関電の工程表 “妥当性”報告へ4月9日 18時57分
福井県の大飯原子力発電所の運転再開を巡り、9日、関西電力が提出した安全対策に関する工程表について、国の原子力安全・保安院は妥当かどうかの見解をまとめ、9日夜開かれる関係閣僚会議で報告することにしています。
関西電力大飯原発3、4号機について運転再開を判断する新たな安全基準がまとまったことを受けて、関西電力は9日午前、具体的な安全対策の内容や実施時期を示した工程表を枝野経済産業大臣に提出しました。
これについて原子力安全・保安院の森山善範原子力災害対策監は、9日夕方の会見で、工程表の内容が妥当かどうかの見解を早急にまとめて、9日午後7時から開かれる関係閣僚会議で報告する考えを明らかにしました。
森山原子力災害対策監は「すでに緊急安全対策やストレステストの1次評価で評価を終えている対策を確認する作業には時間はかからず対応できる」と述べました。
一方、工程表には事故対応の拠点となる免震事務棟の運用が3年後になるなど、今の時点で実施されていない対策が残されていることについて、森山原子力災害対策監は「より一層の安全を高めることは大切だが、緊急安全対策やストレステストの1次評価を踏まえた対策をしていれば福島第一原発事故のような地震や津波が来ても事故を防ぐ一定の対策ができていると理解している」と述べました。
安全課題91項目中、37項目はまだ
関西電力が提出した安全対策の工程表には、「ストレステスト」の審査や福島第一原発事故の検証過程で明らかになった安全上の課題について、合わせて91項目に上る対策の内容や実施時期が示されていますが、このうち37項目はまだ対策が実施されていません。
このうち原発事故の対応の拠点となる「免震事務棟」については、これまでの予定を1年前倒しして平成27年度の運用開始を目指すとしたうえで、完成するまでは中央制御室の横にある会議室を事故の対応拠点として使用することにしています。
しかし、▽会議室に入れるのは最大で50人ほどで十分なスペースがあるとは言えないほか、▽原子炉に近い場所で、放射線の影響を受けずに長期間に及ぶ事故対応ができるのかなど深刻な事故が起きた場合、十分機能するのか疑問視する指摘もあります。
また、▽緊急時に格納容器の圧力を下げるベントの設備が設置されていないため、外部への放射性物質の放出を抑えるフィルターが付いたベントの設備を平成27年度に設置するとしたほか、▽防波堤のかさ上げは来年度末までに完了させるなど、91項目のうち37項目は、今の時点で対策は行われておらず、今後、実施することになっています。
一方、54項目はすでに対策が実施されているとして、▽外部電源を維持するため送電線の鉄塔の耐震性を向上させたり、▽原子炉を冷やす冷却水の供給ラインに速やかに海水を注入できるよう専用の接続口を設置したりしたほか、▽非常時の通信手段として衛星電話などを配備したことを挙げています。
しかし、今の時点で実施されていない対策の中には、深刻な事故が起きた場合に被害の拡大を食い止めるための重要な対策が多く含まれていて、こうした対策が行われていない中で原発の運転を再開する安全性を確保したと言えるのか、政府や電力会社には合理的な説明が求められています。
専門家“福島から学んだ対策取れるか疑問”
福島第一原発の事故を踏まえて30項目の対策をまとめた原子力安全・保安院の専門家会議に参加した、明治大学の勝田忠広准教授は「事故のときに指令を出す一番重要な免震棟が先延ばしにされているうえ、フィルターが付いたベントの設備も、福島第一原発の事故で教訓になったが先延ばしされている。本当に事故が起きたときに、福島の事故から学んだ対策が取れるのか疑問を覚える」と批判しました。
また勝田准教授は「免震棟などの設備を最低限確保し、その技術を使いこなせる訓練を終えて、そのうえで防災対策をどうするかを決めてから『大丈夫』となったら運転再開を判断すべきだ」と述べました。
そのうえで、「政府が指示を出してから関西電力が工程表を出すまであまりにも短すぎて不安だ。政治家が集まって急に短期間で判断した印象で、論理的に不透明な状態で判断を下すのはよくない」と指摘しました。
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