮目していただければ幸いです。
(1)前例を重視する
いきなり萎える見出しで申し訳ありませんが帰らないでくださいね……。
「前例を重視する」というのは、この時代、悪しき慣習とされがちです。たしかにそうなんですが、「前例を重視するのは馬鹿のすることだ」と言っている人が前例を重視しまくっていることって多いですよね。そして、そこを突っこむと「いやいや、前例をやみくもに重視しているわけじゃないさ、合理的な理由があって、前例ができてきたのだから、それを無視するわけにはいかないだろう……」ということで、結局のところ「前例重視はやめよう」というのは、多くの場合、口当たりのよいポエムにすぎないので、やはり前例を重視していくのがよいのです。
企画書を書くとき、とくに、異動したてであるとか、新しい仕事であるとか、そういう場合は必ず、その部門での企画書に目を通しておくべきです。どういう順番で書いてあるか、どこを手厚くしているか、などに着目していきましょう。あるいは、前例となる企画書をフォーマットだと思って文章を上書きしていくのも有効です。
一見して「わかりにくい」と思う企画書もあるかもしれませんが、他の企画書も同じくらいわかりにくかった場合、その部門においては、企画書を読んだり説明を聞いたりするときは、そのフォーマットを受け付けるように頭がカスタマイズされているので、そこで一般的な意味での「よい企画書」を出しても、「いつものあれはどこにあるのかしら?」と思われてしまいます。
書類とはインターフェイスです。もとのインターフェイスのよしあしはもはや関係なく、使いなれたインターフェイスなので、どこに何が書いてあるのかがわかりづらい、新しいインターフェイスを渡されても困るだけ。あなたのいる場所での種類のインターフェイスがどうなっているかを熟知することが重要なのです。
(2)前任者や上司を間接的に評価するような内容は書かない
特に前年度に似たような企画をしている場合、「去年と違って今年はこれをします」という話をせざるをえないのですが、その場合、心がけておきたいのが前任者や上司への気遣いです。
「今取りかかっている企画の前任者が誰かというのを知らない」というのは危険なので必ず確認してください。考えてもみてください。「去年の企画はマーケットを無視していて散々でしたが…」「散々…か、去年の担当はわたしだったんだけどね…マーケットを無視してしまって悪かったね…(微笑)」というやりとりがあった後に企画が通るでしょうか?どんなに説得力満載でも無理でしょう。また、企画書というものは独り歩きしがちなので、ふとしたことで前任者が目にしたりする可能性も高いのです。
ということで、前任者に配慮し、下記の要領で書くと安全です。
前回の失敗について、簡単な釈明を入れておく
前任者を叩くのは後だしじゃんけんにすぎないので、前任者が見る見ないにかかわらず、前回そうせざるを得なかった事情について簡単に触れておくと好印象です。「去年がダメだったのは様々な要因があってやむをえなかったですが、今年は…」などと入れておくとよいです。
前回の結果の検証データは入れても、その価値判断は読者任せに
データを入れて、「このような有様で」などと言うと、いろいろ大変です。昨年度、ひどい状況だったとしても、企画を立てる側が価値判断するのではなく、データは載せるだけで、見た人が価値判断をしやすくしておくのがよいです。自ら悪役を買って出て口、「去年は大失敗」などと言わなくても、企画書を読んだ人がそれぞれに失敗であると判断すればよいのです。
前回の担当者の認識を揃えておく
前任者が前の企画を振り返ったときの書類などが残っていれば、そのまとめをそのまま使っておけば齟齬がないです。前任者も「申し送りがうまくいった」ことで満足するでしょう。
前任者のまずいところは、明文化せずに無言で乗り越えるというのが紳士のマナーなのです。