警告
この作品には
〔残酷描写〕
〔15歳未満の方の閲覧にふさわしくない表現〕が含まれています。
15歳未満の方はすぐに
移動してください。
苦手な方はご注意ください。
憎 悪
これは2010~2011年にかけて行われた路傍之杜鵑さん主催の修行小説【創作五枚会】に参加させていただいた時の作品です。
テーマ:憎悪
※禁則事項
会話文の使用禁止
<オリジナル禁則事項>
・原稿用紙五枚ぴったり、つまり改行・空白を入れて2,000字ぴったり
・心理描写の使用禁止
・今までにないテーマの盛り込み方を考える
伸び始めた黒髪が額にかかる。高司は久しぶりに嗅いだ自由な空気を深く吸い込む。青空を白い雲が横切り、つがいの小鳥がかわいらしい鳴き声を立てながら木々を渡っていく。
自宅に向かう土手を歩いていくと、下校途中の小学生の列がすれ違っていく。高司は眩しいものでも見るかのように目を細めて振り返る。その顔は晴れ晴れとした満面の笑顔だった。
無期懲役、それが高司に下された判決だった。
赤ん坊の泣き声が昼下がりの団地の一室に響いている。室内では金髪の男が、下半身を剥き出しにされた女性の上で腰を振っている。女性の目には涙がたまっているが、焦点は定まっていない。自らの体液で湿ったカーペットの上で、男に突かれるままに揺り動かされている。時折力なく伸ばされる右手の先には、生後三ヶ月を過ぎたばかりの泣き叫ぶわが子。身動ぎして抱き寄せようとすると、容赦ない平手打ちが女性の頬に与えられる。
男は何度目かの射精を終えると、女性のキャミソールで一物から滴る白濁した液体を拭い取る。男のソレは萎えてだらしなく垂れ下がり、動きに合わせて左右に揺れる。
男は舌打ちして立ち上がると赤ん坊を両手に抱き、頭上へ持ち上げる。そして真下へ勢いよく投げつける。鈍い音がして赤ん坊は空気の抜けたボールのように、奥の部屋へと転がっていく。赤ん坊の泣き声はさらに大きくなる。男はまた舌打ちをすると奥の部屋へ行き、赤ん坊をまた高々と持ち上げる。そして何度も床へ叩きつける。赤ん坊の泣き声は徐々に小さくなり、やがて男が床に投げつける鈍い音しか聞こえなくなる。
女性が力の入らない足腰で四つんばいになり、手を伸ばしながら赤ん坊の名を呼ぶ。男はぐったりとして動かなくなった赤ん坊をボールのように蹴り上げると、続いて女性の顔を蹴り上げる。声も出せずに仰向けに倒れた女性の鼻と口からは血が滴り落ちる。男は女性に馬乗りになると、ためらいもせずに持っていた包丁を女性の胸の真ん中へ突き立てる。女性の口から血の混じった泡と苦悶の声が湧き出て来る。男は汚いものでも見るような目で女性を見下ろし、舌打ちをする。男はめんどくさそうに包丁を片手で持ち上げる。そして首と言わず顔と言わず、女性の上半身を何度も刺し続ける。
男の名は高司と言った。
目撃証言などもあり、警察の執念深い捜査の結果一ヶ月後高司は知人の女性宅で身柄を確保された。始めは犯行を否認していた高司も、繰り返される取り調べにとうとう犯行を自供した。
高司は団地の近くに住んでいた。公園で赤ん坊を連れて歩くその女性の姿を見て欲情したという。その後も買い物帰りや散歩などでよく見かけるようになり、その劣情を増大させていったらしい。女性は当時二十四歳。結婚して二年目、子どもは生まれたばかりであった。
中小企業のサラリーマンの夫はいつも帰りが遅く、妻の誕生日だったその日もどうしても抜けられない残業で結局いつもの帰宅時間になってしまった。それでも妻の好きなシクラメンの花束とアンパン頭のキャラクタ人形をプレゼントに買って夫は帰宅した。いつもは明るくおかえりを言ってくれる妻の姿はなく、赤ん坊の泣き声も聞こえない。代わりに濃密な血臭が室内に充満しており、夫はその惨状を発見することとなる。
取り調べによって動機は判明したものの、犯行に対する高司の反省の弁が聞かれることはなかった。裁判が始まり、女性の夫であり赤ん坊の父親でもある男性は職も辞し徹底的に争う姿勢を見せた。夫は高司の死刑を望んだ。
一審では無期懲役。高司は弁護士を通して控訴した。半年後の二審でも無期懲役。さらにその判決を不服とした高司はさらに上告し、判決は最高裁判所に委ねられることになる。長い裁判期間を経て最後に高司に下された判決はやはり無期懲役だった。
マスコミはこの事件をこぞって報道し、連日特番も組まれた。世論は概ね夫に傾いていたが、それも死刑撤廃運動の波に押されて次第に沈静化していく。高司が刑務所に送致されるとその話題もあっという間に風化していった。
高司は当時まだ十七歳だった。
三十歳になった高司は、保護観察付きとはいえ仮出所することになった。就職は国が斡旋してくれた。しがない町工場だが、生活する分には困ることはない程度の給金は出る。
伸び始めた黒髪が額にかかる。高司は久しぶりに嗅いだ自由な空気を深く吸い込む。青空を白い雲が横切り、つがいの小鳥がかわいらしい鳴き声を立てながら木々を渡っていく。
自宅に向かう土手を歩いていくと、下校途中の小学生の列がすれ違っていく。高司は眩しいものでも見るかのように目を細めて振り返る。その顔は晴れ晴れとした満面の笑顔だった。
高司は現在、妻と生後三ヶ月になる子どもといっしょに暮らしている。被害者の夫は、いまだ職場復帰は成されていない。
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