関西電力の八木誠社長は9日午前、大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の中長期的な安全対策をまとめた工程表を枝野幸男経済産業相に提出した。事故時に前線基地となる免震施設の建設を1年前倒しするなど政府の意向を踏まえた内容となった。
政府は6日にまとめた判断基準で、格納容器の圧力を下げるベント(排気)時に放射性物質を取り除くフィルターの設置など時間がかかる対策は、再稼働前に実施されていなくても、期限を示した具体的な計画があればよいとした。
大飯原発の場合、緊急安全対策の実施や安全評価(ストレステスト)の1次評価で、東京電力福島第1原発事故のような地震や津波が襲っても耐えられると政府は判断している。
関電は、当初は2016年度に整備を予定していた放射性物質対策を施した免震施設の完成時期は1年前倒しして15年度とする方針を表明。時期は未定としていたベントフィルターの設置は15年度とした。専用の建屋に設置する恒久的な非常用発電機も15年度に整備するとした。
枝野氏からさらに早い実施ができないか問われた八木社長は「現時点でできるだけ前倒ししている。引き続き前倒しを検討したい」と述べた。完了までの間は「(前線基地は)既存の対策室などで対応は可能で、格納容器も容量が大きく、ほかに除熱機能も多様化させている」と安全性を強調した。
野田佳彦首相と関係3閣僚は、提出された工程表の内容が妥当かどうか近く協議し、安全が保て、電力需給も厳しいと判断すれば、今週中にも地元に再稼働への協力を要請する。
しかし、再稼働をめぐっては、近隣の滋賀県などから慎重な声が上がっており、免震施設やベントフィルターなど事故に備えた設備がないまま、再稼働することに地元自治体から反発が上がる恐れがある。
(中日新聞)