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2012年4月10日(火)付

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研究者と寄付―原子力分野こそ透明に

原発の許認可や安全規制にかかわる大学教授らが、電力大手や原発メーカーから多くの研究費や寄付を受けている。私たちは、このような経済的なつながりはきちんと公表したうえで、働[記事全文]

チベット―中国は統制より対話を

中国西部のチベット族が住む地域で緊張が高まっている。中国政府は対話を再開し、不安を和らげるべきだ。チベット族は自治区のほか、まわりの青海省や四川省などに住んでいる。この[記事全文]

研究者と寄付―原子力分野こそ透明に

 原発の許認可や安全規制にかかわる大学教授らが、電力大手や原発メーカーから多くの研究費や寄付を受けている。

 私たちは、このような経済的なつながりはきちんと公表したうえで、働いてもらうのが筋だと主張してきた。そうしなければ、国民からの信頼は得られないと考えるからだ。

 しかし、情報公開のルールづくりが進まないなか、金銭授受の実態が次々に明らかになっている。政府関係だけでなく、福井県の原子力安全専門委員会の委員にも、関西電力の関係団体から寄付が行き渡っていたことがわかった。

 看過できない問題だ。政府は原子力政策を根本から見直すなかで、この種の情報公開の制度設計を急ぐべきだ。

 そもそも、研究者と寄付の問題を、どう考えるべきなのか。

 産業界と大学との連携自体は必ずしも悪い話ではない。最新の知見や研究成果を分かちあうことは、優れた技術を広めるうえで必要なことも多い。

 国のお金が足りないなか、多くの研究者ができるだけ民間の資金を集めるように求められている現実もある。

 だが、金銭のやりとりが政策を左右するようなことはあってはならない。

 これは、あらゆる科学分野に共通する難題といえる。

 こんな前提に立った上で、私たちはとりわけ原子力分野は厳格な対応が求められると考える。研究の応用が事実上、発電所に限られるぶん、他の分野に比べて関係者の範囲が狭く、政産学の関係が濃密かつ閉鎖的になっているからだ。

 いまも政府の原子力安全委員会や原子力安全・保安院は、委嘱した委員に寄付情報などの申告を求めている。だが、基準はバラバラだし、積極的に公開もしていない。福井県は申告制度すら設けていなかった。

 これではいけない。寄付を受けた教授らはこぞって「委員としての活動・発言には影響しない」という。これを強弁と受けとめられないためには、積極的に情報を公開するしかない。

 米国では、原子力に限らず、すべての諮問委員会に適用される法律で、中立性と透明性の確保を規定している。今回、国会が設けた事故調も、人選の段階から詳細な自己申告を活用して中立性の確保に努めた。

 こうした情報公開に、原子力分野が率先して取り組み、政府全体を主導すべきだ。

 それが原発事故で失墜した原子力分野の専門家の信用を、取り戻すための当然の第一歩だ。

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チベット―中国は統制より対話を

 中国西部のチベット族が住む地域で緊張が高まっている。中国政府は対話を再開し、不安を和らげるべきだ。

 チベット族は自治区のほか、まわりの青海省や四川省などに住んでいる。この地域で2009年2月から、僧侶ら33人が中国政府に抗議して焼身自殺を図り、多くの命が失われた。うち20件は今年に入ってからで、激しさが増している。

 中国政府はここは不可分の領土だという立場だ。インドに拠点をおくチベット亡命政府も、独立ではなく、中国のもとでの「高度な自治」を求めている。今のチベットは中国の一部という基本的な立場は同じだ。

 だが、民族が住む地域全体での自治を求める亡命政府に対し、中国は「本音は独立だ」とみて強く警戒する。02年に再開された対話は、10年1月を最後に途絶えたままだ。

 チベット仏教の最高指導者として敬愛されるダライ・ラマ14世の写真を飾れないなど、チベットの人たちは、自由を制限されている。漢族の流入や中国語教育の強化など、歴史や文化を共有する民族の意識を薄める動きへの反発は大きい。

 焼身という激しい行為は、そうした状況への不満や憤り、絶望からなのだろう。

 中国政府は近年のチベットの経済発展ぶりを「天地を覆す大きな変化」と誇り、統治の正しさを強調してきた。

 だが、チベットの人々は宗教的な価値を重んじる。経済の豊かさだけでは満たされない。

 自殺を図る人たちには、経済が良くなる中で育った10代から30代が多い。経済的な恩恵で引きつけようという手法には、限界がある。西北のウイグル族など、民族問題を抱えるほかの地域でも同じ不満がある。

 中国は統制を強めて抑えこもうとしているが、それでは問題の根もとは変わらない。

 秋に指導部の世代交代を控える中国共産党にとって、社会の安定のためにも、対話を通じた解決は有益だ。国際的な地位の向上にもつながる。

 そして、チベット族の人たちは命を投げ出さない方法で声をあげてほしい。世界の指導者から信頼を集めたダライ・ラマという手本がある。

 ダライ・ラマは政治的な役割から退いたが、いまも影響力は絶大だ。人々に命の尊さをしっかりと説いて欲しい。

 中国は76歳と高齢のダライ・ラマの「後」を見すえるが、ダライ・ラマだからできる決断もある。対話に戻る環境へ双方がとり組むべきだ。

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キーワード:
チベット族
インド

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