落ちていく感覚の中でMZDはうっすらと目を開けた。
あの小さな体の中身がこんなに広いはずがない…。
やがて草のような感覚がして、自分が下に着地したことに気が付いた。
MZDの周りには美しい世界が広がっていた。
見とれていると、やがて脳内に声が響く。それはさっき聞いたあの影の声だった。
「シンマイノカミサマ、キコエルカイ?ボクダヨ。」
「お前オレに何しやがった!!!!ここから出せよ!!」
「マァ、ソウアワテナイデヨ。キミノセンダイニアタルカミサマガツクッタセカイヲサンコウニシタラ?」
「俺の先代の神…?」
MZDの周りの美しい世界は見事と言わんばかりであった。
動物達に溢れ、緑豊かな、まさにおとぎ話のようなそんな綺麗で平和な世界であった。
時間の流れに伴って人間、エルフ、ロボ、妖怪、アンドロイドなどが登場していくが、争いも少なく平和な世界が続いた。
しかし。
しかし、徐々に世界が豹変し始める。
暴走したロボット、蔓延するウイルス、資源を奪い合い、そのために血みどろの争いを繰り広げる。
病に苦しむ人々、自然破壊と大気汚染によって次々と滅びていく動物達。
だんだん見ているうちにMZDは何とも言えない気持ちになり、見るのが辛くなった。
そして目を閉じたが、人々の悲鳴や、銃声、ロボットやアンドロイド達のエラー音が脳内に鳴り響く。
じわじわと精神を破壊されていくような恐怖。
何が何だか分からなくなったころにはMZDは言葉ともつかない叫びをあげていた。
「もう嫌だ!!やめろ!!やめてくれーーー!!!」
しかしMZDの悲痛な叫びも届かないまま、世界はどんどん荒廃していく。
やがて何の音もしなくなり、MZDは恐る恐る目を開けた。
そこにはもはや荒廃した世界もなくなり闇が広がっていた。その真ん中に先代の神らしき人物がいた。
蛍が光りながら散っていくように、目の前の神もまた消滅しかかっていた。
ふと嗚咽らしき音に気付く。
目の前の、この神のものではない。
そう、自分を飲み込んだあの小さな影が泣いているのだ。
これはあの小さな影の記憶。
そしてこの神の視線の先にあるのは恐らく自分ではなくやはりあの小さな影…
目の前の神は消えゆくなかで心の内を打ち明けた。
「こんなのおかしい…おかしいよ……。どうして?どうしてこんな終わり方になってしまったんだ。
私は平和な世界を作りたかっただけなんだ。争いのない世界を…平等な世界を。
なのにどうして…?」
すると涙声の影の声が聞こえた。
「カミサマハガンバッタヨ…ガンバッタ。モウイイヨ…モウイインダ。
ダレノセイデモナイ。タダ、アナタノチカラガオトロエテイッタダケノコトナンダ…。ダレモワルクナイ。
カミサマハゲンカイマデガンバッタンダヨ…。コレハショウガナイコトダッタンダヨ…。」
「ごめんよノイ…。もうしばらくお前に…あの頃の理想の…世界を…見せてや…り」
全てを言い終わる前に先代の神は消滅してしまった。
あぁあああああああああああっ!!!!!
天を裂かんばかりの悲鳴でMZDは我に返った。
気が付くと自分は小さい影の前に横たわっていた。
起き上がると、さっきの小さい影が物凄い大声で叫んでいる。
花が咲いたかのような瞳からは大粒の涙があふれだしていた。
その悲鳴で、MZDがこれから世界を作ろうとしていた次元にヒビが入る。
まるで殻が割れるかのように、次元が破壊されていく。
このままでは世界を作ることもなく空間が消える…。
とっさの判断で、MZDはその小さな影を優しく抱きしめていた。
「(!!!)」
「泣くなよ。…確かにお前の主人だった神が死んじまったのは残念だよな。」
「(グスッ…グスッ…)」
「けどよ、俺がいつかあの世界よりもっと綺麗で楽しい世界を作ってやるよ!」
「(!!!タノシイ…?)」
「あぁ!!お前の悲しみなんか吹き飛ばしちまうくらいスッゲェ楽しい世界をな!!」
「(…アナタガセンダイヲコエラレルトハオモイマセンガ……)」
「まぁそういうなってwなっ?だからよ、その…俺がその楽しい世界を作るためには
お前のサポートが必要なんだよ!」
「(ボクノ…?)」
「おう!お前は一回神を手伝って世界の作り方を学んだんだろ?理想の世界ってやつを見たんだろ?
だからさ、お前がいると俺も安心して良い世界が作れるってワケ。」
「(アタラシイセカイ…)」
「俺はMZDって言うんだ!!俺と一緒に世界を作ろうぜ!!!」
「(MZD…アタラシイセカイ…)」
しばらく考えた後で影は恥ずかしそうに
「(アナタガ、センダイヲコエルセカイヲツクレルトハオモイマセンガ…
マァ、アタラシクウマレカワッタセカイヲナガメルノモマタイッコウ…)」
と言った。
音の神様の世界創造はまだ始まったばかり…。
四話に続く…。